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一面の敵兵。一面の敵兵。一面の敵兵。
完全武装の敵に囲まれながら、青年は老人を肩に抱え上げ、走り抜ける。

「安心しろ、じいさん。『元気があれば何でもできる』とか『気合だぁ』とか、よく日本の有名な人も言っている」

なんというか――その、全て精神力でどうにかできると言わんばかりの論調に、老人は不安そうに呟いた。

「あまり……知性的とは言いがたい気がするのじゃが、どんな人物なんじゃ?」

青年は力強く――妙に明るく笑み、応じる。

「プロフェッショナル レスラーだ」
「物凄く馬鹿っぽいではないかーー!!」

じいさん職業差別は良くない――と笑う青年の銃は正確に敵兵を射抜き、己は老人をも含めて、射線から身を躱す。

「……逃げ切れそうじゃな。周囲が退き始めている」

老人の呟きは正しい。
遺跡発掘を終えた疲れを見せもせずに、ひとり、またひとりと正確に敵を屠る青年の腕の凄まじさに、敵組織――レッリクドーン――の者たちは恐れ慄いている。

老人とて、正直なところ、彼らの恐れが理解できる。
先程までの遺跡内での彼の姿を知っているから、いくらか耐性ができているだけだった。

明るく、騒がしい、まだ年若い青年が、敵の出現と共に、身に纏う温度さえも変える様を目の当たりにした時には、彼の大仰な渾名に対して、心底納得できた。

「それはいいんだけど、問題は天候だな」

ぽつりと呟いた青年の瞳は、驚くほど静か。
陽気さは不意に消える。

訓練から資格取得に至り、バディとして経験を積んでいる段階で、彼は異彩を放っていたという。探索技術も――戦闘技術も。

ハンターとしては、初仕事だというのに、難易度の高い遺跡を攻略し、敵組織の待ち伏せも回避しつつある。

そんな彼が、本気の顔で、周囲を見渡し、砂嵐が思ったよりも酷い上に、オアシスらしきものも見当たらないと語った。

協会の方に、救援の連絡はしたが、死ぬまでに見つけてもらえるかは運次第だという。

「じいさん、息子がまだ俺くらいなんだろ? まだまだ金が掛かるから、死ぬなよ。――諦めるなよ」


意識を取り戻した青年は、飛び起きようとする身体を、意思の力で止め、目を瞑ったまま、周囲の情報を収集する。

時折聞こえる電子音に、続く振動音。
身体には手当てされているらしき感覚。
途切れに聞こえる話し声の内容から、保護されたらしいと、ひとまず安堵する。

どうやら看護師と医師との間らしき会話を聞きながら、それでもまだ信用せず、薄らと目を開いた。

青年は、視界に映った白い塊にしばらく硬直し、それからじっと眺め、ゆっくりと首を傾げた。

「……先生バスケがしたいです?」
「余裕があるようだな。……何故日本人は、私にやたらとバスケットボールについて訴えるのだね?」

それは日本で大ヒットした某バスケ漫画のコーチによく似ているからなのだが、彼の知るところではなかった。
確かに見掛けたことがある、組織所属の医師であることを認識し、青年は身を起こして周囲を見回す。

「ははは、気にしないように。……そうだ、ガイドのじいさんは?」
「君の傍らで倒れていた。安心したまえ。命に別状はなく、今は眠っているだけだ」

敵組織は退け、秘宝は守り、協力者は護りきった。
素晴らしい成果だったと称える医師は、冷えた目で結んだ。

「流石は朱色の超新星」

しんと空気が冷える。
ほんの少し前までは、だらしない、情けない、それでもハンターか――と青年を責めていた看護婦は、その呼び名にそっと目を逸らした。
すっかり忘れていたのだ。ころころと表情を変える、まだまだ年若い青年の尊称かつ蔑称を。その実力を。

「……やりすぎだったのではないかね」

総帥自ら乗り出した上での、あれほどの損害。ましてや為した者は、新米。
簒奪者たちは、今まで以上に、彼らの組織――ロゼッタ協会を敵視するであろう。

「申し訳ないが、生き残る為の方法を、他に知らないのでね」

青年は自嘲気味に応じる。暗い声に、周囲の温度が更に下がった。

凍えきった世界を救うかのように、FAXが音を立てる。看護婦は、逃げ出すように、機械へと向かった。
書類を受け取った医師は、ざっと目を通した後に、顔を上げ、若きハンターに問うた。

「君は、確か本当に日本人だったな」
「はい。次は日本なのですか?」

質問の流れに首を傾げた青年に、医師は頷いて釘を刺した。

「知っているだろうが、日本は平和な国だ。君が潜入するのは学園。あくまでも――本領を発揮しすぎないことを願うよ」
「学園って……大学にわざわざ潜入するのですか?」

忠告には苦笑して頷いた青年は、指令に対して首を捻った。
いくらでも外部から紛れ込めるだろうに――と不思議そうな青年に、医師はあごをたぷたぷさせながら、首と言うよりは顔全体を横に振った。

「潜入先は全寮制の高校だ。この書類にデータを記入しておいてくれ」
「はい?」

―― 1st.Discovery 謎の転校生 ――

「みんな静かに」

可憐な教師の言葉は必要なかっただろう。
クラス中が、転校生の姿に、一瞬静まり返る。

でけェとか格好良いとかの囁きに、転校生は笑いそうになる顔を意識して引き締め、どうにか真面目な表情を保った。

「葉佩 九龍と申します。エジプトから戻ったばかりで、日本に慣れていないところもあるかと思いますが、よろしくお願いします」

帰国子女という便利な鎧をまとい、葉佩は頭を下げる。
エジプトに限らず世界を飛び回っている為、日本の常識は知識の範疇を出ないのだが、少々の違和感は『帰国子女なら仕方ない』という思いがカバーしてくれるだろう。



「葉佩クン、背高いよねェ。何センチくらい?」
「確か186センチ」

学内を案内してあげると、昼休みに明るく申し出てくれた同級生――八千穂 明日香と話しながら、葉佩は周囲を観察する。
ちらちらと視線を感じる。
それは見知らぬ顔への好奇心というには、少々強かった。


「ここが図書室。奥の部屋が書庫室になってて、貴重な本が収められてるんだ。確か鍵は図書委員の子がその辺りに……」

まず最初に図書室に連れられた葉佩は、鍵とやらを探しに行ってしまった八千穂の姿が消えたのを確認してから、周囲を確認し、呆れた。

「……誰の趣味だ。この品揃えは」

普通、高校にあるものではない。
超古代文明に関するトンデモ本から、由緒正しい歴史的なものまで。やたらと豊富に揃っている。

「基本的に私の趣味ですね。好きに導入本を決めるために、図書委員になったんですから」

ある意味で潔い言葉に、葉佩は振り返った。本を抱えた眼鏡の少女が、いつのまにか背後に居た。
葉佩は微かに目を細める。一応、気付いてはいた。だが、注意しなければ分からないほどに、彼女の気配は薄かった。

「初めて見る方ですね。もしかしてC組の転校生の方ですか?」
「ええ。葉佩九龍といいます」

大人しそうな少女に合わせ、葉佩は穏やかに、頭を下げる。
礼儀正しさが功を奏したのか、少女はにっこりと笑み、同じく頭を下げる。

「あ、私の名前は七瀬 月魅といいます。ここにある本のことで、分からないことがあったら聞いてください。……八千穂さん、何かお探し物ですか?」

丁度戻ってきた八千穂をじとーっと睨み、七瀬は引きつった笑顔で首を傾げる。
同じく引きつった笑顔で本を探していただけだと応じる八千穂に、七瀬は深い溜息を吐いた。

「書庫の鍵ならそこにはありませんよ」

もしかしてバレてる? ――と、恐る恐る訊ねる八千穂に対し、彼女は当然だと少々怒った様子で頷き、あそこには皆の想像もつかない貴重な資料が収められているのだと続けた。

古人の偉業の信奉者だけが触れることができるのだと語る彼女の熱さに、葉佩のセンサーが反応する。
葉佩の興味深そうな素振りに気付いたのか、七瀬はやたら情熱的に問うた。

「葉佩さんは本当に《超古代文明》は存在したと思っていますか?」
「現実にオーパーツが発掘されるのだし、やはりあったんじゃないのかな」

目を輝かせ『古代のロマン』について語る彼女の姿を、可愛らしく思った。だから、微笑を浮かべて葉佩は頷いた。
実際は産物やら護衛装置やらと、関わりがあり、守ったことも破壊したこともあるのだが、そんなことを口にできるはずもない。ただ、曖昧に、否定はしない。

そうですよね――と。
存在していないとも証明できない筈だと意気込む彼女の姿に、葉佩は微かに苦笑した。

その情熱に、思い出してしまう。
記憶すら危うい、ある人物たちの笑顔を。

「書庫室に収蔵されている学園の歴史が記された文献を読んでいると、いたるところに謎めいた痕跡が残されています」

この学園にはきっと秘密があると語る彼女は、墓地が怪しいと小声で続けた。
面白そうだなあという、あくまで普通レベルの興味津々を顔に貼り付けて、葉佩は情報を確かに記憶する。


「《超古代文明》の遺産かァ。今度誰にもみつからないように、こっそり墓地にでも行ってみない?」

図書室を出た後も、興味は尽きぬらしく無邪気に語る八千穂に、葉佩はそうだねえと、あまり気のなさそうに応じる。勿論、夜に墓地へは向かうが、彼女を連れて行く訳にはいかないのだから。


気のない返事にも怒ることもなく、八千穂は丁寧に案内を続けてくれた。
途中、彼女のスカートを捲って壁まで吹っ飛ばされた校務員の老人の悲惨な姿を見た葉佩は、八千穂に逆らってはいけないという情報を、脳内に深くインプットしておいた。


「そう……また転校生が」

廊下で出会った同級生だという長い髪の少女が、沈んだ声で呟いた。

「この学園、転校生が多いんだ。新しく赴任してくる先生もね」
「全寮制だから、途中入学しやすいんじゃないかな」

八千穂の補足に、葉佩は空々しく応じた。
転入生や職員の変更は、そりゃ多いだろうなと思いながら。

失敗した前任者らも、転入生、職員といった形で潜入したのであろうし、この学園に注目する組織も、ロゼッタに限らぬだろう。

行方不明になる人が多いんだ――という八千穂の説明にも納得する。様々な組織の調査員なり執行者なりが、ことごとく失敗に終わっているということなのであろう。

この学園は呪われている――謎めいた言葉を残して、少女は去っていった。
不吉な噂もあるし行方不明者も多いし、本当になにかあるのかもしれないと、不安そうに呟いた八千穂は、勢いよく首を振った。

「やめやめッ!! 屋上で新鮮な空気でも吸って、暗い気分を吹き飛ばそッ。ね?」


敷地内の大体の施設の位置を説明してから、最後に八千穂は鬱蒼とした森を指した。

「あの陰気そうな森の奥に少しだけ見えるのが、さっき話してた墓地だよ」
「学内に墓……怪談の宝庫になりそうだなあ」

呆れたような葉佩の言葉を、八千穂は、もうなってるよ――と明るく笑い飛ばす。
葉佩は共に笑いながら、確信した。

墓守を置いてまでの立ち入り禁止。補強するかのように人を遠ざける噂。広大な敷地。

目指すものは其処にあると。


「ふァ〜あ、うるせェな」

給水塔に寄りかかっていた男子生徒が、気だるそうに呟いた。

『皆守クン』と呼ばれた彼は、こんなとこで何をしてるのという問いに、サボって屋上にて眠っていたところを、彼女の話し声で起こされたのだと、淡々と語った。

会話を傍観し、どうやらサボりの常習者らしいなと、認識した葉佩に、皆守は視線を向け、告げた。
ひとつだけ忠告をしておく――と。

「楽しい学園生活を送りたかったら、《生徒会》の連中には目をつけられないことだ。いいな?」
「転校早々、生徒会に目を付けられるほどに、積極的に違反するような真面目な人間じゃない」

一応は本音であった。
目立たないに越したことはない立場なのだから。

だが、そうもいかないだろうなと、葉佩には分かっていた。
他組織の者たちも含めた、前任者たちの華麗なる失敗活動により、学園側は、新しく入ってくる人間は、まず疑ってかかるのだろう。

登校してから消えぬ視線が良い証拠だった。

「忠告はしたからな」

ニヒルに去っていく同級生に、俺だってそうしたいんだけどなあ――と、葉佩は苦笑した。
泣き言をいっても仕方のないことだと分かっているが、《転校生》がここまでマークされていると切なくなってしまう。


「おい、転校生ッ」

放課後になっても、消える様子のない視線に、どう出ようかと考えていた葉佩に、声が掛けられる。

初日から、相手の前に姿を見せるのはアグレッシヴ過ぎるかなあという慎重論と、ちゃっちゃと虎穴に入ろうぜィという積極論の狭間で、かなり積極論に針が振れていた為に、一瞬硬直した。

「何びっくりしてんだ?」

聞き覚えのある声に振り返れば、そこには先程の男子生徒――皆守が立っていた。

「寮に帰るんだろ? 一緒に帰ろうぜ?」

やたらアンニュイに振舞っている割には、根は世話焼きなのか。
要は不慣れな転校生への案内を、かってでてくれているのだろう。

生徒は校内から速やかにでなければならないだの、《生徒会》が違反者を取り締まっているだの。
学内のルールを教え、まめに敷地内の説明までしてくれる彼に、葉佩は認識を改めた。

潜在的なオカンだ――と。


「今夜は出歩かずに、部屋に届いている荷物の整理でもしてろよ」

寮に着き、そう釘を刺した皆守に、ああ、また明日〜などと応じながら、葉佩はつくづく思った。
ありゃ、潜在的ですらない。芯からオカンだ――と。


まだ周囲が寝静まるには時間があるので、許されている範囲内にて出歩き、人や設備の把握も行っておく。

その後、皆守の言葉に従い、葉佩は部屋に届いていた荷物を整理した。
銃器やら爆薬をも含めて。


深夜――葉佩は物音ひとつ立てずに、部屋を抜け出した。

監視者の気配も視線も感じない。
既に墓地までの最適であろうルートも割り出してあり、何ら問題なく、辿り着いた。

但し、順調なのは、そこまでであった。

「葉佩クンッ!!」

本気で身体が凍った。信じがたい失態に、血の気さえ引く。
連動して感情が消えていく。

それでも――虚無の瞳、ガラスの眼と言われた戦闘時の眼を、これからよろしくと笑って学内を案内してくれた級友に見せたくなくて、敢えてスコープを下げた。

「へへへ〜、こんな時間に墓地で何してんの?」

スコープを通して、薄暗闇の中でも彼女の姿がはっきりと見えた。
抜け駆けはずるいと頬を膨らませて抗議する八千穂の表情には、邪気も害意もなく。

そして、存在感もなかった。

「でも、何でそんな格好してるの? そういう格好って何だっけ? え〜と、ト……ト、トリ……トロ?」

ベストに武装に止めに暗視スコープだ。
言い訳のしようがなかった。が、それでも肩を竦め、笑みとともに適当なことを口にする。

「ばれちゃしょうがない。そう。実は俺は築地で七代続いた家の後継者……トロ職人なんだ!!」
「そうそう、毎朝新鮮なネタを仕入れてお客さんに美味しい――ってちが〜うッ!!いいよ、教えてくれないなら、後で自分で調べるから」

ノリが良いなあと感心しながらも、葉佩は周囲を探った。
異常だった。ハンターとしての自分は、些細な気配にさえ警鐘を鳴らすのが常だというのに。今、目の前にいても尚、彼女の気配は無に等しかった。昼は確かに気配があったというのに。

では、今は感じぬ視線も、罠でも何でもなく――監視者の気配が希薄になっているだけなのかもしれない。しっかりと見られていると判断すべきだなと、葉佩は色々と諦めた。
理屈は全く分からないが、夜になると、人間の気配が掴みがたくなるらしいと、認識を新たにしておく。


また不審なことに、物音がした。
誘導されているとしか思えないなと呆れながら、葉佩は注意だけは忘れずに、音の元へと向かう。

「墓石の下に穴が……。一体何の穴だろ?」
「入ってみなきゃ分からないけど、流石に夜中に墓の中には入りたくないな」

白々しく応じながら、葉佩は素早く計算する。
ここで八千穂を気絶させて女子寮に届けた後に、また戻ってくるのと、後日改めるのと、危険性と労力とを併せて考える。

ただ、結論は必要なかった。

「まったく……困った連中だぜ」

八千穂は誇張でなく飛び上がった。
葉佩の方は、今度は微かな足音と気配に感付いていた為、焦ることなく振り向いた。

「八千穂はともかく転校生のお前まで、墓場で肝試しか? それに……何だそのイカれた格好は」
「ハハハ、コスプレだよ」

呆れきった様子の皆守に、こりゃどうしようもないなと、葉佩は証拠隠滅を諦めた。
複数に見られてしまったのでは、誤魔化しようがない。

「皆守クンだって墓地で何してんの? もう寝てるかと思ってたよ」

寝付けなかったから、気分転換に散歩していたのだと皆守は答えた。
七瀬の話から、墓に何か秘密があると思ったのだと、丁寧に説明してしまう八千穂と、何言ってるんだかと笑い飛ばそうとしてる皆守の会話中に、また音がなった。

葉佩はなんだか投げやりな気分になるのを自覚した。

素性を明かすなと、医師に言われた時に、何て思ったのかを考えれば、鬱病になりそうだった。
当たり前だと――常識以前の問題だと、あの時は鼻で笑ったのだった。

なのに、一日で――少なくとも三人にばれた。
監視者の存在も併せれば、さらに酷くなる。

「誰だ、無断で墓地に入り込む者は?」

何でこの学園の人間は、誰も突っ込まないのだろうかと、葉佩は心の中で首を捻った。
いくら墓守とはいえ、風体が怪しすぎるだろうに。

それに不気味なのは外見だけではなかった。……肌が乾きすぎている。加齢で納得できるレベルではない。砂漠の民の老人とて、ここまでは乾かない。

「こいつは転校生なんだ。勘弁してやってくれないか」

皆守の言葉に、墓守は口元を歪めた。また一つ墓石が増えるのではないかと。
意味ありげだなと、葉佩は心の要注意人物リストに、墓守を加えておいた。

「今回は見逃してやる、さっさと行け」
「言われなくとも出て行くさ。行くぞ」


皆守に押し出されるように、墓地を去っていた葉佩が、急に足を止める。
微かに感じた視線に、顔を向けるも、その先には闇しかなく。

「葉佩クン、どうかしたの?」
「ん? なんでもない」

まさかなと口の中で呟いて、彼は踵を返した。
視線の先にあったものは、校舎の屋上のみ。そこから肉眼で見えるはずもない。


だが――彼の勘が正解だった。

確かに葉佩の視線の直線状、屋上には人が居た。

「《転校生》か……」

人に見える筈のない距離で。
確かに彼――生徒会長 阿門 帝等は呟いた。

「果たしてどこまで行けるか。その腕前を見せてもらおう」