レポート11 第12回目の訪問 9月19日20日
B はAの手を握り「おててつないで」といって笑った。1.9月19日11時にO養護施設についた。真っ先にB が私のところへやってきた。顔をくしゃくしゃにして笑っている。!私との関係をうれしいと思って笑ってくれたのだ。!B が体を揺すったりわらべうたを歌ったりする(他者からの働きかけを受ける)ことなしに笑ったのを見たのは、これが初めてだった。
郡山から車で運んできた、「はらぺこあおむし」エリック・カール作の大型絵本と、「ごきげんのわるいコックさん」まついのりこさくと「クレヨンさんのけんか」八木田宣子・田畑精一のかみしばいを読んだ。
Gをのぞくこどもたちが集まってきた。わたしが、あおむしのたべているりんごやなしを取って分ける動作をし「どうぞ」というと、こどもたちは、あおむしとともにりんごやなしやすももやいちごやオレンジをいっぱいたべた。「ごきげんのわるいコックさん」でも、コックさんにみんなで「コックさんこっち向いて」と声をかけ、コックさんがペロペロキャンディをつくってくれると、いっぱいなめた。「おいしい?」「うん、おいしいよ!!」E(3才・おそらくLDがあると思われる)もこの場にいた。そして私の手からおいしそうにりんごやペロペロキャンディをとって食べるまねをした。Eが絵本を読んだのはこれが初めてだったのである。「くれよんさんのけんか」も、こどもたちはよく聴くことができた。2.午後は、庭でかきのきを描いた。
S(年長)幹の形姿と葉っぱの形姿を一致させようとしている彼の努力が現れている。オレンジ色と赤が彼の感覚を癒している。すてきな絵だよ。 P(年長)幹の形姿がすばらしい。葉っぱの数が少ないのは知恵遅れを現している。オレンジ色は彼の感覚を癒し、見る人の聴覚を癒している。すてきな絵だよ。 O(年長)私の車を描きたいという。車を描いた後、緑をたくさん描いていた。車の形姿が彼を運んでくれる主への甘えを現している。
青空は、彼の創造を現し、飛び散るしぶきは、彼の創造へのこだわりを表している。 R(年長)「青いっぱい、赤ちょっと、黄色ほんのちょっと、白いっぱい、お水をどぼどぼどぼといれて」せっかくお空の色を作ったのに、自分で色を加えてしまって、一定のお空の色が塗れなかった。……自分の感情を肯定できない弱さを抱えている。ピンクは宗教的な感情への憧れを現す。 N(年長)すばらしい絵である。深緑から、黄緑、黄色、白へのグラデーションは、彼女の生の喜びを現す。Nというオレンジ色の署名は、他者への暖かな感情を表している。 T(一年生)木の枝がうえにうえにのびているのがいい。葉っぱは木の枝に沿って描かれているが、自分の体を自分の意識で動かそうとしている(広義の脳性麻痺)ために起こっている。オレンジ色は、彼の体を癒し、見る人の視覚を癒している。 Y(一年生)幹の形姿と色彩を調和させようとする彼女の努力を感じる。
幹の形姿と葉っぱの形姿が一致していないのは、他者の記憶に対する深いアレルギーがあるからで、彼女に怯えた小動物のように突然他者の顔を引っかくような行為があるのはそのためである。しかし、この絵の色彩は美しい、彼女の深いアレルギーが癒されようとしているのを感じる。 3M(3年生)彼女は学校の友達とトラブルがあったようで当日学校を休んでいた。幹の形姿を描いた後、丹念に葉っぱの色を重ねていた。一番上に描いた赤からピンクへのグラデーションは、彼女の自分の感覚を肯定しようとする心の働き(しょうがないなあ)を現していると思う。葉っぱが画面いっぱいに広がっているのは、彼女の耳鼻科系のアレルギーを現しているものと思う。 2Y(2年生)美しくやさしい絵である。私ははじめて彼女に絵を教えた。黄緑は、彼女の家族への敬愛の気持ちを表し、ピンクは彼女の主へ身をゆだねる感情を表している。葉っぱが画面いっぱいに広がっているのは、彼女の他者の悲しみ、寂しさ、絶望、怯え、の感覚へのアレルギーを現しているものと思う。その感覚が響くと、彼女は他者に手を出せなくなるのである。 3H(3年生)暖かい絵である。
幹の形姿も葉っぱの形姿もしっかり一致して描かれている。黄緑は、彼女の母性のしっかりとした認識を表し、黄色から赤のグラデーションは、彼女の他者への尊敬の感情を表している。8月に折鶴らんを教えたのであるが、力強い伸びやかな絵を描いていた。他者を育てる能力のある女性に育つと思われる。 L(年中)「葉っぱはね、バランバラン、バランバランって描くんだよ」と教えているのだが、木の上部に葉っぱが固まり、太い幹にも葉っぱがくっついて描かれている。これは、彼の世間の感覚(自分を評価する・しない)と自分の感覚(苦しみ、わびしさ)への神経症を表すものであると思える。19日、20日と彼の手は久々に冷たかったのである。 M(年中)色のバランスが良い。美しい絵である。ピンクは、彼のO養護施設の職員への味覚:味わいを現し、O養護施設での生活がおいしいと感じ、彼の肉体が成長していることを表している。
世間(幼稚園生活)への苦しみ、怒りが慰められていると感じる。 K(年中)色のバランスが良い。美しい絵である。ピンクは、彼のO養護施設の職員への味覚:味わいを現し、O養護施設での生活がおいしいと感じ、彼女の肉体が成長していることを表している。灰色で幹の上に葉っぱを描いているところは、彼女の世間の感覚(自分を評価する・しない)と自分の感覚(苦しみ、わびしさ)への神経症を表すものであると思える。 F(4才)元気で美しい健康的な絵である。幹の形姿と葉っぱの形姿も一致している。柿の実の色がおいしそう。 E(3才)私には彼がここまで描いたということだけでうれしかった。まだ線がつながってこないことや、ぐじゅぐじゅとした線は意識障害を現しているが、背景が水平に描けていることは、左右の意識がそだっていることを表し、木の幹が「のびろのびろ」と上に向かって描けていることは、垂直の意識がそだっていることを現し、「はっぱはっぱはっぱっぱ」と唱えながら描けたことは、幹と葉っぱの関係性の意識が育っていることをあらわしているのである。 D(3才)力強い絵である。葉っぱが幹にくっついているのは、年齢もあるが、自分の意識を自分の憧れで動かそうとする広義の脳性麻痺を現している。黄色は、他者の判断(現在はO養護施設 の職員)への憧れを現し、赤は、自分の母性の肯定を表している。力が抜けるといいお母さんになれるよ。 B (3才)お誕生日おめでとう。3才らしい力強い絵になった。葉っぱが左下の部分に固まっているのは、自分と世間の意識を自分の前頭葉の思考で動かそうとしているADHD系の脳性麻痺・鬱病から起こっている。しかし、「のびろのびろ」とのびた幹や、葉っぱの色は彼の楽しさを伝えており、この絵を見る人の認識の緊張を慰め癒す作品になっている。 3.19日の夜もなかなかこどもたちの寝つきは悪かった。「おんぶして」というEをおんぶすると、Lが「ぼくも」といってないてぐずる。「さんびきのくま」の素話をせがまれるままに何回もするがなかなかこどもたちは寝てくれない。さいごまでのこったFに、「おやゆびねむれ、さしゆびも、なかゆび、べにゆび、こゆびみなねんねしな、ねんねしな、ねんねしな」と、ゆびをいっぽんずつ折りながら唱えてあげると、すうっと眠ってしまった。「おとうさん、指先が弛緩すると眠るんだね……わらべうたの力をまざまざと感じたよ。」車で一緒に見学にきた私の長男がぽつっと言った。4.20日朝、6時半にこどもたちを起こしに行った。Cの足を回して「せんぞうやまんぞう、おふねはぎっちらこ、……」と歌う。「わたしにもやって」といって、Fが仰向けに寝て足を投げ出して待っている。すると、Aがだまって仰向けに寝て足を投げ出した。朝食の後、年中児が幼稚園に行く準備をし始めた。Lが、「幼稚園に行きたくない」とだだをこねはじめた。野本君が「千葉先生に送ってもらったら幼稚園に行くか?」「うん」野本君は、朝、幼稚園にこどもたちを送っていくときに幼児たちも連れ出し散歩させていたのである。この日は、FとGが散歩に出た。すると、Aがおくつをはいている。私は、野本君と一緒に、Aを抱き上げ幼稚園にこどもたちを送り、小学校の周りをぐるりと一周する散歩にでかけた。幼児室に帰ってくると、Eが「おんぶして」とせがんだ。おんぶすると、「おそとにいきたい」という、Eをおんぶしたままうさぎ小屋まで行きうさぎのあたまをなでた。うさぎは2匹に減っていた。うさぎ小屋を出ると、「もっとおそとへいこう」という。私はそのまま公園まで散歩しようと思った。わたしは、Eをおんぶしたまま、Gの手を引いて公園まで散歩した。児童公園で二人をあそばせたが、そのとき上の写真を撮影した。「Eが普通の子どもの表情で笑っている!!」Eとであっていらい、初めての表情だったのである。今回のB は3才のお誕生日を迎えた。
3才のお誕生日を迎えたら、これまで一人で遊ぶことの多かったB が他のこどもたちに積極的に係わろうとしていた。左上は、Aちゃんのてをつないで「おててつないで」といって顔をくしゃくしゃにして笑った直後の写真である。そのあと、Dのてもつないで笑った。5.今回の訪問では、BとEの成長を深く感じた。自分と他者を分けて意識し始めたこどもたち:B 、自分と他者を分けて意識する途上にあるこどもたち:F、M、自分と環境を分けて意識し始めたこどもたち:F、自分と環境を分けて意識する途上にあるこどもたち:B 、C、E、A、L、M、K、G、自分と自分の母性を分けて意識し始めたこどもたち:M、自分と自分の母性を分けて意識する途上にあるこどもたち:F、E、L、K、次回には、クレヨンと画帳を個人ごとに持たせ、自分のものとお友達のものの区別の意識と、自分の作品への肯定の気持ちを育てることを、職員と相談しようと思っている。
2001年10月1日
千葉義行