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図面からの制作・V グァルネリ型

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制作もいよいよ佳境に入ってきました。細かな作業と、体力的な作業が入れかわり続きます。
とくに、裏板のパフリングからエッジ処理は、できばえに大きく影響しますから集中力と、美的感性をもって頑張らなくては・・・。

側板の完成・ライニング圧着

裏板・表板の仕上げ 

パフリング


◇ 
側板の完成・ライニング圧着


ライニングの接着には、ホームセンターで売っている
竹の洗濯ばさみを使っている。

竹製は、写真の中に並べた4つの、いちばん上のものだけど、
市販品そのままだと、先端を尖らせてあり、その下ふたつのように、
先だけを平らに切って使っている。

100円ショップで売られている木製のもの
(4つ並んだいちばん下)も使っている。

また、ライニングを貼ってから、図のピンク部分のように、 角を落として三角に削るのでは面倒なので、ご覧のように、あらかじめ小型のカンナでテーパーをつけて削っておきます。

C部のブロックには、ライニングを斜めに差し込むホゾ穴を、ブロックに三角に切って差し込むようになります。

リブに沿って、アイロンで正確に曲げておき、
ニカワを塗って、手際よく貼り付けます。

ライニングは、裏板や表板を貼るための接着補助材ですから、
リブに6mm程度、 隙間なく貼れていれば問題はありません。

本によっては、この接着面の巾を8mmと表記されているものもありますが、リブ自体の振動面積を狭くしたくないので、
筆者はあえて6mmとしています。

強度的にも、厚さ2mmの約3倍、6mmあれば十分という考え方。

貼り上がったら、リブから出ているライニングを
小型のカンナで平らにならします。

このとき、刃は薄く出して、決してリブまで削らないようにします。
平面が出ていないブロックも、一緒に削って平らにならします。

◇ 裏板・表板の仕上げ

表板も、裏板も、あらかじめ表側をしっかり仕上げておき、
内側を彫るには、彫りやすいように、ドリルスタンドを使い、
6mmほどの穴を無数に空けておきます


このときにはストッパー(楕円部分)をセットし、いちばん下に彫り降ろした状態、つまり最深部でも5mmは残るようにセットしておきます。

人によっては、この時点で例の等高線の、グラデーション図面を描き、
そのプラス・アルファの厚さで段階的に穴を空ける人もいます。


筆者は、彫っていく目安として、最深部で5mmあれば十分、
こまかなグラデーションは仕上げ段階で、という考えでやってます。

表板も、同様にして穴をあけておき、
最初は、大きめの丸ノミで荒彫りをしていきます。
 

あとから四方反りカンナでドリル穴の最深部を目指して彫ります。


このあとは、豆カンナやスクレーパーで所定の厚さに仕上げていきます。
◇ パフリング
裏板は、私はたいがい側板に貼る前にパフリングをしてしまいます。

単板の方が、細かな作業であるし、
動かすのにも自由がきいてやりやすいという理由からです。

写真の左上は、筆者お手製のパフリング・カッターです。

刃はシングルですから、縁から4mmの設定で一回、5.3mmでもう一回、
二度に分けて彫る線を刻みます。

そのあとで、刃の巾1mmほどの、こちらも手製の彫刻刀
(クリーナー:右下の2本)で溝を彫っていきます。


端の方は、欠けやすかったりしますから要注意です。




あっそうそう、パフリング材には普通のタイプ(細い方:巾1.3mm)と
太目のもの(1.5mm)がありますから、
つくるものによって使い分けるのもいいでしょうね。

今回のものは、やや男性的なイメージの強いグァルネリ型ですから、
太めのパフ材を使う予定で溝を彫りました。


グァルネリ型は、C部の、パフリングの合わせ目を、
先端の頂点中央に向かって消去するようにします。
(一方ストラドは、頂点の内側1/3の方向に消去させます)


ライニングと同様、曲線部分はアイロンで曲げ、ぴったり合うようにする。
ニカワづけが終わったら、溝からはみ出しているパフ材をカットしながら、
丸ノミか彫刻刀でチャンネル彫りをします。

チャンネル彫りという言葉は、普通、使われていないかも知れません。

私と仲間たちは、この工程に呼び名がないだけに、欧米の書籍で表現されている チャンネル(溝)だけでは分かりにくいので、
そのように呼んでいます。

表板、裏板のパフリングとエッジ仕上げの一環として、
余分なパフリングを削り取りながら、エッジ近くに溝を彫ります。

その溝の、内側の段差を、全体のアーチングと一体となるように、
スクレーパーやサンド・ペーパーで滑らかにならします。

溝の外側の縁は、パフリングの外側からエッジの端までが
2/3ほどにします。


エッジ側からは、1/3程度に、その出っ張りの頂点がくるように、面を取ります。

結果として、エッジがツンとすまして、反り返って見えるようになります。



すると、ほらね、手工品らしい、りりしくシャープなエッジになったでしょ。(03.11.14)

全5ページ分の簡略化した流れを
スライドショーでもご覧になれます。

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*参考記事
◇ テンプレートの素材についての私見

 あるとき知人が来て、ボクのベニヤ製のテン・プレートを見てハナで笑っていた。 次に来たとき、 「これをつくった」と真鍮のプレートを刻んでつくったものを自慢げに持ってきた。
 でも、よくよく見るとそれは周囲がギザギザ、その真鍮の板でさえ、薄すぎたのか、多少ペコペコしているところも見られた。 それもそのはず、切るにしても、少しお大型のブリキばさみとか金属用のミシン鋸でもないかぎり、鉄ノコではどうしても引っかかってしまい、さりとて力任せに切ったとしてもベロベロに曲がってしまうだろう。

 彼は、当地にあるの電力会社に勤めていたサラリーマン。お嬢さんが中学年のときからヴァイオリンを習い始めたらしい。
 そして、彼自身も、後日、ヤマハの「大人のためのバイオリン教室」に入ってきた。ヤマハでは、丁度、ボクが辞めるのと入れ違いにぐらいに入ってきたので、顔は見ていてもまるで交流はなかった。

 最初に我が家に来た頃、彼は、都下に工房がある大先生のもとへ二年ががりで通い、なんとか一台のヴァイオリンはまもなく完成させるという、その完成の間際だった。
 そして、しばらくしてからまたやってたときに、例の真鍮のテン・プレートを持参したのだ。

 「ねぇ、これでいったいあなた、何百台、つくるつもり?」と聴いた。
 「うーー・・・・」と、彼は答えようがない。ボクの質問の意図を計りかねているようだった。
 彼の工房の先生は、なんでも一級品、という考えらしい。 だから、彼は通い始める初期には、道具と材料だけで二桁以上(万円)のお金を払っている、というか、払わされていた。
 その点、小生は二万円にみたない組立キットからのスタート。

 「例えば、ボクのベニヤの縁を、鉛筆の芯で千回、こすってみたとしよう。真鍮でも同じようにこすったら、はたして摩耗する差が出るだろうか?」。 その辺のことは、ジュゲム、ジュゲム・・・の五劫のすり切れだよね。たとえ減ったとしても、ミクロン以下のオングストローム、いやナノ?、といってもいいほど差のない世界。

 また、つくりやすい素材だと、切るのも、削るのも楽だし、それは、それだけ精度が高いものをつくることができるというもの。このサイトの記述中、筆者は、よく「鉛筆の線で切る」というような書き方をしているが、鉛筆の線といっても、その線の中心か、内側か、外側かでコンマ何ミリかの差が出てくる。そんな差を、ベニヤならペーパーで簡単に削ることもできる訳だ。その上、永いあいだ寸法的に安定しているということは、安心して使えるという結果につながるし、もっとも魅力なのはなんといってもコストが安いことだし、簡単につくることができる。
 
 では、彼がそれほどの精度でつくっているのか?ということにも関わるのである。 たとえば、大工さん、建具屋さん、指物師の職人さんたちは、だれもが曲尺しか使っていないはず。1/10mmの精度があるノギスや、1/100mmのマイクロメーターのようなものは絶対に使っていない。それでも彼らは極微細な作業をこなしている。

 ボクがこうしたものに愛用しているベニヤは、ごく薄い、一分のベニヤ。しかも、 ベニヤの中でも少しでも軽くさせるため、フスマ専用の厚さ2.7mmという、ごくごく薄いもの。こだわりの小生は、そのベニヤをあえてテンプレート用として使っている。

 普通、売っているいちばん薄いものは、昔の1分=3.3mmのものが大半(実寸は3mm弱)。この薄いヤツは、わざわざ探してゲットしているのだ。 厚さこそやや薄いが、その分、薄いニスを二度ほど塗って使っている。 それは、ニスの樹脂で、ほんの少しでも固くなること、また、その上耐水性が増す、ということ。 もちろん、湿気や温度で伸びたり縮んだりしたとしても、こんな用途に使うものぐらいでは、全く無視できる数値のはず。
 極端に言えば、テスト用につくったり、変わり型のヴァイオリンやヴィオラでは、ボクはよくボール紙のテンプレートで間に合わせている。それくらい、ボクは合理主義に徹している。