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マッジーニ・タイプのオールド 2 HOME

世の中、広いもので、あちらのネット・オークションをのぞいたら、
マッジーニ・モデルで検索すると、なんと数点もの出展があった。

その中のひとつ、あちこちにクラックがあるジャンク品を、ごく安く手に入れた。

現状

全体としての写真は、まぁまぁよく見えるのだが・・・
表板の下、エフ字孔からエンド・エッジにいたる「割れ」があったり、サイド・エッジには欠けたところもありました。

この二重のパフリングもマッジーニ・モデルの特徴です。
前の修復が悪く、手に取ってみると、接ぎ目が段差になっていたり・・・。
その部分が、リブとの接着も一部が剥がれていました。
裏板も、中央のジョイントが悪く、ニカワを流し込んで埋めたように、黒っぽく太い線になっています。
でも、これをつくった製作者の技量はたしかなもので、スクロールの彫刻は見事でした。

しかも、マッジーニモデルとしての四周巻きが、きれいに、バランスよく彫られています。
蓋を空け、気に入らないニスも剥がして、修復スタート
指板を外し、表板も剥がしたところ。

アメリカ人の、素人が吹きつけのスプレーで塗ったものか、ニスは合成樹脂製のもの。

これも剥がし、塗り替えるつもりですから、段差のあるところは遠慮無くスクレーパーでならしました。(白く線状になっているところ)

もちろん、板厚のチェックは怠っていませんよ。
表板も裏から見るとには、修復の跡がいっぱい。

合理主義のアメリカ人のリペアー師がやったものか、ガラス繊維のような不織布を丸くくり抜いたものや、長方形にカットしたものがパッチとして貼られていた。

たしかに、ガラス繊維なら薄くても張力には強く、接ぎ目が剥がれることもないだろう。
バスバーは、今までなんどか紹介したような、表板と一体化したもので、削り出しによるもの。
バーの根元にもクラックが出たのか、その部分にはL字に曲げて不織布が貼られている。
裏板にも、中央の接ぎ目にパッチで補強してある。しかも、外枠式でつくったものでしょう、ご覧のようにコーナー部のブロックは、後から補強目的で貼ったものだったし、アッパーのコーナーにはブロックはありません。

ラベルには、 Gio: Paolo Maggini  in Bressia 1656 とあり、ご丁寧に年号の下二桁だけが手書き。

本物のマッジーニなら、1632年に没しているのだから、当然、これはニセ物のラベル。

この部分を、よくよく見ると、中央の補修も二度にわたって行われていることが分かる。

インナー部のパッチと、エンド側のふたつのパッチと、ニカワの古さがあきらかに違うからだ。
それにしても、後からやった人は、なんと無骨無い、分厚いパッチを貼っていることか。

ジョイント部の、目開きを防止するための補強の目的なら、張力テストをしているわけではないが、これほど分厚い必要はないと私は考えている。

極端に言えば、前述した、ガラス繊維の紙程度の厚さでも、左右の「引っ張り」に関しては、かなりの補強にはなるはず。
そのパッチも気になるので、全体の厚さを統一して、薄く削った。

ラベル周辺が微妙に汚れていたので、絵筆に水をつけ、丁寧に汚れを落としたが、その汚れの中には、何となく紙の繊維のような物もとれた。

こうしてよく見ると、ラベルより二回り大きく、白っぽく色が変わって見える部分がある。
そこには、きっと元の製作工房のラベルが貼ってあったのだろう、そのため、そこだけが永い間にもかかわらず、汚れずに済んで色の違いになったのだろう。

それをだれかが剥がし、このニセラベルを貼ったのは明白だ。

リブのコーナー突端が、裏板の先端よりほんの0.5mmほど出っ張っていたので、ついでにリブの左右、数センチを剥がし、へこめて貼り直しているところ。

表板の欠落部分にも、スプルース材の年輪一本分を貼り付け・・・
とはいっても、クランプで圧着はできない。ここは針で貼る。

そして成形。

何枚か前の裏側から見た写真で、エフ字孔の下からエッジまでの割れがありましたが、その補修。
ローア・バウツ全体を旗金でクランプしたり、エッジの欠けにスプルースを補填ししたり、割れの延長線上に段差がつかないように小型のクランプで押さえています。
そして、ニスも好みの色に塗り間直して、修復・完成!

黄色みが強い「黄土色」だったニス色を、レッド・ブラウンに・・・。

きれいに生まれ変わったでしょ。

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