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レポート8 第9回目の訪問 8月7日8日

1.
 8月7日3時に子どもたちが海水浴から帰ってきた。
 3人のボランティアと職員3人とともに海水浴に出かけていたのである。
 子どもたちは口々に海水浴の様子を私に報告してくれた。
 
 子どもたちが疲れているだろうと思い、この日は一人一人の子供たちを抱っこして、「そらをみてたら」「3びきのくま」「すてきなぼうしやさん」「ねこのおいしゃさん」「あめふりくまのこ」をオィリュトミーした。
 ボランティアの数も多く、こどもたちはうまい具合に一人ずつ私のもとにやってきた。
F、B、C、E、L。
 Aは、自分から私のそばにきて、私の足を引っ張った。「そうお、こんどはAちゃんのばんだね」だっこして動き始めるとにこにこする。
 Dは私のもとにこなかった。
 
 わたしはお手玉を持ってきて、「えんやらもものき」を始めた。
 CとBがお手玉をもらうとうれしそうにする。
 私の手元のお手玉がなくなると、Cは自分の持っているお手玉を全部私の手に返してくれて、「もういっかい」といった。すると、Bも自分の持っているお手玉を全部私に返してくれた。
 やっと、自分がもらってうれしいことだけでなく、繰り返しの楽しさと、繰り返すために何をしたら良いかをCとBの2歳児が理解したのである。
 すると、Eが「ぼくも」といって入ってきた。Eがこの遊びに参加したのは始めてである。
 
 隣の部屋からFがとんできた。「Aがでんぐりがえししたよ!」
 隣の部屋をのぞくと、ボランティアとこどもたちがみんなで逆立ちをして遊んでいた。

 冒頭の写真である。

 
 
2.
 夕食後風呂に入りに行ったら、U、V、Z、の小1組がはいってきた。
 みんなで水泳ごっこをして遊んでいた。
 すると、お湯に倒れるのが面白くなって、自分で倒れるのは面白いのだが、他のメンバーを倒すのである。
 ZはUとVに最初は「やって」といっていたのだが、だんだん泣き出してしまった。
 すると、VとUはやめるタイミングが分からないのである。Zが泣いても続けようとするので私が止めに入った。
 
 お風呂から上がるとUが、
 「千葉先生、5Mくんとかにえをおしえてあげるといったじゃん」といいだした。
 「そうか、明日の午前中におしえてあげるよ。幼児さんのお部屋にきな。」
 
 幼児の部屋に戻ると、子どもたちが寝室でごろんごろんしていた。
 まず、Mをつかまえて、「せんぞうやまんぞう おふねはぎっちらこ」で股関節をゆっくり回し、「あめふりくまのこ」であたまをなでた。
 すると、「ちばせんせいとはいっしょにねない」とMに逃げられてしまった。
 しかし、LやCが「せんぞうやまんぞうやって」といってきた。
 最後までごろごろしているEの股関節をまわした後、思いついて、彼の大腿部と下腿部の内側の脾臓系の経絡をマッサージしたところEはいつもより早く寝てくれたのである。
 MもとEの兄弟はなかなか眠れないのであるが、二人とも広義の自閉症の因子を持っているためであると思われる。
昨年6月頃のMは高いところが大好きでなかなかお友達と遊ぶことができないということがあり、私は心配していたのだが、Mとの8ヶ月の付き合いで、いちじるしい成長を見せていたのである。
LDや自閉症と睡眠障害との関係は専門家の間で近頃だいぶ意識されるようになってきた。
脾臓系は、内臓全般を調整する役割を持っているが、LD・自閉症で視床に細かな傷がつくことによって、小脳と脾臓系の情報の交換がうまくいかなくなることが睡眠障害のひとつの原因であるように思われる。

脾臓系の経絡をマッサージで刺激することによって、脾臓と小脳をつなぐ副交感神経系が活性化され、切断された視床の回路を新たに形成するのであろう。

 
 
3.
 8日は、折鶴らんの絵を水彩で描いた。
 もちろん、現実の折鶴らんを見ながら描いている。
@赤と青と黄色と白の絵の具をパレットに出して、
A「折鶴らんさんの後ろに薄く色を塗ってあげよう。どんないろにする。
 おそらのいろ、ゆうやけのいろ、くさのいろ、つちのいろ、おみかんのいろ、なんでもいいよ」
 大筆で、画用紙の全面に、お外からお外まで描く、
B「赤いっぱい、黄色もいっぱい、青少し、」を混ぜて茶色になったら白を少し入れる。
 「鉢を描くよ、左から右にまっすぐ鉢の上の枠を描いて、
  つぎに鉢の枠の真ん中からまっすぐにお外まで線を描いて、となりとなりと描くと立派な鉢が描けたでしょう」
C黄色に青をいっぱい入れた濃い緑をつくり、その緑に白をたっぷり入れた色を作る。
「どのはっぱかこうかな」子どもに描きたい葉っぱを選ばせながらその葉っぱを見えるように描いていく。

さきに中央の白っぽい色の中央線を描き、緑の濃い色で両脇を描く。
もちろん、描き方は必ず根元から葉先に向けて筆を走らせる。

鉢の手前に延びる線が大変力強い。
2才という年齢で半円のフォルムを描けるのは感覚する力が伸びてきたからである。
この絵を描く直前に、「描けない!」といって泣いた。
手をとって描くと素直に私に身を任せてきた。すると、私が力をかけなくともBの意志どおりに筆が動いて描けたのがこの絵である。
2歳という年齢は垂直に立ち上がることを一番欲している年齢である。
すばらしい垂直の線である。

2才
「ぼくがかく」と叫ぶかなと思っていたら、素直に私に身を任せてきた。
縦に上に伸びる葉っぱがすばらしい。
鉢の下に延びる線も味がある。
「わたしがかく!」と叫んだのはDだった。
それでも、描き方を教えるとすんなりと筆が動いた。
3才半であるが、垂直に伸びる自我を強く感じている状態である。
「ぼくがかく!」とさけんだ。
3才半である。
白い線に緑の線を添わすことができていないのは、LDからくる意識障害のためである。
左に曲がる半円のフォルムが美しい。
4才児である。
赤い鉢が力強い。
左右の半円のフォルムが美しく、縦に伸びる葉っぱが伸びやかである。
やはり、幼児たちの中で一番心が発達している。
年中
私が直接指導していなかったので、ちょっとかわいそうなことをした。
鉢は立派に描けている。
葉っぱは指導の仕方でもっと描けるはずである。
垂直に伸びる葉っぱと鉢に力を感じる
年中
お空がすてきである。
葉っぱのフォルムもすばらしい。鉢もすてきである。
色がもっと濃く描かれていていいと思う。自分に対する自信のなさが色の薄さと成って表れている。
年長
なんという力強さであろうか。
空も晴れやかで美しい。
一人でも大丈夫やって行けるよ。
年長
背景の色の不安定さと、白い葉っぱの中央線に濃い緑が不正確に添っているところに、知恵遅れと意識障害が現れている。
しかし、鉢の力強さと、葉っぱの荒削りなフォルムは、本来のPの実力の高さを現している。
年長
「ぼくがかく!」とさけんだ。
まあ、しかし、Sは、私をじっと見てまねしているのである。
絵としては鉢と葉っぱのなまめかしさがSの存在を良く表現している。
年長
案の定「じぶんでかきたいの」といった。
右回りに右へ進む半円のフォルムが、左へ進行してしまう。ここに、Rのしつような自我の歪みが現れている。
鉢と垂直の葉っぱは力強い。
1年
自分で描きたいといっただけあってすばらしい絵である。
鉢の縦の線はすばらしく力強い。
葉っぱのフォルムが7パターン描けているのは、Uの意識の統合性が相当回復し、知恵遅れが治癒してきたことを現している。
運動することをもっとさせれば、3年生を他の子どもたちの学力に遅れずに乗り切ることが可能であるかもしれない。
3H
 
素直でよい絵である。
4Hだけは私が始めて指導した。
青空が澄んでいて良い。
鉢も力強く、葉っぱも全方向を描けていて伸びやかである。
 
4.

 前回の訪問のときも感じたことであるが、これまでの、職員の、わらべうた、絵本、マッサージの取り組みによって、幼児たちの言語の発達が大きく促進されているのである。

@子どもたちに自傷行為がなくなった。
A子どもたちが職員に身を預けるようになった。(おんぶやだっこしたときに脱力するようになり抱きやすくなった)
B「いやだあ」と叫んでも、すぐに気持ちを切り替えられるようになった。
C子どもたちの手足が暖かくなった。

そこで、子どもたちに、あなた(二人称)とみんな(三人称)をもっと発達させるために、ごっこあそび(箱庭遊び)の環境を整えたい。

@     木の積み木
A
手で動かす汽車のセット
B
     ある程度具体的な形をした動物や人間などのミニ積み木
が欲しいと思うようになったのである。

 
 

2001年810

千葉義行

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