Bow Rehairing Tech.2-3
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毛替 U-3
By Henry A. Strobel   Translated By H.Sumiya

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[ VIOLIN MAKER'S NOTEBOOK ]

§1.Bow Rehairing and Minor Repairs

第1章 [ 弓の毛替えと小さな修理 ]前ページよりのつづき   ヘンリー・A・ストローベル

訳文中の()は、読みやすく分かりやすい文にするため、目的語が省略されていたり理解しにくい部分に、 訳者が入れた注釈。[ ]は、著者の入れた注釈。 さらに、弓やその修復に関して、はじめて接したり読んだりしたとき、もっと分かりにくいものについては、 とくに(*)として、訳者が注釈を入れた。

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弓・修復についてのいくつかの手順

弓の毛替えに加えて、決まり切った手順、あるいは小さな修復があり、それをどのようにするか、これから記述する。

ここには、重大な修復が考えられるものは含んでいない。そうした重要かつ複雑な修復が必要なものは、
熟練した弓製作者や修復師に頼むべきものだ。

そのような重要な修復には、ヘッド、台じり、あるいは中間で接ぎ木するような、
新しい木を使ってフィットさせてフロッグの修理するといった、修復のことである。

このような修復が、弓の価値に対し実質的な影響を及ぼすものであり、気軽に引き受けるべきものではない。

ここで考えられるものよりも、 より高い水準の工具類、および修理工としての技能をまた必要とする。

[対角面のものであったり、V字形であったり、円錐形や円筒形のジョイントを使うようになるかも知れない。]

この章の終りに、これらに関する情報、とくにアンドリュー・ヒルとウィリアム・サルコフなど、
それらの高度なテクニックを含むさらに進んだ読み物のいくつかを参照にしてある。

弓作業に使われる接着剤 これは、絶対になくてはならないというものではないが、
より新しい「ハイテク」接着剤を使ったひとつの提案である。

ここで説明する接着剤は、わたしが使って、信頼できる結果を得たもので、結果の良かったものである。

そうでなければ、疑いなく他のものをおすすめする。

警告:これら製品についている製造業者の安全のための注意書きを読みなさい。

『専門店の安全』とタイトルをつけられた章も読みなさい。

シアノアクリレート系接着剤(原文にはThin=薄い、がついているが意味不明?)。

これは絶対的なものでなく、どのブランドでもかまわない。

Loctite 411:は、:工業用、透明、強力で高粘度のシアノアクリレート系、接着力や、
ペルナンブーコおよび他の弓材料の割れ目の補てんなどに卓越している。 (*Loctiteは、メーカー名であり商品名でもある)

Loctite 410:工業用、不透明な黒、強力で高粘度のシアノアクリレート系、接着力や、クラックの補てん、
コクタンの欠けたものの修復など、みごとなもの。
 
フロッグ、指板など、簡単で目に見て分からないように、欠けたものを元どおりにすることができる。

小さな[3グラム入りの]金属製チューブは、便利。蓋をしたチューブは、貯蔵寿命をのばすために冷凍保存する。

わたしには、下記のものもとても役立っている。

Loctite Accelerator(Loctite専用促進剤?)。1.2オンス入り(35ml)ポンプ・ディスペンサー(スポイド・ポンプ汲み上げ式?)。

これは、正しい酸性になる状態(乾燥を遅くする方にセット)、あるいは欠けたところの補てんなど、
他の方法では生じる収縮を 避けるために、(硬化速度を)遅い設定にする。そうでないときは、これを使って設定を加速する。

注意:木材はたいがい弱酸、しかし、はじめにエチルアルコールで表面をきれいに拭くことは、
わずかにアルカリ性にするだろうし、 シアノアクリレート系接着剤を「急速乾」にセットすることになる。

Loctite X-Ms:S溶媒 2オンス入り(59ml)ビンの上にブラシ付き。

(溶媒の)ニトロメタンがシアノアクリレート系の接着部分と、取りたくない部分とを分ける。

[ これは、運わるくシアノアクリレート系接着剤がくっついた楽器などで、その割れ目を掃除するとき、アセトンでやるよりもニスに対する害が少ない。]
製造業者:Loctite Corporation、Newington、コネチカット州。

他の接着剤

ほかのいくつかの接着剤は、弓の作業においてそれぞれの修理に、様々な局面で使われるものだが、以下で説明する。

例としては:温めて(使う)獣の皮(からつくられた)ニカワ。

フランクリン(会社名or商品名?)液状ニカワ

フランクリン(同上)強力ボンド 脂肪性接着剤。

製造業者 フランクリン化学工業、コロンブス、オハイオ。Franklin Chemical Industries, Columbus. Ohio.

スティックの接着に適している特殊なものとして2液型のエポキシ系のものがあるが、
しかし、わたしは、それらに関して助言するための十分な経験を持っていない。

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ニカワの除去

[ 『ひび割れとニスの修復』いうタイトルを付けられた章「ひび割れのしたの古いニカワの除去」を見よ)]

クリーニングとつや出し 

[ 前述してある「クリーニングと準備」を見よ。]

スティックのバネ調整とバネ戻し[ 同上 ]

壊れたヘッド


ヘッド部は、通常、きれいに木目がそろっているため、スティックからよく割れて取れてしまう。

(壊れて取れた小口の)縁が損傷する前に、すみやかにうしろから糊をつけて貼るべきである。

アルコールで表面をきれいに拭いてから乾かし、シアノアクリレート系接着剤411番で接着し、クランプする。

はみ出した余分な接着剤は、削り取り、600番の水ペーパーで木部のどこも削り取らないよう、
また、どの縁も削りすぎて丸めてしまわないように、研ぎ出す。

フレンチ・ポリッシュ(コンパウンド?の商品名?)でこれを磨いた後は、実用上、ほとんど見えないが、(これだけでは)十分な強さではない。

(そのため)ジョイントには、ホゾ穴の底にドリルで穴をあけ、接着剤をつけたピンで補強した方がいい。

わたしは、伝統的な斜めの木目の角栓(ピンに相当するダボ)を好む;それは丈夫で、正当(な方法)である。

コクタン材または象牙でさえ(弓の先端部として)ときどき使われるけれど、
ペルナンブーコまたはスネークウッドが(その角栓として)より望ましく、外観に影響しない。

約0.032インチ=0.8mmの切り口(厚)で、直径30から60mmほどの刃をつけた円盤ノコを使い、
正確に、集中してドリル・プレス(ボール盤)で切り込みを入れる。

その間、スティック先端のヘッド部はしっかりと皮のバッドを貼った万力で保持しておく。

それ自身が細いスティックを弱めることになるから、切り口を広げてはならない。

角栓は中でシアノアクリル系接着剤411番によって接着し、固定する。

余分な角栓と接着剤は、ペーパーがけする前に、ナイフや小さいヤスリによって削り取り、オリジナルなエッジ(の形)を、慎重に復元する。

フレンチ・ポリッシュ(磨き出しを)をする。

注意:もし、破損がまったくのヘッド部そのものではなく、ヘッドがついたスティック(の方)であったら、
これは、接ぎ木することによる普通の修理では元通りにならない。

[ 貴重な弓については、そのほとんどをオリジナル・ヘッドを保たせるため、中間で接ぎ木する方法を使う。 ]

写真説明 左  接ぎ木の切り込みを小型丸ノコで挽く  右 象牙チップを接着

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象牙(または骨)製のチップを交換

この修理は、前で説明したものだけでなく、ヘッドの特徴と美しさを壊すことを避けるため、細心の注意をはらってなされなければならない。

木部の、どんな小さな小片も取らないようにする。

ファイバー(*)またはコクタンのジョイントから、ナイフで象牙を外すことから、まず始める。

もし最初、接着剤を緩めるために、小さい[ 30ワットの ]ハンダゴテのコテ先を使って、
手早く転がすように象牙の上にあてて(温める)ことで、 ずっと楽にとることができる。

アルコールランプを使ってはいけない!

ファイバーまたはコクタン材の残りは、ナイフ、スクレイパー、細かいヤスリ、または適切な溶媒で、注意深く取り去る。

すでにファイバー・ライナーを合わせてある象牙、または骨製の、準備されたチップは、まず最初、最終的な厚さに近い薄さ、
およびファイバーの角側は、鋭い直角に切られているべきである。

そこでチップには、鉛筆で印をつけ、周囲全部とも約1mm出っ張るように調整されるべきである。

[ わたしは、防塵マスクをつけて、ディスク研磨機で削っている。]

そのとき、濡らしてからアルコールランプであぶり、おおよその湾曲にあらかじめ成形しておく。

または、それを曲げたクランプで締めつけ、乾燥させながら曲げる。

温めて溶かしたニカワ[または、他の接着剤]で接着し、その目的のためにつくった特別な専用クランプで締めるか、
または、写真に例示するように糸で縛って乾燥するまで固定する。

ここでは、細心の注意を払っておこなう。(クランプであまり締め付けすぎたりすると、
ヘッド部を割ってしまったり) これは、非常に多くのヘッドを駄目にしてしまうところである。

ナイフおよびスクレイパーまたは細かなヤスリで、周囲全面、木部とそろえるて余分な出っ張りを削り取るが、木部は一切削らない。

適切な小さいヤスリで要所要所を仕上げ、およそ可能な限り上方へ曲げ、オリジナルの弓制作者のスタイルに近づけて再製する。

ドレメル・ツール(小型ルーター)に小さな縦溝の穴あけ器(細いリーマータイプのアタッチメント?)を装着したもので、ほぞ穴のセンターに、
 あらかじめラフな穴を空けておき、あとはナイフでほぞ穴を慎重に削り、完全なものにしていく。

象牙を最終的な厚さに、600番の水ペーパーで仕上げ、形づくる。

必要に応じ、さらに進めてコンパウンド(tripoli?)で磨きをかける。

注意:もし新しくつけるチップ・プレートが銀製のものなら、それは押さえつけ.ることができないものであるが
[「本物」を除いて]411シアノアクリル酸塩によって接着できる。

注意:レッスン生用の弓のプラスチック製チップは、411シアノアクリル酸塩によって接着する。

もし、これをヘッドの上に置いて、チップに乾燥促進剤を吹きつけてから使うと、接合は、指で押さえた瞬時についてしまう。
指を接着しないよう、要注意!

摩耗したスティック

これは、スティックを握る親指の所でもっとも多く起こり、それが癖のある弓のにぎり方であったり、皮のグリップがあまりに前すぎるとか、
フロッグが後ろすぎるとき、あるいは毛が長すぎる場合に起こる。

その場所だけを削り取り、新しい木を貼り付けたりするよりも、むしろ、木の蝕まれたところに、良質のペルナムブーコの(ノコでひいた) 「おが屑」と
シアノアクリレート系接着剤との混合物を(コクソのように塗り固めて)置き換えた方がより望ましい。

これを収めたときにはヤスリと水ペーパーで、八角形(の断面)にほどよくマッチさせて削りだし、フレンチ・ポリッシュ(コンパウンド?)で磨く。

この方法だと再・修理が可能で、溶剤を使って(溶かして)取ることができるし、元からの木を削り取ることなしにできる。

もし、あなたが固体の木で表面を復元しなければならないなら、『それ以上の読み物』の中「アンドリュー・ヒル」を参照。

[ スティックと(メーカーの)刻印の摩滅は、後で非常に慎重にはがすことができる、薄い革の保護層を貼っておくことで防ぐことができる。]
 
壊れたスティック。

破壊またはクラックがかなり長いものであっても、(その割れ目を)一緒にすることで、都合良く元通りに合わせられるし、
少しの新しい木も必要としないことがここでは想われる。

小さい洗濯バサミ・タイプのクランプを使い、411番のシアノアクリレート系接着剤で、これらはおおむね満足ゆくように接着できる。

そのような修理は、ほとんど目で見えないぐらいになるし、[ わたしも、そうやってきて、また実際に見つけられない]けれども、
それは弓をいつも根本的に価値を落とすことになり、 あいにく少なくともその場所では、バネ直しための加熱ができない。

411番の接着剤は、摂氏約100度(212F)には耐えるが、約165C(329F)で溶かしてしまうからだ。

スティックは、ホゾ穴とニップル(筒部分)にクラックが入りやすい。

このクラックも同様の方法で、 もし、ネジ穴があまりに大きくなりすぎていたら、(あらかじめ)筒部の直径で、ドリル穴を空けておき、
ペルナンブーコのブッシュ(詰め木)をつめてから再び穴を調整し、接着する。

もちろん、これは、無傷のスティックにニップルを回復させるための、違った形での方法でもある。

最終の穴あけは、木工旋盤(ロクロ)でやるのがベストだが、ドリル・スタンドのバイス(万力部)に弓を垂直に固定し、穴を開けることもできる。

曲がった半月リング

半月リングは、もしそれが特に(柔らかな)銀製だと、非常に多すぎる毛や、クサビを熱狂的に、無理矢理挿入されたとき、
結果的に平らな上の面が、しばしば凸面に変形して生じる。

もし、毛の量が適切ではないのなら、中間部が厚すぎるのであろう。

それは、正しい直径の、半円の軸の上に置いて、ハンマーで直接的にたたくのではなく、なめらかな木材の断片で、慎重にたたいてまっすぐに直す。

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スライドを交換

もし、古いスライドがないか、または修理におよばないほと損なわれているとき、新しいものはつぎのようにはめ合わさせることができる。

あらかじめコクタンに裏打ちされ、接着されていたオーバーサイズのブランクは、最初、ディスク・グラインダーでやや大きめに減らしておく。

[ 防塵マスクを着用する。]

そこで、それをコクタンと真珠側に必要な、厳密な厚さに減す。

これは、台の上に広げれたサンドペーパーでそれをこすり、仕上げは、600番の水ペーパーと、真珠側の磨きはトリポリを使っておこなう。

両側のエッジは、その時点でサンドペーパーで精密な角度と、合わせた幅に磨かれており、
真珠は、ヤスリでスライドが半月リングのもとにも、 必要ならヒールプレート(貝を貼るベースとなる板?)にも合わせる。

このすべては、半月リングとヒールプレートとともに、フロッグ制作操作の部品として適合するように、
すでにサンドペーパーですり減らして合わされているオリジナルなスライドを作るよりも難しく、本当に、骨が折れる精密な作業である。

鉛筆に含まれるわずかな黒鉛は、スライドが動かなくなることを防いでくれる。。

パール・アイ(目玉)の交換

ときおり、フロッグの両側またはボタン(台じり)の先端についているパールアイが失われるか、壊されることがある。

よい友人から、わたしは、真珠貝のディスク、4mmから0.5mmずつ増え、12mmまでの、各色、取り合わせてあるものをいただいた。

みなさんは、多分、そんな幸運がないだろうから、最も近いサイズを注文するか、または真珠貝の断片やアワビをロッドの終わりに接着し、
ヤスリやサンドペーパーの棒などで、サイズに合わせて回して削る。

穴は、きれいに掃除して、接着には410番の黒いシアノアクリレート系接着剤が適。

アイ(目玉の貝)が挿入されたら、ほんのわずかの出っ張りも取る。

はめ込また後に、余分な接着剤と(でている)真珠貝はやすりで削り落とし、
400番と600番の水ペーパーを貼ったペーパー・ブロック(板の台)で仕上げ、あとはトリポリで磨く。

ペーパーブロック(台)は、フロッグ側面の凹面に合うよう、多少円筒形にしておく。

コクタン材は、少しも擦り取ってはいけない。

ゆるんだアンダースライド(フロッグ下部の金属片)。

よいフロッグのほとんどは、皿もみされた平頭のネジでアンダースライドを取り付けてあり、めったにゆるくならない。

他は押さえつけられてついているか、またはただ接着されてるだけ。

それは、まずアイレット(アジャスター・ネジを受けるフロッグに埋め込まれたT字のナット部品)を取ることがよく、
そうすることでニッケルまたは銀のアンダースライドがゆるみ、完全に取り去ることができるので、
両方の表面についていた古い接着剤すべてをきれいに除去することを可能にする。

アルコールで拭く。


アイレット穴を避けてシアノアクリレート系接着剤をほんの少量、適用する。

セットするまでにアンダースライドを交換し、固定しておく。

[指を接着してはならない。]
どのような接着剤も、取り去る。

もし、もろいコクタンのエッジの一部がなくなっていたら、それは次の「欠けたフロッグ」同じように、今や復元できるであろう。

欠けたフロッグ

学生用の弓は、特に、フロッグのコクタン材コーナーやエッジが欠けている。

アルコールで、欠けた場所をきれいにし、黒いシアノアクリレート系接着剤で少し多めにそれを満たす。

外の新鮮な空気のところに行き、アクセレータ(乾燥促進剤)をそこに吹きかける。

つぎ当てしたところが、もし厚すぎていないなら即座に硬化するだろう。

それから慎重にやすりをかけ、コクタンの「磨き粉」と度合いがマッチした水ペーパーを使ったり、軽石でこすったりして、オリジナルな輪郭に研ぎだす。

これは保守的でリバーシブルな修理であり、溶媒によって取れるし、コクタン材の伝統的な『駒(仏語)』より、望ましいいくつかの点がある。

ひび割れしたフロッグ

クラックは、半月リングやアンダースライドの近くの、より繊細なところにときおり見られる。

これらは、被害がもっとひどくなる前に、接着した方がいい。

コクタン材のためには、黒いシアノアクリレート系接着剤を使い、透明のものは、他の素材のために使う。

上述した「欠けたフロッグ」のように、固化して仕上げるまで固定するかクランプ[ 多分、スプリングタイプの洗濯バサミが適 ]する。

アイレットの交換

アイレットは(ほとんどが真鍮のため)柔らかいので、そのねじ山はスチールネジよりずっと頻繁にダメになる。

ネジを潤滑にしないことが、通常の原因である。

弓に取り組むものは、誰もが多種多様なネジ山を見分ける必要があることは知っている。

機械工なら、これは大きい問題ではない。

なぜなら、彼は、どのようなネジにでも適合するように、加工してない手持ちのアイレットにドリルで穴を開けたり、
ネジ山を切ったりできるからである。

他の方法では、取り寄せて引き渡されたアイレットでさえ、往々にして正しい取り替えが難しいと気付くの。

ネジ山には、様々なインチやメートル法の標準がある。[または、手製のネジにおける無基準]

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そして、ネジ山のピッチ(mm/回転)は1回転が0.5mm 、つまり20回転で1cmで進むことになる。

よくあることだが、アイレットとネジがマッチした「ペア」として取り替えられることである。

これは、普通の安い弓では容認できるが、ネジは貴重な弓では取り替えるべきものではないし、
ボタンも破壊行為に相当するので、取り替えるべきではない。

下の写真で、ボタンを交換するのを見よ。

アイレットは、平らで、細くて長いプライヤ(ラジオペンチ)で取りはずしたり、 取り付けるとよい。

[ そのためにネジを使うことは、通常、アンダースライドに見苦しい鋸歯状のギザギザを結果としてつけてしまう。]

もし、フロッグのアイレット穴が(大きくなって)摩耗していたら、厚い柄のアイレットが代用されるが、フロッグを割ってしまうおそれもある。

穴は、必要に応じて新しいアイレットに合わせて、穴を再びあけ直すべきだ。

もし、新しいアイレットのためのフロッグの穴が大きすぎたら、もっと大きな穴を開けて、ブッシュ(埋木)を入れて、ドリルで穴を再び開け直す。

ドリルで穴をあける際、中心の取り方と垂直線[ドリル盤で]に開けるために、十分、注意する。

アイレットの柄のネジ山は、1インチあたり約64回、または1cmあたり25回の回転であるため、十分に微妙な調整ができるはずである。

アイレットは、常に適切な深さに合わせる。

あまりだぶだぶなフロッグだと、ホゾ穴を傷める原因になる。

アイレットの先が、もしホゾ穴の底を擦するようなら、わずかにヤスリで削り落としてやる。

ボタン(台じり)の交換

ボタンは、それ自体が説明的な写真のようにして、取りはずす。

堅木のブロック(添え木)は、万力からネジを保護する。

別の方法としては、ドリルでネジの直径の穴を開けて、ハンマー[わたしの、偉大な祖父のもの]から台じりを保護する。

[警告-これは通常の平行した軸ネジに向いている。]

いくつかのアンティークな弓や、現代の、多くの金属製のボタンは、この方法で取ろうとしてはならない。

新しいボタンは、皆さんが選ぶ接着剤で取り付けられる。

小さいハンマーでそれを軽くたたく前に、ネジの四角い末端にふさわしく、適応するかどうかをチェックする。

直ちに、どのような接着剤でも絞り出して取り去る。

銀線の化粧巻きつけ

重要:化粧巻きをやってしまう前に、スティックのその場所が滑らかかどうか;
巻くことを通じて違った形で現れるような、接着剤の残留物のこぶなど、 削ったり、切り込んだり、
へこみは埋めたり[411シアノアクリレート系接着剤を使い、ヤスリで滑らかにする]しなければならない。

スティックの、巻線の開始と終りを鉛筆でマークをつける。巻きつけとグリップの全体の長さは、約75mm。

革グリップが、フロッグにやや触れるくらいの、その少し前の位置になるように、あらかじめ計画しておく。

ワイヤー巻きが、グリップの下にほとんど完全に入るようにするか、あるいは部分だけにする方法とがある。

もし後者の方法なら、残りは、あとからネジ山(風に、荒く巻く)とか、ボール紙、または薄い革を貼って下ごしらえをしておく。

(*訳者の体験では、なにもしないで、皮のグリップを貼っただけでは細すぎて、握りが不安定になる。

そのために所定の太さに仕上げるため、グリップ部には「巻き線」と「皮」のように、二重にする。

また、皮の下になる「残り部分」だけが、面倒なワイヤーではなく、太めの糸で、ネジ山風に、荒く巻かれていたものもあった。)

弓の巻線「装置」は、この一見したところ難しい作業ではあるが、非常に機械的な手順でできるようになる。

まだ原始的なものではあるが、まずまずの実例として、それ自身が説明的であるつぎのページの写真で示されている。

スティックとフロッグの上の部分あたりをゆるく巻きつけたり、スティックにテープを貼ることができるが、巻線の前に、毛を取り去っておくほうがベスト。

スティックの周囲に、マスキング(保護)テープを巻くところは、それが「装置」のそれぞれの側を通り過ぎたところまで巻き付ける。

これは、(はさんで回転させる)摩滅から保護するための「軸受」を形成するし、
また、種々の太さがある弓の直径を(テープを巻くことで)増やし、(はさで 固定させるための)側面の遊びを減らすために考案したもの。

テープは、L字ハンドルを固定するところの、スティックの台尻も保護する。

また、ゆる目のワッシャも、L字ハンドルを「装置」にセットしたその側面に対して、擦すれることを防ぐ。

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シルバー・ワイヤー(銀線)にはいくつかの直径のものが入手可能である:例えば、
   細い0.20mmまたは0.0075in
   軽い0.22mmまたは0.0080in
   標準0.25mmまたは0.010in
   重い0.30mmまたは0.012in

「標準」サイズは好まれる。

「細い」方は、手を巻くので、きめ細かすぎる。

[銀メッキされた銅線は、メッキがすぐに剥げるので労力に値しない。]

線巻きは、ヘッドにもっとも近いところ、およびスティックのアンダースライドの端から開始。

巻き始めるためのもっとも巧妙な方法は、ワイヤの端を、スティクを貫いてあけた直径1mm、
または、それ以下の穴に通して止める、これは三つある方法のひとつである。

シアノアクリレート系接着剤を穴に差して、ワイヤを保持するために、ごく小さいペルナンブーコの木クギを打ち込んで止める。

この木クギは平らに切り落とし、つづく巻線により隠れる。

[別の方法は、ワイヤの終わり以上にワイヤを巻いておき、1滴の半田で押さえる。

これは、やや安全ではなく、あまりきちんとしてはいないが、スティックに穴を開けなくて済む。]

ワイヤのスプール(糸巻き)は、ほどよく引っ張ってテンションをかけて軽く左の手で支えるが、右手は時計回りにクランクを回せるようにする。

スプールがわずかに左に保持されるので、個々の回転は、前のものに対して(隙間なく)堅く巻かれていく。

巻線が最後になったときには、装置・右側の蝶ナットを締めつけ、スティックが回転しないようロックする。

ワイヤは、ピンのまわりは回転を少なくしてしっかりとしめるためにぴんと張っておくが、(終わりになってからは)スプールをゆるめて、離しておく。

半田ゴテは、およそ30ワット程度のものを使い、巻線の最後に何周か巻いたところに、柔らかいハンダで流し込むように半田付けする。

ワイヤは、端末で切り離し、余分なハンダは慎重にヤスリで削り落とす。

ハンダは、革グリップの下になるから見えなくなる。

スティックを装置から取りはずし、すべての保護テープも取り除く。

写真説明  左 銀線の線巻き  右 レザー・グリップを漉 く
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『クジラのひげ』巻きつけ。

クジラのひげが事実上利用できないので、ヒル・スタイルでは人工的クジラのひげが使われていることが推定される。

本当のクジラのひげのように一定の断面にならし、十分に湿らせることを必要としないので、これは均一なためより使いやすい。

このケースで巻き付けることは、どのような『機械』がなくても、楽にできる。巻き付けの開始と終りは、上述した銀についての「印を付ける」のと同じ。

白を巻き始める前に、黒を何周か巻いておく。

[ 巻きつけの末端は、下に押し込まれるので、うしろ側を薄くテーパーをつけて、シアノアクリレート系接着剤接着剤で固定する 。]

そして、巻き続け、黒と白とをペアとして一緒に包む。この巻き込みは、革の下で終わる。

巻き込みの終わりは、端にテーパーを付け、(巻いてきた前の)下にはめ込み、糊づけして強く引り、
接着剤が乾燥した後の巻き付けた間で、ナイフで切り取る。
 
革グリップの下の余分なスペースは、糊づけした革や厚紙を使ってでも、下ごしらえすべきである。

革グリップ

グリップの長さは、約22mmから25mmまでであること、少し短かかったり、またはメーカーのスタイルや、
たぶん演奏者の好みでも左右するので、 場合によってはより長いこともある。

それは、フロッグを前のポジションにしたところから、1mm以下であるべきだが、フロッグに触れてはならない。

もし、グリップの下まで、巻き込みが完全に巻かれていないときには、その空白の場所には、
[毛を縛るために使われるような](糸で)ネジ山風の巻きつけや、または接着剤で薄手の革や厚紙で埋める。

黄色や白い接着剤なら申し分ない。

革のさまざまなタイプは、本物かまたは人工的か、厚いか・薄いか、固いか・または柔らかいか、
すべすべしているか・つぶつぶしているか、使って容易か・または難しいか、茶色、黒など、供給業者に依存する。

好みは、黒い、きちんと肌理のこまかな、天然の皮や黒いトカゲ皮が向いている。

何人かのプレーヤーは、より厚く、より弾力があるグリップを好む。二層にして使われることもある。

より柔らかいグリップにするために 革のエッジに沿って塗る接着剤も、真ん中では非常に少なくする。

さもなければ、皮に接着剤がしみ込み、そのためにグリップを硬化させてしまうからだ。

巻き付ける革の長さは、スティックのまわりに巻きつけ、4mmほど重なる程度の長さにする。

きちんとフィットさせるために、革のエッジとなるどれのためにも、4辺全部のエッジに、幅約4mmも必要ではないが、テーパーを正確に付ける。

前ページの写真は、これをどのようにするか、を示す。

グリップをきちんと接着するのには、根気・根性が必要である。

弓のヘッドを左にして、革は最初、スティックの底面から接着する。

それは、この接着剤を最初少しだけ乾燥させるのに役立ち、そして革をスティックの下のまわりに巻いていき、、重ね部分を貼って終わる。

接着剤の初期設定時間(*)の間、忍耐が必要である一方、巻き込みがきつかったり、
すべてのエッジがスティックに対して、 なだらかに(面をとったように)食い込んでいることを確かめながらおこなう。

革の出っ張りや柔らかさ、形を保たせるために指先を湿すべきである。

いかなる無関係な接着剤でも、それが正確に残っていることが認められるときには、湿った紙タオルで拭き取る。

革が乾いたとき、収縮して引き締まっていき、よりすっきりと見えるし、巻きつけはほとんど目立たないはずである。

狭い革の(エッジの)トリミングは、約3mmの幅にして、銀の巻きつけの一方の末端に巻く。

これは、それに対してのみ認知されるが、ワイヤには重ねない。

バランスまたは重量の調整

バイオリン弓の静的なバランスポイントは、一般に、フロッグの前のポジション、約185mmである。

もし弓の先が軽すぎる感触をしていたら、それは銀のチッププレートを使って少し重くすることもできるし、
毛の下のリードブロックやリードプラグでさえ、 実質的に少しは重くできる。

一方では、弓の重量とバランスは、また化粧巻きの仕方によっても左右する。

先が軽い条件では、非常に重い化粧巻きの重量を減らすことによって高めることができる。
(手元を軽くすることで、重心が前に移動するからだ)

『逆も、また真実である』。

クジラのひげは、「標準」の銀ワイヤより約2グラム少なく、バランスポイントを数mm、ヘッド側に動かす。

銀線は軽さのために、グリップの下で省略されるか、または重さのためにその下で二倍にすることができる。

また、より重い番手銀を使うこともできるし、 または、より軽い銀の『金・銀糸』、あるいはネジ山式巻き付けなども。

(* レザーの接着に関しては、筆者は特別な接着剤についてのコメントはしていないが、前後文や、訳者の体験から、
「合成ゴム系」のものがベストだと考える。とくに、注釈の*マークを入れたところの「初期設定タイム(オープン・タイムともいう)」とは、
ある程度乾かしてから貼ることで、最大の「初期接着力」が得られるというものであり、この合成ゴム系の接着剤のことである。

ものによっては、両面に塗布し、溶剤がほとんど蒸発して、手で触ってべとつかなくなってから貼ることが多い。

黄色いどろどろした接着剤で、トルエン臭い。小西のものではG−10〜G−19など、セメダインからも同等のものが市販されている。
また、皮と皮、もしくは皮と木であるから、ここでは、「酢酸ビニル系」の、透明の溶剤型・接着剤もベターだと思う。
いずれも、余分についたものは、水ではなく、シンナー等の溶剤で拭くようになる。)

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