ネアンデルタール人とクロマニヨン人

 

 ネアンデルタール人の化石に武器闘争と治療の跡がある、との報道があった。以下、引用である。

 

 フランス南西部の遺跡で見つかった約3万6000年前のネアンデルタール人の頭がい骨の化石に仲間から武器で襲われたと見られる傷跡があることを仏、スイスの研究チームが突き止めた。最近の研究で、ネアンデルタール人は、集団で弱者の面倒をみながら生活する社会性を持っていたと推測されているが、同種間によるいさかいも起きていたらしい。詳細は23日付の米科学アカデミー紀要に掲載される。

 スイス・チューリヒ大と仏ボルドー大のチームが発掘された頭がい骨の断片をコンピューターで再構築して分析。なたのような柄のついた道具で襲われた傷を見つけた。ネアンデルタール人は狩猟や肉の解体などにこうした道具を使っていたとされるが、武器としても使っていたらしい。

 ただ傷口には、治癒した痕跡があり、けがをした後で、仲間の誰かが面倒を見ていたとも推測。いさかいの一方で仲間同士の助け合いもあったとみている。

 ネアンデルタール人は25万年から3万年前ごろまで、ヨーロッパや西アジアに住んでいたとされる古代型新人。遺伝子分析の結果、現代人とは系統上は関係ないとされている。多くの化石で傷が見つかっており、イラクのシャニダール遺跡では約5万年以上前の化石のあばら骨に刺し傷が残っているが、今回のような大きな傷と治療の跡がはっきりした例はない。

 

詳細が分からないので断言はできないのだが、はたして記事にあるように同種間の闘争だったのだろうか。あるいは、ホモ=サピエンスであるクロマニヨン人に襲撃された、との想定も可能なのではなかろうか。

第83回でも触れた、アラン=テンプルトン氏の研究のように、ネアンデルタール人とクロマニヨン人との混血を想定する見解もあるが、やはり両者の間には混血はなく、全面的な置換があった可能性が高い、と私は考えている。

その場合問題になるのは、はたして全面的な置換は殺戮を伴ったものかどうか、ということで、現生人類の単一起源説論者はこれに否定的である。現生人類の多地域平行進化説論者は、単一起源説論者と同様に、そうした殺戮はなかったとしているが、全面的な置換は殺戮なしにはありえないことで、故に単一起源説は間違いなのだ、と主張している。

私は今まで、単一起源説の立場から、殺戮なしの全面的な置換があったと主張してきたのだが、それは、殺戮を示唆するような証拠がなかったからである。今後、今回のような、明らかに武器による傷跡のあるネアンデルタール人骨が多数発見されたら、同種間の闘争のみではなく、クロマニヨン人との闘争の可能性、つまり、アンデルタール人とクロマニヨン人との全面的な置換は殺戮も伴っていた、との想定もしなければならないだろう。

 

 

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