旧日本銀行広島支店
(広島県広島市中区)
うんちく
日銀広島支店は1936(昭和11)年、長野宇平治による設計で建てられました。1992年、日銀
広島支店は基町へ移転したため、現在は空き家状態になっています。
この建物が建てられた1936年という年は、歴史の教科書にも出てくる二・二六事件が
起こった年でもあり、時代が戦争へと傾いていく暗い時勢を反映してか、同じ設計者・同じ
銀行の建物である日銀岡山支店と比較しても、質素な感じを受けます。
しかし、余分な車寄せなど持たない質素な作りが幸いしたのかどうかは謎ですが、原爆投下時、
爆心地からわずか380mという至近距離でありながら、建物の外観はほとんど建築当時の姿を
保っています。(勿論、天下の日銀ですから、建物そのものがかなり頑丈に作られていた為
でもありますが・・・ それにしても、広島市内の近代建築を語るとき、どうしても原爆は
避けて通ることが出来ないです。)
デザイン的には、古代ギリシャ・ローマ建築に範を求める古典様式を用いており、
正面玄関に4本のイオニア式柱頭(渦巻き状になっているのが特徴)を配しています。
建物内部は、一階事務室部分は吹き抜けとなっており、その上にトップライトが配され
ていました。(現在も天窓はありますが、蛍光灯による照明になっています。)
吹き抜け部分の角柱はコリント式の柱頭が用いられています。
元々は、この建物内部には華麗な装飾が施してあったらしいのですが、原爆被災時に
全て焼失してしまい、現在は非常に質素になっています。
それから、銀行といえば金庫は定番中の定番ですが、ここの場合、地下式になっていて、
分厚い壁と核シェルターなみの分厚い扉で守られており、水害などあっても大丈夫な
ように配慮されていました。
冒頭に記述したように、現在は空き家状態になっているこの建物ですが、一時は
取り壊しの話もあったものの、保存運動の甲斐あって、日銀がこの建物を文化財と
して保存するという条件付きで広島市へ譲渡し、現在はこの建物をどのように再利用
するか検討中の段階となっています。
、
それにしても、設計者の長野宇平治という人は、本当に数多くの銀行建築を手がけている様で、
手持ちの資料だけを見ても、
帝国銀行 広島支店
・日本銀行 岡山支店・三井銀行 神戸支店・山口銀行 本店・南都銀行(奈良)・・・
この中には私の行動範囲に入っているところもあるので、機会があれば紹介したいです。
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