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レポート5   第9回目の訪問  10月12.13日

  1.
 10月12日の朝の4才児達である、1ヶ月前頃から自転車に乗り始めたのだが、驚くほど上手に自転車に乗れるようになっていた。
 子ども達の表情もこれまでのレポートの中でもとびっきり生き生きしている。
 体が生き生きと成長し始めた様子が分かる。
 
 
 その後、シャボン玉遊びをした。
 吐く息を微妙にコントロールし「フウーッ」と吐くと、たくさんのシャボン玉が連続して飛び出してくる。
 これを楽しみながら繰り返すことで、肺が強くなり、声帯の緊張がとけ、「言語の発声」が促進されるのである。
 特に言語の発達が遅れているE、I、3才児たち、や、肺と腎臓と胃と腸に弱さを抱えているDの体の発達にいい結果が出てくるものと思う。

 
ここをクリックしますと、大きな絵を見ることができます。
 
2.
 12日の午後は園庭の柿の木を描いた。
 赤と青と黄色と白の水彩絵の具を使い、大筆だけで描いている。
 まず、「青いっぱい、赤ほんのちょっと、黄色ほんのほんのちょっと、白いっぱい 、お水をどぼどぼどぼ」で空の色を作り、「おそとから、おそとまで」水平に左から右、右から左、と交互に筆を動かし空を描く。
 空が乾いたら、「赤いっぱい、黄色もいっぱい、青少し、白も少し」で柿の木の幹の色を作り、「どーん、のびろのびろのびろ」で幹から枝を描き、つぎつぎと枝を描く。
 つぎに、「黄色いっぱい、青もいっぱい、赤ほんの少し」で濃い緑の色を作り、「はっぱ、はっぱ、はっぱ、はっぱ、バラン、バラン、バラン、バラン」で葉っぱをたくさん、幹や空間にとらわれないように指導しながら描く。
 つぎに、黄色を少しずつ足しながら、濃い緑を黄緑に変えながら葉っぱを描き続ける。
 つぎに、白を加えながら、「はっぱ、はっぱ、光れ、光れ」と葉っぱを描き続ける。
 さいごに、「黄色いっぱい、赤ちょっと」で柿の実の色を作り、「バラン、バラン、バラン、バラン」と描いた。
 
 4才児達が柿の木を描いていると、Jがやってきて「おれも描きたい」といった。 そこで、4才児達が描き終わったら、幼稚園組も描こうということになった。
 幼稚園組の時間になったら、Jがいない、しかし、M子が「わたしも描きたい」といってきた。
 ここで、私は始めてM子の体に触れることができたのである。
 
 4才児たちの絵は、何という深みを持っていることだろう。
 特にGの絵の深さと芸術性はすばらしいものがある。Dの絵は暖かく、Eの絵には認識のひらめきがある。
 子ども達の本体はこれほどにすばらしく愛情に満ちているのである。
 
 コミュニケーション障害の観点から見ると、BとCとIの葉っぱが木の形姿を越えて画面全体に広がっているのは、彼らの意識(葉っぱに象徴される)が彼らの肉体(木の幹と枝に象徴される)とまだうまくつながっていない面を現している。
 それが、彼らがわだかまったり身悶えしてしまう原因を現しているものと思う。
 幼稚園組のKとLの絵は逆に、葉っぱが幹と枝の中で固まっている。
 これは、彼らが自分の意識で自分の肉体を動かそうとしている(広義の脳性麻痺)を現している。
 M子の絵は、緑が黒ずみ白が灰色に見える。
 これは、M子の意識がまだわだかまりでいっぱいになっていて、自分の本体の本当の喜びの意識が脳の意識まで上ってこられない現状を現している。
 
3.
 13日の朝、幼稚園組が登園の準備をしていた。
 Kと出会ったら「またやって」といった。
 そこで、Kのオステオパシィを行ったが、左はそのときの肋骨のオステオパシィを行っている写真である。
 Kの全身のオステオパシィは、これで4回目だと思うが、まだたくさんのコミュニケーション障害が残っていて、Kに触ると私から大量の咳が出てくる。
 この写真のKはとても素直ないい顔をしている。
 
 Lにも出会ったが、Lは「また絵を描こう」といった。絵を描いたことがよほどうれしかったようだ。
 
 Jはこの日幼稚園を休んだ。

 
4.
 13日の午前中は、わらべうたあそびを中心に行った。
 左の写真は、朝の体操の様子である。
 私のために日頃行っている体操を見せてくれた。
 子ども達の体が喜んでいる様子が見られてとてもよいと思う。
 
 私がロバの人形を取り出そうとしたら、CとAが「おにんぎょうをかして」といって、自分の手にはめた。
 それで、わたしが「ととけっこう よがあけた ろばさんも おきてきな おはよう」と歌ったら、CとAが手人形で「おはよう」と返してくれた。
 6月30日の状況とは見違える子ども達がそこにいた。
 
 わらべうたあそびは、「いちばちとまった」「たんぽぽ」をした後、「そらをみてたら」(新沢としひこ作詞中川ひろたか作曲)を、第1拍と第3拍は右足を踏みならし、第2拍と第4拍は手を打ちながら歌った。
 この歌は子供たちが好きで歌っていたので、とてもよいのりでできた。特にAは満面に笑みを浮かべ歌い足と手を打っていた。
 私のねらいは、足と手と意識の共同作業が喜びとともに起こることにあるのである。
 次回は、足に鈴をつけ、足の意識をもっと鮮明に感じられるように指導していこうと思う。
 
 つぎに、「もりのくりすます」(増田裕子作詞・作曲)を、たてに1列に並んで8の字を描きながら行った。
                  きょうはすてきなクリスマスのひ
                  もりのなかではどうぶつたちが
                  サンタクロースのおじいさんの
                  おくりものをまってます
                  いちばんはじめはリスさんに
                  メリメリクリスマストゥユー
                  メリメリクリスマストゥユー
                  メリメリクリスマストゥユー
                  メリメリクリスマストゥユー
 
 リス、うさぎ、ろば、ぞう、らいおん、と、グルグル8の字を描きながら歌い続けた。
 子供たちのこころがだんだん静まり、深く深く聴く状態が進んでいく、感動的な経験であった。
 
 その後、一人一人の子どもを抱っこして「さんびきのくま」「ねこのおいしゃさん」「すてきなぼうしやさん」「そらをみてたら」「もりのくりすます」「クリスマスがやってくる」をオィリュトミーした。
 すると、Aが「もりのくりすますを1番から5番まで全部やって」といった。
 他の子供たちが待っていたので「一番ずつにしてね」といったら、Aは「全部やって、全部やって」とごねはじめた。
 すると、今度はBが「もりのくりすますを1番から5番まで全部やって」といい、ごね私に抱きつき泣き始めた。
 私に抱きつき泣いているBを見るAは、右手の指を曲げBをつねろうとし、また足でBを蹴ってきた。
 ちょうど昼食の時間となり、他の子供たちは食堂にむかい、BとAだけが残ったときに、私はBを抱っこし「もりのくりすます」を1番から5番までオィリュトミーした。すると、Bは満足し食堂へ向かってかけていった。
 Aはふてくされていたが、私は彼を抱っこし「もりのくりすます」を1番から5番までオィリュトミーした。
 後から私が食堂に行ったときには、BもAもにこにこ食事をしていた。
 
 
千葉義行
 
 

2000年10月18日

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