ガンパレ妄想劇場2.21



「今宵は、私が夕食を作ってやろう」

週の約半分を、速水宅で過ごす舞。
速水の寮の方が、尚敬高校に近いと言う利点もあるが、他人の視線を気にせずにイチャイチャできるこの半同棲状態を、舞も速見も、それなりに楽しんでいた。
普段は速水が食事を作っていたが、ある日、舞は上記のような提案をした。舞にしては珍しい提案だったが、速見は快く受け入れた。

「エプロンは僕の使ってよ」
「うむ、よかろう」
速水の当然の提案に快諾した舞。しかし普段の夕食の光景を思い出した瞬間、前言を撤回したい激しい衝動に駆られた。
速水愛用のエプロンといえば、薄ピンクのふりふりエプロン。
速水と言えば、この若奥様チックの装備を着用し、嬉々として食事を作っていたのである。
舞は、既にその光景を慣れてしまっていたので、普段は何とも思ってなかったのだが、いざ、自分が『それ』を着るとなると大いに難儀な事である。

いや…待つが良い、そう言いかけた時にはすでに遅かった。
振り向くと、速見が、愛用のふりふりエプロンを引っ張り出して来た。

「はい、どうぞ」
速水は、屈託の無い笑顔で、ふりふりエプロンを舞に差し出した。
仕方ない…その笑顔に屈服し、多少恥ずかしいが観念して諦めた舞。しかし、速水は思いもよらない事を言い出す事となる。

「あのさぁ…」
照れ顔になり、速水は舞に尋ねる。
「何だ?」
「そのエプロン、裸になって着て欲しいんだけど」
俗に言う裸エプロンである。
「た、たたたたたわけがぁぁぁ!!!!」
速水のおぞましい提案に、赤面し動揺しつつ怒鳴る舞。

「でもさぁ、舞なら絶対に似合うよ」
舞の目に自分の視線をロックオンさせ、本気の表情で速水は言った。
「ほ、本当か?」
速水の真剣な態度に、多少揺れ動く舞。

「だって、舞は可愛いもん。そのカッコならもっと可愛いよ」
あくまで誠意を以って、正しい事を勧めるような口調で、裸エプロンを勧める速水。
「そ、それならば…」
速水がそう言うのならば、と思ってきた舞。

「そのカッコしてくれたら、僕は凄く嬉しい。僕、舞の事もっと好きになると思う」
速水は、舞の肩に手をかけ、真剣な眼差しで舞に訴えた。
舞の心の中の動揺を見逃さずに、一気に攻勢に出た速水。

「…お前がそこまで言うなら…着てやって……よいぞ」
速水の説得に、遂に折れた舞。
「やったぁ!やっぱり舞だね。大好きだよ☆」
子供のように喜ぶ速水。
また口車に乗せられた…後悔の表情の舞だったが、速水の『大好きだよ』で少しだが、機嫌が直った。



「着たぞ。これで良いな?」
着替えるために別室へ引きこもった舞が、着替えが終わり出てきた。
「わぁぁ……」
思わず振り向いた速水は、舞の姿に、歓喜の嘆息をもらす。

「た、たわけ!そんなにジロジロ見るな!恥ずかしいだろうが」
「だって…舞、キレイだよ」
「だ、だからだ!見るなと…」
如何なる美術品も色褪せてしまう、舞の美しい裸。その姿に一枚だけ纏われたピンクのふりふりエプロン。
速水も、その美しさに冗談抜きで感激してしまった。

「それで、何が食いたいのだ?」
さっさと料理を作って早くエプロンから解放されたい一心で、とっとと事を進行させる舞。
「う〜ん、そうだねぇ…」
「●×▲○■△!!!!!」
しばらく考える仕草をした速水は、いきなり裸エプロン舞に背後から抱きついた。

「僕、舞が食べたいな…」
速水は、舞の耳元で呟いた。
「な、何を馬鹿なことを!!」
不慮の事態に手をバタバタさせて狼狽する舞。
そんな舞に構う事無く、速水は、舞の耳元で囁く。

「だって、舞が悪いんだよ?舞がこんなに可愛いから…」
速水は吐息混じりの声でそう囁くと、舞の、その露になった背中の線に、そっと指を沿わせた。
「ひゃうっ…」
舞の体を電撃が走り、その華奢な体をピクンと震わせた。
「舞…可愛いよ」
速水が熱い吐息を、舞の耳元にそっと吹きかける。
「や、やめぬ…かっ…んっ……はっ……」
舞は顔を真っ赤にし、恥辱に震えていた。

速水は、ポニーテールで露になったうなじに、指を沿わせた。
「ん…ふぁっ……」
舞の意に反する嬌声が出そうになり、慌てて堪えた。

「ガマンしないでよ…お願い、僕の前だけでは素直になって」
速水は、舞にそう懇願すると、その指を首筋に這わせた。
そして、その指はやがて、エプロンの中へと入って行った。
「んっ…はぁ……はぁ……」
舞の、恥辱の苦痛に歪む顔が、次第に甘美の表情へと変化する。
「汗ばんでるね…あれっ?『これ』は本当に汗かな?」
「た、たわ……はうっ……」
速水の指に併せて、舞の甘い吐息が漏れる。

「お前の…好きに……せよ」
甘美に耐えられなくなった舞は、そう言うと、エプロンの結び目を解いた。
外は既に夜。舞の最も美しい姿が月夜に照らされ、神秘的なまでに美しい。
舞の姿に、純粋にその美しさに感動した速水。その目には、涙さえ浮かんでいる。
「舞…」
速水は、舞をそっと抱き寄せ、寝室へと向かった。



「速水くん、いますか?忘れ物をなさってましたから届けにき……」
壬生屋が速水の家まで忘れ物を届けに来た。
しかし運の悪いことに、鍵が開いていたドアを開いた瞬間、今、当にベッドイン直前の、速見&全裸の舞と鉢合わせしてしまった。

「不潔ですぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」
思わず叫ぶ壬生屋。
しかし、その絶叫が終わるよりも早く、舞の一撃(田代のライダーグローブ装着)が壬生屋のみぞおちに決まった。
崩れる壬生屋。すかさず抱き止める速水。
流石は、複座型士魂号での戦闘で培った、絶妙なコンビネーションである。

「ふむ…危なかったな。厚志、壬生屋を寝室へ運ぶがよい」
壬生屋をとりあえず眠らせて、安堵の表情の舞。
「……」
しかし、速水は、抱きとめたポーズのまま動かない。

「どうしたのだ?大丈夫だ、奴は気絶してるだけだ」
「いや、壬生屋って……案外胸大きいんだね」
たまたま、胸に手が触れたを幸いに、ムニュムニュと壬生屋の胸を揉む速水。

「うわぁあああああ!!!!」
舞は、速水をとりあえずボコっておく事にした。



「……ん?私…は?」
ベッドの中で目を覚ます壬生屋。
何故ベッドの中なのか?何故、速水の家に居るのか?自分が置かれてる状況を、今一つ理解できないでいた。

「おお、目を覚ましたぞ」
「壬生屋ったら、いきなり玄関で倒れちゃうんだもん。驚いちゃったよ」
舞と速水が、壬生屋を見下ろしつつ、心配そうに言った。
「私が…倒れたんですか?」
「そうだ、お主がいきなり倒れてな。慌ててベッドに担ぎこんだのだ」
壬生屋の疑問に、舞が答えた。

「私は、確か…速水くんに忘れ物を届けに行って、芝村さんの…そ、そのぉ……」
壬生屋は、目を覚ますまでの記憶を辿りつつ言った。しかし、まさか舞本人に面と向かって、裸になってたか?とは言えない。

「ん?私がどうしたのだ?」
「い、いいえ、何でもないですっ」
舞が怪訝そうに尋ねるも、壬生屋は慌ててごまかした。

「(私は疲れてるのよ。だからあんな幻覚を見て倒れたのよ。そうだわ、きっとそうよ!)」
先ほどの記憶に疑問が残るものの、壬生屋は、事の経緯を、このように強引に納得した。

「どう?夕ご飯食べて行かない?」
速見は、この場を繕う為に、壬生屋に提案した。
「うむ、それが良かろう。今夜は私の手作りだ」
舞も速水に続く。
「そうですか?じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかしら☆」
さっきの事は忘れよう。壬生屋は、自分にそう言い聞かせるかのように、提案に快諾した。



「ごちそうさま。じゃあ、また明日学校で☆」
3人での夕食をそれなりに楽しく過ごし、壬生屋は帰っていった。

バタン…
ドアが閉まる音を聞くや、ぐた〜っとなる速水と舞。
「何とか助かったね…」
「それと言うのも、お前が鍵をだな…」
「あっ、ご、ごめんよ」
「……疲れて怒る気力も出ぬ」
「僕も疲れた…」
「……もう寝るか?」
「うん……」
疲れ果てた2人は、おそろいのパジャマに着替えて寝室へと向かった。

「寒い、もっと近こう寄れ」
布団の中で、舞は速水に言った。その顔は嬉しそうだ。
「あれ?舞、いつもより大胆じゃない?」
いつもとちょっと違う舞に驚く速水。
「2人きりの時ぐらい、良いではないか☆」
舞は、嬉しそうにそう言うと速水に抱きついた。

「…ま、奥様戦隊も居ないしね」
速水は舞の肩を抱き寄せる。
「そう言う事だ」
舞はそう言うと、目を閉じて唇を突き出した。
速水も、明かりを消しながら目を閉じる。

ちゅっ
速水と舞は、暗闇の中キスを交し、互いに愛する人の肌の温もりを楽しみながら、穏やかな寝息を立てつつ眠りについた。



「…眠ってしまったようですね。もう収穫は無い、帰りましょうかね」
そのころ屋根裏では、潜伏していた奥様戦隊善行が、調査を諦めて帰って行った。


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