最古の人類化石発見?
最古の人類というかヒト科(チンパンジーやゴリラをヒト科に含める場合はヒト亜科)に属すと推測される化石が発見されたとの報道があった。一定期間が経過すると記事は削除されるようなので、以下に引用する。
700万年前の猿人化石発見 チャド、人類の祖先で最古
人類の祖先としては最古の約700万年前の猿人とみられる化石が、アフリカ中部のチャド共和国で見つかった。これまで最古とされていた猿人より100万年ほど古く、東アフリカを人類発祥の地とする従来の説が覆る可能性もでてきた。仏ポワティエ大学のミシェル・ブルネ教授らの国際研究チームが11日付の英科学誌ネイチャーで発表する。
化石が出たのは、チャドの首都ヌジャメナの北約800キロのトロスメナラ地域。昨年7月、地元の大学生が砂漠の中の砂岩層で頭骨を発見。その後、あご2個、歯3本が見つかった。最低でも5体のものとみられる。
サハラ砂漠の南の地域を指す「サヘル」と、国名にちなみ、「サヘラントロプス・チャデンシス」と名付けられた。愛称は「トゥーマイ」。現地では乾期の直前に生まれた子どもにつけられる名前という。
出土したゾウやカバなど動物化石の分析や、年代が特定されている東アフリカの地層との比較などから、600万年以上前の化石で、700万年前に近いと判断された。火山灰の地層が少なく、放射年代測定法は利用できなかったという。
張り出した額の特徴などから、頭骨は大人の男とみられる。頭蓋(ずがい)の容積はチンパンジーと同程度の350CC。形は類人猿に近いが、犬歯は短く、類人猿ほどとがっていないなどヒトに近い特徴を併せ持っていた。頭部以外の化石がないため、二足歩行の確認はできないが、頭骨の形状は二足歩行する他の猿人に近いとしている。
研究チームは、従来の猿人とは異なる種で、チンパンジーと人類の共通の祖先に最も近い最古の人類と分析している。
最古級の猿人化石は、ケニアで00年に見つかった600万年前のオロリン(通称ミレニアム・アンセスター)や、昨年、エチオピアで見つかった約550万年前のラミダス猿人の亜種が知られている。いずれも東アフリカ地域からの出土で、同地域が人類発祥の地とする説が有力視されていた。
この化石の位置付けは難しいところで、人類とチンパンジーの共通祖先かもしれないし、共通祖先から分岐した直後の最初期の人類という可能性もあるだろう。報道を読んでいると、後者の可能性のほうが高そうだが、たとえそうだとしても、これが現生人類の直接の祖先かというと、必ずしもそうとは断言できず、最初期の人類の一種で、後に子孫が絶滅したという可能性もある。
かりにこの化石が最初期の人類で現生人類の直接の祖先だとすると、問題となるのは、分子生物学の分野で提示されている、人類とチンパンジーとの分岐年代は500万年前という仮説との整合性である。数百万年前のこととなると、分子生物学で推測される分岐年代にはずいぶんと幅があって、前後100万年の誤差は見込まねばならないと聞いたことがあるが、そうだとしても、ズレは大きいように思われる。あるいは、化石の年代測定結果が古く出てしまっているのかもしれないが、現時点では断言の難しいところである。
今回の発見は、人類アフリカ起源説を否定するものではないのだが、その衝撃は大きく、前回触れたグルジアでの発見以上である。これまで、人類の起源地は東アフリカというのが有力説で、他の地域では最初期の人類の化石は発見されていなかったのだが、この発見により、人類の起源地はアフリカ中部ということになるかもしれない。あるいは、人類の起源地は東アフリカまたは他のアフリカ地域だが、誕生後、従来考えられていたよりも速く生息地域を拡大したという想定もありえるだろう。今後の発掘と検証に期待したいところである。