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レポート13 第14回目の訪問 10月12日13日

「コックさーん、ごきげんなおしてよー……、あーら、かっちんかっちんになっちゃった」

1.
 12日10時30分にO養護施設についた。
 最初にDの当たり前の表情に気がついた。
 「めがつりあがっていない!」
 Dには、多動や自傷行為や知恵遅れなど目立った障害はない。
 しかし、私や先生方のまねをする彼女を見ていると、「自分の本当の感情から出ている行為ではないな。」と感じざるを得ない日々であったのである。
 私は、Dに「リューマチ:自分の思考意識で他者の行為の排泄を自分の行為にまねる。:共感・代行」があることを心配していた。
 Dは、わたしたちのまえではいいこであるが、大人になり新しい環境に出会ったときに歪んだ感情を持つ可能性が心配であったのだ。
 ともかく、Dが普通の目をしている瞬間を感じられたのはとてもうれしかったのである。
午前中にこどもたちと遊んだ。
 「ごきげんのわるいコックさん」の紙芝居を読もうとしたら、Eが「ぼくがよむ!」という。
 これまで私が絵本を読もうとしたら、EとG、はどこかに遊びに行ってしまっていたのだが、Eと絵本(紙芝居)の初めての出会いが起こったのだ。
 Eは紙芝居をめちゃめちゃにひっくり返そうとする。
 私は順番をそろえてやり、彼にゆっくり紙芝居をめくらせながら、暗記していた物語を口で語ってあげた。
 そのときのEの表情が上記の写真である。
 「ふつうのこのめをしている!!」
 Eの持っていた自閉症が私たちの普段の努力で解決してきているのである。
2.

 午後は、学童のこどもたちにクレヨンでカメやあかまんまを描かせてみた。

N 年長
形を描いたところで疲れてしまい、甲羅を全部は描けなかった。
空間認識と形と色のバランスが良い。
S  年長
カメを描いてからあかまんまも描いた。
 たいへんな時間がかかったが、よくがんばったものだ。
 色のバランスが良い。
 学ぼうとする意識が良い。
カメは彼のみんなを思う気持ちを表し、空間の赤は彼の絵を指導した私への敬慕の感情を表している。
O 年長
 形を描いたところで疲れてしまい、甲羅を全部は描けなかった。
空間認識と形と色のバランスが良い。
形と色の秩序を把握している。
 カメは彼の感情を現し、空間の黄色は彼のO養護施設という世間への思いを表している。
P 年長
どうしても金魚を描きたいという。
これまでみんなが描いてきたものをちゃんと覚えているのだ。
形のバランスを意識できるようになっている。
V 一年生
すてきな絵だね……
かえるの色がなんともいえなくいいね。
かえるは絵を指導している私の触覚を現し、空間の青は私とともやの出会いを現している。
U 一年生
ひろきも金魚を描きたかった。
クレヨンで一枚一枚のうろこを描く作業を教えようとしたが、まだできなかった。
Z 一年生
力強く美しい……
カメを全部描ききったのはえらい。
色の秩序とバランスが優れている。
カメはO養護施設の認識を現している。
2Z 二年生
力強い。
形の秩序感がある。
カメはO養護施設が彼の心と体を維持している力をあらわし、空間の紫は彼の「これでよい」と思う気持ちを現している。
2M 二年生
かえる
初めて絵の指導をした。
形の秩序を感じようとし始めている。
お花として描いた+や×やVは彼女の意識障害を現しているものと思われる。
背景の赤紫は彼女の生命霊のわだかまりを現している。
あかまんま?
茎と葉を根から先端に向けて描いている。
力強い。
色の秩序を感じようとしている。
お花はO養護施設の認識を現し、背景の青は彼の思考体系の共感を現している。
3.
 夜、男の子たちと風呂に入った。
 湯船に使っていると、突然、Uが私の背中におんぶしてきた。
 「ねえ、クリスマスの歌をうたって」
 私は、裸のままひろきをおんぶし、「クリスマスがやって来る」を歌って踊った。
 男の子たちはそれを黙ってみていた。
4.
 13日6時30分に幼児の部屋に行く。
 Bをだっこして「森のクリスマス」を歌う。
 Aが寄ってくる、AとBをだっこする。
 Dがそばに立っている。
 「Dもここにすわりな。」三人をいっしょにだっこした。
 Cは相変わらず一人で遊んでいた。
 私がうさぎの手人形を取り出し、
「ととけっこう、よがあけた、まめでっぽう、おきてきな、おはよう」とうたうと、珍しく私のところに来た。
 すぐに私からうさぎの手人形を取り返し自分の手にはめた。
 私はわきから、「ととけっこう、よがあけた、まめでっぽう、おきてきな、おはよう」とうたった。CはそばにいたDに向かって手人形を動かしたのである。
 そのときの表情が上中の写真である。
 一人遊びのときの表情:上左と比較してみると、Dにむかって手人形をうごかしている上中の写真の表情はリラックスしているのが分かる。
 その直後CはEと髪をつかみ合うけんかをした。
5.
 10時から幼児たちに、それぞれの子供たちの名前を書いて、新しいクレヨンを渡した。

 子どもたちにはにじとおひさまの描き方を教えた。

A 3才
赤、青、黄色を使って、混色の体験をさせた。
他の色は自分で描いている。
B  3才
青、緑、黄色、オレンジ、赤、の変化を描いた後、おひさまを描いたが、
画面全体におひさまを描きたかった。
彼の描く丸は非常にしっかりしている。
C  3才
赤、青、黄色を使って、混色の体験をさせた。
おひさまも描いた。
D  3才
青、緑、黄緑、黄色、オレンジ、赤、を少しずつ重ねて描いている。
おひさまは自分で色を選び重ねさせたが、実にしっかり描かれている。
E 3才
青、黄色、赤のグラデーションを描かそうとしたが、いろいろな場所に描きたがった。
おひさまのぐるぐるは集中して描けた。
画面全体を見渡すとすっきりした感じが起こる。
自閉症が相当治癒してきたことを現しているものと思う。
F 4才
青、緑、黄緑、黄色、オレンジ、赤、を少しずつ重ねて描いている。
おひさまは自分で色を選び重ねさせたが、実にしっかり描かれている。
G 4才
青、緑、黄緑、黄色、オレンジ、赤、を少しずつ重ねて描いている。
おひさまは自分で色を選び重ねさせたが、赤の上に黒を描いて「おしまい!」といわれてしまった。
黒へのこだわりがいつ無くなるかが課題である。
   

2001年11月3日

千葉義行