---くにたちを愛した山口瞳展レポート---

<第一回>

くにたち郷土文化館はその名称から受けるイメージとは
異なり、モダンな建物である。
閑静な住宅街に建てられたこともあり、地上二階建てで
周囲を威圧することなく街並みに溶けこんでいる。
文化館の背後には武蔵野の林が控えていて、
絶妙な借景となっている。



入り口から細長い通路をとおり、地下へ降りる。
一階の通路と直角に通路があり、その一番奥にある展示室が
「山口瞳展」の会場である。
突きあたりの壁に大きく引き伸ばされた
「自画像」が掲げられ、その下に山口瞳年譜がある。
展示室へ向かう通路には、山口瞳氏の書や色紙が展示され、
書を通じてジワリジワリと山口瞳の世界へ入るように工夫されている。
次第に胸が高鳴り期待感が膨らんでくる。



自画像、年譜に目を通していよいよ展示室の入り口である。
一歩足を踏み入れるとそこは、山口瞳ワールドである。



山口瞳氏は多芸多才の人である。
書、絵画、野球、競馬、将棋、いずれも
素人の域をこえた才能を示した。
そのため、展示内容も多種にわたっている。
普通、作家の展示会では習作の原稿を含む生原稿や、
愛用の万年筆や日用品の数々、そして刊行された
著作の展示が中心であるが、
それと同じ位の量で
「余技」の作品が並んでおり、
変化に富み楽しいものとなっている。
この展示をレイアウトされた方は
苦労されただろうなと感心した。
一通り見終わると山口瞳の全体像が
具体的にイメージされるようになっている。
               




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