最愛の妻を胃ガンで失う |
ガンという病気の恐ろしさ Ⅳ |
3ヶ月と13日の闘病記 |
◇ 再入院
抗ガン剤は4週間飲んで2週間休む、その休んだ最後の日の5月28日、夕方、急に発熱。計ってみたら39度もある。 |
◇ 告別![]() 葬儀も、生前の家内とはときおり話し合っていたことでもあるから、ごく地味に、かつ個性的にやった。 祭壇には、ピカピカ、キラキラするものがとても嫌いだったから、あえて、キリスト教用の黒い布をかぶせただけのシンプルな台を使い、それを白い布に取り変えただけ。 変な電気のローソク?もいやだから、遺影の左右には胡蝶蘭などのランで飾り、ごくごくシンプルなものにした。 その胡蝶蘭も、私のラン友達であるKさんが快く引き受けてくれ、その心づくしのフラワーデザインで飾ってくれたものだ。 そのほか、私がつくったヴァイオリンを使い、霊前で生演奏するような、そんな個性的なものにした。息子や娘たちも、そのことには大いに賛成してくれた。 家内が好きだったモーツァルトの『アイネクライネ・ナハトムジーク』、それに、戦死した父も好きだったし、 私の大好きなバッハの『G線上のアリア』、その二曲を、私の先生(吉貝多佳子先生)にお願いして演奏していただいた。 少なくとも当地では初めての、スマートでシャレた内容の葬儀で送ってやったつもり・・・。 もともと、我が家の菩提寺はご先祖様が眠る新潟だった。 三年前、息子の赤ちゃんが乳幼児突然死症候群で亡くなったこともあり、その新潟の檀家だった墓地から撤去、市内の同じ宗派・曹洞宗のお寺(東光寺)に移築していた。 ![]() 移築とはいっても、自然石を使い、家内と一緒にデザイン。 墓石や花立、線香立てまでが自然石、台座には桜ミカゲを使用。 しかも、価格の高い国産品ではなく、こちらは安い中国製。安くても、中国産であっても、石は石、溶けたり腐ることはない。 その正面には、我が家の「時空」を象徴するうに『光陰』の二字を大きく入れ、右下に小さく、『角谷家』と横書きで入れた。 ご覧のようなオムスビ型。 墓誌だけは、亡き母が作ったものだったから、それはそのまま新潟から持ってきて、右端に立てた。 当たり前の「お墓」なのに、「何々家の墓」なんてよく見かけますが、そんなナンセンスなことをする勇気はボクにはない。 無駄な装飾や華美な曲線はつとめて排除し、こちらも葬儀の祭壇同様、ごくごく自然体でシンプルなデザイン。 ここでもふたりの個性を、十分、生かしてつくったものだから家内も自画自賛、このお墓をたいへん気に入っていた。 きっと、きっと、心安らかに眠りについたことを確信している。 昨年、妻に先立たれた友人のように「涙に明け暮れる」なんてことは、私には絶対にない。 むしろ、知り合ってから夫唱婦随、足掛け45年間、こんなに素敵な女性と人生をともにできたことを心から歓び、残された人生は家内同様、 つとめて明るく、できるだけ輝いて生き、その分、眼一杯、供養するつもりでいる。 まさに「会者定離」。 結婚前、彼女には『死んでも君を離さない!』と誓った私自身の言葉通り、私はいまだに彼女を離していない。 四十九日の納骨する前夜、骨壺を空けた。 そして、骨壺には何年たっても色落ちしないエナメルで、戒名と俗名、それに没年を記した。 さらに、お骨を二切れほど、お香を入れる小さな蓋付きの陶器に入れ、家の仏壇に安置してある。 それは、直径6センチほどの丸い容器、家内好みの、一見、九谷焼風の香堂なのだが、100円ショップで見かけて衝動買いしたもの。 もちろん、お寺の和尚様や親族には分骨したことは話してある。 娘が、『それなら、心筋梗塞の患者がニトログリセリンを入れる、首から下げるロケットを買ってあげようか』と提案されたが、それは断った。 私には、チャラチャラするものをつける趣味はないし、仏壇だけで十分。 よく「あまり、後を引くようなことは、俗世に未練を残すことになり、仏のためによくない」とはいうが、そのことの善し悪しは別にして、お骨のすべてをお墓に入れてしまうのはあまりに忍びなかったし、離したくはなかった。 そして子供たち全員に、『遺言書は書かないけど、もし、俺が没したときには、絶対、ふたりのお骨をまとめ、ひとつの骨壺に一緒に入れるように』、と指示した。 若き日の、東京と沼津に別れていたときもふたりの心は一緒だったし、お骨だけではなく、いまでも気持ちは通じ合っていて精神面ではいつも一緒なのだ。 |
◇ 最後までお読みいただいた方へ 他人の文を読むことには大変なエネルギーを要することでもあり、ここまでお読みいただいたことに感謝いたします。 家内は、胃ガンと分かる直前まで、メタポリック症候群ではありませんが、理想の体重より多いことに留意し、 ここ二、三年、「痩せる」努力をしていたほどでした。しかし、なかなか思うように痩せないと、よくいっていたことも事実です。 通常、よく言われているように、ガンになると痩せるといいますが、家内の場合、上の、退院直後の写真でもお分かりいただけると思いますが、 ほとんど痩せるような症状は出ていません。 それほど、自覚症状がないまま進行しているのですから、恐いのです。私は、いままで健康すぎて、市の健康検査でさえ一度も行っていませんでした。 でも、昨年から受けることにして、あらゆる検査をしました。ガンは、早期発見が治療を容易にし、また、余命を伸ばす唯一の手段です。 ずいぶんシリアスなことも書きましたが、悲しみや辛さは、本人のみならず家族や肉親にも大きく与えるものです。 ![]() どうぞ、これをお読みになったら、いままで私のように定期検診を受けていなかった方も、ぜひ、ぜひ、受けていただくよう、強くお薦めします。 ◇ 葬儀から二年後・三回忌の法要を
前ページに載せた写真、家内にとっては元気だった最後の写真から、一枚の油絵を描きました。元々人物画は苦手な方、でも、できるだけリアルに描いた。 |
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