レポート番外編 那珂川喧騒譚

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 出会い橋に着いたのは、2140時ぐらいだったかな。出会い橋には、那珂川飛行隊の雄姿を見んと、早くも人だかりが出来ていた。

 さて、今回の那珂川ダイブは、当局もそれなりに準備していた。飛行甲板と化していたベンチの屋根は撤去され、見るも無残な姿になっていた。さらによじ登るであろう街灯には、補強材が巻かれていて、上のほうにはネズミ返しが施されているという、見事なる徹底ぶり。

元・ベンチ、当局の手入れで無残な姿に。
(翌28日撮影)
これも元々は街灯だった物件、
もはや原形を留めていない。(当日撮影)


 ベンチの屋根という舞台が無いので、飛び込むのなら橋の手すりからとなるのだが…時間が早いからか或いは寒いからか、飛翔ペースは今ひとつ鈍い。んで、お約束の警官が、しきりに「トビコマナイデクダサイキケンデス」と、妙に機械じみた声で言い続けてるが、当然のことながら、誰も聞いちゃいねぇ

 そうしてる内に、一人の飛行隊員のボルテージが高まり、気合一声、そして飛翔!かくして飛行戦士がまた一人、那珂川の闇の中へと消えていった――

飛行隊員(黄円内)が飛び込む瞬間。


 川の中を見てみると、既に飛んだ飛行隊員らが、ぱしゃぱしゃと岸に戻っていた。前にも書いたけど、水深が低いんで、泳ぐというよりは歩くに近い。リーグ優勝の時同様、川に出入りできる階段には、多くのギャラリーが。

 で、その地点の近くに、料理屋があるんだが、料理屋の窓から客らしき人物数名が出てきて、下の川にいる飛行戦士を賞賛。ビールをゴチしてた。窓からビールをドボドボドボと注いで、飛行隊員が鳥のヒナのように口を開けて飲んでたり。

飛行隊員(白円内)と料理屋の客との、
心温まる(?)交流。


 にわかに湧き上がった歓声の方を見てみると、なんとネズミ返しを施した筈の電灯への登頂に成功した剛の者がいるじゃないかい?!こうなると、ネズミ返しが格好の足場となってしまう。この飛行隊員は、思う存分パフォーマンスを満喫し、那珂川へと飛んでいった。

 ここまでハチが見てきた限りでは、リーグ優勝の時よりも飛行回数が少ない。今の時期はやっぱ、水の中入るには寒いんだろう。こんな中でも、相変わらず警官は「トビコムトキエンデスアオラナイデクダサイトビコマナイデクダサイ…」と、無機質な声で注意を促し続けていた。当然のことながら、誰も聞いてやしなかったがね。

 (後日の報道によると、リーグ優勝時とほぼ同じ、550人の飛行隊員が飛んだのだそうだ。)

 2200時をちょっと過ぎたころだったかな?突如、喧嘩が勃発。普段なら相手にしないんだが、祭りの興をそぐとは不埒千万、と、騒乱の渦の中に入っていったハチ。中では、街中のどこにでも居そうな今風兄ちゃんが、警官らしき人物に激しく絡んでた。非常に興奮してるらしく、叫んでる内容は意味不明であるが、何とか状況の解読を試みた結果、こう解釈できた。

 即ち、飛行隊やってたか何かで警官と揉めて、その折に靴か靴下かを紛失したらしく、それが原因でエキサイトしまくってるらしい。

 前者の兄ちゃんは、ペナントレース中の星野監督の如く――この例えは勇退なさる星野監督に失礼かな?――咆えまくってた。一方の警官はというと、流石はプロだな。兄ちゃんの挑発に眉一つ動かさず、ただジロッ!と睨み続けていた。

 …ったく。ダイブはダメと言うつもりは無いんだけど、こんな場所で喧嘩はいかんよ!折角のホークス日本一という、福岡にとって慶祝すべきこの時に、こーんな水を注すが如き行為は、いただけない。ハチは止めろ止めろ、と言いつつ、渦中に突入。当事者にかなり近いポジションまで浸透していった。普段なら、こんな状況は怖くて近づきもしない所だが、今この瞬間のハチはどういうワケか、恐怖心は一切感じない。これがガンパレード状態ってヤツだな。

 ふと例の兄ちゃんと目が合った。その兄ちゃん「きさんなんやぁぁ!(貴様何だ)」とハチに怒鳴る。腹立ったんで、今日はホークス日本一のめでたい日やろ?それを台無しにする気か!と、言い返してやった。周りから同意の声が上がるのに、気を良くしたハチは、一発ぐらい殴られてもいいから更に言ってやろうと思った――が、突然一人の男性が「止めときなって、ヤられるよ?」と、ハチに言った。

 その一言で、急に冷静になってしまってね。こんな騒動に関わってるのが、非常に馬鹿馬鹿しくなってきた。なーんか、急速に萎えてしまったハチは、騒乱の中心が別の方向に移動したのを機に、人込みの中に消えることにした。

 ――とまぁ、最高にめでたい瞬間を満喫したのに、最後の最後に思わぬ事態に遭遇してしまい、喜びがかなり削がれてしまったハチだった。こうなりゃ、早く家に帰って、喜びの美酒を飲む事にしよう。


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