O養護施設レポートUへ戻る

レポート17 第18回目の訪問 12月4日5日

Aは、担当の岸田君に抱かれ体を揺すると体全体で喜んだ。

1.

4日10時半にO養護施設についた。
こどもたちとわらべうたで遊ぶ。

まあるくなあれ まあるくなあれ いちにっさん
ちいさくなれー
まあるくなあれ まあるくなあれ いちにっさん
おおきくなれー

いちばちとまった にばちとまった さんばちとまった
よんばちとまった ごばちとまった ろくばちとまった
しちばちとまった
はちがきて くまんばちがとんで ぶんぶんぶんぶんぶん

おちゃをのみにきてください
はいこんにちは
いろいろおせわになりました
はいさようなら

こどもたちを抱きながら座っていると、
「K3くんのようにやって」
「わたしのあしのゆびをなおして」
と、DとFが私のところに来た。

私は、丁寧に、DとFの、頚椎、腰椎、仙骨、肩、腰、頭骨、肋骨、のフォルム治療をした。

こどもたち同士が係わりあって遊べるようになって来た。
写真のように、係わって遊んでいるときに、いきいきとしてすてきな表情がうかぶようになったのである。

2.
昼食は、Aの側で食べた。
Aは自分で自分を動かそうとする緊張が強く、なんでも自分でやろうとする。
食べ物も全部自分で食べようとするために手掴みになったり、新しい食べ物が食べられなかったりしていたが、職員が『食べさせてあげること』に取り組み、だんだん柔軟になってきた。
私もときどき、
ゆうびんやさんえっさっさ
Aちゃんのおくちにえっさっさ
と歌いながら、食べさせてあげていた。
すると、他のこどもたちから、
 「ぼくにもやって」
 「わたしにもやって」
と、注文が来る。
わたしは、みんなのところまで出前をした。
食べさせているうちに、Aは、自分の食器を私のほうに押しやり始め、自分のいすから降り、私のひざに乗ってきた。

 「そう、だっこしてたべたいの」
私は、Aを抱っこして食べさせ始めた。

 Aを抱っこしながら、私は、彼女の脊椎のフォルム治療を始めた。
 胸椎、腰椎、仙骨、
 ここまできたときに、Aは眠ってしまった。
 彼女を眠らせたまま、肋骨、肩、頭骨を治した。

3.
4日午後、私の絵の指導を見学したいといって、箱崎さん親子がお見えになった。
娘さんは絵画の専門学校に通っておられるとのことで、お母さんは、娘さんが学校のことで迷っているようだと話しておられた。
 30分ほど遅れて娘さんがみえた。
 「こどもたちと一緒にこのかびんを描いてみますか?」
 娘さんが2時間ほどかけて、16色のクレヨンを塗り重ねて描いた作品が、左の写真である。
 「補色を塗り重ねてもだいじょうぶなんですね。」

 「塗れば塗るほどおもしろくなってきました。」

U 1年生
左 花瓶の上の口の部分と中央の十字は私と一緒に描いた。
 外側の外形の線は自分で描いた。花瓶の内側を塗り始めたが、左の写真のところまで描き、精一杯になった。
右 背景色をブロッククレヨンの横の広い面で描くように指導とていたら、面白がって、右の絵を描いた。
N 年長
左 かびん
力強い作品である。
右 かめ
かめの甲羅の六角形の外形は私と一緒に描いた。
一枚一枚の甲羅の中をたんねんにクレヨンで塗り重ねていった。
O 年長
かびん
やさしい。
花瓶はO自身の肉体をあらわし、背景の青は、彼の意識を現している。
P 年長
左 かびん
Uとともに、形の外形を描けるようになったことは、知恵遅れの治療の成果である。
右 かめ
なんと力強い絵であろうか。
かめは、Pの他者意識を現し、背景のオレンジ色は彼の世間への感情を現している。
V 1年生
左 かびん
力強い。
かびんは、Vの世間に対する霊人の脳性麻痺を現し、背景は、彼の外宇宙の記憶障害を現している。
右 き
自分で描いたもの。
きは、彼の外宇宙の感覚障害を現し、背景は、彼の生命霊の判断障害を現している。
Y2 2年生
初めて、私が絵を教えている現場に現れた。
クレヨンを使って自分で描いていた。
右 かめ
かめは、Y2の自我のわだかまりを現している。
M5 5年生
左 かめ
ちからづよくやさしい。
かめは、M5君の世間への肯定の判断を現し、背景は、主の意志を現している。
右 らん
やさしい。
かめをかっていた水槽にあったらんである。
らんは、M5君の母性の感覚を現し、背景は、生命霊を現している。
                     
4.
 4日の夜、学童の男の子たちとお風呂にはいった。
 湯船につかると、Uが寄ってきた。
 「そらをみてたらをやって」
 そのままおんぶしてくる。
 Uをおんぶしたまま、「そらをみてたら」「くりすますがやってくる」「ねこのおいしゃさん」を歌いながら踊った。
5.
 5日朝6時30分過ぎに子どもたちの部屋へ行く。
 「おちやをのみに」やろう、Dはこのうたがとても好きだ。
 Aと、Dと、私で「おちゃをのみにきてください」をはじめると、Bが輪に入ってくる。
 私が座っていると、Dが「K3くんのようにやって」と、私のひざに乗ってきた。
 すると、「ぼくにもやって」とGが近寄ってきた。
 Gの体も丁寧にフォルム治療した。
 9時30分に岸田君と三瀬さんが出勤してきた。
 三人で話し込んでいると、Aが担当の岸田君のひざに乗ってきた。
 岸田君がAを抱きしめ、体を揺すると、Aは、体全体で喜んだ。
6.
 幼児たちに一人づつクレヨンのお絵かきを教えた。
C  3才
「はっぱをかきたい」
そうか、前回はCは「はっぱ」を描いていなかったのである。
赤、きいろ、オレンジ色、黄緑、
Cはフォルムをしっかりと重ねて描くことができる。
意識がしっかりしているからである。
 「すきないろをとってごらん。それで、はっぱの後ろに薄く色を描いてあげよう。」
 緑色を取った。
 美しい絵である。
 はっぱは、Cの自我の怯えを現し、背景は彼の生命霊の囲むを現している。
 描き終わったら、
 「これはって」
 「そう、とてもすてきに描けたから、壁にはってみんなにみてもらおう。」
 この絵をお部屋の壁に画鋲で貼った。
F  4才
クレヨンによる画面分割を教えた。
「どのいろかこうかな、とんとんとんとん」
ひとつひとつのクレヨンの上を触らせていくと、今描きたい色が意識に登ってくる。
画用紙の上で、「たてかな、よこかな、ななめかな、まるかな、くるりんこかな、ぐるぐるかな」と、彼女の手を取りフォルムを描くと、今彼女が描きたいフォルムが意識に上ってくる。
 「たて」
 「そう、たてにせんを描こう。」
 こうして、画面を分割する。
 つぎに、「どのいろぬろうかな、とんとんとんとん」でクレヨンを選び、
 「どこをぬろうかな、とんとんとんとん」で、塗りつぶす図形を選び、「ごしごしごしごし」とその図形の中を塗りつぶす。
 じつにうつくしくやさしい絵である。
 描き終わった後で、
 「とてもきれいな絵だねえ。この絵も貼ってみんなにみてもらおうよ。」
 と、私がいったら、「ううううう」と頭を振る。
 三瀬さんと、Fを説得してこの絵をCの絵のとなりに貼った。
 Cは、自分で創造をしたくてたまらないのであるが、「みんなの気持ちを深く聴いて、自分の役割を果たす」ことができていない……、まだ未熟なのである。
 Fは、自分の創造に自信がないのである。
M  5才
昼食近くになって幼稚園生が帰ってきた。
Mが、
「ぼくもかきたいからクレヨンをだして。」
といった。
ひとりでもくもくと描き続けた。
 静かで構成的な絵である。
 楽しさが響いてくる。

 5日13時、私は、こどもたちとお別れした。

 さよならあんころもち またきなこ  バイバイ

2001年12月16日

千葉義行

ページ先頭へ戻る