ハチ的日本シリーズ優勝レポート
〜福岡が最も熱かった日〜

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10月26日


 まさか、こんな展開になろうとは――

 鳴り物入りで始まった、ホークスvs阪神の日本シリーズいろんな意味で頂上決戦。まずは、ホークスが連勝し、このまま押し切るのか?!と思いきや、甲子園で猛虎が息を吹き返し、まさかまさかまさかの3連敗。これで絶望的になったハチだったが、本拠地福岡ドームに戻り、不死鳥と化した鷹が本領を発揮し、阪神に快勝。

 凄い事になったモノだ。誰もこんな展開を予想してなかったんじゃないかい?ハチも、鷹と虎のどっちかが一気に押し切ってしまうと考えていたんだが、フタを開けてみると、3−3のイーブン。しかも1点差の接戦が4試合という、激しい戦いだったり。

 ここまで来りゃ、どっちが勝っても悔いは無い!ただ、良い試合をしてくれる事を願うのみ。シリーズ優勝日とは違い、明日は肩の力を抜いて観戦できそうだ。


10月27日


 ついにこの日が、やって来てしまった。プロ野球日本選手権シリーズ福岡ダイエーホークスvs阪神タイガース第7戦――この試合で勝った方が、プロ野球日本一の栄冠を得る。今日は間違いなく、今年のプロ野球最高の試合となるだろう。

 今日は朝から、福岡全土が期待と緊張の空気に包まれていた。朝、福博の街を歩いていると、尋常ならざる空気がヒシヒシと伝わってくる。一方のハチはというと、日本シリーズなどどこ吹く風、といった感じで、別にどういう感情も無く、デイタイムを過ごした。

 正直、この心境の変化には驚いた。今日のホークスに全く不安を感じないんだわ。ヨミの部屋前での絹の台詞そのままに、不安や恐怖は一切無く、ただホークスを無条件に信頼しているハチが、そこに居た。今夜は、21世紀前半最大の戦いを、充分に楽しむことが出来そうだ。

 さてさて、昨日の報道で知ったんだが、キャナルシティがいつの間にか、無料放映をやってるそうだ。決めた。今夜のホークス最良の瞬間を、キャナルで迎えることにしよう。いつものように、一旦帰宅し荷物を置いてから、会場に向かう予定。そして時は過ぎて1750時、ようやく仕事が終わり、ホークス栄光巡礼の旅へ出発の時がやってきた。旅の末にたどり着くのは笑顔か、それとも涙か?

 1815時、電車の中でプレイボールの声を聞いた。っと、瞬く間に1死一三塁で、和田いきなりのピンチ。が、不思議なもんだ。一昨日までなら、この時点で大いに焦るハチだが、今日は別にどうと言うことなく、まだ1回だろ?大丈夫、と余裕で試合を聞いていら、和田がダブルプレイに抑えて無失点で切り抜け、その裏に、松中が2点タイムリーでホークスが先制。ハチはもう、勝利を確信した。

 帰宅した時には、3回裏。テレビをつけた瞬間、井口がライトスタンドに、ズッコ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ンとホームランを叩き込んだ。応援に備えて軽く腹ごしらえしてると、九州最強の霊長類城島が、打った瞬間にそれと分かってしまう独特の超撃弾で、ムーアを事実上KOに追い込んだ。もう、居ても立ってもいられねぇ!ハチは手にしたパンをさっさと飲み込んで、家を出た。今恐れるのは、胴上げの瞬間を見逃してしまう事のみ。

 バスで移動し、キャナルに到着した時は、6回の裏。バス停から歩道橋に上がり、キャナルに向かう。途中でカメラを持った報道関係者らしき人物を発見し、『その時』が近づいているのを実感しつつ歩道を歩いてたら、九州最強の霊長類改め日本球界最強の霊長類城島が、二人目リガンから2打席連続のホームランを叩き出した。うぉぉぉ!!と思わずガッツポーズするハチ。周囲の人々はちょっと驚いたようだが、ホークスが有利らしいのに気づいたのか、皆、足を速めて行った。

 キャナルに到着。入り口にはいきなり『今日は日本シリーズ放映するばってん、つまらん事ばしたらくさ、中止しちゃるけんね。気をつけな、いかんばい!』という意の張り紙が、デカデカと貼ってあった。今更何があっても中止などは出来ないんだろうが、ま、最低限のケジメって所だろう。

入り口の張り紙。会場サイドのピリピリした様子が伺える。


 中に入ると、豪快に人だらけ。このキャナル、地階から4階まで、吹き抜けになっていて、肝心の試合を放映するスクリーンは地階にあるんだが、当然の事ながら、その階だけでは人は入りきれない。従って、あらゆる階のテラス状の吹き抜けから観戦者が、わらわらわらわら…と沸いて出てくる。その様相は、オペラ劇場に近いものがある。ここに居合わせた面々は、正に、日本シリーズという至高の舞台を鑑賞しているって事だな。

 まずは、ウロウロ回ってみる。まず目立ったのが、会場の到る所に群生してる警備員。キャナルには運河が作られていて、3年前ののリーグ優勝の際には、ファンがその運河に飛び込んでしまう前科があり、今年のリーグ優勝日には、放映を中止したぐらいだ。会場サイドによる運河ダイブ断固阻止!という意気込みが、猛烈に感じられた。携帯カメラで撮影しようにも、警備員が魔眼をギラギラ飛ばしまくりで、怖くて撮影できやしねぇ(汗)

地階。はるか向こうに辛うじて、
大型スクリーンが見える
上の階から。
見よ!人が(以下略)


 変わっては、4階の飲食店エリア。窓際の席では、飲み食い完全無視の観戦モードに突入。皆、店自慢の料理ではなく、窓に食らいついていた。――観戦とは言ってはみたが、実際のところ、何処に居ようが、スクリーンはまず見えない。観戦そのものよりも、この興奮と喜びを多くの人々と共有することに重点が置かれてるように思われた。

 で、ハチは地階に陣取る事にした。ここは一番の人だかりであるが、ハチぐらい図体が大きいと、最後尾であっても辛うじてスクリーンが見えるんだわ。来年の参考にしては如何?

 ついでに観客の構成も言っておこうか。場所が洒落たショッピングモールだけに、オシャレなにーちゃんねーちゃん連中が、観客の大多数を構成していた。その中に、学校帰りの学生や、仕事帰りのサラリーマンがチラホラと存在。そしてまぁ、当然といえば当然かもしれないが、応援グッズに身を固めた熱狂的なファンは、地階のスクリーン付近をしっかりと確保していた。彼らは応援旗まで持ち込んでいて、その気合はドームのライトスタンドに負けていない。

8回頃の模様。
奇妙な生物が確認できるが、気にしないが吉。


 ラッキー7の応援歌合唱の後、ジェット風船まで飛び交ったのは流石というか、当然というか。ふと背後を見ると、新たな観客がどんどんやって来るんだわ。会場スタッフが拡声器で「地階は混んでるから上に上がって下さい」と必死に誘導の声を上げるが、観客の声援にかき消されてしまう。実況の声すら聞こえず、本気で状況を把握しようとするなら、ラジオしかなく、携帯ラジオのボリュームをフルにして聞いていた。もちろん耳が痛くなるが、今そんな事は言ってられない。

 7回裏ホークスの攻撃、追い詰められた阪神サイドは、早い段階でのウイリアムス投入を余儀なくされた。一方の和田は、5回に一発浴びて以降は被安打も無く、8回まで見事に投げてのけた。観客もヒートアップし、勢いあまって転倒する強者も出た。一方、警備員も動きが活発化し、運河一帯に布陣し始めた。

 いよいよ9回表!ここでホークスは、岡本か篠原か新垣か?いや、何と和田が続投。このまま完投させるつもりらしい。その和田、広沢に意地の一発を浴びたものの、危なげないピッチングで2アウトまで取った。もう、すましてラジオを聞くなんてやってられない!興奮の中に身を投じたくなったハチは、イヤホンをむしり取るや、群衆の中に飛び込んで行った。

 ――そして、手持ちの時計で2105時頃、和田は沖原を三振。この瞬間、福岡ダイエーホークスの日本一が決定した。

 うわぁぁぁぁぁ……キャナルのあらゆる階から、百雷の如き歓声が鳴り、天神の夜空を衝いた。紙吹雪が、ジェット風船が、夜空を舞う。バンザイする者、メガホンを振る者、ひたすらクレイジーにはじける者、涙を流す者、胴上げを始める者――今夜、ホークスの勝利を信じてキャナルに集まった者達。彼らは各々なりの手段で、日本一の喜びを全身で表していた。

日本一決定の瞬間! 歓声が上がる、メガホンが鳴る。



 応援歌が幾度も歌われ、優勝インタビューで誰かの発言のたびに、また歓声が上がる。そうする内に、号外がやって来た。キャナルに一番近くにある地元紙ナリ。優勝セール以上の激しい取り合いが各方面で展開される中、ハチは何とか号外をむしり取ってきた。

 日本一セレモニーも一通り終わった様子なので、そろそろキャナルを後にした。これからはお楽しみ、那珂川出会い橋の漢見物ですよ?川端町→中洲経由で出会い橋へと向かった。道中、川端商店街のアーケードで何故か、阪神グッズに身を固めたファンの一団を発見。声をかけようかと思ったが、尋常ならざるオーラを感じ、刺激するのは得策でないと判断。ヤンキーを避けるように目立たないよーに、その場を離脱した。

ここからは、例のアレのレポート。リーグ優勝の際と同様、別枠にしておく。
嫌いじゃない人だけ、ここから見てね。

 見物を終えたハチは、続いてショッパーズに向かった。もちろん、祝杯の買出しな。さて、ショッパーズ前。いち早く優勝セールを始めただけあって、多くの人が集まっている。そして、リーグ優勝時よりも豪華になったオブジェの前で記念撮影する人が続出。

ショッパーズ入り口。客がどんどん飲み込まれていく。


 店内はプロンテラ噴水前の如き大盛況。特に地階の食料品売り場は、場所によっては動くことすら侭ならない程。祝杯用の買出しを終えたハチは、早々とバスに乗り込み、天神を後にした。帰宅後はお約束、優勝報道をハシゴしつつ飲みまくり。


10月28日


 朝。あれほど飲みまくったにも関わらず、定時どおりに家を出た。ハチの場合は、極端に飲みまくった翌日はどういうワケか、きっちりと目を覚ましてしまう。ま、起きた後に地獄見るがな。

 ヘロヘロになりつつも、辛うじて仕事を終え、日本一セールに沸く天神の街に行ってみた。…っと、またやってたよ。ロッテリアのシェイク半額。吹く風もぼちぼち冷えてきたこの時期ではあるが、ロッテリアのある天神地下街は、それなりの気温。よって、地下街内のシェイク率はかなり高かったナリ。

 最後に、出会い橋に寄ってみた。狂乱から一夜明けたそこは、いつもどおりの静けさを取り戻していた。ダイブ対策が施された各施設も、いずれは元の姿となり、全ては日常へと還っていく。

よじ登り対策が施された電灯。直に元の姿を取り戻すだろう。
屋根が撤去されたベンチ。 ベンチの警告文、今となっては鷹強者どもが夢の跡。
普段の、中洲出会い橋。
ここに再び、熱き想いが戻ることを願う。


 秋風に落ち葉が舞う中、こうやって昨日の跡地を歩いてみると、ほんの1日前に、あーんな事があったのが信じられなくなった。――いや、先月末からのホークス優勝騒動から始まった一連の出来事が、すべて遠い過去の物語のように感じる。

 でも実際、福岡ダイエーホークスはリーグ優勝を果たし、さらには阪神と壮絶な死闘を重ねた末、日本一を勝ち取った。今朝買ったスポーツ紙には王監督が宙を舞っている。秋風に吹かれ、遠い夢のように風化しつつあると言ったそれは、間違いなく起きた事実である。

 結局、一連のホークス騒動は何だったんだろうな?ふと、そう思うことがある。思ったはいいが、ハチの頭脳では結論は出やしねぇ。ま、ヘタに哲学の真似事をするよりは、楽しかったこと、の一言で片付ければ、それでいいんじゃなかろうか。福博の連中は基本的に祭好きだし、突発的に始まった福岡を挙げて行った秋祭り、って事にしておこう。

 また、やれるといいな。秋祭り。


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