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レポート3    9月1日、9月13.14日

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1.第6回目の訪問  9月1日

 9月1日午後は、にんじんを水彩で描いた。

 一人一人個別に指導した。
 左にモデルを置き、右に水差しとパレットと雑巾を置く、パレットには、赤と黄色と青と白の絵の具をあらかじめ出しておく、筆は15号程度の大筆を使う。
 「赤いっぱい入れて、黄色もいっーぱいいれて、青はほんの少し入れて、白も少し入れて、パレットでグルグルグルグル」「にんじんさんの色になったかな」
 子どもの手に自分の手を添えて、「 どーん、ごろん、どーん、ごろん、…… 」
 筆を水洗いした後、
 「黄色をいっぱい入れて、青もいっぱい入れて、白も少し入れて、パレットでグルグルグルグル」「茎の色になったかな」
  子どもの手に自分の手を添えて、「お日様に向かってのびろのびろのびろのびろ」
 
 どの絵も力強さがあり、地下に向かって伸びる根の力強さと、太陽に向かって伸びる茎の伸びやかさを把握できていることは、子ども達の資質の高さを現していると思う。
Eくんのにんじんはなまめかしく、Cくんのにんじんは健康そうであり、Aちゃんのにんじんはとてもうつくしいものであり、Hくんのにんじんには他者をすうっと見上げているものがある。
 
 コミュニケーション障害の存在を現しているのは、
ア.Dちゃんのにんじんから葉っぱが浮き上がっている部分
 肉体の意識が意識にうまく表象されていないことを現す。
 たとえば、Dちゃんは一人で窓に向かって本を読んでいることが多いのですが、肉体の方でみんなと一生に遊びたいという欲求が生まれても、意識の方にそれが表象されないために、表面的には、みんなと遊びたくないように見えてしまうのです。
イ.描き方を手を取りながら指導しているときに「自分で描くから、触らないで!」という    (A、B、I、E)
 この4人には、他者の思考意識に対する激しいアレルギーがあり、
 自分の意識を自分の思考意識でコントロールしようとしたり、(I、)他者の意識を自分の思考意識でコントロールしようとしたり、(A、B、)他者の意識に特定の自分の行為を結びつけたり(E)してしまうのです。
 Iには、一人遊びが多く他の子に干渉されると怒る傾向があり、
 AとBには、他の子ども達を仕切り自分の意志に従わせる傾向があります。

 Eには、他の子ども達とかみ合わない部分があり、それが彼の知恵遅れの原因となっています。 

 

 
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2.第7回目の訪問  9月13.14日

 9月13日午後は、一人一人個別指導で、水彩のイカを描いた。 

 刺身イカを左に置き、右側に水差しとパレットと雑巾をおき、パレットには、あらかじめ赤と藍色と黄色と白の絵の具を出しておきます。
 筆は、15号程度の太筆を使います。
 「パレットに、あかをいれて、あいいろもいれて、きいろもいれて、グルグルグルグル」 「イカさんの色ができたかな、」
 「じゃあ、エンペラの上からまっすぐに引っ張って…、次は、少し斜めにざぶん…」 
 中心から外側に描き分けるのが基本である。
 胴、目の回り、前の足、後ろの足、と白を入れてグラデーションを作り表現する。
 
 全員力強く描けている。
 胴を左右に描き分けているが、胴をゆったりと幅広く描けていれば、自分の感情の豊かさが意識の表面に浮かび上がってきます。
 足がゆったりと広がって描ければ、判断の力が自分の行為を豊かにします。
 
 全員申し分のない基礎的な力を持っていると思われるが、
 Gの胴がだんだん細くなるところは、自分の存在感を集団の中で十分発揮できていない面(Gは、何でも譲ってしまう面があります。)を現し、
 Fの胴のまっすぐな腺は、Fの他者の意識を在らせようとする面 (Fには、すぐ保母の側にきたり、全体の遊びに乗り切れない面があります。)を現しています。
 
 
 Jは5才児で幼稚園組であったが、この日、自分も絵を描きたいと言って参加した。
 わたしは、Jとは始めての接触であったのである。
 絵画教室が終わり、事務所へ戻ると、職員のAさんが、5才児(幼稚園に通っている)のJくんとKくんとMちゃんを連れて、事務所に入ってきた。
 すると、Jくんがすぐ私の膝の上に乗ってきたので、私はJを膝の上に載せたままオステオパシィを始めた。Jは気持ちよさそうにしていた。
 すると、Kくんが自分にもしてくれと言うのである。
 Kは左後頭部から側頭部にかけて絶壁になっており、乳児の時に左を向いたまま寝ることが多かった(首が右に曲がりにくい)ことを現している。また、他人を蹴ることが多く、私もこれまで数回蹴られていた。
 私は喜んでK君の後頭骨、側頭骨、前頭骨、頭頂骨をオステオパシィした。頸椎と肋骨と腸骨をもっと治さなければならないが、頭頂骨:脳梁の歪みから意識の繰り返し(広義の精神分裂病)が起こり、行為障害(蹴る・噛む)が起こっているものと思われる。
 職員のAさんが、Jくんの運動能力を心配していたので、Jくんの腰をオステオパシィしたが、俯せの状態での腸骨と仙骨が大変固かった。
  おそらく、Jくんの行為障害(なぐる)の原因の多くが足の意識が腸骨で妨げられてしまい脳まで届かなかったこと(足の副交感神経の痛風)にあるものと思う。
 
 それにしても、私は5才児と接触が始まればこれだけ急速に子ども達の方で体を開いてくれることを発見し、とても嬉しかった。
 
 
 9月14日の午前は、わらべうたあそびを中心に行った。
 いちばちとまった
 いっぴきちゅう
 絵本の読み聴かせ
 ひらいたひらいた
のプログラムで行ったが、
D、F、Hの3人は絵本の読み聴かせには参加するのだが、わらべうたあそびに参加できなかった。
 
 Fには、お友達の気持ちを聴こうとするといらついてしまう傾向(アトピー)があり、
 Hには、お友達の自分を支えようとする気持ちが響くと逃げ出す傾向(広義の自閉症)があり、
 Dには、自分の本当にしたいことの逆の意識が脳に起こってしまう傾向があり(自分の感情への絶望)、
これらのことが、わらべうたあそびに3人が乗れない原因であると思う。
 
 この日の昼食で、Aが、牛乳が入ったコップを6こ自分の前に置き、他の子ども達に分けていた。
 このときのAの態度が気になった。
 分けるということは、大切なことであるが簡単なことである。
 自分の前に分けたコップをそれぞれの子ども達が自分で持っていけばよいのである。
 ところが、Aはこの子にこのコップと決めて、采配を振るっている。
 この態度に、Aの深い苦しみと怒りを私は感じる。
 
 他者の気持ちを聴き、自分の体を他者の気持ちに添って動かすことが嬉しいと思う意識が、肉体から脳の意識に上ってくることが起きることは、集団の遊び、特に円形になって行うわらべうたあそびから起こってくる。
 Fの苦しみ、Hの自閉症、Dの絶望、AとBの苦しみと怒り、Iの自分への脳性麻痺、Gの自分への抑圧、これらを解決して行くのはわらべうたあそびであると思う。
 次回から、わらべうたあそびを体系的に充実させていきたい。
 
2000年9月24日 

千葉義行

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