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聴く

 コダーイ芸術研究所のわらべうたの講習会に初めて行ったときに、小林純子さんから、「小さい声で歌って」と、注意されました。
 そのとき初めて、コダーイ芸術研究所のわらべうたが、「聴く」ことにこだわり、「聴く」ことを大切にしているのだ、ということに気づきました。

 「小さい声で歌うと」、他者の声がよく聴こえるようになり、すると、自分の気持ちがよく聴こえるようになるのです。

 「わらべうた」では、うたの素材をわらべうたに求めます。
 わらべうたの音階は、「レ、ミ、ソ、ラ、シ」の5音階でできています。
 「レ、ミ、ソ、ラ、シ」の5音階であるペンタトンは、人間にとって自分の内面から響く音階なのです。
 「ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ」の長音階が響きますと、外界から自分へ響く人類の言葉という意味が起こってきます。
 また、短音階が響きますと、外界との経験によって起きた自分の感情という意味が起こってきます。

 長音階や短音階を5才までの子どもに歌わせてしまいますと、外界・世間の思考が子ども達の意識を支配してしまい、本来の子どもたち自身の気持ちが響かなくなってしまうのです。

 ですから、年少、年中までは、子どもに長音階、短音階、半音階の歌を歌わせないように配慮したいものです。

 大正、昭和につくられた、童謡や唱歌の多くのものは、「レ、ミ、ソ、ラ、シ」のペンタトンでできています。
 「ゆりかごのうた」「ぞうさん」「あかいとりことり」「かわいいかくれんぼ」「しゃぼんだま」「とんぼのめがね」「めだかのがっこう」「サッちゃん」「ゆうやけこやけ」「ふたあつ」「たなばたさま」「ほたるのひかり」「雨ふり」など、わらべうたとして使える素材が、童謡や唱歌の中にたくさんあるのです。

 さて、0才から6才までの子ども達の心を育てて行くには、まず、自分の心を聴くことを土台に据えなければならないのです。
 自分の心を聴くことができれば、始めから心が発達していた子どもは、他の子に自分の気持ちを誤解されてもあまり傷つかなくなります。
 心の発達が送れていた子どもも、自分の気持ちに素直になれるようになるからです。
 0才から6才までの時点で子ども達に思考が起こりますと、自分の心を思考で決め付けてしまうようになります。
 そのために、誤解を起こしたり、他者のことで傷ついたりしてしまうようになるのです。