キッチン徒然草
このページでは、店主が日ごろ料理に関して思っていることや考えていることなどを脈絡も無くアップして行きます。
■Q&A方式でもアップしますので、料理に関する質問をメールでどしどしお送り下さい。
質問のメールはこちら |
目 次 | |
カリーのスパイスの種類は多ければ良いもんではないのだ | |
インドにカレーは存在しない? | |
辛いものを食べる国の人々は味オンチなのか? | |
キッチン徒然草 Q&A |
巷のカリー料理の謳い文句で “25種類のスパイスを使用しました!” などと書かれているのをよく見ることがあります。また、“三昼夜、コトコトと煮込みました。” なんてのもよく見られます。この [スパイスの種類を多く使う] ということと [長く煮込む] ということは、美味しいカリーを作るための常識となっている様です。私の周りの人達に聞いてみても、ほとんどの人がこれらの常識を信じ込んでいます。時々、GANESHのお客さまにも “何十種類くらいのスパイスを使ってるんですか?” とか、“何日くらい煮込むのですか?” と質問される方がいらっしゃいます。
しかし、これら二つの常識は、ことインド・ネパール料理に関しては間違いなのです。
スパイスの種類の選定はあくまでも素材の持ち味を生かすような選定がなされています。極端な話、ネパール料理で “アル・タマ” というジャガイモとタケノコのカリーがありますが、このカリーは三種類しかスパイスを使いません。このカリーに普通、カレー粉に含まれているような他のスパイスを入れたりすると、味が台無しになってしまいます。
また、素材によっては煮込んではいけないカリーもたくさんあります。チキンなんかは絶対煮込んじゃだめです。あと、スパイスによっても、長く火を通さないと風味が出ないものや、火を通しすぎると苦味が出るものなど、いろいろあります。一言にスパイスと言っても、素材によって使う種類が違ったり、入れるタイミングもスパイスによって違います。
スパイスって奥深いでしょ。
キッチン徒然草
カレー(カリー)という単一の料理はもともとインドやネパールには無いものです。スパイスを使用した煮込み物の料理を外国人が“カリー”と総称して、その呼び名が一般化しているに過ぎません。ですからカレー粉という物も本来はインド食文化圏では存在しない物なのです。ただ、インドでも現在では対外的に便宜上、“カリー”と言う言葉や“カリーパウダー”を使っています。
インドにカレーは存在しない?
このことは、例えば日本料理に置きかえると、醤油や味噌を使った煮込み物料理を仮に外国人が “スキヤキ” と総称するようなものです。この総称を使うと、味噌汁、肉じゃが、魚の煮物、切干大根、おじや、天丼、全てが “スキヤキ” と言う一種類の料理になってしまいます。これと同じようなムチャを我々はインド料理文化に対して“カレー(カリー)”という言葉で行っています。
カリーと称される料理のなかには、マカーニー、ロガンジョーシュ、サイコルマ、サブジ、マサラ、パラク、ムグライ..等、いろいろな料理が含まれていて、それぞれの料理は全て違った調理方法、違った素材、スパイスの使い方がなされています。
どうして、これらの料理を外国人が “カリー” と呼ぶようになったのでしょう? これはあくまでも私の推測でしかありませんが、インドのある地方やネパールでは “おかず” のことを “タル・カリ” と言います。この “タル・カリ” と言う言葉を外国人達が“カリー”と呼ぶようになったのではないかと考えています。
ですから、一言で “カリー” と言っても、それぞれいろいろな種類の料理があり、もちろん作り方も味も違うものなのです。
キッチン徒然草
よく “日本人の味覚は繊細で、優れた食文化を持っている。” と言うことを耳にします。私も、実際、日本の食文化のすばらしさについては誇りに思っています。しかし、他の国の人々の味覚より日本人の味覚の方が優れている、という話を聞くにあたっては、チョット待って! と言いたくなってしまいます。
辛いものを食べる国の人々は味オンチなのか?
日本以外の比較的辛いものを食するアジアの国々の食文化に対して、“あんなに辛いものばかり食べていると、舌が麻痺して物の味がわからなくなる。” と、日本人が言うのを時々耳にします。確かに辛いものに慣れていない日本人が辛い料理を食べると、舌が馬鹿になってしまうかもしれません。しかし、辛さは鍛えれば慣れるのです。そして、辛さに強くなったからといって、味覚が鈍感になるのではないと思います。
なぜ、そう思うかと言うと、私はインド、ネパール、タイなどの辛いものを食する国々で料理の研究を続けていますが、いつもそれらの国の人々の味覚の繊細さには敬服させられるからです。
例えば、タイでは唐辛子にもいろいろ名前があります。何種類かの唐辛子をそれぞれ違う名前で呼び別けています。さらに、料理によってそれらの唐辛子を使い分けています。と、言うことは辛さに弱い日本人にとって辛いだけの唐辛子が、彼らにとってはそれぞれ異なった味覚が存在するわけです。
日本に出世魚というものがあります。同じ魚が成長するにしたがって名前が変わっていくというものです。これは同じ魚でも生育状態で味が変化するので、こういうことが起こるのですが、つまりは、我々が同じ魚でも生育状態で味が変化する事を感じているわけです。こう言った事が我々にはわかり辛い唐辛子にもあるわけです。
辛さに慣れてくると、その向こうに存在する微妙な味の世界が見えてきます。私の店でも何種類かの唐辛子とそれぞれ料理に入れるタイミングを使い分けています。また、ただ辛くすれば良いというものでもなく、料理によっては辛くしてはいけないものもあります。
理解できないからこれはだめだ、と結論を出す前に、こういった、我々の感性の向こう側に存在する深い文化を知る努力をしてみませんか?
キッチン徒然草
キッチン徒然草 Q&A |
QUESTION ANSWER 料理で使う酒
日本料理では日本酒やみりん、
欧米の料理ではワインやブランデーなどを
調理に使いますが、
南アジアの国々では何を使ったらいいのか?何を使っても良いと思いますが、インドやネパールでは、基本的にはアルコール類は調理には使いません。
タイ料理に関しては、これまでの私の経験ではメコンウイスキーなどの蒸留酒系のアルコールを使うようです。
沖縄に唐辛子(こーれーぐーすー)を泡盛に漬けた調味料がありますが、これを使っても面白いのではないかと思います。チキンチリのレシピ
ネパール料理、チキンチリのレシピは?1.チキンを一口大に切って、ターメリック、コリアンダ、クミン、チリパウダ、 しょうゆ、酒と混ぜて常温で20分下味をつける。
2.これに小麦粉をつけて油で揚げる。
3.揚げたチキンと、たまねぎ、ピーマン、ナス、トマトの乱切りと、つぶしたにんにくを一緒に皿に入れておく。
4.フライパンに油を敷いて強火で加熱し、フェヌグリークシード(メティ)を少し 入れ、続いて3.の材料を全部入れる。
5.炒めながら、ターメリック、コリアンダ、クミンシード、チリパウダ、ガラムマ サラ、砂糖、しょうゆ、酒を入れる。
6.少量の鶏がらスープを入れて少し煮詰め塩加減を調整する。
7.皿に盛り付けて生のコリアンダを飾りレモンを絞って出来上がり。
分量はこれが正解と言うものは無いので、お好みでいろいろお試しくださ い。本当のネパールのものはナスが入らず、ピーマンの代わりに生の唐辛子のぶつ切 りが入ります。ネパールではビールのおつまみに必ず出てくる料理です。タルカリ
(ネパールの野菜のカリー)
タルカリにはヨーグルトを使っている?
多くの調理方法があるので使っても間違いではありませんが、
現状のGANESHのレシピではヨーグルトを使わずに
ココナッツミルクを使用しています。
例外もありますが、インド・ネパール料理では、
基本的にはトマトとヨーグルトは酸味の関係で併用しないのが普通です。
酸味を押さえる調理テクニックというのもありますが..。とろみは小麦粉?
煮込まないカリーも、トロミはやっぱり小麦粉とか
たまねぎなんですか?南アジアのカリーに関しては、とろみをつける目的での小麦粉は
一切使いません。
ベースにたまねぎを使用するのは一般的ですが
物によっては使わないものも有ります。
とろみが全然無いようなカリーもあり、
あえてとろみを付けるという概念が無いので、
とろみ事態はあまり気にする必要は無いと思います。スーパーに売っている程度の
スパイス
スーパーに売っている程度のスパイスで
作る事のできるカリー
(ガネッシュで出 るような)ってありますか?今のスーパーは品揃えが比較的良いので
スーパーのストックで大体の料理は作れます。
ただ、私の住んでいる新潟と私の実家のある大阪とでは
スーパーの品揃えもかなり違いがあるので一概には言いきれませんが、
新潟のスーパーに置いてあるものでもかなりの料理は作れます。
しかし、ここでそれらのレシピを公開するのも大変なので、
レシピについては、レシピのページを参考にするか、
今度、GANESHに来られたときにお尋ね下さい。インドの人達はなぜ手で食べるのか
インドの人たちは何故このたくさんの便利な道具が使われている時代にも関わらず、
手を使って食事をするのですか?
どういった歴史的背景と宗教的背景があるのです か。歴史的や宗教的背景については勉強不足で申し訳ありませんが
私には良くわかりません。
ただ、私もインド・ネパール系の料理を食べるときは
状況が許せば手で食べています。
なぜならばその方がおいしく感じるからです。
スプーンで食べた場合、口に入れた瞬間にまず舌に当たるのは
スプーンの底であり、その時に感覚として金属の触感が
食べたときの食感に加味されます。
しかし手で食べた場合、この金属感が無くなり
本当においしく感じられます。
以前、私のネパールの友人達に同じ質問をしたところ、
やっぱりみんな口を揃えて
“手で食べた方がおいしい”という答えが帰ってきました。
その他ご質問をどしどしお寄せ下さい。質問のメールはこちら
キッチン徒然草
BACK TO FROM THE KITCHEN |