出会い
出会い

2月某日、葛飾達夫はやや緊張した様子で、私立きらめき高校に向かっていた。
そして、1つめの試験を終えた。緊張がいくぶん解けたのか、あたりをきょろきょろと見回す。
その行動自体に意味があったわけではなかった。
しかし、自分の右斜め後ろにいた女の子をみて葛飾の動きが止まった。
前髪で右目をかくしているのだが、それでも美しいとわかる顔だちである。
そうこうしているうちに、2つめの試験がはじまり、それも無事終わる。
葛飾「ごちそうさま。」
食事を済ませ立ち上がった葛飾はなんとなく教室の隅に立ってみた。
それに反応するかのように、さきほどの女の子が葛飾に話しかけて来た。
女の子「みたわよ。」
葛飾「え?なにを?」
女の子「鉛筆の持ち方よ。」
葛飾「ああ。あれのほうが持ちやすいから。」
女の子「そうなの?それに、解答用紙も横にしていたじゃない。」
葛飾「マークシート苦手で(^^;;」
女の子「まぁ、いいわ。次も頑張りましょう。それじゃ。」
葛飾「うん。またね。」
その女の子は席に戻ったが、葛飾はまだその場所にいた。
こんどは、学食かなにかで食事を済ませて戻って来たらしき男が話しかけて来た。

謎の男「何してんだい?」
葛飾「ん?いや、教室内をみているんだが。」
謎の男「はは〜ん。さては、女の子のチェックだな?」
葛飾「あ、なるほど。そういう手があったのか。」
謎の男「気が付かなかったのかよ。」
葛飾「君じゃないんだから。」
謎の男「うっ、痛いとこつくなぁ。ところで俺、早乙女好雄。おまえは?」
葛飾「葛飾達夫。」
好雄「そうか。受かると良いな。お互いに。」
葛飾「全くだな。」
好雄「おっ、チャイムだ。またな。」
葛飾「おう。」
かくして、緊張がすっかり解けた葛飾は、リラックスして試験を受けることができた。
午後最初の科目であった数学もかなりのてごたえがあったらしい。

そして、試験結果の発表の日。

葛飾「やった。(ジャストミート)」
よろこんでいた葛飾の左側のほうで、女の子の叫び声がした。
女の子「きゃ〜。合格した〜。」
好雄「俺らふたりとも合格したんだな。」
葛飾「おまえも受かったようだな。早乙女。」
好雄「おまえも、っていうことはお前も受かったんだな。でも、なんで俺らがいるのわかったんだい?」
葛飾「女の子の叫び声にびっくりして振り向いたら、おまえがいたから。」
女の子「あ、それ私でしょう?」
葛飾「あ、その声!うん、そうそう。」
女の子「私、早乙女君と同じ中学なんだ。」
葛飾「へぇ。そうなんだ。」
好雄「それじゃ、俺らはもう行くぜ。」
好雄・女の子「じゃあ。」
葛飾「ああ。」
葛飾は2人が行ったすぐ後に反対側にあるこうとしてふと思った。
葛飾 (あ、あの女の子名前聞くの忘れた。)
入学手続きを済ませて帰ろうとした葛飾に、
前髪で右目をかくしたあの女の子が声をかけてきた。

女の子「あなたも、受かったようね。」
葛飾「うん。あなたも受かったんでしょ?」
女の子「当然じゃない。愚問よ。」
葛飾「それは、失礼。」
女の子「入学手続きを済ませて来るわ。」
葛飾「了解。」
しばらくして、
女の子「待たせたわね。」
葛飾「それよりも、名前聞いてなかったよね。おれは葛飾達夫って言うんだけど、あなたの名前は?」
女の子「私の名前?紐緒結奈よ。」
葛飾「そう。これからよろしくね。紐緒さん。」
紐緒「そうね。それじゃ、もう帰りましょ。」
葛飾「そうだね。」
こうして、葛飾は紐緒さんと楽しく帰った。
そして、この出会いは、葛飾の運命を大きく左右することになるのだった。

そうね、かえりましょ。
それじゃ、そろそろかえるわよ。
さぁ、かえるわよ。