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レポート14 第15回目の訪問 10月27日28日

脊椎の音程治療をしたらUは眠ってしまった。

1.
 27日11時にO養護施設についた。
 今日はO養護施設報告会の日である。
早めの昼食をとる。
E(3才)の表情の緊張が緩むことが多くなった。
 左の写真:緊張し多動な状態
 右の写真:弛緩した状態
 「今日のEは普通の顔をしているよ。」
 「あら、そうですか。」
 「ほら」
 私は、右側の写真を三瀬さんに見せた。

2.

 12時30分から会場の飾り付けをした。
 幼児たちの絵は、すでにその子どもごとにつなぎ合わせてあった。
 体育館の壁に順番に貼っていく。
 5M(5年生)がはしごで上に登って貼ってくれた。

 お客様が入り始めた。

 「こどもたちが、自分たちのことであると感じながら、手持ち無沙汰というわけでもなく、行動を強制されているわけでもなく、そこにいる。」ことが私には自然に思えた。

2J(2年生)は、私を見つけると「だっこしてうたって」と近寄ってきた。
 私は彼をだっこして「そらをみてたら」を歌って踊った。

「ようじのおへや」 の紹介が始まった。
「Mくん」
「はい!」
ひとりひとりの返事が大きくひびいた。
Eが抱っこされていたが、担任に身を預けている様子が私にはうれしかった。
「幼児たちが『じぶんがここにいること』をそれでいいとおもっていること」がお客様たちに伝わったことが私にとってはうれしいことだった。

幼児たちのアンパンマン体操も喜んで体が動いていることが伝わってきて良かった。
女子学童の子ども達が、自分たちだけで振付し、モーニング娘の歌を踊った。
そこには、彼女たちの自我の主張はあったが、同時に彼女たちの体はいきいきと喜んでいたのである。
 「O養護施設の子ども達が、ともかくも「自分自身の肯定」へのみちを歩みだしたこと」、このことが報告会にきてくださったお客様方に伝わったことがたいへんな収穫であった。
 これからは、「自分自身の肯定」のかなたに、「他者の生き方の肯定」そして「他者の肯定」への道があるのである。
3.
 報告会の後、食堂でU(1年生)に出会った。
 Uは私のひざに乗ってきたので、自然にフォルム治療が始まった。
 私は440h(ラ・Aの音)の音叉を聴きながら、ラ、ミ、レ、ソ、シ、ファ#、シ♭、
ミ♭、を発声し、かれの脊椎を治していった。
 仕上げに腕を左右、上下に動かしながら肋骨のフォルム治療を行ったが、彼は気持ちよさそうに眠ってしまった。
 Uは一年前のように急に攻撃的になるような精神的に不安定な状態は見られなくなってきていた。(一年前は分裂病が起こりやすい状態にあったからである)
 学校でも、体育が大好きである。
 もうすこし算数や国語がはっと理解できるようになるといいね。
 「もっとべんきょうがよくわかるようになりますように」と唱えながら私は治療していた。
 私のフォルム治療は彼の視覚障害・知恵遅れを改善することを目指していたのである。

4.

28日朝、幼児のお部屋に行くとMの晴れやかな表情に出会った。
昨日の報告会の体験が彼にとって心地の良いものであったことが良く分かる。
他の幼児たちにとってもそうであったのだろう。
この日の幼児たちの目覚めの表情は和やかだった。
わたしは、ひとりひとりのこどもたちに対して、
「おふねはぎっちらこ、ぎっちらこ、ぎっちらこ、
おふねはぎっちらこ、ぎっちらこ、ぎっちらこ、
せんぞうぞ、まんぞうぞ」
 と歌いながら、股関節を回し、「ぶるぶるぶるぶる」と足首をつかまえ震わせた。
5.
 10時からひとりひとりのクレヨンをだしてこどもたちに描かせてみた。

 私は、何の指示も出さずに自由に描いたものを見たかったのだが、私やスタッフと一緒に描きたいと思った子が多く、ともかく、子ども達が描いた絵を下に表示する。

A  3才
灰色のクレヨンで、線と丸を描いている。
たくさんの色が使えていないところに、彼女からなかなか言葉が出ない原因が潜んでいるように思われる。
たくさんの色を使うように指導していく必要があろう。
B 3才
赤、黄、青、緑、灰色、と色々の線を水平にたくさん描いた。
C 3才
赤、黄、青、黄緑、茶色、黒、灰色、と色々の線を上から下にたくさん描いた。
絵の描き方として、下から上に向かって「のびろのびろ」と描くように指導する必要があろう。
上から下の方向は、自分の意志を世間に実現しようとする鬱病を現している。
D 3才
重ね塗りをしたり丸を書いたりしていた。
「はっぱをかいて」といわれたので、右下隅にDの手を取って葉っぱを重ね塗りで描いた。
右下に黒のかたまりがあるが、Dのこだわりを現している。葉っぱの重ね塗りの中でも黒は現れている。
G 4才
「にじをかいて」といわれた。
にじの後に、「はっぱをえがいて」といわれ、
「のびろのびろ」といいながら草を描いた。
赤いおはなを放射状に描いてあげ、おひさまを自分で描き足した。
K  年中
左は、「木を描いて」といわれ、彼女の手をとって描いた。
幹は茶色だけでなく、緑、赤、オレンジ色、黒、青、白と重ね塗りをさせている。
「伸びろ伸びろ」と声をかけながら地面から描かせている。
緑の葉っぱもいっぱい描けた。
「小鳥を書きたい」といわれ、くちばし、あたま、どう、しっぽ、あし、の順番に描くことを教えた。
 おおらかな印象の絵である。

F 4才
上は、「木を描いて」といわれ、Fの手をとって描いた。
幹は茶色だけでなく、緑、赤、オレンジ色、青、と重ね塗りをさせている。
「伸びろ伸びろ」と声をかけながら地面から描かせている。
赤い木の葉っぱは、最初手を取って描いたが、自分でいっぱい描いた。
下は、おおらかな絵でこれでよいと思う。

L  年中
上は、「木を描いて」といわれ、かれの手をとって描いた。
幹は茶色だけでなく、赤、オレンジ色、青、と重ね塗りをさせている。
「伸びろ伸びろ」と声をかけながら地面から描かせている。
黄緑で葉っぱを描いているが葉の数が少ない。
下は、黒へのこだわりを表している。自分で描くときにもっとたくさんの色を使うように指導しよう。
M 年中
私が他の子に教えているのを見て自分で描いた。
私は、そばで「のびろのびろ」と声をかけていた。
「ことりをかきたい」
青い小鳥をくちばしから描いた。
「ことりのすをかきたい」
茶色、赤、緑、青、白、と塗り重ねさせた。
「ね。こうすると、ことりさんもよるあったかいだろう。」「ん」
「おそらをかく」
「あおいおそらかい、ゆうやけにするかい、」
「よるのおそらがいい」
青と、赤と、茶色を薄く塗った。
 そのあと、じぶんで、小鳥と小鳥の巣と雲とおひさまと青空を描いた。右の絵である。
6.
絵を描いた後、ふと見たら、Dが「動物園へ行こう」のミニチュア積み木で遊んでいた。
この並べ方は、じつに美しい。
この写真のDからは、自我で自分をコントロールしようとしている姿は無くなっている。

じつに素直な、Dの本体がここにあるのである。

2000年11月5日

千葉義行

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