ハチ的コミケット72従軍記
徒労と旅する

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 間もなく日付が変わろうかという、23時過ぎ。JR大森駅に着いたハチは、カートをゴロゴロと転がし、今夜の宿たる東急大森インへと向かっていった。おお、そういえば、飛行機に乗って以来、携帯の電源を切ったままだったな…と、携帯の留守電をチェックすると、ヨースルの人が、只事じゃない口調で「電話をよこせ!」という。

 何事?と電話をかけると、先程と同じような口調で、「何をしていた!?Kも心配していたぞ?」という。いや、何って…宿に向かってるんだけど。で、案外すんなりと行けたんで、連絡し忘れたよ。と言ったんだが、電話の向こうは、怪訝な様子。確かに、無事に旅をした。と言うには、余りにも前科が多すぎるわな。

 何にしても、今回の夏コミ遠征は、珍しく往路が順調そのもので、イベント本番も期待できるぞ。と、宿に到着して、ヨースルの人とかに言った。

 ――え…っと、あの時の撤回させてくれない?実は、例によってって程じゃないけど、それなりに波乱含みの旅をやらかしたワケよ。そして、以後もハプニングの続出でねぇ、コミケで始めてかねぇ?これほどの敗北感をに打ちひしがれたのは。

 そんなワケで、これから綴られる文は、自分自身への戒め及び、後への備忘録を兼ねて書いていく。嘲笑するなり、豪快に転倒したハチの車を自身の戒めとするなり、お好きなように。


8月18日


 憤………怒っっ!!

 朝、事前に準備しておいたカート一式を手にするや、力の限り動かしたハチ。ってか、そうしないと動かない

 長い間、ハチの部屋の肥しと化してる不良在庫を、前のイベントから無料配布に設定。今回は、その在庫をさばこうと、欲張ってかなり多めに持参。それが結構重くなってね。

 試しに昨日に計ってみると、箱だけで23sだった。これに、カートやら衣服類等を納めたバッグやらを加えると、30sを超えるだろう。…カート大丈夫?

 出発直後は、肩にバッグを背負いつつ、カートを引いていたが、ものの数分で肩が死にそうになったので、バッグをカート上の荷物の上に置いてゴロゴロと引くと、良い感じになった。が、カートの音が、心なしか悲痛を帯びたように聞こえる。

 荷物を駅のロッカーにブチ込み、仕事へ。例によって、仕事終了後、一旦帰宅。着替えて(時間があれば風呂に入って)から、福岡空港から東京に飛ぶ事に。去年は往復でスカイマークを使ったが、今回は往路が取れなかったので、代わりにJALの2135発を取ってある。

 ここ数日の生き地獄がウソのように、すんなりと仕事を終え、帰路に着くハチ。が、自宅のアパートに着くや、怪しい男が付きまとってきた。

 あ〜…そうだった。そういえば、NTTがフレッツ光の説明会とやらを、ここでやるとかいってたな。でも、ハチは既に申し込んで、あとは工事日程が決まるのを待つばかりなんで関係ない。――と思ってたらよ?そのNTT男、先の旨を話しても、延々とセールスの話を止めないんよ。

 だ・か・ら、もう申し込んでるんだってば!と言っても、そのNTT男は、耳を貸そうとせず、ひたすら、ぴんたぼ語でたたみかけてくる。くぁあぁ…ネイティヴなのに、日本語を満足に理解できないのか?ソフトバンクの黒人男性は、日本語堪能なのによぉ。

 振り切って部屋に入り、風呂に入って準備をしていると、ヤツはハチの部屋まで押しかけてきて、先ほどの話を延々と繰り返す。おかげで大幅に時間を食い、出発がギリギリになったよ。本当なら余裕で出発できたのに。

 拝啓、日本電信電話株式会社様。御社は一体どのような理由で、ストーカーを社員に雇っておられるのですか?

 ハチは、NTTの信頼性を買って、フレッツにしてるんだが、今回の件で、信頼が大幅に揺らいだ。ヤフーBBへの乗換えを本気で考えたぐらい。これ書いてる現在、やっと開通し、快適なネット生活を満喫してるのだが、今思い出しても頭にくる。

 ――もういい、忘れよう。さて、コインロッカーに押し込んでいた荷物を回収、空港へ。それからすぐに、荷物を速やかに押し付けるべく、カウンターへ。が、ここで合計30sを超えようかという、重い荷物が裏目に出た。

 当初、バッグも一緒に預け、手ぶらでお土産を物色するつもりだったんだが、係の人に「これだと超過料金が要る」と言われ、バッグだけは手荷物で持っていくことに(本来は、あの23kg箱の時点で重量オーバーだったんだが)

 教訓1:あんまり重いのなら、事前搬出も考えよう。

 土産物屋が閉店ギリギリなんで、さっさと差し入れ用の買い物を済ませ、出発ロビーへ。概ね2135時頃、ハチの乗った飛行機は、福岡を飛び立った。さて、今回の飛行機はJAL機なので、機内サービスがある。機内放送の落語チャンネルを聞きつつ、コンソメスープとコーヒーを頂いた。疲れが取れ、先ほどのストーカー西日本の人の事を、しばし忘れることが出来て満足。

 教訓2:機内サービスは究極の癒し也

 心身を多いに休めつつ、飛行機は羽田に到着。さて、これからが大変だ。時計はとっくに2300時を回ってる。福岡では交通機関の類は、2300時を過ぎると、平日でも殆ど無くなるが、流石は大都会。2400時以降も、多少は残っている。とはいえ、急がねば。

 まずは、手荷物受け取り場へ急ごう。ここでやたら重い荷物を受け取り、カートに縛り付ける作業をするハチ。これが意外と手間取る。何時の間にか放置プレイとなり、職員さんが「ったく、何グズグズしてんだよ。どうせその箱ん中には、お前のキモい顔みたいな、クズの本しか入ってねぇんだろ?このキモオタがっ」と心の声を発しつつ、「お荷物の確認させて頂いて宜しいでしょうか?」としゃしゃり出て来る。

 これがTBSの子供向けアニメ『リストカッターケンイチ』のケンイチ君なら、ここで受取り場をJALカラーに染めてしまう所なんだが、このテのシチュエーションには完全に慣れっこなハチは、職員の心の声など馬耳東風でスルーし、職員のおねーさんに預かり票を渡す。

重すぎ注意とかで、こんなのを貼られた


 さて、またクソ重いカートを引きずる旅の再開である。目的地は、今夜の宿が有る、JR大森駅。京急で行く方が手っ取り早いんだろうけど、モノレールから眺める夜景が好きなので、東京モノレールから乗り始める。電車を乗り降りする時に、どうしてもカート持ち上げる必要が有り、死ぬほど堪えるが、それだけの価値は有ると、個人的には認識してる。

 浜松町でJRに乗り換え。去年よりはかなり遅れたが、覚えてるぞ。確か……って、入り口が閉まってるじゃないか!?

 これは不覚!大荷物ゆえに、動きが鈍かったのが悪かったのか?ああ……――仕方ない、タクシーで行こう。タクシーを拾うべく、駅の外へ向かったら、偶然にも改札を発見。しかも運が良い事に、最終まであと1本か2本ってギリギリだった。で、後から考えたら、さっきの塞がってた入り口ってのは、世界貿易センタービルへの通路か何かを勘違い誤認したモノらしい。

 ようやく一息ついたハチは、周囲を見渡す余裕ができた。さて、明けて0時前後の京浜東北線はというと、終電間際とはいえ、それなりに混んでたね。今回の夏コミは華火大会を避けたと聞いたんだが、浴衣姿がチラホラ。何だかんだで、どっかで何かヤってる、って所だろう。あと、インド系だか何だかな外国人男性の姿が、実に多く目立ったのが印象的だったね。福岡でさえ、こんな多く見かけないのに。

 大森駅に到着。ふとカートを見ると、箱を縛っている2本のゴム紐の内、1本が切れているじゃないか。ま、こんな事があろうかと、予備のゴム紐を用意しておいたので、慌てず騒がずに交換する……っと、そういえば、飛行機に乗って以来、携帯の電源を切ったままだったな――なワケで、以後は、冒頭と同じく。

 ふぅ…まだイベント本番が始まっても無いのに、この有様。これから一体どうなるのやら。ところで、ヨースルの人に指摘されたんだが、「ゴム紐が切れて、よく危なく無かったよな」と。

 その時には、何で?ってワケ分からなかったんだが、帰宅後の後片付け中、ゴム紐の袋に書いてあった説明書きに『ゴムが切れると周囲に危害が及ぶので注意云々』ってのを見つけ、青ざめるハチ。しかし、切れた割には、紐が弾け飛ぶなんて事はなかった。はて、どういう事か?と考えたら、どうやら、カート荷物である箱の上にバッグを乗せたのが、幸いしたらしい。つまり、バッグが押さえになっていて、ゴム紐があちこちに飛ぶのを防いでくれていたって事。

 教訓3:カート用ゴム紐は予備を用意すべし

 さて、ホテルへ。今年も去年同様、ヨースルの人と相部屋。これが…いや…何というか…話が長いのよ、この人。これがイタイ人の自分語りなら、スルーするなりどうにでも出来るんだが、この人の場合、なまじ話が面白いものだから、眠いから止めてくれないか、とはなかなか切り出せなくてね。結局は、2時間程度、体を休めることしか出来なかった。ま、いつもの事なんで、割と慣れてるけどな。


8月19日


 0430時。多少ウトウトしただけのハチは、ベッドから起き出し、シャワーへ。去年と同じく、コミックバスツアーの送迎バスを利用すべく、6000時頃には出発することになっている。先にシャワー使わせてもらう為、こうやって早めに起きてるワケ。一足早く風呂を済ませ、入れたお茶を飲みながら出発を待つ。

 ところで、今回の遠征では、部屋着用の短パンを持ってきた。ホテル備え付けの浴衣は、着慣れてなくて違和感有る。かと言って、服のまま寝るのはシワになるし、下着のみではちょっと寒い。なワケで、試しに持ってきたんだが、これが良い感じ。(あんまり褒められた事ではないが)自販機コーナーへの買出しぐらいなら、そのままの格好でも行ける。

 教訓4:短パンは持って行って損は無い

 さて、準備を済ませ、別室のKもやって来て、全員でチェックアウト。これからバスに乗り込むんだが――おや、先にバスに向かってたヨースルの人が、運転手と何やらモメている様子。よく聞くと、バスのトランクは予約者優先だから入れない、いや入れろ、とかで言い合ってるらしい。ああ、そういえば、サークルPOP用に、大荷物を用意してたと言ってたよな…って、ハチもヤバいじゃないか!?てか、去年は普通に入れてくれたのに、この期に及んで何を言い出すのか?この会社は。

 結局、ヨースルの人のゴリ押しが効いたのか、何とか入れてくれる事に。去年はカートごと入れてくれたんだが、ここで再びカートを解く羽目になったハチ。運転手の「すいませんねぇ」が明らかに嫌そうな口調だったのには参った。もしハチがケンイチ君なら、このバスをJR九州レッドライナーペインティングしてしまう所だが、ここは我慢し、作り笑顔を突貫工事したハチであった。

 教訓5:やっぱ、荷物は先に送った方がいいのか

 睡眠不足を多少補完した後は、いよいよ逆三角形ことビッグサイトに到着。ここで、Kらとは別行動。ってのも、人と待ち合わせをしていてね。とある知人氏(便宜上、以下『b』と仮称)にサークル入場のご招待をしたんよ。当初はチケットを郵送するつもりだったんだけど、どういうワケか、bはこれを拒否。

 万が一、事故でハチが欠席を余儀なくされた際を考慮したのか、それとも、如何なる理由でも個人情報が漏れるのが嫌だったのか、はたまた、日本郵政株式会社(現・日本郵政グループ)に絶大的な信頼を持っていたのか。その理由は今となっても謎であるが、とにかくbは、頑なに断固として、チケットの事前渡しを拒否。結局、当日に会場でチケットを手渡しすることに。

 ここで問題になるのは、どこで合流するか。ハチのブースは東館なんで、あー東館に近いところにしておくか。と、安直に東1側入り口を指定したのが、昨日の段階。さて、バスから降り立ったハチは、周囲の地形もロクに分からず、例によってまぁ何とかなるだろう主義に則り、人の波に合わせて移動。途中、話に聞く大階段に遭遇。カートなのにどうするよ?と思いきや、世の中は上手く出来たもので、階段中央にスロープがあって、カートでも何とか登攀可能だった。

 0700時。さて…ここはどこかは分からぬが、東館側の入り口もあるし、目立つ看板も有ることだし、大丈夫だろう、とポケットの携帯を取り出す。ちゃんとアンテナも立ってる。MRなんかで、携帯事情が昔よりははるかに改善されていると聞いたが、真実だったようだ。

 「××お客様サービスに接続します」

 ――あれ?電源でも切ってるのか。何度もう一回かけたが、今度は途中で途切れる有様。これを何度か繰り返してる間に、ようやくbと連絡がつく。こちらの地形を説明するが、向こうはチンプンカンプンな様子。もうちょっと時間が有るので、探してもらうことにした。

 0730時、サークル入場開始。そろそろ焦り始めるハチ。しかし、電話は一向に通じず。向こうの、自称・お客様満足度bP携帯会社のインフラ整備の不充分さ故なのか、コミケ会場の環境が、そういうものなのか。後で、ハチと同じドコモを使ってるKに連絡したら、すんなりと通じたので、前者を怪しみたくなるが、コミケ会場での携帯の信頼性は、未だ低い事には変わりなかろう。

 教訓6:開場前の携帯は、やっぱり信用できない

 ようやく通じる。今切ると、後はいつ通じるか分からないので、このまま切るな、とクギを差し、改めてkhとの合流を試みる事に。やれ大看板があるだの、コンビニが有るだの、可能な限り周囲の状況を説明するが、全然分かってない様子。どうやら、ハチの方が、指摘した場所と違う場所にたどり着いてしまったらしい。ならば、駅方面まで引き返し……遅かった。大階段からは続々と人が上って来ていて、後戻りは不可能。しかも重量級カートを引いて身重なんで、現位置を動くことすら、ままならない。

 それならば、こちらに来てもらおうと、改めて場所を説明するが、♪説明してもしても分からない、スタッフに聞いても分からない――状態であり、焦りばかりがつのる。そして焦りは動揺へ、動揺はパニックに。

 「…どうしよう」○○の見える場所に来てよ。

 「どうしようどうしよう」だから、○○の見える場所に来てって

 「どうしようどうしようどうしよう」だからぁ〜○○の見える場所って言ってるだろうが!

 「どうしようどうしようどうしようどうしよう」人の話を聞けぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!

 「どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう」

 ピ―――――――――――(八兵衛さんは、脳の血液が沸騰してしまったようです)

 折からの気温上昇と、入場時間締め切りへのパニックから、怒りゲージが頂点に!が、ギリギリの所で理性が競り勝ち、喉の先っぽまで出かかった罵詈雑言の満漢全席を、辛うじて喉の奥に引っ込め、あの……わざわざ来てもらって悪いんだけど、諦めるって事、出来る?と提案。向こうも快諾(?)し、ようやく入場できることに。あ、さっきのは、伊集院ラジオの受け売りな。

 教訓7:会場内での待ち合わせは、止めた方が無難

 予期もしなかった波乱に、早くもグッタリしつつ、入場。自身のブースに到着するや、まずはチラシの山を片付けるんだが、只でさえ厄介なチラシの山なのに、夏コミには厄介な物件が、ハチの邪魔をする。それはウチワ。

 作って押し付けたメーカーにしてみれば、「宣伝効果があって暑さも和らいで、喜んでもらって一石二鳥。俺って天才じゃん」とか思ってるんだろうな……って、バッカじゃないの!?

 こちらにしてみれば、貰って嬉しいのは1本だけ。それが何本もあってみ?邪魔以外の何でもないって。それが、年を重ねるたびに増え続けてるんだから、始末が悪い。最近は、チラシそのものよりも脅威になりつつある。古紙回収に出せないんで、処分が難しいからね。

 その後、会場内のampmへ。ハチは、サークルカットとサークル番号を書いた目印を、よく用意しているんだが、あんまり大きいのを持って行けないんで、現地で拡大することに。コピー前には5名並んでいたんだが、その程度なら大丈夫だろう、と思ったハチ。が、その行列を良く見ると、コピー誌原稿を持った人々がチラホラと。

 これは明らかに、ハチが甘かった。迂闊だった。次第に焦りだすハチ。解説すると、開場間近の0930時、各館の入り口を一旦締め切って、人の出入りを制限してしまう。つまり、下手にガレリアでウロウロしてたりすると、開場まで自身のサークルに帰れなくなる事もあり得る。時計は、0900時を回りつつある。が、前の人は悠然とコピー誌原稿を広げ始め、焦りは倍増。

 ――いや、それ自体はこの世界では、よくあり得る事なんで、悪いとは思ってないし、ましてや殺意だなんて、とんでもないですよ?(棒読み)その後、何とかハチの順番が回ってきた。拡大コピーを済ませ、いそいそと自身のスペースへ戻る。

 1000時。拍手とともに、一般参加者が入ってくる。まずは、押し寄せる男津波を傍観する。しかしまぁ、ここ数年の、男津波の整理の巧さは目を見張るものが有る。

 かつて、大河の治水に成功した者が、文明を創りあげたのが、歴史の流れであるが、男津波という(ヘドロや産廃液の匂いがする)大河の治水に成功しつつあるコミケ準備会に、明るい未来を見たハチは、ただ暑さで幻覚を見ただけだったのだろうか?

 大手で無いサークルであるハチは、暫くの間ヒマなので、残った朝食を流し込み、座ってのんびりと待つ。ふと、何か違和感に気付く。ああああああああ!!!!!!

 忘れてた!さっきのコピーした原稿、コピー機に置き忘れてたぁぁぁぁ……ちなみに、買出しのついでに取りに行ったら、コピー機の前で、同じく忘れ物の原稿数点と共に、晒し者の憂き目にあっていた。もしハチがケンイチ君だったなら、このコンビニをサークルKに染め上げる所であったのだが。

 昼過ぎ。人の流れも落ち着いた所で、bに電話をする。大手並びでそろそろ疲れてる頃だろうから、こっちで休んでもらうついでに、ハチが買出しで抜けた間の店番をやってもらおうかなーって腹。が、朝と同じく全然繋がらない。何度かかけて、ようやく繋がるも、まだ並んでる最中とかで、ハチの提案を辞退。

 それは残念だったね。じゃ、また今度〜と電話を切ったものの、内心ヤバいと冷や汗のハチ。ってのも、今回のコミケは、メカミリが3日目に復活してるので、是非とも買いに行きたい。しかし西館にあるので、東館在住のハチには、時間がかかりすぎる。そこで、bを店番を条件として、サークル入場に誘ったワケだが、もくろみが見事に大ハズレ。

 仕方ない。こうなったら、最小限度の時間で回る事にしよう。昼頃から、何度も宝の地図を見て予習を繰り返し、1300時に自ブースを発つ。予定時間は90分を設定。

 まずは、久々のメカミリがある西館へ。両館を繋ぐコンコースを通り、エスカレーターを降りると、そりゃあもぉ、足の踏み場の無いほどの人だかり。そういえば何年か前、西館に居たハチが東館へ行こうとして、結局行き場所が分からず、ずっと西に引きこもった苦い思い出を思い出したりもしたが、勇気を出して、西館へ突撃。残り70分

 東館もあるし、速やかに目当てのサークルを回り、買い物を済ませる。残り50分

 さて、東へ戻るか……って、何処へ行けばいいのか!?周囲を見回すと、上の階へ上がるエスカレーターが数本視認できたが、上は確か企業ブースでハチのお呼びではない。外への出口も数箇所あるが、看板を見る限りでは、本当にビッグサイトの外に出るっぽい。その上、どこかしこに人の潮流が出来てて、立ち止まることも、ままならず。

 結局、あちこちウロウロした結果、企業ブースのある階に一旦上って、別のエスカレーターを下ると、さっきコンコースから降りてきたエスカレータ近くにたどり着けた。そこから辛うじて、東へ帰還できた。が、かなり時間がかかったので、焦りが生じる。残り40分

 ガレリアから1階に降りるべく、エスカレーターに乗ると、声をかけられた。「エスカレーターは歩かないで下さーい」そう、コミケでは、エスカレーターを歩くのはご法度。そして、スタッフにごめんなさい、と頭を下げ、エレベーターを降り、しばらく歩いたケンイチくんは――って、死ぬなぁぁぁ!!

 しかし、エスカレーターを歩くのって、日常生活では当たり前に行ってるじゃない。よっぽど意識しないと、無意識の内に歩いてしまうよなぁ。事故防止には必要なことだろうけどさ。来年こそ、一度も注意されずに一日を過ごしてみたいが、無理っぽい。さて、帰ってきました東館。しかし時間が無い。急いで回らねば!残り30分

 1440時。予定時間から10分遅れで、ブースに帰還。いやいや、最後の東館回りが大変だったよ。二つの東館を20分×2で回ったんだけど、この時間では、サークルを確認する余裕なんて無いから、宝の地図に高い優先順位で色づけされたブースへ、ただ機械的に移動し、本の中身を一瞥しただけで、買うか否かを決めないといけない。

 とはいえ、チェックしてないのに、ふと気になったブースも有るわけで、可能な限りチェックしてみた。結果を先に言うと、今回に限っては妙にバカ当りで、掘り出し物を数冊買うことが出来た。

 90分(+ロスタイム10分)で東西を回るという無謀を達成し、精根尽きたハチは、戦利品を読むのはとりあえず置いといて、自ブースに崩れ落ちる。

 後は、閉会までする事が無いので、ただ、ひたすら座る。その間に、知人縁者の人々が駆けつけてくれた。まずはクイズ地獄でお世話になってる方々が続々と。あと、はるあきらさんが(代理立ててだけど)毎回毎回来てくれたり。そして、コミケの度に新刊を買ってくれる、顔に見覚えの有る方々も来てくれて、八兵衛さん嬉しいよ、ええ。

 コミケ閉会のお時間。帰りに先駆けて、予め大荷物を整理しておいた。さて、ハチの机の下には、二つの箱が有る。一つは苦労して持ってきた大荷物。もう一つは、新刊が入っていた印刷所の箱。これを整理することに。先の大荷物には、売れ残った既刊と新刊の残り全部を詰め込む。そして、元の新刊が入っていた箱には、戦利品を全て。

 ま、いつもと同じで、重い方を宅配便に送ることにしているのだが、今回は、次回参加が決まっている、こみっくトレジャーが来週に迫っているので、このまま直送が可能。よって、後先考えず、思いっきり詰め込む事に。この事を予想して、予め余白にダンボールを詰め込んでおいたんで、不要のダンボールを置き場に処分するだけで、全てはOK。

 そんなこんなで、1600時。閉会の挨拶と拍手の後、ハチも開場を後にする……っと、その前に、荷物をクロネコに送りに行く。

 あ…あ……あぁぁぁ………く、クロネコはどこだああああぁぁぁぁぁぁ…………

 西日とはいえ、未だ威力の衰えない日光が、情け容赦なく有明を照り焦がす中、延々と行くハチ。カートが有る分、はるかにマシだが、死ぬほど重い。無料頒布まで行い、それなりに捌けはしたものの、戦利品&チラシの山との相殺までにはには至らず、来たときよりもずっと重い荷物を持ってヨロヨロになってるワケだ。例年なら、もっと近くに有るペリカンに行くところだが、さっき言った、こみトレの荷物搬入はクロネコ指定なもんだから、逃げられない。

 東館2出て、を半周ほど、ぐる〜〜り、と回った、会場の北東の隅っこに、クロネコの集積場があった。遠い彼方、蜃気楼の向こうに、荷物を取り扱うテントが見える。カートの手すりに巻いてるタオルは、既に汗でぐっしょり。ところが、長い列にも関わらず、意外と順番は早く回ってきた。ラッキーと見るべきか。

 さてさて、会場を後にすれば、後は帰るだけ。下手にウロウロしても、無駄に体力を消耗するだけなんで、いそいそと空港へ。例によって、とりあえず人の波に身を任せ、駅らしき場所まで到着。カート持ちの身、用心してエスカレーターで上に上ると、凄い行列が。しかも、キップを買う列と改札を通る列が、別だという。とりあえず、キップの列に並び、キップを買う。

 んで、これからが大変でね。次は改札の列に並ぶんだが、その最後尾ってのが、さっき上がった所とは逆側の、階段入り口だという。キップも買っちゃった事だし、後には引けない。下に降りてって、改めて並びに行く。

 ――20分後、やっと改札をくぐる。時計の上ではどーって事ないが、カートを手にしてのそれは、体感時間にして、1時間はあったかと。さて、ホームに入る。はて、どっかで見たような景色だが?思い出す間も無く、電車が到着す……って、うああぁぁぁぁ……

 揉みくちゃにされながら、電車内に入った。いや、どちらかといえば、詰め込まれたっていうか、アウシュヴィッツ行き片道列車って感じだが……っと思い出した!去年の夏コミの時、帰りに乗った、りんかい線じゃないか!?これは。はぁ…また乗っちゃったか。去年の体験で懲りまくって、二度と乗るまいと誓ったのに。

 が、ハチの置かれた状況は、去年に比べて飛躍的に悪化!隣に、カップルが立ってるのよ。仮に、どちらかに僅かでも触れようものならば、「アキバはキモくて臭い」な類な罵詈雑言の洗礼を受ければ、まだ幸い。自分達の世界ラブラブ世界こそ華で、それ以外は全て夷と考えているであろう、この人々から、相当なる過剰防衛を頂く羽目になるのは、予想に容易い。マトモに立つ事すら困難な、この満員の車内で、必死になって踏ん張りつつ、耐えていたハチであった。

 レインボーブリッジを渡って江東区を後にし、海へ。そして再び、足のつく場所に戻る。――あともう少し。あと数駅越えれば、新橋。新橋で乗り換えだから、今よりはマシになるだろう。最後の気力を振り、足を絞り踏ん張る。

 が、ドア付近に居たのが悪かったのか、竹芝で乗ってくる人のために一旦出たら、そのまま弾かれてしまい、電車は行ってしまった。公序良俗に基づいて、入ってくる人のために、一度外に出たのに。なんで、こんな仕打ちを受けないといけないのかい!?…やっぱ、東京の人間は冷たい

 しばし、ホームで呆然と立ちすくむハチ。次の電車を待つにも、どうせ次以降も、同じような満員に決まってる。もう心がボッキリと折れちゃったハチには、次を待つことも、それに乗り込むことも出来なくなった。しょうがないので、近くの駅員さんに、ここから空港方面に行く方法ってあります?って尋ねてみた。

 今現在のハチの脳内に有る、ステレオタイプな東京人なら「新橋まで行け!田舎者は路線図も読めないのか、ボケ!!」で片付けられそうなものだが、この駅員さんは大変親切な方で、どうやら、ハチの身なりを見て、満員電車に乗り込むのは無理と考えたんだろう。「ここからちょっと歩けば、モノレールの浜松町駅がありますので、そこから真っ直ぐ行けますよ」と、乗り換えルートを教えてくださった。あ…ありがとうございます〜思わぬ親切に、ちょっと目が緩んだハチ。

 前言を部分的に撤回。東京人にも、我々と同じ赤い血が流れてる方がおられるようだ。

 教えられたルートを、カートを引きつつ歩く。丁度、夕風が心地よく流れていて、歩いてて気分良かった。ってか、このルートは、割と当りじゃないか?ちょっと歩くといっても、10分程度。それに看板やらのナビゲートが充実してるので、全くの始めてでも、問題なく通過可能だろう。このハチでさえ簡単に行けたって事実が、何よりも雄弁に証明している。

 教訓8:ゆりかもめ竹芝→徒歩→東京モノレール浜松町のルートは、晴天時なら大いに検討する価値有

 東京モノレールの路線駅に着いてしまえば、あとは空港まで一直線。座れはしなかったが、先のWW2時ユダヤ人運搬列車こと、ゆりかもめの如き、非人道的過密度ではなかったので、久々、心の安息を得ることが出来た。と、油断してたら、最後の罠が待っていた。空港手前で、電車が揺れたんだが、その際、隣の人を避けようと、カートの手すりに体重をかけてしまったら、見事に曲がっちゃってね。そりゃもぉ、飴細工のように。

 色々あったが、ようやく羽田に到着。やっと、福岡に帰れる目処が立った。体力・気力ともに限界なんで、荷物を早々と預けに行く。今度は往路より箱が軽いんで、バッグも預けて身軽になれた。ラッキー。時間は、1900時をちょっと回ったぐらい。が、早く座りたいので、土産をさっさと買って、ロビーへ。

 そういえば、ここ数年、万世のカツサンドを口にしてないな、と、ダメ元で探索してたら、最後の1個を発見!おぉっっこれはツイてる。嬉しくなったハチは、ついでにビールとツマミのソーセージ(明治屋の缶詰のをレトルトにしたヤツ)更には、野菜サンドを調達。これで、カンペキなディナーの完成。さて、今の時間は、1930時…か。今食らっても良いんだが、どうせなら、久々のカツサンドを、じっくりゆっくり味わいたいので、出発まで我慢しておくことに。

 教訓9:万世カツサンドは、19時前後がタイムリミットか

 2010時。ちょっと遅れて、ハチの乗ったスカイマーク機が出発。早速、ビールを開け、カツサンドも食らっていく。ん〜〜至福♪最後の最後で、喜ばしい事にめぐり合えて、ちょっとホロリとする。ま、一番嬉しいのは、色々な人々が本を買って下さったことなんだが。

 ところで、去年の夏コミレポートでは、スカイマークの機内には、な〜んにもない、と言ったが、何時の間にか、飲み物の機内販売が行われていた。ジュースや発泡酒が、なんと100円均一!………といっても、ジュースは100円ショップで2本百円――九州人なら、サントリーやコカコーラの自販機で売ってる、一回り小さいヤツと言った方が早いか――にて売ってそうな物件で、発泡酒ってのは、俗に言う第3のビールの280g缶ってのは、ご愛嬌って事で。只、ワインが300円程度で売られてたけど、見た目がモロにカップ酒だったのには仰天。

 福岡についてしまえば、あとは家に帰るのみ。もう完全にヘロヘロだったんで、帰宅後も、玄関にカートを放置。最後の力を振り絞ってシャワーを浴び、ベッドに崩れ落ちたのは、確か日付が変わるぐらいだったかと。


8月20日


 結局、玄関のカートは、翌日に戻ってきた大荷物も含め、数日間その場に放置してましたとさ。

 さて、先の2日間を振り返っててみると、それなりに楽しく嬉しいことはあったんだが、それを帳消しにして余りある程、不運かつ良からぬ事態に見舞われた。主な原因は、従来なら機能していたことが、上手く機能しなくなっている、って事かな。大きいのは、荷物の運び方とか、本の種類自体多くて、どうしても携行重量がどうしても大きくなりがちになってしまう事ね。

 年齢上、もう体力の向上を望めないんだし、どうせ売れないのは分かってることだし持参数を思い切って減らすとか、本を数冊我慢してでも、宅配便をもっと利用するとか、色々と考えるべき事が多い。

 では、自己満足の時間。戦利品の展開でござい。

珍しく、いっぱい買い込んできたつもりだが

 エロから健全創作、メカミリや論評まで色々と。こんなにラインナップに著しく一貫性が欠けるのは、ま、いつもの事で。後のトレジャーが給料日後なんで、(ハチにしては)思い切って散財した。散財とは言え、1万切ってるんだが。いやいや、人間、自分の懐にあった満足を得られれば充分だよ。うん。

 さてさて、長々とした文を最後まで読んでくれて感謝。次からは、多少短くても、早く書く事にするよ。文章ってのは、長けりゃいいってモノでもないからね。


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