「代々木公園に連れてってくれる強そうな悪魔を探してたの。
まぁ、あまり強そうじゃないけどあなたでいいわ」
そう言って、彼女は笑った。
「アタシは、妖精ピクシー。今後ともヨロシク…ね」
つられるように、僕も微笑んだ。
「僕は 。今後とも…よろしく」
「ふーん、見た目もそうだけどまるで人間みたいな名前なのね」
「…やっぱり、僕は悪魔なの?」
「アナタから感じられる気は悪魔そのものだもの。確かに見た目や雰囲気は人間に近いけどね」
「……そっか。
…ピクシー、君は…僕がさっきまで人間だったって言ったら信じてくれる?」
「信じるわ。すっごく珍しいケースだけど、ありえない話じゃないし、それならアナタが妙に人間臭いこととか全部納得いくもの」
意地悪そうにクスクスと笑うピクシー。
「よーし、お姉さんが産まれたての新米悪魔クンにいろいろ教えてあげる!
…まずは、名前ね」
「名前…?」
「そう! 人間は子供が産まれたらまずは名前をつけるでしょ?
悪魔だってそうよ」
「でも、僕には っていう親からもらった…」
「それはアナタの昔の名前でしょ? 今のアナタは全く違う存在なのよ。
人間が悪魔になるってことは、生まれ変わったも同然のことだもの」
…で、目の前の妖精のお姉さんは僕の名付け親に納まろうとしているってことか。
「というわけで、悪魔にふさわしいカッコいい名前を考えなさい。
思い浮かばないならアタシがつけてあげてもいいわ。そうね…モモなんてどうかしら?」
勘弁してください。
「ま、どうしても人間の名前に未練があるなら、それでも構わないけどね。
フルネームは長いしやめたほうがいいわ。
か、どちらかに片方にしておきなさい」
「…」
新しい、僕の名前。
もし生まれ変わったら、何て名前をつけてもらいたいか。
何て呼んでもらいたいか。
「……… 。それが、僕の…新しい名前」
「へぇ、中々いいんじゃない?
…じゃあ、改めて自己紹介しましょ。
アタシは、妖精ピクシー。今後とも、ヨロシク…ね」
「僕は 。今後とも…よろしく」
ピクシーの小さな手と、僕の手が静かに重なり合った…。