【私の趣味】 俳句 Haiku


Ver.1.1 2008/09/14
 俳誌「白」9・10 / 2008 VOL235 P20に掲載された私のエッセーをご紹介します。

 題=「

「センチメンタル・ジャーニー」
福島雪雫   .
 今回は、一人で娘が辿ったであろうワシントン観光のメインコース、ホワイト・ハウス、ワシントン塔、第二次世界大戦記念碑、リンカーン記念館を歩いてみた。
こよなく晴れた 青空を♪
悲しと思う せつなさよ♪
 うねりの波の 人の世に♪
  はかなく生きる 野の花よ♪
   なぐさめ はげまし 長崎の♪
 あゝ 長崎の鐘が鳴る〜♪
 天気がよく爽やかな風が吹く素晴らしい景色なのに、悲しい。つい、「長崎の鐘」の歌を口ずさんでいた。
 いろいろ思いながらゆっくり歩いた。娘は以前「長崎ハウステンボス・ホテルヨーロッパ」に勤め、今まで多くのよき友達とも交流をしていた。あの鐘の音は娘のイメージでは瀟洒で美しい大浦天主堂だ。
 しかし、ここは日本から遥か遠いワシントンだ。
 ホワイト・ハウス方面に帰ろうとすると、記念館に隣接する公園の中に小さな「土産とコーヒー」の店があった。娘も多分ここで一人静かに軽食を摂ったのだろうと考えながら私も昼食をした。 リンカーン記念館を臨み、緑の風に優しい陽がそそぐ至極のひと時であった。
  君がさやけき 目の色も♪
  君くれないの くちびるも♪
 君がみどりの 黒髪も♪
    またいつか見ん この別れ♪
 この「惜別の歌」(三番)は将に私の娘をそのまま表しているように思えて、自然に口ずさみ、「もう天国でしか会えないのだなぁ」と「この別れ」を思い、一人心の中で号泣した。
 半年前にバージンロードを娘と歩いたばかりなのに、皆に祝福されあんなに幸せそうな顔をしていたのに、そして今回は娘を慰めるためにこのワシントンを尋ねる予定が、あまりにも早い「神からのお召し」に戸惑い、一緒に旅できなかった無念さに一層悲しみは増し、本当に辛い「センチメンタル・ジャーニー」となってしまった。

ワシントン流るる水に散る桜    雪雫

  

【註】本誌ではA5版・縦書き2段構成・1ページ


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