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  レポート11  第15回目の訪問  1月15.16日

 1月15日の11時半にO養護施設についた。
 
 私は、自分で指編みして創ったマフラーを首に巻き、子どもたちへのプレゼントに、ウール100%表示のレインボーカラーの極太の毛糸をひとかせ持っていた。
 羊毛からのフェルトづくりのおもしろさと人間の意識を治療する力に気づいた私は、指編みと織物に注目し始めたのである。
 
 ふわふわの羊毛から固いフェルトを造る過程は、カオス(混沌)が 光(意識)と闇(物質・肉体)に分かれる過程、脊椎(腰椎、胸椎、頸椎、仙骨)が形成される過程、点(0次元)の形成を現しており、
 羊毛から毛糸を紡ぐ過程は、闇から空が分かれる過程、脳・神経系が形成される過程、線(1次元)の形成を現しており、
 毛糸から平らな布を編む過程は、闇から水が分かれる過程、内臓が形成される過程、面(2次元)の形成を現しており、
 毛糸から帽子などの円形の編み物を造る過程は、闇から物質が分かれる過程、筋肉系が形成される過程、立体(三次元)の形成を現しているのである。
 
 絵画法からすれば、
 水彩によるたくさんの色づくりとクレヨンによる画面分割が、点(0次元)の形成を現しており、
 水彩によるにんじんが、線(1次元)の形成を現しており、
 水彩によるおりづるらんが、面(2次元)の形成を現しており、
 クレヨンによるおもとが、立体(三次元)の形成を現している。
 
 動的フォルム治療(オィリュトミー)からすれば、
 うずくまった姿勢が、点(0次元)の形成を現しており、
 立ち上がる(うずくまった姿勢から自然体に立ち上がる)が、線(1次元)の形成を現しており、
 左右の移動が、面(2次元)の形成を現しており、
 前後の移動が、立体(三次元)の形成を現している。
 
 日本の伝統的な遊びからすれば、
 けんだま、すもうが、点(0次元)の形成を現しており、
 鬼ごっこ、おはじきが、線(1次元)の形成を現しており、
 なわとびが、面(2次元)の形成を現しており、
 おてだま、こままわしが、立体(三次元)の形成を現しているのである。
 
 点(0次元)、線(1次元)、面(2次元)、立体(三次元)、の空間認識は、私たち人間に聴こえてきた感覚を、間脳による意識にまとめるための基礎要件なのである。
 そして、空間認識は、あそびや、手工芸や、日常生活を通して、つちかわれてきたのである。
 
 モンテソーリ教育やシュタイナー派の教育において、手工芸や日常生活が重視されるのは、空間認識を育てることが健全な意識を育てることになるという無意識の認識が彼らに響いていたからなのである。
 また、日本の伝統的な遊びを見直そうとする動きも、この無意識の認識が響いているために起こっているのである。
 

 こどもたちにとって、大人たちにおいても、「日常生活の中で行われている人間の営みがそのままでよい、うれしい(^o^)」という感覚と感情が意識されれば、そのまま健全な意識が育っていくのである。

 

1.

 15日午後は硬化粘土でかもさんを作った。
 
 @二つ折りにした針金に、たこいとをまきつける。
 Aその針金を、数字の2の形に折り曲げる。(これが、かもさんの背骨だよ) 
 B硬化粘土(プチフォルモ)の1/2をこどもにわたす。
 C渡した硬化粘土の1/2をちぎり、大きな蛇を作り、手のひらで平らに伸ばす。
 D針金の胴の部分に粘土を巻き付ける。おしりをきゅっとしぼる。
 E残りの粘土の1/5くらいで、細い蛇さんを作り、手のひらで平らに伸ばす。
 F針金の首と頭の部分に、手のひらで伸ばした蛇をちぎって巻き付けていく。
 Gくちばしの部分は横に平らにつぶす。
 H小さなお団子を作り、手のひらで丸く平らにつぶし、頭に帽子をかぶせてあげ、なでなでしてくっつける。
 I少し大きいお団子を作り、手のひらで丸く平らにつぶし、胸につけ、なでなでしてくっつける。
 J残りの粘土で大きな団子を作り、手のひらで丸く平らにつぶし、2等分に切ると、羽ができるのでそれを胴にくっつける。
 
 これが、前傾の「かもの彫塑」の指導法である。
 前半で、4才児組を指導し、そのあと、幼稚園組みの4人を呼んできて彼らを指導しながら作った。
 全体に力強い作品であると思う。
 特に、EとDの作品に力強さを感じ、
 JとZの作品に、他者を支持しようとする深さを感じ、
 Hの作品に、他者を支えようとする愛の力を感じ、
 IとMの作品に、存在の喜びを感じる。

 Kの作品は、実に優雅である。
 AとEの作品に、秩序を感じる。

 この作品に現れてきているものが、それぞれの子どもたちの本体なのである。
 
 針金に平らに伸ばした粘土を巻き付けるのは、筋肉が骨から外に向かって形成されるからである。
 針金に平らに伸ばした粘土を巻き付けることによって、子どもたちは、多層になって骨を覆っている筋肉を実感することとなるのである。
 これによって、立体(三次元空間)の認識が開かれてくるのである。
 
 
2.
 16日朝、私は学童の職員室でJとKとLをみつけた。
 彼らはかわるがわるやってきて、フォルム治療を求めてきた。
 私は、静的フォルム治療を行った後、一人一人を抱いて、「ねこのおいしゃさん」「さんびきのくま」「そらをみてたら」「パレード」を歌いながら踊った。
 すると、BとFとEが、私の歌を聞きつけて入ってきて、「抱っこして」とねだったので、彼らも抱いて踊る羽目になった。
 Bを抱いてフォルム治療をすると、私から大量の咳がでた。
 
 学童の職員室では、不登校気味のSとQがゲームをしていた。
 私がだいちたちを抱っこして踊っていると笑ってみている。
 Qが近寄ってきたので、彼を抱っこして「パレード」を踊った。彼は嫌がらなかった。
 私は、このQの反応を見て、学童の男の子と女の子たちに動的フォルム治療(オィリュトミー)を教え始めることができるようになったと感じたのである。
 
 

3.

 

 保育室に移動した私は、保母の高木さんとともに、子どもたちに指編みの「五本指のメリヤス編み」を教えた。
 
 @親指の外から編み糸を1回巻き付け、同じ要領で人差し指、中指、薬指、小指に巻き付ける。
 A小指側から親指側に、先に巻き付けた目の上になるように手のひら側に編み糸を渡す。
 B渡した糸の下から巻き付けた目を引っ張り、小指にかぶせる。
 C同じ要領で、薬指から親指まで編む。
 D親指側から小指側に、先に巻き付けた目の上になるように手のひら側に編み糸を渡す。
 E渡した糸の下から巻き付けた目を引っ張り、親指にかぶせる。
 F同じ要領で、人差し指から小指まで編む。
 以下、B〜Fの繰り返し。
 
 子どもたちが飽きるまで、10分ぐらいずつ行ったが、5才児であるZは最後まで編むことができた。
 
 AとZの作品には、大きな力を感じる。
 BとGとEの作品には、他者を育てる感情の暖かさを感じる。
 CとIとHの作品には、彼ら本体の喜びを感じることができる。
 
 なにはともあれ、子どもたちも集中していたし、楽しい時間であった。
 

 

2001年1月28日

千葉義行

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