人類史に疑惑?(4)
前回述べたように、一連の人類史への疑惑(γ)とは、現在最有力な見解で想定されている年代よりも遥か前に、既に各地域集団が成立していた可能性を示唆する発見があったかもしれない、ということである。前回では、「白人」にとって衝撃的云々というのは邪推だろう、としたが、ただ、「白人」に近い人間が通説で言われている時期(約12000年前とされているが、4〜3万年前とする見解もある)よりも前にアメリカ大陸に渡っていたとすれば、それは或る意味で「白人」にとって「好都合」だと言えるかもしれない。
アメリカ大陸の先住民は普通モンゴロイドとされており、「白人」側にはある種の後ろめたさのようなものがあるのだが、γが事実だとすれば、それが多少は減ずるかもしれないのである。では、その可能性はどうなのかというと、実は、アラスカで1万年前頃のコーカソイド系と推測される遺体が発見されていて、人類がアメリカ大陸に初めて渡った頃に、アメリカ大陸にはモンゴロイドだけではなくコーカソイドもいた可能性がでてきた。更に、南米からは、オーストラロイドと形質的に近い約13000年前と推測される人骨が発見されたとの情報もあり、アメリカ大陸への人類の進出に関しては、かなり複雑な様相を呈してきているようである。
ただ、前回述べたように、こうした地域集団間の遺伝的・形質的相違よりも、各地域集団内部の個人間の遺伝的・形質的相違の方が大きいので、特定の個人がどの地域集団に属するかという問題は、実のところそれ程自明なことではない。特にコーカソイドとモンゴロイドについては、後者が前者から分岐したとする見解も有力なので、コーカソイドとモンゴロイドの両方の特質を有した個人がいたとしても、何の不思議もないだろう。
そうすると、よくモンゴロイドとコーカソイドのどちらかと問われるアイヌについても、二者択一的にどちらと言う必要はないのかもしれない。各地域集団の区分はかなり曖昧なもので、一般に考えられている程には、自明なものではないのだろう。故に、コーカソイド的遺伝子・形質を有する遺体が、1万年以上前にアラスカで発見されたとしても、それ自体は特に不思議ではないのだろう。
では、γの問題点は何かと言うと、それは年代があまりにも古過ぎるということである。書き込みの中には、測定結果は数百年前と出たが、まだ確証はなく分析は継続中というものもあり、俄には信じ難い話である。仮に、数百年前ではなく数十年前の遺体だとしても驚くべき話で、その頃には各地域集団が既に成立していたということになり、現在有力なアフリカ単一起源説は崩壊することになる。
私は、「白人」にとって衝撃的・都合が悪い云々という解釈は採らなかったが、仮にγの一部でも事実だとして、何らかの配慮なり妨害なりで発表が延期されているのだとしたら、それは既存の最有力な学説を根底から覆すことへの反発・圧力なのだろうと思う。
ただ、そうすると、同時代の他の地域はどうなのか、という疑問が生ずる。何十万年前のことだとしたら、東・東南アジアではエレクトスが繁栄しており、現在では概ね否定されているが、エレクトスも現代人の祖先ということになるのだろうか。仮にそうだとすると、各地域間で随分と「進化」に差があったことになる。或いは、通説よりも時期は随分と遡るが、コーカソイドからモンゴロイドが分岐したのだろうか。
こうした推測も、結局のところ公式発表がなければ分からないことだが、そもそも全くのガセネタかもしれないので、まあ気長に発表を待ち続けるしかないということだろうか。