けれど今、この瞬間。
柳葉は織田にとって、[永遠]を心に誓える、ただ一人の人だった。
織田の物思いを遮るように、柳葉が言った。
「・・・・・行ける所まで、一緒に行こう?」
目を見開いて黙ったまま、織田は柳葉を見上げる。
無言の織田を、拒絶されたと思って、
傷付いた心で柳葉は続けた。
「いくら考えたって、これから、何がどうなるのかなんて、俺には解かんねぇ」
「怖くは・・・・・ないんですか?」
やっと織田が一言返す。
「怖い?
 そりゃ・・・・・
 でも、二人で歩いていたら、この気持ちに迷いが有っても、
 必ず[出口]に辿り着ける気がするんだ」
「[出口]?」
「そう。
 いろんな意味での[出口]にな」
「柳葉さん・・・・・」
「だからさ、な?」
柳葉は、少し小首を傾げながらもう一度、
問い掛けるように織田の目を覗き込んでくる。



この人の、自分より軽く一回りは小さな身体の何処に、
これ程前向きなエネルギーが蓄えられているのだろうかと、
織田は感心せずにはいられなかった。



柳葉の言葉が、織田の背中を押す。
霧に包まれた先を考え尻込みするより、この人となら、
例え互いがボロボロに傷付いたとしても、
最後には静かで、暖かな時間が持てる気がした。



織田は立ち上がった。
間近に立っていた柳葉は、今度は自然と織田を見上げる格好になる。
織田の両手は、自分の身体の両脇にダラリと下げられたままだった。
その手が少しずつ上がって、
やっと欲しくて堪らなかったモノを手にした時の人の様に、
恐る恐る柳葉の身体に廻された。



「ほんとに・・・・・抱いちゃいますよ」
最後にもう一度、確認を取るように、囁くように問い掛ける。



柳葉は、澄んだ大きな瞳で織田を見上げるばかりだった。



フゥーッと大きく息を吐くと、今度は織田の方が身体を屈めて
柳葉を身体ごとそっくり抱き込むと、しっかりと抱き締めた。



柳葉の両手は、迷う事など無いかのように、
抱き締めてくる織田の身体に廻されて、
自分も織田への想いの丈を込めて抱き締め返した。