希望の力

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第1章 始まり

1日目 夕方

「豊錐(ほうすい)、どうかしたか?」
宏樹(ひろき)が言った。
「イヤ、ただ嫌な予感がしただけなんだ」
「そうならいいんだか…ついでにそれつまらない洒落のつもりか」
「そんな事言うのは中井(なかい)さんぐらいだ」
そう言いながら中井を指した。宏樹も確かにと言わんばかりにそれにうなずいた。そして宏樹が御門のバス停の前に立っている人を見て指を指しながら言った。
「あそこに立っているの、佳雄じゃあないか」
「河本(こうもと)君がここに来るはずないだろ。宏樹が呼んだら解かると思うけど…呼んでみたら」
「だったら、お前が呼べよ」
「いや。第一お前が言ったんだろ」
宏樹は嫌がりながらもバス停の方に向かった。宏樹が言うとおり河本 佳雄だった。
「河本君、何しにこっちに来たの?」
豊錐がそう言った瞬間、いきなり佳雄が、宏樹の腹に思い切り殴りかかってきた。
「……宏樹、河本君に何かしたか?」
笑いながら言っていたが宏樹は引きつった顔をして腹を押さえていた。声も出せないほどにやられていると思われる宏樹をよそに佳雄は、走って逃げようとしていた。
「宏樹、平気か?立ち上がれるか」
「俺はぜんぜん大丈夫ではないけど…そんなことよりより佳雄を……」
「解った。宏樹、少しじっとしていろ」
豊錐は、佳雄を急いで追いかけた。なぜか道路には、人一人いなかった、しかもあたりは静かだった。まるで不幸を予感させるかのように。御門公園で佳雄が歩いていた。近くの学校の校庭には、人はいなかったが公園の椅子に座っている人が数人いた。
「佳雄、待て。なぜ、なぜ宏樹を殴った」
「なぜって、お前のみを殺す為だ。ほかにいたら間違って殺すかもしれないだろ」
「そう簡単に人を殺せるはずがないだろ。殺される前にお前を止めるさ」
「これでもそんな事言えるか」
そう言った瞬間周りにいた人々が苦しそうに心臓を押さえていた。
「こんな事もできるのだ」
笑いながらそう言って手を握った瞬間周りで苦しんでいた人々がバタバタと倒れていった。
「おい、何をした」
「お前にこんな力あるはずないが教えてやろう」
そう言いながら倒れた人を浮き上がらせた。
「お前ら人間どもが退化している時、お前ら人間の中で進化した。ばかな人間どもに………この体が乗っ取られる前にお前に復讐してやる。死ね………」
浮き上がった人が一瞬の間に消えた。しかし豊錐には、何も受けなかった。
「何故お前だけか、体が動かな…………ばかな人間だ最後まで悪あがきするとは、この人間の体を乗り取った。後は、完全態を造るだけだ。私の完全態を……」
「貴様、佳雄は、どうした」
「佳雄?この体の元々の名か。この体は、私が乗っ取った。」
「貴様は、何者なのだ」
「今のところは、お前らの言う核ゲノンと言っておこう」
「ゲノンだと、俺たちの細胞だと言うのか。ふざけんな。細胞が心を持っただとそんな事が起きてたまるか。ミトコンドリアなら解るが細胞が心を持つだぁそんな事があってたまるか」
「もう一つ言っておこうお前が生きていられる事は、奇跡だと。なぜならその細胞に言う事聞かす事もできるしミトコンドリアにも………」
そう言って佳雄は、去っていった。

「宏樹、大丈夫か?」
「あぁ何とかしかし佳雄と何を話していた」
「あいつは、もう河本君ではない。ゲノンと名乗った。まるで何かのゲームのキャラクターみたいだった」
「ゲノン?ゲノンって何?」
「おそらく核ゲノンの事だと思う。核ゲノンと言うのは…」
「まあともかく飯、食わせろよ。お前のおごりというからお前の学校まで来たんだぞ。まさか嘘だとは、言わさんぞ」
「しょうがないなぁ。こんなときでも食べたいとは、お前には、負けたよ。とりあえず
明日、河本君の家に行ってみようか」
「何げなく話題をそらそうとするなよ、いつもながら。でもあいつ何故俺を殴ったのだ。恨みを買うような事もしてないしぃ、ゲノンとか言う奴に恨まれるはずもないしぃ。なぁ豊錐、何か知っているか」
「・・・・・・」
豊錐は、つい知らないふり時のくせで笑いをこらえていた。
「お前何隠している。吐け」
そう言うと宏樹は豊錐の首を押さえた。
「解かった解ったから離せ」
「解ればいいんだ。さあ、話せ」
「河本君のねらいは、俺だったらしいんだ。しかし俺にも心当たりないし・・・。逆恨みでも持ったかな・・・。それもないしー。もしかして俺に対抗する力でもあるのかな・・・。それは絶対ないか」
「やはりお前の仕業か」
「宏樹落ち着け、俺ではない。きっと河本君の逆恨みだ。そんな事言うならホテルのバイキング連れていかんで安いラーメン屋さんで済ますぞ。それでも良いなら言っていろ」
「解ったよ。その代わりちゃんと食わせろよ」
「嘘は付かないって。それでは食べに行くか」
それにしても河本君の本当のねらいは何だったのだろう?と豊錐はため息を付きながら思った。

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