Guarneri 4

図面からの制作・W

グァルネリ型

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エフ字孔・ネック

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ここまでくると、いろいろ平行して行わなければならない作業が増えてきす。
ネックをつくったり、共鳴箱のボディも完成させなければなりません。
そのために、できあがっている裏板を側板に貼ったり、表板側のライニングも貼ります。

そうなると、表板も外形が決まりますから、エフ字孔を刻んだり、パフリングの溝も切らなくてはなりません。

◇ ネックの制作  (ネック材の切り出しから 成形)
◇ 裏板の側板への接着
◇ 表板・エフ字孔のカット  (エフ字孔のいろいろ)

◇ ネックの制作   ネック材の切り出し
今回使ったカエデは、原木で入手した北米産のカーリー・メイプルですから、ネック材も原木からの切り出しになります。

まず、表皮側を落とします。このとき、あらかじめ、Vの字形断面に中心線(垂線)をひいておき、指板が貼られるところになりますから、その線と正しく直角になるようにカットします。

丈も、巾も、私は必要な長さで、あらかじめ切っておき、それから「型どり」しています。


ついでに、指板を貼るところ(上面)の水平面も、しっかり出しておきます。 (写真・直定規のあててあるところ)。

形に切り抜いたり、スクロールを彫ったあとでは、水平に固定しにくく、カンナがかけにくいからです。

うしろの2本は、ドイツ・カールヘフナー社製の材料(東京の材料店経由で購入)で、その在庫しているネック材です。

このような市販されている既製の部材だと、長さも十分長いし、指板側の接着面は、 機械加工でかなり安定していますから、そのままでも使えます。

最初のページ(T)で、図面からつくってあったネックのテンプレート(写真下・赤)をあて、ここでは尖らせた鉛筆を使い、正確に転写します。

このテンプレートは、文房具の下敷きでつくったので、左上の角が、面を取ってあってアールになっています。

実際は、鋭角な角(85度)にして使います。

とりわけボディ側は、ボディ本体のホゾ穴との関係で、分度器・工具を使って、角度を正確に切り出しておいた方が、あとあとの作業がしやすくなります。

スクロールのところの小さな穴は、目打ちやキリでかるく穴を空けて印しをつけておきます。


鉛筆の線・一本を残すくらいにして、外形をカットします。

堅木のカエデを、できるだけ正確に、丁寧に切らなければなりませんから、この作業は、なかなか肉体的にもたいへんです。

大まかにカットができたら、あとはノミや胴付きノコ、小刀、それに鉄工用の半丸ヤスリやサンドペーパーで成形していきます。
ここでの鉄工用ヤスリは、とても有効です。

ペーパーは、80〜100程度の荒いもので、丸棒や小さな板にしょわせて削るといいでしょう。
もうひとつ、筆者愛用のネック製作・ゲージ。

手で握るところの長さ、半円の断面がこれでしっかりとできます。
写真は、その長さと、入り隅のカーブを合わせているところ。





半丸の小さい方は上のヒール側、大きい方はボディ側。

このゲージは、ヘンリー・A・ストローベル著 「Violin Making Step by step」に載っていたもの。

お陰で、正確に削れるし、便利しています。

胴付きノコと丸ノミで、少しずつ削っていきますが、ここまできて失敗するのはいやですから、無理をしないで少しずつ削ります。

とくに、カエデのフレーム(斑模様)は、髄線や組織が入り乱れていますから、逆目で、細かな角を欠いてしまったり、彫りすぎてしまわないよう、細心の注意をはらって彫り進みます。

私は、この彫刻の作業がとても好きです。

徐々に、美しいプロポーションが浮き上がってくる様子が最高。

さあ、あとひと彫りで完成します。 11/20

上下、左右から見て対称になるように、何度も、何度も修整。

写真では比べられないかも知れませんが、
かなり「彫りの深い」表情になりました。
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◇ 裏板の、側板への接着


パフリングができた裏板を、側板に圧着します。

左右、半分ずつに分けてニカワ付けして貼る人もいるようですが、筆者は、周囲ぐるりと、いっぺんに貼り付けています。

その場合、裏板とリブの両方にニカワを塗っていますが、
ニカワの温度が下がって、ゲル化しはじめたり、固まりはじめないよう、手際よく、貼り付けなければなりません。

冬場などでは、あらかじめ、ストーブの上で熱し(温めて)、「焼き入れ」しておくと冷えにくいです。つまり、ニカワの硬化を遅らせる目的のためです。

スプール・クランプは、あらかじめボルトを調整しておき、
2、3周、回せば 締めつけられるようにしておきます。

そうした前準備でさえ、ニカワの接着力を
より安定させることにもなるし、 能率よく作業が進められます。
裏板の接着が終わったら、いよいよ内型を外します。

ブロックと内型の間に、平ノミを差し入れ、小さな金槌で、
軽くコツンとたたいて、仮付けしてあるニカワをはがします。

全部のブロックがゆるんだら、
それから、少しずつ、浮かすようにして抜いていきます。

内型を抜いたら、表板側のライニングを貼り付けます。(右の写真)

同時進行で、表板のグラデーション(板厚)も最終調整する。
(上の写真の、バックに立てかけてあるもの。)
◇  表板・エフ字孔のカット (エフ字孔のいろいろ)

下の、4枚のエフ字孔の図は、すべてがグァルネリ(Joseph Guarneri 'del Gesu' )のもの。

左から、1741年の「Kochanski(コチャンスキー)」という銘があるもので、ちょっと細めです。

次も同じものの図面違い、こちらは、前より、やや巾が広くなっていますが、図面も書き方で、書く人が違うと、これだけの違いが出ます。

計測者の違いとでもいいましょうか、微妙な曲線の違いや、表板・裏板の 板厚さえも若干、違って表記されています。

三番目のものは、ヘロン・アレンの本から1734年のもの。

二番目に似ています。

最後のものは、その本の第二部に挿入されているエフ字孔のテンプレート図面。

ガルネリらしい特徴が、かなり誇張されて(上部の「くの字」に見えるところ)いて、 これで彫ったら極端すぎるように思うのです。

Kochanski の写真がありますが、それでさえ、よく見ると左右がびっこです。

G線側は三番目をひっくり返したような形、
E線側のものは一番目と四番目を足して2で割ったような形です。

では、筆者はどのようにするかというと・・・、一番目のものを、三番目の太さと力強さを加味して彫ろうと思っています。

実は、下の図はすべて、透過GIFにしてありますが、 同じサイズにして重ねてみると、こんなに違うのか! とびっくりしますよ。

エフ字孔の型紙は、私は透明のプラ・シートでつくっています。
センターラインに合わせたり、透いて見える方が便利だからです。

まず上と下、やや中間にコルク・ボールで穴をもんで空ける。

それから鋭利なデザインナイフ2種類を駆使して、まず、鉛筆の線の外側に最初は軽く、 二度目は少し強めに外周線を刻む。

最初から強くするのは、固い晩材に刃をとられ、思わぬ方向に切ってしまうおそれがあるから要注意。

その穴を起点として、少しずつカットしていく。

上下の細い巾の部分だけは、私は糸鋸の刃だけで切っている。

ただし、逆目のバリを起こさないよう、細かな刃で、そっと挽くようにする。
あとで若干はペーパーで仕上げるが、基本的には切り口が鋭角なままの、刃物によるカットがベスト。
その切り口が、だれてしまわないよう注意する。
エフ字孔をくり抜けば、表板の作業はパフリングとバスバーだけ。

ここでも、筆者は本体に貼り付ける前にパフリングは済ませる。

パフリングのニカワがベタベタついて、あとでニスむらになるのがいやだから、ここで薄くしたアルコール系の着色剤を塗っている。

パフリングは裏板のところで記述したので、ここでは省略。

写真は、パフリングの後でチャンネル彫りをして、その溝を周囲にぼかして仕上げたところ。
汚れがつかないように着色済み。
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全5ページ分の簡略化した流れを スライドショーでもご覧になれます。

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