坪田先生に聞きました

ラジオ「らぶゆ~きょうと」も。
ここここここも。

毎週、火曜日、
TBSラジオの上泉雄一のええなぁ
ゲスト出演される
坪田信貴先生のことばが素晴らしいので
書きとることにしました。



2018年7月
 年齢を重ねるごとにリスクを回避しがち。
でも、年齢を重ねるごとにリスクを取った方がいい。人間社会は、若い人がリスクを取るが、生物的には逆ではないか。年寄りこそリスクを取り、失敗を恐れず、やるべき。先が長い者は後ろに引き、先が短い者は前線に出る。シロアリ世界がまさにそう。

2018年7月
 今、57歳で、定年まであと2年余り。
定年後、どんな人生を歩めばいいのか。起業すればいい。起業と言っても、会社、法人登記して、代表取締役を選んでとか考えなくてよい。ひとりで事業をすることが起業。今まで身に付けた技術を役立てて、社会に還元する。余裕ができれば人を雇う。

2018年7月
 「このままだと落第かも」。
と担任に言われたのに熟睡している高二女子。保護者として苛立ちを隠せない。どんな態度を取ったらよいのか。「このままだと落第」と言われる場合、9割方そうじゃない。本当に落第なら「間違いなく落第」と言われるから、先生は危機感を言うけど、そこまでキーキーならなくていい。

それより大事なのは、皆が北風になると居場所がなくなって誰もが望まない方向に行きがち。誰かが北風になると誰かが太陽になることが大事。甘やかしてあげる人が一人いると本当に相談したい時に相談してくれる。そうじゃないと、「そんな風になるとは思わなかった」と嘆くことになる。

家に味方がいないと、やさしくしてくれる人になびいていき、JKビジネスなどにひっかかって搾取される。私の存在を認めてくれると思えるところに集まる。家庭の役割はセイフティ・ネット。学校の先生に厳しく言われてもお母さんはやさしいとなった時、最終的にここはこうした方がいいんじゃない」と言うと、「お母さんの言うことなら聞くわ」と娘も耳を傾けてくれる。

2018年7月
 心理学者、リチャード・センターズによると。
男性、女性にかかわらず、異性にもてる秘訣は達成能力(何か目標に向かって行動し達成できる能力)。何か目標に向かって頑張って、何回もクリアしている。

心理学の社会的交換理論で、どんな人と付き合いたいかと問われると、美人とか、かっこいい、金持ち、性格がいい、話術とかの答えが返ってくるが、それに見合ったものを自分は提供しているかというのが社会的交換理論。意中の人に10の魅力があって、自分に2か3の魅力しかない時、交際してそれを奪おうとするのは万引き同然、相手に10の魅力があって、周囲が3の魅力の時、自分はせめて6の魅力を提供しないともてない。

誰かと付き合いたい時は相手の魅力にほだされており、自分は何を与えるのかという視点は欠けがち。相手に見合ったものを与えないと断られる。断る方も無意識に見合ってないなと感じているのだろう。

もうひとつ重要なポイントとして、誰かを口説く時、表面的にはそれ以上に大切なものを追い求めている人にならないといけない。あなたと付き合いたいではだめ、実はもっと大きなことをやりたいんだと思わせないといけない。

 塾講師3人に「職業は?」と聞いて、1.数学を教えてます、2.時給二千円で働いています、3.子どもたちの未来の笑顔のために、彼らの才能を引き出しています、という答えが返ってきた時、もてるのは3.のタイプ。自分の仕事について明確にビジョンがあり、それをプラスに受け入れている人が人の気持ちを惹きつける。自分の仕事に誇りを持ち、生き生きと語る人は魅力的に映る。(心理学者、サイモン・バロン=コーエン)。

2018年7月
 高三の息子、私立文系志望。
現代文の読解問題で理数系の文章が苦手。理数系の文章は主観がなく、論理的思考で必ず解ける。苦手なのは多分アレルギーがある。解決法は簡単で、ブルーバックス文庫の本やニュートンなどの科学雑誌を読めばいい。全部読まなくても、興味が持てる記事を切り抜いて、一週間にひとつ読むだけでもいい。積み重ねていけば、苦手意識は消えるし、物知りになれる。

読解のテストでも、内容が予測でき、問題を全部読まなくても答えが出せる。例えば、地震に関する文章など、英語だろうが日本語だろうが内容は同じ。

2018年7月
 小学校1年生の男子。
ひらがなが書けるようになったが、きれいに書けない。ゆっくりなら書けるが、どうしても速く書きたいみたいで、速く書くと雑になる。

ここで大切なのは「きれい」の基準。親の主観で判定してないか。「速く書いたら汚いだろ」と言っても伝わらない。例えば、薄い筆ペンで見本を書いてあげて、その通りになぞれたらOKとする。「好きなスピードで書いて、全部なぞれるたらいいよ」と言う。または薄墨の書いてあるノートを買って、好きな速さでなぞる練習をさせる。

速さに関しては、「好きなスピードで書いて」と言ってストップウォッチで測って、7秒だったとすると、「今度12秒で書いてみて」と言うとゲームらしくなる。そうするとお互いの主観も排して、楽しくやれる。今は、お互い合ってるかどうかわからず、「何でそんなに速く書くの、ゆっくり書きなよ」と親が苛々している。お互いが秒数を目指してやると、共通の目標設定ができる。

2018年7月
 教育とマネジメントの違い。
わかってない人に教えるのが教育、わかっていてもできない人に教えるのがマネジメント。ダイエットしたい、やり方は食事と運動、わかっているのにできない人を指導するのがマネジメント。教育は知識の無い人に知識を与えるのが教育。

車の運転に例えるなら、免許書更新手続きに行った時、交通事故の怖さを映像で見せるのが教育、交通違反を取り締まるのがマネジメント。

何で勉強しないといけないのかがわかってない子どもにマネジメントする人が多い。「あんた、宿題やってる?」とチェックするのはマネジメント。何で宿題しないといけないのかを教えるのが教育。知識を先に与えないといけない。上司や親はそれなりの知識を持ち、提供せねばならない。その知識が無い場合、「世の中、こうなってる」と誤魔化しがち。知らない場合、知っている人を呼んで知識を吸収する(社員研修など)。多くの人は自分に知識がないことをダメなことと思い、ごまかし、マネジメントする。

教育とは知識を与えること、次の段階がマネジメント。この順番を間違ってはいけない。自分が知りたい分野の専門家を呼んで公民館で講演会を開くと、自分の勉強になる。勉強ができると、マネジメントもできるようになる。

2018年6月
 反論と単なる反対の違い。
例えば、日本にカジノを作ればギャンブル依存症が増え、治安の悪化や反社会的勢力の資金源になる。これに対し、カジノがあれば外国からの観光客増え、カジノ関連の雇用も増え、経済的効果もある、は反論か。

これは単なる反対。反論とは相手の論証を批判した上で対立する主張を根拠と共に述べること。論証を批判することなくただ批判するのは反対。その意味で、全く反論していない。これがいわゆる水掛け論。相手の主張を批判した上で自分の論を言わないと建設的な議論にならない。

次の例。歩きスマホは法律で禁止されていないから、いつどこでやろうが勝手じゃないか。反論には5つのポイントがる。1.論証の構造をはっきりさせる。2.ほんとかな?と立ち止まる。3.隠れた前提を検討。4、類似論法に対し相違点を見つける、5.メリットとデメリットを比較。

1.の論証の構造とは、根拠と結論をはっきりさせる。歩きスマホは法律で禁止されていないというのがここでの根拠。結論はどこでも自由に歩きスマホしていい。もやもやっとするけど反論できない時は、結論て何なのとまず考える。確かに法律違反ではないけど、ほんとかな?とまず立ち止まる。

隠れた前提をまず検討しないといけない。ここでの隠れた前提は「法律違反でなければ、いつでもどこでもやってよい」というもの。その前提が間違っている。マナー違反であるとか、危険であるため行うべきでないこともある。

4つ目は類似論法。飛行機は空を飛ぶから危険、車は地面を走るから安全という論に対し、飛行機は飛んでるじゃんと言い、メリット、デメリットをはっきりさせる。

このステップを踏むと、だいたいのおかしなことに反論できる。何が根拠になっていて、何が結論になっているのか。ほんとかなと立ち止まり、隠れた前提を検討すると、たとえ話、類似論法のような使われ方で、それは違うよと言い、メリット、デメリットを比較することができる。

次の例。一夜漬けで勉強しても真の学力にはならないから、試験勉強なんかしない方がいいに何と反論するか。

根拠は、一夜漬けは身につかない、結論は、試験勉強しない方がいい。隠れた前提は、試験勉強は一夜漬けだというもの。身につかないなら勉強はしない方がいいというのが思い込み。そもそも、試験勉強は一夜漬けという前提がおかしい。さらに、身につかないなら勉強しないでいいというのもおかしい。身につかないことを繰り返しながらも徐々に身につけていくのが勉強。

それ自体は経験として苦しくても、どんな苦しい時でもあきらめないことを学ぶのも勉強のメリットとしてある。これでだいたいの屁理屈には反論できる。

参考:大人のための国語ゼミ

2018年6月
 高一の息子。
将来の目標がないが、文系か理系を選択せねばならない。高一ではこの選択が重要だと思っているが本当は重要ではない。各学部がどんな勉強をしているかを知らないままに進めてしまうことが問題。大学に入っても転部できる。本当に勉強したければいくらでもできるし、学部は本質的にどうでもいい。

学部よりも、どこの地域で働くのか、どういうものに興味あるのかを親子で話し合ってお互いに理解し合うことが重要。最初のステップとして、親が自分はどんな選択をしたか言う。「数学が苦手でついていけなくなったから文系にした」でもいい。

学部については知らない。法学部で何をやっているか、法学部にの人以外知らないから、親子で勉強しに行くのが大切。大阪大学の〇〇学部が最難関なら、そこはどんな勉強をしているのかを一緒にリサーチする。

ほとんどの親が「私たちの時と大学は違うでしょう」。じゃ、それを知ろうとしよう。「もう高校生だし、こっちが口出しすることない」というスタンスの人が多い。一切、口出ししない、お金だけ出すというスタンスならいいけど、そうじゃないなら、一緒に勉強するというスタンスが大事。親が塾や学校の先生に「この子、経済学って言ってるんですが、経済学って何学ぶんですか?」という質問をしてもいい。意外と根拠なく、先生たちが進めていると気づく。僕自身、生徒と一緒に調べることを重ねて知識が増えた。世の中、よくわからないままに進路を決めていることが多い。そこをまずやっていみるといい。

2018年6月
 小三の息子が宿題に集中しない。
机に向かっても集中せず、消しゴムのカスを丸めたり、消しゴムを黒く塗ったり、新たな遊びを見つけるのが宿題のよう。折を見て「やってる?」と声かけすると一瞬だけ宿題に戻る。もうひとつ、間違ったところを直すように言うと「間違ってない、何回やってもこうなる」と聞く耳を持たない。お互いに宿題を巡って嫌な思いをしている。

宿題で一旦、机に向かうところが素晴らしいし、嫌々でもやっているところが素晴らしい。子育てに一番重要なポイントは、数少ない自分の経験だけで判断しないこと。小三の宿題には答えが必ずある。ひとつの道に行くのが嫌だから違うことをやっている可能性もあるから、間違いを見つけて「ここ違ってない?」と間違いを正すより、合っているところを「すごい」と誉める。7+8=15とできていたら、逆に「14じゃない?」と言ってあげるといい。子どもは自分が上に立った瞬間、嬉々として説明する。「そうなんや、なるほど」と感心した後で、7+3=11と間違っている問題を「これはどうなるの?」と聞いてあげると、本人が「あっ、違う」と気づく。

できているところを「ここすごいね」、間違っているところを「ここ間違っている」というのは上から目線になっている。そうでなくて、まず「この子、机に向かっている、すごい」から始め、「宿題嫌だろうに解いてる、すごい」という目で見てあげると、どんどん宿題をやるようになる。

2018年5月
 彼氏が禁煙に苦労している。
加熱式煙草を持ち歩いているが、私は煙草に弱くて加熱式煙草でも気分が悪くなる。彼氏と出会って9ヶ月。ついに煙草を続けるなら付き合っていくかどうか考えたいと言った。そこから少し頑張ってくれているが、禁煙のコツなどあれば教えて欲しい。

禁煙してくれることが目的なのか、自分が気持ち悪くならないことが目的なのかで方法論が変わる。たいてい、悩み自体が重要ではなく、そこに隠れた本質、目的が重要。いろいろあるだろう。彼氏の健康が心配、私の体調が悪くなるなど。これを繰り返して、「この人、約束をを守ってくれない」とどんどんいろんなものが発生してくる。

その時、一番重要なポイントは何なのか、そこを決めないと、相談者の悩みは最終的に解決しない。まず、彼が禁煙すれば全てうまくいく話に聞こえるが、実はそうじゃない。禁煙して彼のストレスが溜まって暴飲暴食に走るかもしれない。今度は太ってきて嫌だという悩みになるかもしれない。本質的には、今の恋人関係は自分の理想でないことが嫌だ。

禁煙が大きなスポットを浴びているのは気持ち悪くなるから、明確な身体的な不都合があるからだけど、何が今不満で問題なのか考えると、本当に煙草の煙が単純につらいだけなら、会う前に煙草を吸いたいだけ吸ってもらって、その後石鹸で洗うなどケアをしてくれとお願いするとか、彼の部屋にはいかないとか、そういう方向に行った方が最終的にはプラスの解決になる。

単純に禁煙するとなると世の中にはいろんな手法が溢れていて、病院に行っても禁煙できる人、できない人がいる。ここで「私のこと大切に思ってないの」と勘違いすることもあり得る。それとこれとは話が別。基本、何で煙草を吸うかというとニコチン中毒だから。それは風邪を引いている人に何で私の前で咳するのと言っているのと同じ。その人と別れるか、悩みのポイントは何かを考え、その一点の解決方法を考えた方がいい。

彼氏が加熱式煙草をやめても、それだけでは満足できないこともある。まさにトレードオフの問題で、何かを得た後は何かを手放さないといけない。物事は全てそう、美味しいものを食べたら太るとか。何かの時に、彼氏が「俺だって煙草をやめたじゃないか、お前だって」と言い出すなど、トレードオフの問題が生じかねない。或いは、煙草の煙はなくなるけど、すごいストレスが残るなど。何を得て、何を手放すのかを把握した方がいい。

付き合い始めて9ヵ月、表面上は「やめる」と言って、隠れて吸い、「嘘をついた」ともめたりして、身も蓋もなくなったりする。禁煙の悩みは禁煙そのものではない。本当の悩みはどこなのか、禁煙で解決するのか。ものすごくいい香りの煙草が出てきたら、「それはいい」となるのか。すると、禁煙が問題ではなくなる。

2018年5月
 本人なりに頑張っているのに成績が伸びない中三の娘。
どう励ましたらいいのかという親の悩み。この質問は多い割に、親が、根本的に相談の仕方をわかってない。何をどう頑張ればいいのか、頑張るの中身を親がわかっていない。

あんまりわかってない状態で何となく不安だと言っている。点数を上げて欲しいなら具体的にあと何点上げたいですか、何を強化したいですか、が欠けている。経営で言うとKGI(具体的な数値、第一志望の高校合格など)とKPI(達成するために必要な他の数値、一日何時間勉強するなど)の違い。

明確にいろんなもの数値化すると、明確に何をやればいいかがわかる。例えば、社会はあと50点必要だとすると、「あなたが足りないのは戦国時代の文化のところだよ、一週間後までに10回教科書を読もうか」というくらい突きつめていくと、あとは何をやればいいかがわかってくる。ほとんどの人は「なんか成果が出てない」「なんか頑張ってるけど」と漠然と言っているだけ。

中三だと第一志望の高校を決めないといけないが、そもそも第一志望の高校を決めていないことがわかったりする。KGIもKPIも決めようがない。わかっていても、そこの高校へいくために何点必要かがわかってなかったりする。そこを明確にすることが一番重要。

2018年5月
 「友達ができない」「死にたい」など。
子どもがネガティブなことを言った時、いちいち過剰反応せず、すっと話題を変えるといい。「そんなん、どうでもいいやん」とも言わない方がいい。どうでもいいかどうかは、こっちの勝手判断だから。そんなコメントを一切せず、「そっか、それよりこれ美味しいよ、食べてみ」「テレビでも見よか」と別な話題を振る。

親が「大丈夫、大丈夫」と強気だったら、子どもも「そういうもんか」と意外と強くなり、いろんなものを深刻に取らなくなる。ネガティブなことに対して、我慢したり、どうにかやるのが我慢強さと思われがちだが違う。昨日言われた悪口を「そんなん言われたっけ」と言えるのが強さ。「友達ができない」など子どもがネガティブなことを言う度、「大丈夫?友達作りの本を買って研究しよう」とか親がいちいちストレートに受け止めると、子どもは「そんなつもりで言ったんじゃないのに」となる。友達ができなくても大丈夫、と親が強気に構えると子どもは安心する。

2018年4月
 不登校になる原因は様々。
いじめ、先生に嫌なことを言われた、家の方がいい、ゲームがしたい、それぞれ理由は様々。結局は学校、塾、家庭での世界観が狭い。評価される軸が少ない。それこそ40人のクラスだったら、40人プラス学校の先生で、主に評価してくれる人は学校の先生。その先生と合わないとなった瞬間、居場所がそこでなくなってしまう。

クラスで仲がいいのは自分の座っている座席の周囲の子たちだけだったら、その子たちと趣味が合わないと、もうその話に乗っていけない、面白くないから、つらいから一日学校をさぼる、一日学校をさぼると敷居が高くなる、そのうち、二日、三日となると経てば経つほど行きにくくなる。

そうすると親は「何とか行きなさい」「さぼってるんでしょ」「いじめに遭ってるの」という方向に行く。まだ小学生くらいだと行ってくれたり、行かなくなったりを繰り返し、最終的には全く行かなくなる事態になり、どうしていいかわからなくなる。

一番の理由は評価軸があまりにも少なく、行くか行かないかが偶然になってしまう。今回、道徳の教科ができ、これも評価される。先生の道徳観でもって評価される。

星野君の二塁打という話が小六の教材にあり、教員の悩みの種になっている。星野君は野球部員で最終回、同点でバッターになる。たまたま前の座席の子がヒットを打ち、監督が送りバンドをしろとサインを出すが、本人はもともと打てる子で、今日は打てそうな気がするので思い切りバットを振ったら打球が伸びて二塁打になり、この一打がチームを勝利に導き、選手権大会出場を決める。

ところが翌日、監督は選手を集め、重々しい口調で「チームの作戦として決めたことは絶対に守って欲しい。監督と選手で約束した。自分が監督を受ける時に、これはチームだ。チームとは自分たちが好きなようにやるならチームでなくなるから、自分はちゃんと役割を果たすから、君たちも役割を果たして欲しい。こう約束した。いくら結果がよくても約束を破ったことに変わりはない。犠牲の精神がない人間は社会に出ても社会をよくすることはできない」。

そして、星野君の大会出場への禁止を告げる。個人プレーとチームプレーのどちらを優先するか。悩ましいテーマだが、この教材は個人プレーを断罪している。

根本的に、このストーリーの題材設定が間違っている。野球は勝つことが目的、勝っているのに個人プレー云々を言い出すのはおかしい。不登校の小さな原因もそういうもの、つまり、この先生だったり、友達だったり、自分自身だったり、なんか私、このチーム、グループと考え方が違うかもと思うことから。

だから制服を着て、みな同じグループという心理的な効果を出している。髪の毛の染色禁止というのも、色を変える人も生まれつきの人も実はグループが違うとなりかねないから。自分で感じたり、他人から言われたりすることによって、ちょっとずつ私は評価の基準外なのか、評価されてないのかとなって、居場所でなくなってしまう。

それって、簡単に言うと、自信とも言える。自分はこの組織に所属してもいいかという自信、いわゆるゆるコンプリメントが重要になってくる。

具体的にどうすればいいかというと、愛情と承認を一日一個でも二個でもやるということが重要。例えば「お母さん、嬉しいわ、あなたはこんな力があるわ」とか。自信を失っている子どもに自分がやったこと、できたことを気づかせるのがコンプリメント。子どもが心開いて親のことばを受け入れて、その愛情と承認を1分でも3分でもやってみると、ちょっとずつ自信の水みたいなものが出てきて、外に一歩でも出てみようかなという気持ちになる。

コンプリメントはひとつ、ふたつではだめ。身体症状(朝食が食べれない、起きれない、お腹が痛いなど精神的なものが身体に現れている症状)が3つ出ているとしたら、その倍の6つ以上必要。お腹痛いとは関係なくていい。重要なのは、したこと、できたことなど事実に焦点を当てて、愛情と承認をする。

ありがちなのは、親は本当にやってくれて嬉しかったことを誉めないといけないと思いがち。例えば「今日も朝起きれたね、母さん嬉しいよ」と言うのはコントロール。

イメージ的に言うと神様、仏様にいただいた命を全うしてくれていることがいいという感じがいい。生まれてきてくれてありがとう、私はあなたを神様、仏様から預かっているだけだから、という感覚でコンプリメントをする。ところが評価してしまい、「今日は、あんた、起きれてないじゃん」「昨日よりは早く起きれてるよね」になりがち。

要は、評価軸が少なくて、それに合わないことで、自信をなくしている。むしろ、その小さな世界の中の評価軸ではなくて、神様から与えられた命と考えると無限大になる。要は閉鎖された集団の中で自信をなくしているので、その閉鎖された集団感を失くしましょうと言っている。

「あんた、将来は大丈夫よ」と言うのも未来のことだからわからない。だから、けっこう反発される。大事なのは、できたこと、したことという事実ベースで、それを承認し、愛情を伝えるということをやっていった方がいい。

一日で不登校になることはなく、けっこう、長期間に渡って何かしら自信の水がなくなってきている。これを回復させるにも同じくらいの時間がかかる。コンプリメントを続けていくにしても三カ月、半年ぐらいやっていくと、基本的には不登校は解消できる。

ポイントは3つ。1.自信の水を作る、2.コンプリメント、3.観察記録をつける。観察記録とは、二回目の育児手帳と考える。子どものいつもと異なる良さを見つけ、悪いところは書かない。その見つけた良さをコンプリメントする。実際、99%以上の子が不登校から解放される。

不登校でなくなることがいいのかどうかはわからないし、不登校でいいじゃないかと思うが、ポイントは、客観的な評価軸があまりにも閉鎖空間の中で行われていて、例えば、それこそ学校に8時50分に行かないといけないのに、それができない奴はだめだとするのが単一の評価軸。

人間は朝型、夜型があり、夜型はそこで排斥され、自信の水がどんどんなくなる。子どもの良さに親の嬉しい気持ちを加えていく。子どもの良さに「あなたは何とかの力があるよね」と加えて励ます。子どもが主人公とした声かけをすると、どんどん自信の水が回復する。

大人になったら自分の世界が持てる。好きな人同士でコミュニティを作れるのに、学生のうちは学校の価値観で縛られる。保護者は学校に行き、三者面談で担任から「宿題とかちゃんとやってこないんですよ」「忘れ物が多くて」と言われ、「あんた、忘れ物したらだめじゃない」と言うのは、完全に学校の先生の価値観、評価軸が家でも同じとなる。

子どもの頃は、学校か家かという大きな二択しかないが、大人になるとバイト先やサークル仲間と出会い、好きな人ができて、違う価値観が芽生える。

評価軸が少ない中で自信の水がなくなっている子に自信の水を増やす、そのためには愛情と承認、コンプリメントし、観察記録をつける、三カ月から半年で不登校は99%解消されるというデータがある。地道な積み重ねである。

もうひとつ、評価軸を変に固めない。みんないいところがあるということを当たり前のように言っていけば、不登校が少なくなる。

これ以前の坪田先生に聞きました