海底に沈んだ歴史?
今回からは、読みやすくなるように文字間隔を変更するとともに、文中のリンク先については水色で統一し、下線を省いた。もし読みづらいようなら、メールまたは掲示板にて御指摘いただければ幸いである。
4月12日の日記にも書いたが、インド南東部のベンガル湾沖において、海中に没したとされる遺跡?が発見されたとの報道があった。今年(2002年)1月には、インド西部スーラト沖のカンベイ湾で遺跡?が発見されたとの報道があり、偶然にも、インドの沖合であいついで遺跡らしきものが発見されたということになる。
両遺跡の信憑性については、疑問も多々あるのだが、海底で遺跡が発見されるということは充分ありえることで、今後は、従来は技術的な制約もあって軽視されてきたところのある海底遺跡が、歴史の解明に大いに役立つことであろう。
有史以降、地震などの天災により集落のある島や陸地の一部が海中に沈んだ記録は世界各地に認められ、近年では、海中調査の結果アレクサンドリアの一部が海底に沈んでいたことが明らかになり、大きな話題となった。
また、集落跡というわけではないが、沈没船の発見も、当時の生活や流通のありようを知る重大な歴史的証拠となりえる。瀬戸内海や地中海などにおいて、陶磁器や酒瓶などを大量に積載した沈没船が発見されることは珍しくない。
こうした天災または人災で海中に沈んだ遺物・遺跡も重要なのだが、あるいはそれら以上に重要と思うのは、氷河期においては陸地でありながら、その後の間氷期には海中に没してしまった土地である。
十数万年前に南アフリカにいた初期現生人類は海洋生物を常食しており、現生人類はそれまでの人類とは異なって、登場直後より頻繁に海に出かけていたものと思われる。したがって、現在では海中に没してしまったような海岸近くの土地に住んでいた人類も多数いたものと思われる。
そうした居住跡を発見することはなかなか難しいだろうが、今後そうした発見例が増えれば、特に中期から後期旧石器時代における人類の移動経路や生活形態について、多くの知見をもたらすことであろう。従来、この分野においては、海中での発見などほとんどなかったようだが、氷河期の長さを考慮すると、通説に大きな修正を要求するような大発見もあるのではなかろうか。