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[ VIOLIN MAKER'S NOTEBOOK ]
§1.Bow Rehairing and Minor Repairs
第1章 [ 弓の毛替えと小さな修理 ] 前ページよりのつづき ヘンリー・A・ストローベル
訳文中の()は、読みやすく分かりやすい文にするため、目的語が省略されていたり理解しにくい部分に、 訳者が入れた注釈。[ ]は、著者の入れた注釈。 さらに、弓やその修復に関して、はじめて接したり読んだりしたとき、もっと分かりにくいものについては、 とくに(*)として、訳者が注釈を入れた。
毛替えの手順
試 験弓の短所を徹底的に調査する。毛替えや修復をはじめる前に、もし、できることなら顧客に対して助言しなさい。
彼らは、欠陥や、見えない修理、そして、以前の下手な修理を知らないかもしれない。
まずい修理があったときなど、事後の価値を不利にしたり、毛替えの妨げになったり、スティックのバネ直しなどなどに影響を及ぼしてしまう。
もし、しばらくの間に、弓から多くの毛がなくなってしまった場合、カーペット・ムシの幼虫 (ウールを食べる虫) による食害であることを教えてあげなさい。
この事例では、そこには多分「抜け殻」が見られる。それは、電気掃除機[真空]で吸い取り、通気をよくし、ナフタリンや、 できればニスにいかなる影響も及ぼさない殺虫剤で駆除する。
ヘッド近くのひび割れや、象牙のチップが砕けていたり、 ホゾ穴サイドの割れ、接着付けされたプラグ(普通はただ差し込むだけ) 修理で貼り直されたチップの形が不完全、まずい彫り方をされたホゾ穴、鉛のおもり(ウェイト・バランス用?)、 細い板、あるいは他のもので補強されたもの、接ぎ木されたヘッド部など。
スティックは、バネ直し(バネを強くする) あるいはバネ戻し(弱く) する必要があるかもしれないし、積もりつもったロジンで重くなったり、 ひび割れ、より継ぎ[たぶん、化粧巻きの下で]、
アイレット(アジャスター・ネジ受け) の穴が大きすぎたり割れがあったり、化粧巻きのすり切れやないもの、 張られたなめし革がすり切れたり貧弱になったグリップ、はなはだしいワイヤー[腐食]が巻かれているものなど。
末端・台じりの割れやすり切れたネジ穴およびネジ棒、それに補強に加えられた金属リングなど。
ネジや、ボタン(竜頭=リューズ) も取り替えられたものかもしれないし、弓やボタンと合っていない、 (長さ調整のために毛をしばる)糸の位置とほぞ穴とが調和していない。
ボタンが割れていたりネジ棒にも合っていない、ボタンの修理あるいは磨きを必要としている、ネジが錆びている、など。
フロッグは、取り替えられたものかもしれないし、弓に合っていない、ボタンやスティックに合っていないこともある。
ゆるくなっているアンダー・スライド(フロッグ下部に張られた金属片) 、ないもの、細くなっているもの、あるいはアイレットとうまく合わないこと、削られ、ねじれ、半月リングのミスマッチなど。P-13
割れ目、あるいはとくにスライド近くの縁やスライド下部の溝、角の欠けたもの、 真珠の目玉のないものや突きでているもの、などなど。
スライドが粗雑にはめ込まれたもの、削られていたり、割られていたり、押し込んで糊づけされたもの。
それらの欠陥のいくつかは、毛替えすることに加えて、十分、考慮しておかなければならない。
このことは、よい弓ではすべて重要になるが、レッスン生の弓ではその多くが無視されてきている。
よい弓では、ぴったりした適切なホゾ穴、プラグやスライドなども合うものだし、安いものにくらべ、ずっと毛替えがしやすい。
われわれは、以下に記述するような、特殊な修復をこれからおこなうようになるのだが、標準的な店(工房)の標準な技術であっても、 むしろ実際例として、観察する目をもってみることが最上の学習になる。分 解
ヘッドおよびフロッグから1cmのところを、ハサミで切りとる。
糸で、それをしばって破棄する。ヘッド・プラグは、うしろの縁から幅3mmのノミを使って取りはずす。
これがうまくいかないときには、中央から両サイドに向けてノミを動かすようにして、切り込みを入れてとる。
(ついでに)ノミでホゾ穴をきれいにしたり、必要に応じて、ホゾ穴の前後、 両壁面も正しい角度になっているか調整しておく。
(図を参照) 両サイドの壁面は、薄くしすぎないこと!
古いプラグ[使用できれば]、あるいは新たにつくったものでも[皆さんが次につくる予定のもの]、その弓の番号通りのナンバーをふったトレイに入れておく。
注意:一度にいくつかの弓を扱う際、[わたしはいつもそうしている]スティックを壁にそってならべ、はずした部品は番号付けしたトレイにいれて、 その呼応したところに於いてく。
(いろいろな寸法の違いがあるので、その混乱を避けるため)
ヘッド・プラグやフロッグのプラグは、あらかじめ幅、奥行きをおおよそのサイズで切ったカエデの小片からつくる。
その長さは、ホゾ穴から計って印をつけ、小さいがいい刃をついた「背付きノコ(胴付きノコ)」で切る。
このときに毛替え用具(台)で説明した「直角定規付き」の角度ガイドを使う。
注意:ヘッド・プラグやフロッグ・プラグはあまり固くない、フレームの入らないカエデからつくるが、 フロッグのクサビにはもっと柔らかいヤナギやシナノキでつくる
ネジ(アジャスター用)とフロッグを取り外す。
フロッグから、ネジや半月リングを取りはずす。
これをするには、片手でフロッグをささえ、もう一方の手で半月リングを抜く。
もし、固くてとれないときには幅1mmのノミ[パフリング溝を彫るノミ]を使い、注意深くクサビを切り取る。
このときにも、やはりノミの動かす方向は中心から両サイドに向かって動かすようにする。
あるいは、もし、毛のしばり目が接着づけされたものでなければ、プライヤーで毛をはさんで引っ張れば、たやすく引き抜くことができる。
異常な事例として、最後の手段になるが、(プロテクターとして) なめし皮をはさみ口に張った、小さめの万力にそっとリングをはさみこんではずすこともできる。
運わるく、ペンチではさんだキズのある、すばらしい銀のリングでさえしばしば見かける。
フロッグに損害を与えないように気をつけて、親指の爪ほど小さなクサビやその残片を小さいナイフの助力を得て取り去る。
よくある欠陥だが、クサビを固定するために、糊の付けすぎも多い。
皆さんは、多分、このときに新しいクサビをつくろうと思うかも知れないが、はめ込む時点まで、つくるのは待つこと。
スライドをはずすには、親指をスライドに乗せ、「滑らせる」方向にすべらせてはずす。
[決して、ナイフやノミでこじあけようとしたり、 テコで引きはがすようなことをしてはいけない。被害がスライドのみならず、うしろの受け板まで傷めてしまう。]
もし、スライドがしがみついていて、なかなかはずれないときには、第一番に、丈夫で自己粘着力の強いダイモ・ラベルテープ (*名前や数字を打ち出すテープ)を使う。これをスライドの表面に張り付けて、 ゆるくなる末端まで真っ直ぐに引いてはずす。
別の、より伝統的な方法として、第1指と第2指(*ヴァイオリン的な運指の観点から、 人差し指と中指を指しているものと推測)でフロッグをささえ、親指をスライドの上に、 スライドさせる方向にやや圧力をかけておく。
そして小さい[100g以下の]ハンマーでゆるやかに、真正面からフロッグの舌部これは、高価な壊れやすいフロッグのためにより安全な方法だが、 (技術が未熟なものや経験不足の方たちには)おすすめできない。
プラグは、3mmノミでフロッグから取りはずす。P-14
フロッグのほぞ穴から毛を抜き、同じノミでほぞ穴をきれいにする。
必要に応じて、ほぞ穴前後の表面を正しい角度に修正する。もしプラグが再使用できれば、つくる手間がはぶける。
そうでないときはヘッド・プラグとして新しいものをつくらなければならない。クリーニングと準備
布にアルコールをしみ込ませたもので、スティックをきれいにする。
これは、ある程度のニスを取り去るかもしれないが、しかし、弓は、とにかくニスを塗るべきではない。
ある程度の亜麻仁油の缶でもあれば、アルコールで適度に溶かして使うことができ、効果がある。 フランスニスは、適切な仕上げとなるし、簡単におよび速くリニューアルできるたろう。
[ページ36-38の『ひび割れ、およびワニスの修理』とタイトルをつけられた章を参照。]
調子がよいスティックにするために、市販のバイオリン用のクリーナー・ポリッシュを使うのもよい。 なぜなら、ひどく厚い(ニスの)外皮で覆われた安い弓は、Scotchbrite (Scotch社製のコンパウンドのような磨き剤?)を使ってアルコールで擦ればいい。
八角形の端や、あるいはよい弓には、このような研磨材、あるいは軽石を使わない方がいい。いくつかの安いスティックには、 分厚くラッカーが塗られているものもある。これをアルコールが取ってしまうことはないが、バネ直しの際、熱された場合にはひどく水ぶくれになる。
注 意:もし毛替え、あるいはバネ戻しが必要ならば、毛替えする前に、やっておいた方がよい。
赤々と燃えている電気のホットプレートを使って、どんな手袋も使わないでスティックを回転させ、曲げたい場所の近くをいったりきたりあちこち動かすことで、 平均して熱されるようにする。
焦がさないように注意する。
それが冷えるまでは、スティックを曲げたままにして、保持しておく。 レッスン生等級の弓をする前に、まず、ジャンク品のスティックで、この工程の感触を学んでいただきたい。注 意:もし、皆さんが弓の少しの部分を、ちょっとだけ、ただ曲げるだけとか、 あるいは、一度で少しだけ作用すればいいのであれば、アルコール・ランプがいい。
平均的な、バネ性がなくなったバイオリンあるいはビオラの弓は、毛の低い平らなところがスティックの面と接触するくらいに調整する。 より堅い弓、特にチェロおよびベース弓では、より大きく離れるようにする。
スティックは、台じりからいちばん毛に近い場所は、おおよそ全長の5/8の位置に相当する。演奏状態に張られた毛は、およそ、スティックの直径分、 スティックから離れているべきである。
すべてのスティックが異なり、、そして、その特定の形に曲げられた曲線は、スティックの堅さ、および堅さの状態に依存するものである。
しかし、皆さんは、おおよそのガイドのためのテンプレートが必要でしょう。
そのために、よい弓の外側の曲線がたどられるかもしれないし、あるいは、以下のように、特有な曲線をレイアウトできる。 左側(台じり側)からスタートして、曲線を距離に置き換え、50mm間隔で表示した。[ 表は省略 ]
[型の端を切り取って、化粧巻きおよびグリップの余裕を考慮して下さい。]
金属部品は、いつでも磨かなければならないというものではない。
そそれぞれの「つや出し」は、(磨く摩耗で)いくらかの金属や面取りした部分を減らすことになる。
ひどく曇っているものか、または腐食されたニッケル部分は、Dremel(同社製の電動回転工具?) 道具の布製バフ磨きで、宝石商の使う口紅型の研磨剤を用い、明るく磨くことができる。
半月リングは、木部分の形にうまく合うようになっていて、はめこまれている。
バフを使って作業する場合、非金属部分を傷つけないように、十分、気をつけること。
よい弓にはバフ磨きを避けて、マイルドな銀磨きを使って下さい。
ネジやスティックの末端には、Salchow社製のような、弓専用の揮発性の潤滑油をさしなさい。
スライドの縁には、ほんのわずかの黒鉛が使う。
石鹸は、それ自体が吸湿性であるので、潤滑剤としてを使わない。P-15
修復には、まず第1に、必要な修理から。ページ19『いくつかの型どおりの弓修理』を見よ。
[毛替え]
毛替え台を、作業テーブル用として便利な、位置および方向が調節できる「ベンチ万力」にセットして締めつけておく。
毛替え台についているゲージで、スティックの堅さと半月リングのサイズをもとに、 多い目にしたり少なくしたり調節して、毛の束を測る。
注意:ばら荷で市販されている毛の大半が、直径約15〜 20 mmが一束になっている。束の終わりやや厚くなっていて、 その端は、ステンレス製のホース締め具や、液体の糊が使われ、しっかりと締めつけられている。
[この締め具のために、いくらかの毛が無駄になるが、 長い毛を買うためのもうひとつの理由にもなる。]
毛は、保管のために束ねた端を、壁につけたフックに掛けられるようになっている。
それを壁から下し、毛の束を計って分け、そして小さい、 斜面のあるカッティング・プライヤー(ニッパーのこと)で締め具から切り離す。
写真説明1.毛の量を計る 写真説明2.毛の結び目
厚い毛の束の端を、丈夫なボタン止めやカーペット糸で縛る。 一束として(売られているものなど)は、これで十分。
(糸を巻いて)包まれた長さは、フロッグのほぞ穴の長さ次第である。(縛る予定の)半分ほど巻いてからぐいと締め、 しっかり締め終わったら、つぎには残った半分を巻き、ぐっとしめる。
糸の縛り目の外側1 mmで、毛の端末を切り取る。
毛の端末、および少し糸の周りに、普通の薄いシアノアクリレート系接着剤のしずくをさす。これは、すみやかに固まるようで、そのため、 いかなる毛も抜けることはない。
アルコール・ランプは、ここでは必要としない。
毛替え台のフロッグ・ホルダーに、フロッグをつけ、正面には半月リングはめ込む。
弓のアジャスター・ネジをさし、フロッグ・ホルダーの蝶ナットをわずかに堅く絞めることによって、弓をしっかりとめておく。
結ばれた毛の先から、半月リング(やや面がとれて丸くなっている角が最初の側)を差し入れ、 それは、フロッグのほぞ穴に横たえ、そこを左手で支えておく。
[ もし、皆さんが毛束に半月リングを入れ忘れていたら、後で(しばっていない反対の)毛を輪にし、押して半月リングを通過させるか、 または針金のフックで引き入れる。*訳者は、この場合、カーペット糸で5、6周、仮にしばってから差し込んでいる。]
フロッグ・プラグは、このとき、ほぞ穴の上に置き、「プラグ押し棒」で押し込む。18ページの写真を参照。
注意:決してプラグは接着付けしない!
毛をまっすぐに右側に、ややひねるようにして引っ張り、フロッグのスライドカバーが楽に入るように毛をきれいにそろえておく。
それから、スライドを元あったように、1本の毛もくわえこまないようにして差し込む。
フロッグに、半月リングを戻し入れる。P-16
注 意 : われわれは、ここでは「縛り目」に伝統的なロジンをつけることはせず、シアノアクリレート系接着剤の方を提案する。
伝統的な糸は使うが、よく使われている鉄線(針金) より、その方がはっきりいいものといえる。
とときおり、プラグのかわりに鉄ビスで毛をフロッグにとりつけたものをみるが、 この取り付けのために、フロッグのコクタンには(ほぞ穴ではなく) 斜にカットして止めてある。
これは、たとえそれが人気があるガラス繊維製の弓の、「ネジ取り付け」に類似していても、決して受け入れられない。
[ もちろん、ガラス繊維の弓ではネジ止めでもよい、しかし、われわれは、ここでは木製の弓のことだけを論じたい。]
より平らなクサビをつくるには、ナイフを使ってヤナギの小片を、まず、半月リング(の断面) に必要な、おおよその幅および厚さにあらかじめ切ってつくる。
[それが取り付けられて、スティックから離す。]
ここれは、かわるがわる抜き差しして調整し、注意深く合わされたものでなくてはいけない。差し込んだときにつく印 (キズ)が示したところをトリミングする。
フロッグの、デリケートな左右のために、およびスライドのため、ある程度の余裕を与えるべきであるが、しかし、 それは毛が平らなリボン状に広げられたままになって、十分気持ちよく合っていなくてはいけない。
柔らかいヤナギ、あるいはシナノキ[linden:リンデン]は、安全にこれをするために、あらかじめ、十分圧縮しておく。
毛は、どちらか一方の側に片寄らせられないで平均して広がっているべきで、片寄っていると、どちらかがスティックを引っぱり、曲げてしまう。
毛が、半月リングのそれぞれの側によく広げられていることを確かめよ。 (*中央をやや薄めにして、左右を厚目に)
それは、チェロやベースだけではなく、バイオリンやビオラにしても、(スティックをにぎる) 親指側となる、もっとも使用する端で、毛が乏しくてはいけないからだ。
とがった丸い爪楊枝の先は、毛を広げるために具合がいい。
毛が、クサビによくフィットしていて、しっかり支えられるべきである。クサビが納得いくようにフィットしたら、それを差し込んだ深さで、 小さな背付きノコでカットする。
クサビのノコでカットした面に沿って、ほんの少量の、溶かした獣皮ニカワを塗る。(小口の安定と割れ防止のたか?)ここでも、爪楊枝を使う。
[このニカワは、当然、毛ではなくフロッグの方にいく。]
さてここで、正しく広げられた毛のついたフロッグを片手で保持して、もう一方で、ノコで切った反対側からクサビを挿入するのだが、 スティックからはニカワ分をきれいに、すっかりふき取ってやる。
[この工程には別の方法もあり、例えば、クサビを切ってから、ノミの横面で差し込んだりもするが、しかし、上述した手順で挿入する方法は、 非常に満足できるものだ。]注 意: プラグ、あるいはクサビを挿し入れるためにハンマーは使わない。これは大失敗をもたらす。
ある人は、クサビをおさめるための「プラグ押し」として、ガラス繊維、あるいはベース弓、あるいはプラスチック製のフロッグの プラスチック製などのよく合わされたクサビに、弱いタッピング・アクション(*バネが内蔵されていて、小さな浮いている釘を打ち込む ペンシル型のハンマー・アクション工具)を使っている。)
専門家は、かるく、コントロールされたコツをもって行うだろう。 (だからといって、)初心者は、あまり慎重になり過ぎることはない。
写真説明・左 クサビを挿入 右・ 毛を櫛でとかす毛は、その時点でフロッグを容器の縁に引っかけておき、なまぬるい水に2、3分浸すが、別の(毛を濡らさないために) 完全に乾かした状態でやってもよい。
フロッグをつまんで水からあげた毛から、指でしごいて余分な水をとる。
ペーパー・タオルで、特にヘッド部分は糸でしばるところになるので、繰り返しふき取っておく。
P-17
スティックは、ヘッド部およびグリップ部両方をしっかりと台に設置できるよう確かめなさい。フロッグには弓ネジつけ、 フロッグを前いっぱいの位置(グリップにもっとも近い)にある状態にしてスティックにつける。
毛を左の手でもち、(そろえて) ヘッドの近くまでのばし、そして、右手で、少しずつ、我慢強く、一様な平らなリボンのようになるまで、毛を櫛でとかす。
そのピンと張ったリボン状の毛を、水平のバネ付きクランプにはさむ。
つづけて、その毛を、ほかのふたつの垂直方向のクランプにはさむのだが、いちばん左のものには、ぐるっと一巡させる。
そのとき、以前のように、毛をしばるのだが、それぞれ巻きながら(ゆるまないように、指で) 保持しながらおこなう。
これには少しの訓練がいるが、2、3mm程度の縛り目がほどよく、十分の長さになる。あまりにも(糸の巻き幅が) 長すぎるか、またはそうではなく短すぎるか、毛のどこでそのようにしばるべきか。
まさに、正しい判断を下すのにもまた訓練を要する。ホゾ穴からしばり目までの距離は、プラグの奥行きで前後すべきもの。
しばり目から、およそ2mmのところをナイフで毛をカットする。
写真説明・左 ヘッド部の毛を結ぶ ・右 毛先を焼く。
アルコール・ランプを使って、毛の末端のすべてを一様に焼くが、ただし糸を燃やさないこと!
安全ですみやかに毛および糸をくっつけるため、すぐにシアノアクリレート系接着剤がつかえるよう十分に毛を乾かす必要がある。
シアノアクリレート系接着剤は、毛の終り(端)にさすのだが、糸部分には節約して与え、それが糸のしばり目を行き過ぎることなく、 あるいは、それが毛を固くこわばらせてしまうことのないようにする。
フロッグ・ホルダーからフロッグを動かし、半月リングの側を左にして、弓ネジでそれをしっかり締めておく。
左の手で、しばり目近くの毛を握って、親指を下に、そして右手で水平のスプリング・クランプをはずす。
左手を、左に回転させ、親指を上にして毛を持ち、ホゾ穴の底にしばり目を入れ押さえている。
ヘッド、プラグをホゾ穴にあてがい、右手でプラグ押し棒をもって、毛がホゾ穴の広い側に沿って平らなリボンを形づくることを確かめ、そのところに押し入れる。
P-18
写真説明・左 ヘッドプラグを挿入 右・ フロッグプラグを挿入[前の15ページを参照]
フロッグ・ホルダーから、フロッグと弓ネジを抜き取り、それをスティックの前方[ 毛がゆるくなる ]ところへ置いておく。
そこで、フロッグをおよそ2mmほどうしろに動かして、毛を乾かす。クシの背中で毛の上をしごき、さらに進めて平らなリボン状にしていく。
毛が乾いていくと短く縮むから、たいていの弓では、その方がうまくいく。
その目的は、フロッグを前方にしておいても毛をたるませず、さらに、湿度が低くなってもきつく張りすぎないよう、ほどよい短さに設定するためである。
もし、毛があまりにも長いと、(その引っ張る分だけ)、 フロッグがスティックのずっとうしろの方にいき、演奏するときのバランスに影響したり、親指を疲れさす原因になる。
[毛を乾かすとき、毛の長さを調整するもうひとつの方法は、フロッグを前方のポジションにして、 爪楊枝でスティックのうしろ側か、どちらかの側面なかばで保持することだ。]再 検 査
毛の長さをチェックしなさい。もしそれがあまりにも長かったら、わずかに短くしたところに、もうひとつのしばり目を加えて短くする。
[ もし、毛が使っている間に後で伸びてしまったときにも、この方法は使える。]
毛が、実際にあまりも短いときには、ヘッドやフロッグのプラグをいったん取って、リセットすることによって少しは調整することができる。
毛を長くするために、濡らしたり、引っ張って伸ばしてみても、それはとても現実的でないし、はじめから出直した方がいい。
毛が、ひどくゆるんだもの、あるいはもし、どのようなだらしなく長い毛のものがあったら、確かめてみなさい。
のびている毛の下からアルコール・ランプの炎を、手早く、注意して動かすことによって、難なく引き締めることができる。あまり毛を焼きすぎると、 即座に毛を弱くしてしまうし、毛を燃やしてしまう。
毛を張ってみて、スティックの「バネ」と「まっすぐさ」を調べなさい。
弓に塗るロジンは、顧客が望まない限りやらない。[お気にいりのブランドを持っているかもしれないからだ]
ほどなく駄目になってしまうような、どのような毛でも、所詮は近々駄目になるだろうから、ナイフで手際よく、気前よく切り捨てる。
(初めて、ロジンを塗るときには)紙タオルの細切れの上へ、 粉末のロジンをほんのわずか振りかけ、それで毛をこする。そして、いつも通りの方法でロジンを塗る。
布で、スティックについたロジンの粉をきれいにふき取る。
演奏してみて、特徴をテストしなさい。
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