第161回 課題文 解説


お待たせしました!

今回は、
体育の授業をバーチャルで行っている
アメリカの高校の取り組み
についてです。

バーチャル体育とは、
体育の授業をなくし、
生徒たちには電子機器を渡して
日々の運動を計測させ、
その記録を提出して
単位を与えるようにするものです。

生徒は自分の好きな運動を選びます。

サッカー、水泳、ダンスなどを
ずっとやってもいいし、
自転車やジョギングを
選んでもよいです。

もともとは
学校に通わない子どもたちのために
考案されたものですが、
生徒の時間割が過密化する中、
体育をなくして空いた時間を
自分の好きなことにあてられると
生徒には好評だそうです。

生徒は、
先生の指導のもとに
体脂肪燃焼や有酸素運動の
目標値も設定して記録をつけます。

トレーニングの進捗状況については
週一回、
先生と生徒で振り返ります。

生徒の選択の幅が増え、
いいことづくめのようですが、
運動と体育の授業とは別であるという
意見もあります。

体育の授業を通して
運動しつつ
他人とのかかわりを学び
社会性を身に着けることも
できるというものです。

体育の授業がなくなり、
自分の好きな運動を選んで
好きな時間にやっていいのは
運動が苦手な生徒にとっては朗報ですが…。

さて、
訳出する際には、
バーチャル体育が
どのようなものかがわかるように
必要に応じてことばを足しました。

コンピュータやアプリ、
フィットネス端末を使って
どのようにやっているのか
さっと読んでわかることを目指しました。

今回は応募者がなかったので
私の訳例だけ載せます。

あくまでも一例として
参考にして下さい。

◆ 第161回 課題文

 アメリカの高校で、体育の授業をバーチャルで行い、実際に体育の授業に参加しなくても、日々の運動を電子機器で測定して単位を与えているというニュースを訳してみましょう。運動が苦手な生徒にとっては朗報かもしれません。


(1) Grace Brown's schedule at West Potomac High School in northern Virginia is filled with all the usual academics, and she's packed iin Latin, chorus and piano as extras.

(2) What she cannot cram into the 8:10 a.m. to 2:55 p.m. school day is gym class. So she's taking that one minus the gym, and on her own time.

(3) The 14-year-old freshman is getting school credit for virtual physical education(PE), a concept that, as strange as it may sound, is being helped along by availability of wearable fitness trackers.

(4) For students whose tests and textbooks have migrated to screens, technology as gym equipment may have been only a matter of time.

(5) Brown wears a school-issued Fitbit on her weist while getting in at least three 30-minute workouts a week outside of school hours. She has an app on her computer that takes screeshots of her records so she can turn them in for credit.

 [ 出典: 2020年1月19日付け The Asahi Weekly ]

[語句のヒント]
 (3) wearable fitness trackers 装着可能なフィットネス端末。後出の Fitbit はその一例 (4) migrated to screens (コンピュータ上の)画面に変わった (5) turn them in for credit 単位取得のために記録を提出する 


(1) Grace Brown's schedule at West Potomac High School in northern Virginia is filled with all the usual academics, and she's packed iin Latin, chorus and piano as extras.

Grace Brown's schedule at West Potomac High School in northern VIrginia is filled with all the usual academics 「バージニア州北部のウェスト・ポトマック高校に通うグレイス・ブラウンさんの時間割は通常の授業でぎっしり埋まっている」。

is filled with~「~でいっぱいである」から、時間割がぎっしりと埋まっていることが伺えます。

and she's packed in Latin, chorus and piano as extras. 「それに、選択科目として、ラテン語、コーラス、ピアノの授業が押し込まれている」。

(2) What she cannot cram into the 8:10 a.m. to 2:55 p.m. school day is gym class. So she's taking that one minus the gym, and on her own time.

What she cannot cram into the 8:10 a.m. to 2:55 p.m. school day is gym class.「授業日の午前8時10分から午後2時55分に詰め込むことができないのが体育である」。

cram into~は「~に詰め込む」。自習時間がなく全て授業で埋められていることがわかります。このニュアンスを出したいところです。

「授業日の午前8時10分から午後2時55分まで、時間割は隙間なく詰まっているが、体育だけは入ってない」、または「授業日の午前8時10分から午後2時55分までの過密時間割に、体育だけは入っていない」などを思いつきました。

So she's taking that one minus the gym, and on her own time. 「よって、体育の授業がなくなった時間には、自分独自の時間割りを組んでいる」。

もっとわかりやすく、「体育の授業がなくなって空いた時間は、自分 のやりたいことにあてている」に変えました。

(3) The 14-year-old freshman is getting school credit for virtual physical education(PE), a concept that, as strange as it may sound, is being helped along by availability of wearable fitness trackers.

The 14-year-old freshman is getting school credit for virtual physical education(PE), 「14歳で、高校1年生のブラウンさんは、バーチャル体育(PE)の単位を取っている」。

a concept that, as strange as it may sound, is being helped along by availability of wearable fitness trackers. 「変に聞こえるかもしれないが、発想は、装着可能なフィットネス端末の助けを借りている」。

これももっとわかりやすくするため、「バーチャル体育という発想は変に聞こえるかもしれないが、装着可能なフィットネス端末の助けを借りて行うものだ」とことばを足しました。

(4) For students whose tests and textbooks have migrated to screens, technology as gym equipment may have been only a matter of time.

For students whose tests and textbooks have micrated to screens, 「テストや教科書がコンピュータのスクリーンに移動している生徒にとっては」。

これもわかりやすく、「今の生徒は、テストや授業がコンピュータのスクリーン上に映し出されることに慣れており」と変えました。

technology as gym equipment may have been only a mater of time.「体育用具としてのテクノロジーは単に時間の問題だっただろう」。

これだとわかりにくいので、「体育用具に電子機器などのテクノロジーを使うようになるのは、単に時間の問題だっただろう」に変えました。

(5) Brown wears a school-issued Fitbit on her weist while getting in at least three 30-minute workouts a week outside of school hours. She has an app on her computer that takes screeshots of her records so she can turn them in for credit.

Brown wears a school-issued Fitbit on her weist while getting in at least three 30-minute workouts a week outside of school hours. 「ブラウンさんは授業時間外で、少なくとも週3回、30分のトレーニングを行い、その間、腰に学校支給のウェアラブル端末、Fitbit を装着している。

She has an app on her computer that takes screenshots of her records so she can turn them in for credit. 「単位取得のために記録を提出できるよう、記録のスクリーンショットを撮るアプリをコンピュータ上に持っている」。

「コンピュータ上に持っている」は「コンピュータに入れている」に変えました。その方がわかりやすい気がしました。

■ 小沢の訳

バージニア州北部のウェスト・ポトマック高校に通うグレイス・ブラウンさんの時間割は通常の授業でぎっしり埋まっている。それに加えて、ラテン語、コーラス、ピアノの授業が選択科目として押し込まれている。

授業日の午前8時10分から午後2時55分まで、時間割は隙間なく詰まっているが、体育だけは入っていない。よって、体育の授業がなくなって空いた時間は、自分のやりたいことにあてている。

14歳で高校1年生のブラウンさんは、バーチャル体育(PE)の単位を取っている。バーチャル体育という発想は変に聞こえるかもしれないが、装着可能なフィットネス端末の助けを借りて行うものだ。

今の生徒は、テストや教科書がコンピュータ上のスクリーンに映し出されることに慣れており、体育用具に電子機器などのテクノロジーを使うようになるのは、単に時間の問題だっただろう。

ブラウンさんは、授業時間外で少なくとも週3回、30分のトレーニングを行い、その間、腰に学校支給のウェアラブル端末、Fitbit を装着している。単位取得用の記録を提出できるよう、記録のスクリーンショットを撮るアプリをコンピュータに入れている。

[小沢のコメント]
体育が苦手な生徒にとっては、このような形で体育の単位が取れるのはいいなあと思いました。体育がずっと苦手だった私には羨ましい限りです。