人類史に疑惑?(12)

 

 2002年2月1日の日記にも書いたが、驚くべき研究が発表された。まずは、以下に全文を掲載する。

 

地球にない生命体、作れる可能性…理研が成功

 細菌から人間まで地球の生命体がほぼ共通に使っている生命活動の言葉「遺伝暗号」とは全く別の言葉を作りだし、生物の細胞内で起きているのと極めて似た反応を起こすことに、理化学研究所の平尾一郎チームリーダーたちが世界で初めて成功した。研究が進めば地球上にいる生物とは違った生命系統を作り出せる可能性もあり、今後波紋を広げそうだ。米科学誌ネイチャー・バイオテクノロジー2月号に掲載される。

 生命の設計図とされる遺伝情報は、4種類の化学物質(塩基)A、T、C、Gで書かれている。たとえば人間の塩基の数は約30億個で、この並び方をもとに細胞内で生命活動を支えるたんぱく質ができる。並び方の単位は塩基3つからなる遺伝暗号。それぞれに対応して、たんぱく質の部品(アミノ酸)の種類が決まる。ただ暗号の種類が限られているため現存生物が使うアミノ酸は20種類。平尾さんたちは、人工的な塩基としてS、Yを合成し、これに従来の塩基をつなげて新たな遺伝暗号を作り、細胞の中と似た状態にした試験管の中で、通常の生物は使わないクロロチロシンというアミノ酸を持ったたんぱく質を合成させることに成功した。

 天然には存在しないたんぱく質を作る新たな手法となるほか、なぜ地球の生命体がA、T、C、Gという塩基だけを使っているのかという究極のなぞ解明に役立つ可能性もあり、三浦謹一郎・東大名誉教授は「人工塩基を働かせて現存の生命とは違う生物を作り出すことを可能にする研究で興味深い。人間には応用しないなど倫理的な配慮も必要だろう」と話している。

 

 実用化にはまだ時間がかかるのかもしれないが、これは大変な研究成果と言える。ネットでは、いよいよ人間は神の領域に近付いた、などといった発言もあったが、必ずしも誇張表現ではないと思う。現存する地球上の生命にはないアミノ酸決定方式を創出したのだから、ある意味では、既存のクローン技術以上の衝撃的な研究とも言える。
 既に、通常の生物の使わないアミノ酸をもったタンパク質の合成に成功したとのことだが、研究が進めば、さらに多くの自然界には存在しないタンパク質を作ることが可能となるかもしれず、将来における実用面での可能性をかなり期待できるのではなかろうか。

 また、実用面での成果だけではなく、記事でも指摘されているように、現存する地球上の生命の謎を解明する手掛かりともなりえるという意味でも、まさに多大な可能性を秘めた研究と言える。
 地球の生命がATGC(これはDNAの話で、RNAではTがUに置き換えられるのだが)の4種類の塩基を使っているのは、何か大きな理由があるのか、それとも単なる偶然なのか、この研究が進めば解明される可能性も出てきた。また、そうした研究が進めば、そもそも生命とは何なのか?という哲学的性格も濃厚な問いへの回答もある程度は可能となるかもしれない。

 人類史の謎の解明には直接関係はない研究ではあるが、人類史についての一連の噂の中には、種と生命の起源の謎に関わるものだ、というものもあったので、あるいはこの研究も関係があるのかと一瞬思ったが、一連の噂では、ゲノム解析の過程で判明した事実とあったので、恐らくは無関係なのであろう。
 とはいえ、研究が進めば、あるいは人類史の謎の一部が解明されることになるかもしれず、またそうでなくとも、大変興味深い研究であることには違いはないので、今後の研究の進展に大変期待したいところである。

 

 

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