ー 天 上 の 華 ー オリジナルバージョン 上 … 泉 香 … |
あれは、炎。すべてを焼き尽くす…… 「だめだよ、珠鴬(シュオウ)。この花は摘んで帰ったらだめなんだ。また母さんに怒られちゃうよ」 あれは夏の終わり。盛りは過ぎ、朝夕は少し過ごしやすくなったものの、日中はまだまだ暑い。 そんな中、田圃の畦に咲き乱れる、紅い花。 子供の頃、その紅い花が、どうしても欲しかった。 「どうして?。こんなに綺麗なのに…。ぼくこの花、とっても好きだよ」 珠鴬はそう言って、同じ高さにある兄の顔を見つめる。 白い肌。双子の兄は、昔から体が弱かった。自分とは、まるで対照的に。 「でもだめなんだ。わかるだろ?」 こんな暑い日に出歩いて、また倒れたらどうするの! 母に怒鳴られて、無理にかぶせられた麦藁帽子の下から、汗が流れてくる。 拭っても拭ってもきりがないそれを不快に思いながら、和沙(カズサ)は弟のよく日に焼けた顔を見返す。 同い年なのに、どうして珠鴬はこんなに聞き分けが悪いんだろう? 「お家が火事になるから?」 口をとがらせて、珠鴬は答える。 「そう。これは不吉な花だから、家に火を呼ぶんだ。おばあちゃんがそう言ったの、珠鴬だって聞いただろ?」 「でも父さんが、そんなのただの迷信だって言ってた。平気なんだよ」 無邪気に言い切る珠鴬の言葉に、和沙は唇を咬む。 そんなこと分かってる。でも、年寄は迷信にうるさい。 祖母が嫌がるのだ。 そして祖母は、その怒りを孫である自分たちにはぶつけない。 母と祖母は、とても仲が悪いのだ。 嫌味をいわれた苛立ちを、母はヒステリックに叫ぶことで解消しようとするだろう。それを聞くのは、いつも自分なのだ。 「うその言い伝えを皆信じてるなんて、そんなのおかしいよ。どうして?」 どうして?≠サんなこと、和沙の方が聞きたい。 自分にはわかる母と祖母の不仲が、どうして珠鴬にはわからない? お兄ちゃんだから≠サんな理由で、どうしていつも自分だけが叱られなければいけない? まんまるの目を更に大きくして、珠鴬は兄を見つめる。 「和沙はこの花、嫌いなの?」 お兄ちゃんがしっかり珠鴬に言ってくれなきゃだめでしょ! 母はまた、ヒステリックに叫ぶだろう。 でも。 「……僕も、好きだよ」 悲しいような微笑みで、和紗は答える。 遠くで、蜩 (ヒグラシ)が鳴いている。 過ぎようとする夏を惜しむように、傾きかけた太陽が辺りを紅く染めていた。 ・・・・珠鴬 和紗の体には田舎の空気がいいから≠サう言われて越してきたのは、幼い頃何度か来たことのある祖母の家の近くに、新しく出来たマンション。 転校先の中学校までは、歩いて30分。 9月の半ば、夏休みボケから立直ったばかりの教室は、残暑の余波にざわついていた。 ねっとりとにじむ汗を拭いながら珠鴬は、担任となった教師が転校生の紹介をするのを、他人ごとのように聞いていた。 「……は……から体が弱くの療養の為ここに………半端な時期からの転校となりますが、……ので皆仲良く………」 黒板の前に立つ珠鴬に集まる好奇心に満ちた視線と、耳触りなひそひそ声を、他人ごとのように受けとめる。 実際珠鴬は、そんなものにはまったく興味がなかった。 新しい学校、教室、クラスメイト。すべてが磨硝子(スリガラス)を隔てたように、もしくは映りの悪いテレビを見ているように、不鮮明で。 教師の声、生徒たちのおしゃべり、そのすべてが、雑音。 朝の陽射しが、よく磨かれた教室の床に反射し、目の奥に残像が焼き付く。 避けるように窓の外を見た珠鴬の視界に、やけに鮮明な紅が飛び込む。 あれは、何だろう? 校舎のフェンス、その向こうにまだらに揺れる、紅い花。 不鮮明な白。 その中で、ただ鮮明な、紅の………。 ・・・・和紗 白い部屋。何もない。 和紗は起き上がって、白い壁を見つめる。 白いベット、白いシーツ。 全てが白で統一された、ここは、何処だろう? 一瞬の空白の後、慌てて首を振る。 ここは、新しく越してきたマンション。その中で、和紗にあてがわれた一室。 「寝呆けてるな」 呟いて、苦笑する。 無理もない。こんなに毎日、ただ眠るだけの生活を送っていれば…。 部屋の外で、何かを言い争っているような声がする。 ヒステリックに叫ぶ、あれは母の声。 変わらない、幼い頃から聞き続けた甲高い声。何度聞いても、気持ちのいいものではない。 母の声に怒鳴り返す、少年の声。 変声期を少し過ぎて、でもまだ落ち着かないその声は、やっぱり生まれたその時から聞き続けた、弟の声。 成績とか、素行態度とか、そんな話をしているのだろう。 弟は、今日転校先の学校へ初めて登校した筈。そこで、さっそく何かあったのだろうか? うるさいな!もうほっとけよ! そんな言葉に、更にけたたましく反論する母の声が聞こえる。 変わらない、いつものこと。 今日に限って、やけに遠く聞こえるのは、なぜだろう? 微かに眉をしかめる。その和沙の耳に、今度はしっかりとした現実感をもって、部屋のドアが開かれる音がする。 「珠鴬!待ちなさい。話はまだ終わってないのよ!」 一瞬、大きく聞こえた母の声は、 「話すことなんて、なにもないよ!」 そう怒鳴る珠鴬の声にかぶさって、ドアを閉める音とともに遠ざかる。 外はかなり暑かったのだろう、額に汗を浮かべた弟に、和沙は笑いかける。 「おかえり、珠鴬」 ・・・・珠鴬 転校早々、午後の授業をさぼって帰ってきた所を、母につかまったのは失敗だった。 どうやらしっかり学校から連絡がいっていたらしい。 放っておいてくれればいいのに どうせ義務教育だ、中学なんて。 面倒な生徒は始めから放っておいて、卒業証書だけわたして厄介払いしたらいい。 どこの学校の教師だって、言うことはなにも変わらない。 中3の夏だとか、進路はどうするんだとか、どうでもいい事じゃないか。 どうしてお母さんの言うことちっとも聞かないで、恥ばかりかかせるの! 自分の都合しか考えない母の小言を、要領良くとは言えないまでも振り切って、部屋のドアを開ける。 涼しい風。とたんに、自分が汗をかくほど外が暑かったことに気付く。 「おかえり、珠鴬」 目が痛くなるほどに眩しい白い部屋。 その奥から微笑む、優しい声。 オアシス。 この部屋に入るたび、その声を聞くたび、珠鴬はそう思う。 呼吸が、嘘みたいに楽になる。 「また母さんと喧嘩したのか?転校早々何をやったのさ、一体」 笑顔を崩さず、和沙が言う。 ここにくれば、必ずそうして微笑んでくれる、大好きな自分の片割れ。 「なんでもないよ。母さんがうるさいだけだ」 一応答えておいて、そんな事どうでもいいと言わんばかりに、白いベッドの枕元に膝を付く。 「あんまり、母さんを困らせたらだめだよ」 そう答える和沙の口調も、付け足しの域を出ていない。 「すごい汗だ。今日も暑かったんだね」 枕元に置いてあるタオルを取って、珠鴬の額を拭ってやる。 「うん。そうだったみたい」 優しい手に心地よく身を任せながら、珠鴬は答える。 あまり、覚えていないのだ。部屋を出ている間の事は。 まるで水の中を歩いているように、ぼやけたヴェールの、向こうの出来事。 「ずっとここにいれたらいいのに」 ひんやりと冷たい和沙のパジャマに顔をうずめながら、珠鴬は言う。 「めんどくさいだけだ、外に出たって」 病弱な和沙と、健康な珠鴬。 お兄ちゃんは部屋で寝ていなさい、珠鴬は元気なんだから外に出ていなさい=@母の言うことは、昔から変わらなくて 「僕も、珠鴬が出ている間の事は、あまり記憶に無いんだ。なんだかぼ〜っとしているみたいだよ」 二人がこんなに、お互いを必要としていることを知らない。 「なんにもしたくない。和沙といたら、それでいい」 広いベッドに、もぐりこむ。 「うん」 良く焼けた珠鴬の額に、白い自分の額を押しつけながら、和沙も答える。 「ぼく達は二人で一人なんだから、それで正しいんだよ」 理性的な和沙と、感情的な珠鴬。 いつだって二人は一緒で、そうしてやってきた。 「大好きだよ」 眠り込む瞬間のその囁きが、どちらの口から出て、どちらへ向けられたものだったのか、それはもう、どちらでもいい事。 一緒だからね……… ・・・・部屋の外 「先生、この場所に引っ越してきたことは、本当にいいことだったんでしょうか?」 「少なくとも、彼の心になんらかの影響を及ぼすことは出来るでしょう。それが良いほうに出るか、悪いほうに出るかは分かりませんが。これは一種の賭けだと、そう説明したと思いますが?」 「でもさっそく授業をさぼって学校から連絡が来たんです」 「まだ転校したばかりですし、無理もないでしょう。あまりうるさく言わずに、しばらくの間様子を見るべきです」 ・・・・二人 白い部屋の中。 ドアを開けて左手の壁の真ん中に置かれたベッドは、二人が寝てもあり余るほどに大きい。 「そう言えば今日、やけに印象に残る花を見たんだ」 ふれあうほどに寄り添いながら、珠鴬が言う。 「どんな?」 「紅い、花だった。とにかく本当に真っ紅で、真っすぐに伸びた太い茎の上に、つんつんした細い花びらが、空に向かってる。そんなのが、学校に行く途中の道にも、向こうの山の方にも、学校の脇にも、咲いてるんだ」 珠鴬の黒々とした髪に白い指を絡ませながら、和紗が答える。 「それなら多分、彼岸花だよ」 「彼岸花?」 「昔ここに来た時にも、その花がたくさん咲いていた。覚えてないの?」 なぜだかちくりと、珠鴬の胸が痛む。 「知らない」 そっぽを向いてしまったその頬を、白い手が包み込む。 「一面の炎のように、たくさん咲いているのを見たじゃない。あの時も、僕が本を開いて名前を調べてあげたのに」 「忘れたよ、そんな事」 「本当に、忘れてしまったの?」 ……言わないで 言わないで それ以上は 言わないで 「…うん。もういいよ、和紗。何か違う話をしようよ」 「…そうだね」 そう答えてくれたことに、不自然な程安心する。 その不自然さに、珠鴬は気付かぬふりをする。 ……もう少しだけ このままで ・・・・珠鴬 夢………家が燃えている。 揺れる炎、紅い華。あれは、あれは… あついよ、あついよ和沙。母さん、母さん? 和沙は?和沙は? 体を包む熱気。息もできない程に。 パチパチと音をたてて燃える柱。飛び散る灰を吸い込んで、焼け付くように喉が痛い。それでも、和紗を探して広い家を歩きまわる。 長い廊下。炎にのみこまれていく、襖や障子。 それは珠鴬が今住んでいる、見知った家のものではない。 けれどまるで自分の家を歩くように珠鴬は進む。それは確かに自分が良く知っている家の間取り。 そして同じ家に眠っている筈の誰かを探している。 和沙、母さん、父さん、お祖母ちゃん!。 視界の中で、揺れる紅。燃える炎。風に広がった、あの紅い華のように。 その紅に重なって、次に広がるのはまた違う光景。 「だめだよ、和沙。それは摘んで帰っちゃだめだって、母さんにまた怒られちゃうよ」 「いいんだよ、こんなに綺麗なんだから。珠鴬だって、そう思うよね?」 紅い、紅い華。これは燃える炎。それは血の色。 不吉な花だと、母は言った。絶対に、家にもって帰ったりしてはいけないと。 それは家に災いをもたらすからと。 なのに……… 薄笑いを浮かべた同い年の兄は言う。 「この花、好きだよね。欲しいよね?」 「うん……」 そうして、怒られるのはいつも珠鴬なのだ。 「珠鴬がどうしても、持って帰るって聞かないんだ」 違うよ母さん。 「珠鴬!どうして兄さんや母さんの言うことが聞けないの!」 違うんだ母さん、話を聞いて。僕を信じて。 珠鴬の手から、持たされていた花を取り上げて、母はそれで珠鴬の頬を打つ。 飛び散る花びら。まるで血を流しているように。 風に流れて、踏み躙られる深紅。土にまみれて。 まるで流れてから時を過ぎ、変色した血のように。 紅い・・・・記憶・・・・夢。 目覚める。 動悸が、異常なほどに激しかった。 なに?今の夢は、何? 無意識に拭った額をつたう、生温い水滴。 こんなにも激しい汗をかく程の、あんなにも生々しかったあれが、ただの夢と言い切れるのか? 見渡す白い部屋。何もない部屋。広いベッド。 部屋の角にはガラスの花瓶。無造作に活けられた紅い華。 あんなもの、この部屋にあっただろうか? 真っすぐに伸びた太い茎。天を向いて反り返る、紅い花びら。 それは夢に見た、不吉な華。 あんな花、自分は知らない。今日初めて見たんだ。和紗の言う昔の事なんて、覚えてない。 でも 自分は前にも、あんな夢を見たことがある。 あの、夏の終わりに… あの紅い華を、欲しがったのは、和沙?(珠鴬?) 怒られたのは、珠鴬?(和沙?) どうして自分は、ここに一人で寝ているの? 「どうしたの、珠鴬。眠れないの?」 背中からかけられた声にふりかえる。 「和沙!」 眠そうな瞼をこすりながら起き上がる、自分と同じ顔。 肌の色を除けば、二人はとても良く似ている。 ……大丈夫、何もおかしくない。 「なんでもないんだ。少し寝呆けていたみたい。起こしてごめん」 「そう、それならいいけど。もっと眠ろう。まだ眠いよ」 もう一度、抱き合って。 和沙の匂い。自分と同じ、柔らかい匂い。 ……大丈夫、あれは夢。 あの夢の中で、紅い華を、欲しかったのは自分。 覚えてないけど、多分そう。 だって和紗は、あんな風に、あんなに冷たく微笑まない。 和紗はいつも、自分のこと、とても大事にしてくれるんだ。 それは、間違いの無いこと…… ・・・・和沙 窓から入る風に誘われて、ふと目を開ける。 珠鴬は、学校に行ったんだろうか。 和沙は広いベッドに、一人で寝ている。 生暖かい、午後の風。 部屋の西側の壁に、正方形に切り取られた白い窓枠。 それはちょうど、ベッドに体を起こした和紗の真正面。 そのままの位置だと窓を少し見上げる角度になって、外の景色は空しか見えない。 ………この部屋に、窓なんてあっただろうか? 不意に湧き上がる疑問に、頭を振る。 何をいっているんだ、当然じゃないか。 窓のない部屋なんて、あるわけがない。そんな、まるで閉じこめられているみたいな部屋……… 閉じこめられている? 誰が?…自分が?…自分たちが? 頭が、痛い。そう思うと痛くなるような、それは気のせいだとも思えるような、かすかな痛み。 いらいらと、シーツを掴む。自分は、何にいらついているのか? 白い部屋。白いベッド。 対照的に、部屋の隅のガラスの花瓶には紅い華。 あれは……ずっと前から、あそこにあった。 幼い頃、あの華を珠鴬が欲しいと言って(自分が欲しがって?)母に随分怒られた。 まだ自分が、外を自由に出歩けた頃。 ふと思い立って、窓際まで近付く。 「!」 息をのむ。 窓の外には、紅… 燃えているのかと思った。 風に揺れる、いちめんの紅い華。 あちこちで見かけたと、そう珠鴬が言っていたけど、まさかこれ程とは思わなかった。 広がる視界いっぱい、ただ咲き誇る、紅の華。 こんな風景を、前にも見たことがある。 ・・・・珠鴬 「これから皆で、・・・の家に集まってゲームするんだ。よかったら一緒に来ない?」 何といっただろう、名前を覚える気もないけれど、黒縁の眼鏡がやけに印象に残るそのクラスメートは、汗でずり落ちてくる眼鏡を直しながら遠慮がちに声をかける。 その様子をチラリとみて、珠鴬はぶっきらぼうに答える。 「和沙がまってるから」 「か、和?誰のこと?」 「双子の兄弟。体が弱いんで外に出られないんだ」 早口でそれだけ言うと、まだなにか言いたげな生徒の横をするりと通り抜けていく。 「なんでぇ、すかしやがって」 二人の様子を遠巻きにうかがっていた数人の生徒たちが口々に愚痴るのを、聞くともなしに背中で聞いた。 馬鹿げてる、全てが。 傾きかけた日差しの中を家へと道を急ぎながら、珠鴬は思う。 視界の端にちらつく紅が、やけに神経を逆撫でる。 昔、一緒に見たじゃない 覚えてないよ、そんな事。 ……忘れてしまった記憶だから。忘れていたい、事だから。 ・・・・遠い夏の日 珠鴬と和沙は、とても仲の良い双子だった。 幼い頃は、和沙も今ほどは病弱でなく、母の実家である田舎に行ったときなどは、珠鴬と二人、日が暮れるまで山の中を飛び回った。 その場所を見付けたのは、ほんの偶然。 先に行ってしまった珠鴬を和沙は追い掛けて、弟が竹林のなかで茫然とたたずんでいるのを見付けた。 いぶかしげに珠鴬の目線を追った和紗は、同じように、目を見張った。 苔むした、黒い木々。 その足元を覆うように、一面の紅。 真っすぐに伸びた、葉のない50センチほどの緑の茎。 その上に、天( ソラ)に向かって手を広げたような、深紅の花びら。 細いながらもピンととがったそれは、胸を張るように反り返り、その凛々しさを誇張する。 強くて、人を寄せ付けなくて、だから、哀しい。 家に帰って、寄り添うように分厚い図鑑をめくり、曼珠沙華≠ニいうその花の俗名が、『天上の華』を意味するものだと知った。 「ぴったりの名前だ。本当に違うところみたいだったね」 「すごく、綺麗だったね。まるで、燃えているみたいだったね」 二人して興奮してしまって、その夜は、眠れなかった。 ・・・・和沙 今思うと、あれは哀しくて、恐ろしい光景だった。 あまりに荘厳で、圧倒される程に美しい…ゆえに孤独で… 炎のような、血のような、激しい紅。 一株だけで咲いていれば、決して派手な華じゃない。ともすればまわりの緑にうもれてしまいそうなのに、一度意識しだすと視界から消えない。 凛として、じっとこちらを見つめているような…… めまいがする。 あの華には、毒があるという。 わたしに 気付いてほしい けれどふれはしないで わたしは とても孤独なのです けれどわたしには 近付かないで なぜそれ程までに、哀しさをふりまくの? なぜそれ程までに、人を寄せ付けまいとするの? お前は、何を語ろうとしているの? ……頭が、痛い。 後頭部を鈍器で殴られたような、確かな痛み。 崩れるように、床に倒れる。 珠鴬、どうしよう? とてもとても、頭が痛いよ。 ど う し て だ ろ う ……… ふれないで ふれないで もう少しだけ このままで よらないで よらないで あなたを 傷つけたくは ないのです 天上の華 下 へ行く |
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