ポカラで怪魚に出会う。
 パールの中部にあるポカラは大きな湖で有名な街だ。フェワ湖、べグナス湖、ルパ湖という大きな湖が3つ点在する。中でもフェワ湖は一番有名で、湖の周りにはゲストハウスやホテルがたくさん集まっている。いわゆる観光スポットである。観光スポットと言っても騒々しいわけではなく、静かにゆっくりとした時間を過ごす事が出来る。何も無いんだけれどのんびりした贅沢な時間が過ごせる、ポカラはそんな所だ。カトマンズの喧騒で疲れきった私と家内の心を和ませてくれる貴重な場所だった。フェワ湖の前にはマチャプチャレやアンナプルナのヒマラヤの高峰が聳え立つ。ポカラの標高は800mそこそこなのだが、目の前に8000mの頂きを眺める事が出来る。至近距離でこれほどの高度差を目の当たりに出来るのは世界でも珍しいと思う。
このフェワ湖にサハラという怪魚が住んでいると聞いて、私達はカトマンズから釣り竿を持ってバカンスに出かけた。ある書物では、サハラという魚は成魚で全長2mにもなる大魚であると紹介されている。また、この魚がルアーに反応するとも書かれている。
 私達はフェワ湖のダムサイドのゲストハウスに宿をとり、このサハラの顔を拝もうと、毎日釣り竿を持って湖に出かけた。ある時は岸から、ある時はボートを借りて、ルアー、えさ、フライ、ありとあらゆる手段で攻めた。しかし、サハラは一度もその姿を現してくれなかった。ゲストハウスのスタッフ達にサハラの事を聞くと、みんなは凄いのがいると口をそろえて言う。だんだん、半信半疑になってきた。
 いろいろ試してみたが、全く釣れないし、サハラの魚影も見る事が出来ない。やっぱりそんな魚は伝説上のナントカであって本当はいないんだ。と、諦めきってしまった時である。釣りを止めて湖近くのデビルズ・フォールと言う川が滝になって地中に消えている名勝を見に行こうと道を歩いていた。その時、前方から何か大きな重いものを肩に担いで、うんうん言いながら歩いている初老の男がやってきた。担いでいるものは円筒状の長いもので、後ろは地面について引きずられている。男は肩の上でその円筒の切り口(直径25cmくらい)を両手でつかんで、背中を丸めて重荷に耐えながらただひたすら歩いていた。その担がれた荷物は濡れて鈍い光を発していた。何だろう? さらに近づいてくるとそれが魚体であることがわかった。!!!!。しばらく私達は呆然と立ちすくんでその男を見送った。サハラは本当に実在する魚だった! 
 その夜は、ゲストハウスでそのサハラのカリー(マツァ・コ・タルカリ)をご馳走になった。白身のとても淡白な魚で、味はサーモンに近い感じがした。あんなに大きな魚なのに大味ではなく、とても繊細なおいしい魚だった。
 しかし、本当にサハラがヒットしていたら、私達の持って行った竿はひとたまりもなかっただろう..。
 

マツァ・コ・タルカリ(ネパール風魚のカリー)
                 

        
材 料(3〜4人分)
サーモン(他の白身魚でもよい)・【400g】
玉ねぎ・【中1個(約200g)】
トマト・【中1個(約150g)】
にんにく・【1かけ】
しょうが・【3cm】
レモン汁・【大さじ3】
塩・【小さじ1.5】
小麦粉・【少々】
ギュー(バターを精製したもの。無ければバター)・【大さじ2】    
サラダオイル・炒め物用・【1/4カップ】 
生クリーム・【少々】

《スパイス》
 ターメリック・【小さじ1/2】
 チリパウダー・【小さじ1/2】
 コリアンダーパウダー・【小さじ1】
 クミンパウダー・【小さじ1/2】
 アジョアンシード・【小さじ1/4】
                   
作り方
@サーモンを幅3〜4cmぐらいの短冊状の切り身にする。

Aサーモンにレモン汁、塩1つまみ、チリパウダー1つまみ、ターメリック1つまみをふりかけ、20分くらい常温で置いておき、小麦粉をまぶしてサラダオイルで揚げておく。

Bフライパンにサラダオイル1/4カップを入れ、中火で加熱し、摩り下ろしたにんにくを入れ、香ばしい香りがたったらすりおろしたしょうがと、玉ねぎのみじん切りを入れる。

C玉ねぎがあめ色になるまでゆっくり混ぜながら、弱火で炒める。

Dトマトのみじん切りと、スパイス、塩をCに全て入れ、表面に油が浮いてくるまでかき混ぜながら弱火で炒める。

E水1カップ、Aのサーモン、ギューをDに入れ、強火で沸騰するまでフタをして加熱し、沸騰したらフタをとって中火で5分くらい煮込む。

F塩味を整え、器に盛って生クリームをかけて出来あがり。

Gもし、手に入れば、生のコリアンダーを飾りに載せる。


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