One Tube Competition(Feb 12〜May 19. 2017)
はじめに
Facebooknoの真空管式無線機サイト1TUBECOMP(One Tube Competition)と題し単球ラジオ製作が話題になっている。年明け後基礎実験を行い、大凡の目途が立ったため締切り日の本日未明、幹事殿へ参加意思を伝えるメールとFacebookへ書き込みを行った。
複合管は認められず、1本でスピーカーを鳴らす中波AMラジオの製作コンテストだ。どの様な回路や構成にするかは、製作者の経験や技術に生活スタイルなど様々な要素が絡み面白い。
以下、Facebookへ投稿した内容も含めて経過をまとめることにした。とりとめのない備忘録です。
基礎実験1(Ge検波+AF増幅)
それでどんな形にするか。未だ決定版ではないか写真はそのテスト風景。暫定的な回路図を下方に示す(クリックで拡大)。
基本はHi-Q同調コイルとHi-Z受Hi-gm球AFアンプによるGeラジオ。そしてRFとAFでロスを抑えた整合。更に高能率スピーカーの採用。
これに3.5/1.9MHz逆Vアンテナを、同調コイルのコールドエンド付近につなぎ、TOAのSC-35をつなぐと大音響が飛び出す。
真空管は12GN7AでG1を5〜10MΩ終端、Rkは82Ω、Rsgは220Ω、Rlは12kΩ、+Bは225Vとしている。
下はアンテナを80m長のWindom(1.8〜HF)にした時の検波出力波形。ローカル局JOPK(882KHz)を受信しG1を10MΩプローブで見たもの。実電圧は表示10倍なので驚くべきレベルが得られている。
なおWindomアンテナの出力は+3dBm(50Ω)に達する。3.5/1.9MHz逆Vはこれより約20dB低い。
以上は基礎実験なので、今後検波方式の変更(グリッド検波や再生方式)、或いはレフレックス方式へ変更する可能性もある。
こうした「無線と実験」は、中学時代を思い出し楽しくなってくる。まさにラジオ少年の面目躍如と言ったところだ。



AF増幅の12GN7Aは元々シャープカットオフだが、検波極性を負にすることで自己バイアスと相まって、大入力時にカットオフ手前でのAGC効果を狙っている。
ストレートラジオの長時間聴取から何十年も離れ、AGCの恩恵の中で暮らす我々には、受信レベルの違いによる音量の変化が大変うっとうしい。ストレートラジオであっても、実用を目指すと多少の音量制限や抑制が欲しくなってくる。

*参考データ
@80m長逆Vウィンドムアンテナの中波(MF)出力(Mar 22. 2014)
Aリモートシャックでの中波AMラジオの受信レベル(Feb 26. 2017)
B見通し外の方が強い中波ラジオ受信を考察し直したら…(Apr 10. 2017)

12GN7Aについて
12GN7Aは12BY7Aと同系統の映像増幅管で、gmが36,000μモー(12BY7Aの凡そ3倍)もある。
1970年代の業務用映像モニターで、CRT駆動用映像アンプとして盛んに使われていた。歴史的に最後に開発された最も新しい映像増幅管と思われる。
アマチュア無線機でもミキサーやドライバー管として採用したメーカーもある。終段ドライブが12BY7Aでは不足する場合、この球へ交換すると良好にドライブが出来た。自作TRCVの奥の手として良く使ったものだ。
Pin番は12BY7Aと同じ。同種球に12HG7がありgmはやや低いが、それでも32,000μモーもある。
写真は手の平に乗せた2本の12GN7A。何れも1973年頃に定期交換で排出されたJunk球だが、現在でも良好に動作する。
現在では米国のTUBE_DEPOTで適価にて購入することが出来る。ただ、複数本の注文に対し、同一メーカー品が送られてくることは希だから要注意。

実験の備忘録メモ
Hi-Qコイル+Ge検波+12GN7A増幅を試してみた。3.5/1.9MHz逆Vアンテナを同調コイル(100mmΦタイトに約100ターン)のコールドエンドから1ターン目につなぎ(ステップアップ比100)、Geは負出力でG1直受け(5-10MΩ)し、プレート側は12K:8Ωトランス。Epは150〜250Vの間(Esgはそれに連動)で利得は変化は無し。Rk=82Ω、Rsg=220Ωです。地元のJOPK/880KHz/10KWのアンテナ受信レベルは-28dBm(50Ω終端/昼)程度。12GN7Aの単純な電圧利得(册p/册g)は150倍(46dB)以上あり、90dB/w/mのスピーカーが朗々と鳴る。放送局側でプリエンファシス処理されているためHi上がりの音になる。アンテナタップ位置により利得と分離が大きく変わる。現状は直線検波機状態なので、デエンファシス処理を出力トランスを低Q共振させるなどして行う必要がある。
アンテナ出力で-28dBm程度確保できればGe+12GN7A/AFアンプで行ける。しかしアンテナ長が必要になる。自宅は放送所から約16km離れているが、上記の如く3.5MHzの逆Vなら目的を果たせそう。12BY7Aに差し替えると6dBちょっと利得が落ちる、さすが12GN7Aと言ったところか。現状のRkだと出力波形のプラス側が先に歪むのでアジャスト(30Ω程度)すると更に延びる。JOPK/882KHzの場合、入力タップは1T未満に利得最大点がある。JOPB/639KHzやJOVR/1404KHzの場合は異なる。Lを巻き足して更にステップアップ比を稼ぎ、超Hi-Z(解放)で受け、出力トランスの低Q共振、そして高能率スピーカーを採用すれば、短いアンテナでも行けるかも知れない。それでも不足する場合は、グリッド検波そして再生検波、或いはレフレックスへと進むと思う。なお12GN7Aはシャープリモートカットオフ管だが、検波極性を負にすることで、入力レベルに応じたG1-Bias効果が得られる模様。正の場合と比べると明らかに良好…これグッドアイデアかも。もっともカットオフにしてしまっては元も子もないので、Rkバイアスとの兼ね合いになる。いずれにせよ自宅で聴くならこれ以上のHi-Fiラジオは無いと言う印象だ。
Epを試しに350V程度に上げ、Rkを30Ω程度にするとさらに2dB程度利得が上がる。但し、この領域になるとプレーと損失が増えプレートの赤化が始まる。最大利得または出力飽和を意識したRF系でのAGCが欲しくなる。受信感度やAGG動作等を考えると、単球ストレート方式受信機の限界を感じる。我々は知らぬ間にAGCの恩恵にあずかる世界に居る。このようなストレート受信機を見ると無線通信の原点に戻った様な気分になる。どの辺ですり合わせをするかがこの後の課題のように思える。レフレックス方式が視野に入ってきた感が強い…。
12GN7Aの受信風景動画(音声付き)を張り付けた。スピーカー(Lux-kit/A704の片割)より1m程度離れた位置からデジカメで撮影。やはりデエンファシス処理をしないとHi上がりで聞き辛いと思うがどうだろう。検波前にRFアンプがあれば利得向上とAGC処理もし易くなりそう。RFアンプは現状(単球条件)ではレフレックスでやるのがベストか…。この状態でプレートにRFC/26mHを挿入すると、AF出力には変化を与えず、増幅されたRF出力が取り出せる。RFCの代わりに同調回路を設け、タップダウンしてプレートへつなげば相当な利得が得られ、目的は果たせるのでは…。グリッド検波や再生検波より忠実度があり何よりAGC効果が期待できる。
追加情報。Geダイオードを短絡し、プレート回路にRFC/26mHを挿入し、RFでの利得を見ると約100倍(40dB、10MΩオシロで単純比較)ある。この利得でアンテナの長短による利得変化を補えそうな感じがする。プレートから取り出したRFをGe負検波してG1へ返せば、自己AGCが掛り程々に出力抑制が出来るかも。ただRFもAFも同時に制御してしまうのが気にはなる。またプレートRFCを同調型にして、負荷Qを高くするためにタップダウン(或いはリンクコイルで)してプレートへつなげば、利得に併せ選択度も良好になる。と言うことで、再生検波よりレフレックスがベターで実用的な感じがしてきた。残りはスピーカー効率の改善か。写真に写っているLux-Kit/A704は89dB/W/m程度だが、希望的には96dB/W/m程度の効率のモノが欲しい。110dB近いトランペットスピーカー(TOA/SC-35等)もあるが、f特が満足できず却下…確かに大音量だが。
1TUBECOMP(One Tube Competition)は、「無線と実験」の心に火を灯してくれた。レフレックスは、その昔奥澤清吉先生が書かれた、ローコストな2石レフレックスラジオの記事で知った。6石スーパーを作るお金が無かった少年たちには、格好の内容だった。その状況は何となく1TUBECOMPのスタンスに似ている。ところでレフレックス方式、6BE6(7極混合管)をRFとAFの混合に使ったら面白いかもしれない。5球スーパーのトップでお馴染みの球だ。G1かG3のどちらをRFかAFの入力にするかは議論のあるところだが、5極管のG1へ強引にRFとAFを突っ込むよりは遥かに信号源に優しい。そしてやはりAGC、これが無いと今流の実用機としては寂しい。いずれにせよスピーカーをドライブできるほどの利得が得られればの話だが…。6BE6のgmは低いのでプレート同調型で、Hi-ZにしてRFで利得を稼げば、何とかなりそうな気もする…。また6BE6同等管でHi-gm管が存在するのだろうか…考えるだけで楽しくなってくる。

基礎実験2(5極管/12GN7A+Ge/1N60検波レフレックス…プレート非同調RFC)


基礎実験3(5極管/12GN7A+Ge/1N60検波レフレックス…プレート同調)


基礎実験4(5極管/6CL6+Ge/1N60検波レフレックス…プレート同調)


登場した真空管@
左から6CL6、12BY7A、12GN7A。いずれも国産で昭和30〜40年代製造と思われる。6CL6のgmは12BY7Aと同等の11,000モー。12GN7Aはその3倍以上の36,000μモーある。
6CL6のプレート損失/スクリーングリッド損失は7.5W/1.7W、12GN7Aは11.5W/1.5W、12BY7Aは6.5W/1.1W。ただ、12GN7Aのプレート損失11.5Wはプレートの大きさからして12BY7Aに近いので疑問…材料が違うのだろうか。
6CL6はAF電力増幅に余裕を持たせるための選択。とは言いながら上記の如くプレート損失は12GN7Aの方が多いが、実際に使用してみるとAF出力で馬力感が増す。受信電界が強ければ6CL6でも12BY7Aでも良いと思われる。利得やAGCのかかり具合には違いがあるので、電界値や運用スタイルに合わせたアジャストが必要だろう。
いずれの球もHi-gm管でV/UHF帯まで感度があるため、配線ストレー容量による結合や電源系の回りこみ等による発振と背中合わせ。実装には、V/UHF帯を意識した部品配置と配線・RFバイパスが必要。 いずれにせよ、プレート同調回路の付加で利得と分離の向上が確実に測れる。AGC動作と相まって5球スーパーに近い受信環境が単球レフレックスで得られることが分かった。

登場した真空管A
その後の追加で、12GN7Aや12BY7AとPin番号が酷似しているリモートカットオフ管6EH7(gm=12,500μモー)へヒーター電圧を6.3Vに変更し、3番Pinをオープンにして実験してみた。想定した以上の出力が得られAGC動作は最も良好だった。ただプレート損失が他管より少ないのでEpは上げられない。
写真の左が6EH7で右は6GK6。両管とも余り馴染みがないかもしれない。6EH7のシャープカットオフ管が6EJ7(gm=15,000μモー)。6BZ6(gm=8,000μモー)や6BA6(gm=4,400μモー)のAGCアンプで利得をもっと欲しい時に6EH7を良く使った。
6GK6は12BY7Aと同等のgm=11,000μモーあるがプレート損失が大きく馬力がある。この球をテストした理由はEpを掛けられるから、少しでもAF出力の飽和点を上げてみたかったから。
6EH7も6GK6も全く趣を異にする球だが、レフレックスラジオ管として使えてしまうから面白い。Pin番号もヒーター電圧を除けば(3番Pinオープン)ほぼ同じで、12GN7A/12BY7Aから差し替えられる。
レフレックスラジオの場合RF増幅とAF増幅の利得を単独に制御するのは至難の業。AF出力飽和時の入力册cgを確認し、それを超えない検波出力を供給する必要がある。最大利得は球の利得で単純に決まってしまうが、間に介在するコイルの結合度やステップアップ比、そして共振回路のQやスピーカーの能率も大きく関わってくる(利得は分離特性とはトレードオフの部分もあり悩ましいが)。課題は大RF入力時にAF出力を歪ませないための工夫、すなわち効果的なAGC(ALC)を、RFとAFを同時に扱うレフレックスアンプでどう実現(設定)するか…実用ラジオに向けて。

1号機回路図(5極管/12GN7A+Ge/1N60検波レフレックス…プレート複同調)
過去の実験から、実際に製作する回路を書き出してみた。12GN7Aのレフレックスに変わりは無いが、プレート側を複同調にしている。TRIOのS-AsのRFコイル(周波数変換側)や小高一のRFコイル(検波側)の1次(プレート側)は、実は6〜7mHもありちょっとしたRFCである。2次(同調側)の210μHに比べたら圧倒的に巻数が多い。1次側と2次側の離隔もあり、RFCとM結合のイメージだろうと思う。この作りは同じSシリーズの短波用コイルとは逆の巻数比になっている。すなわち短波帯コイルの1次側は少量のリンクコイルになっていて2次側より巻数もインダクタンスも少ないが、離隔も圧倒的に狭い。中波帯のコイル(S-As)だけ逆なのは、中波帯は市町村ごとに一定レベルの法定電界が指定され、各エリア内でその確保が送信側に課せられている。従って、受信機側では短波帯ほど利得を必要としないためだとも思われるが、どうだろうか。
唯一高一コイルを製造販売している札幌のラジオ少年に尋ねたところ、TRIOやミズホ通信の高一コイルを模倣しているとのことで、検波側の1次コイルはインダクタンス約6mH/巻数400回とのことであった。
下図は、そのRFコイル1次側を、2次側と同じインダクタンスになるまで巻解き、複同調とした回路。プレート側はVCにB電源をかけたくないのでRFCを挿入しCで結合している。RFCの代わりに1次側へDCをかける場合は、VCへ直列にCを挿入すれば良い。
本来なら、プレート側はタップダウンして同調回路の負荷Q低下を避けたいところだが、巻解したハニカムコイルからタップを出すのは至難の業なのでここでは採用していない。
VCは3連の420PF程度のもので、12GN7Aレフレックスアンプの入力側と出力側を同時にチューンする。入力VCはアンテナ・コンペンセータ(トリマ)でアンテナとの最適化を図る。
AGCは過去の実験通り、負検波で-DC重畳されたAFをG1側へ返すことで実現している。G1の5MΩは検波出力を終端する500KΩ/AカーブVRでレベル調整された出力へ接続される。このVRは電源SWと連動し絞り切ると電源が切れる仕掛けになっている。AGC制御される12GN7Aアンプは、レフレックスのためにRF利得とAF利得が同時に制御される宿命を持っている。AGC用電圧は別のダイオードで専用化する方法もあるが、G1へ入る段階で混合されてしまうためこの様な形を採用している。
G1は非常にHi-Zで電荷レベルの動作をしているので、自己発振や寄生発振を考慮した実装(部品配置・配線)を行う。意図的に発振させるとAGCが働き暴走状態にはならない効果がある。
OPTとSPは拡声用の一体化されたもので、16cmサイズながら95dB/W/mの高効率。


倍電圧検波(整流)の可能性
現在2倍電圧検波(x2)で搬送波と復調音を含めた検波出力を得ている。搬送波はDCバイアス(AGC電圧)となり、復調音はプログラムとして共々12GN7AのG1へ返される。
この場合、倍電圧検波を3倍・4倍としたらどうなるだろうか。当然出力電流としての取り出しは逆比例するが、負荷として非常に軽い(500KΩ程度)ので電圧の低下は免れそうだ。
ただ共振回路に小容量C経由とは言え、直にダイオードロードとなっているから、負荷Qの低下は継続するが…。
回路図の各出力をSWで切替えて、電界強度(アンテナ出力)に応じた選択をするのも面白い…これ良いアイデアかも知れない。

AFアンプ系の入力レベルはAF出力飽和で決まってしまうので、倍電圧検波が有効であっても倍率には自ずと限界がある。AGC(出力飽和抑制)の効きが倍率決定の鍵を握っていると言える。奥の手として倍率SWを備える方法に落ち着くかも…。
入力レベル(μV)条件は明確にされていない。強〜弱電界に可能な限り対応するようにDレンジを考えておく必要がある。

Hi-Qコイルの可能性?


一体市販コイルセットのANTコイルとRFコイルは如何程のものか、Q値を含めた測定を実施してみた。 RFコイルは1次側に大容量のコイルと分布容量を背負っているのでQが低い。
Q値を倍にするには相応の大きさが必要であり、メーカー製コイルの出来具合を鑑みると、Hi-Qコイル指向が得策なのかと思われてくる。メーカー製コイルの多段化や複同調化が現実的なのではと…。
写真は手元にある直径80mmx長さ150mmのタイトボビンに1.2mmメッキ線を巻いたコイル。Qを測ると自由空間でせいぜい200程度で期待した程ではない。また、これ一つでテストベンチのスペースを超えてしまう。Qを低下させないための実装や環境(近寄るだけで低下)も考慮する必要があり、実験としては面白いが実用性や実装性が乏しく二の足を踏む。
またオープン(箱無し)や非金属主体の入れ物が中心だった時代と現在とでは、コイルの置かれる環境が著しく異なることも認識しなければいけない。
と言うことで、少なくともこの大きなコイルの出番は無くなった。むしろ、研究を重ねられて造られたメーカー製コイルの多段利用が選択肢としてベターではないだろうか。これが現時点での総括である。

1号機収容箱
1号機の収容箱の検討を始めた。入れ物をどうしようか考えていたところ、3月9日カミサンの所用で静岡のニトリを訪ねた。私的目的は無かったが、何気なしに展示物を眺めていると使えそうな木箱があった。手にしてみると、テスト中のスピーカーユニットに合いそうと即決。白木とグレイと黒の3種類あったが、取り敢えず白木のを購入。写真はその木箱にスピーカーユニットをはめ込み、上にレフレックスラジオのテストベンチを置いた様子。スピーカーユニットのサイズは余りにもドンピシャでビックリ。ローカル局が心地良く鳴る。両サイドに取っ手穴があり、中にダクト板を入れるとバスレフ効果が期待できそう。でもこのままでも相応のHi-Fi音だ。VR/電源スイッチとTUNEノブを前面に配し、あとは中に入れてしまい、ANT端子を背面に出すつもりだ。
なおこれまでの実験で、40%変調のSG出力を感じ取れる聴感の限界は約47dBμVだった。ローカル局を聴くには、アマチュア無線用のダイポールアンテナ等があれば全く問題の無いレベルだが、数mのワイヤーアンテナとアースで聴くにはちょっと心持たない。単球レフレックスの限界を感じるが、希望的にあと10〜20dBの利得改善を1号機実装に併せて狙っている。

現状での受信状況を動画で撮影してみた。
アンテナは前回の動画と同じ1.9/3.5MHzトラップ式逆V(地上高22m)。
ローカルのJOPK(NHK第一/882KHz)→JOPB(NHK第二/639KHz)→JOPK(NHK第一/882KHz)→JOVR(SBS静岡放送/1404KHz)の順に同調を取っている。
屋外は生憎の強雨(分かるだろうか)なのでVRはやや上げ気味に設定した。 カメラ(マイク)からスピーカーまでの距離は約1m。
プレート側を複同調にしたことにより分離が改善され、聴感では目的外局は感じられない。
ただ、3ヶ所の同調回路のトラッキングを完璧に取るには、どうしてもL成分も調整したくなる。
現在は3連VC各セクションに取り付けたセラミックトリマーのみで行い、fずれ量を全体に散らした形になっている。
トラッキングを完璧に取るにはアンテナコイルにファインチューニング用VCが必要になるかもしれない。
後方の黒箱は95dB/W/mを誇る16cmスピーカー。音量の増大には高能率スピーカーの存在が欠かせない。

4倍圧検波回路を試す
1N60x4本使い、4倍圧検波回路を試してみた。10MΩオシロスコープでは、2倍の出力電圧を得ることが出来る。ところが500KΩ/VRと47KΩ/CRフィルタを負荷すると予想に反して低く聴感では殆ど変わらない。ダイオード4本と複数本のコンデンサの投資効果は無しと判断、初期回路に戻した。500KΩを1MΩへ変更したら効果が出るかも知れない。同調回路の負荷Qも上がるので選択肢ではあるが、1MΩ/VRは余り一般的ではない。
ラジオ少年高一コイルRF-260との比較
札幌ラジオ少年の高一コイルRF-260と2連VCを使い通常の高一スタイルの同調部を作り、これまでテストしてきたTRIO/S-As改修型(ANTコイル+改修複同調RFコイル+3連VC)と比較してみた。
今回のチューニングでTRIO/S-As改良型でスピーカー端子でS/N=10dBを得るためのアンテナ入力(SG変調度:40%)を、-80dBm(27dBμV)まで上げることが出来た。また-90dBm(17dBμV)でも変調周波数の切替え(400⇔1000Hz)を確認できた。しかし期待したRF-260はそれより劣り、-60dBm〜70dBmがやっとだった。 これで1号機の同調回路方式が固まった。

ANTトリマー(アンテナ・コンペンセータ)の必要性は?
アンテナとアンテナコイルの間にANTトリマーの挿入を考えていた。
疎結合だが、2次側はHi-Q直列共振で数MΩの負荷なのでどの様な効果が有るのか興味があった。
それでTL-922用のロードVC(5連/2000PF程度)の予備品を取り出し、SG(50Ω)とアンテナコイルの間に挿入しピーク点を探った。
VCを一杯入れる手前に浅いピークが確かにあった。ただそれは、1404KHzの民放周波数では確認できたが、882KHzのNHK第一放送や639KHzのNHK第二放送では殆ど分からなかった。
と言うことで、ここではANTトリマーの設置は却下することにした。むしろRFコイルとのトラッキングずれを補償する同調トリマーにした方が賢明と思われる。
ポリバリコンを使ったとしても大容量が必要だし、並列に補助コンデンサを入れるにしても、これらは一定の容積になり効果の割にはスペースを圧迫する結果になる。
写真手前が試しに挿入してみたVC。

検波出力波形とAGC電圧
写真は最大強力局(JOPK/NHK第一)受信時の検波出力波形。オシロスコープ入力はDC結合でプローブZは10MΩ。垂直レンジは5V/Div。 番組は音楽だったと記憶。負極検波なので、マイナス方向に検波出力が展開している。1DivのラインがDC重畳(-5V)されている部分で、搬送波が支配している(無変調でもこのレベルは変わらない)。
一方、レフレックスアンプ管のカソード抵抗によるバイアスは約2Vある。したがってこの局の場合、カソードから見たCgバイアスは-7V程度となる。このバイアス値は放送局の強さ(アンテナ含め)によりまちまちで、弱いと0Vに近付きCgバイアスが浅くなる。
レフレックスアンプ管は、RFもAFも同時にバイアス制御されるので、一般的なラジオのAGCとはちょっと趣が異なる。最終的にAF出力で飽和させないためには、検波出力レベルとAGC電圧の兼ね合いを探る必要がありそうだ。
余談…写真のTEKTRONIX475(200MHz)は大好きなオシロスコープだ。1970年代の製品だから半世紀近く経っている。この頃のTEKTRONIX製品は作りがしっかりしていて保守性も良い。12年程前に裾野市のエバーテックさんに修理とチェックをお願いしているが本当に良く働いていると思う。

同調コイルのQ改善
回路的方面が成熟してくると部品のクオリティに目が向く。Q=100程度のコイルを更にHi-Qにしたら、利得にどの様な影響が出るのか興味がわいてくる。現状は上述の如く-80dBm程度の感度がある。この改善が図られるとしたらと大いに期待もわく。
手持ちコアを取り出し複数のトロイダルコイルを製作しQメータに乗せてみた。写真は随分とラフだが、#43材に0.5ホルマル線を40ターンしたもの。1MHzでQ=230を示した。この数字はTRIO等市販品の倍を超える値だ。しかも耐環境性があり、近付いてもチューニングを取り直せばQの低下は殆ど無い。下は、試みに4本をリッツにして40ターンしてみたが、Qの改善は殆ど無かった。RF用リッツ線でのテストも行う予500KHzでは250を超えるが、1.5MHzでは200を割る。この後RF専用リッツ線でチェックする予定だが、果たしてどうなるか…。



2号機の構想(5極管/12GN7A+Ge/1N60検波レフレックス…トロイダルコイル化とタップダウン化)
未だ1号機の実装が始まっていないのに2号機の構想を立てた。12GN7Aをレフレックス管とする作りは変わらないが、Hi-Q(Q=200以上)のトロイダルコイルを自作、プレート側のRFコイルの複同調をバイファイラ巻きとし1次2次共タップダウンしてRF信号の入出力を行う。負荷Qの低下を軽減させ、分離の改善を行う。ANTコイルの1次は適度のリンクコイルとし、信号源(50Ω)にマッチする巻数を探る。コイルのQ改善(2.5倍x3ヶ所)により、凡そ10dB(40%変調-90dBmでAF出力S/N=10dB)の利得改善を狙う。


2号機の構想2(5極管/12GN7A+Ge/1N60検波レフレックス…最後は正帰還)
パッシブ部品の改善が限界に来ると最後は正帰還。いわゆる発振の手前で利得と分離を稼ぐ方法。再生ラジオ程の帰還は行わず、通常の動作をするレフレックス管で軽い正帰還を行う。方法はカソードタップハートレー発振回路で、アンテナコイルの同調側にタップを出し、カソード回路のCRを接地する代わりにタップへつなぐ。タップ位置は放送波帯全域で、発振に至らない安定な正帰還が実現する様に設定する。入力信号の大小、AGCバイアスの変化、Lowフレ〜Hiフレ間のQ変化等が絡んでくるが果たしでどうなるか。フロントパネルには電源SW/VRとTuneの2個のノブしか出さない予定なので、ピークは追わずある一定のレベルを無調整で確保する。

下図はカソードタップではなく、帰還レベルを確保するためのコイル(インダクター)をアンテナコイルのコールドエンドに入れたもの。
味噌はアンテナコイルとこの帰還コイル(L3)がM結合していないこと。そしてダストコアにより帰還レベルの調整を容易にしている。ただ、アンテナコイルとの総合インダクタンスも変わるので同調周波数にも影響するので注意。
なお、このバージョンからプレート側複同調コイルにダストコア(赤)を実装することにした。アンテナコイルと同等の共振特性を目指しているが、やはりトラッキングずれが目立つため、インダクタンスの微調整を行えるようにした。VCと並列に入れているトリマでバンド中央(1MHz)で最大感度に設定しても、1.6MHz又は550KHz辺りになるとずれが顕著(10dB以上)になってくるからだ。調整は最下周波数でコア調整、最上周波数でトリマコンデンサ調整を行い追い込む。

感度テスト(非再生)
スピーカー端子でS/N=10dBを確保できるアンテナ入力レベル(信号源:1MHz/1KHz/40%変調/50Ω)を確認した。
@ANTコイル:TRIO S-As RFコイル:TRIO S-As改修複同調(ダストコア入り)…-88dBm(19dBμV)
AANTコイル:トロイダルコイル(40T/リンクコイル1T) RFコイル:同上…-94dBm(13dBμV)
B

感度テスト(再生)
スピーカー端子でS/N=10dBを確保できるアンテナ入力レベル(信号源:1MHz/1KHz/40%変調/50Ω)を確認した。
@ANTコイル:TRIO S-As RFコイル:TRIO S-As改修複同調(ダストコア入り)…-??dBm(??dBμV)
AANTコイル:トロイダルコイル(40T/リンクコイル1T) RFコイル:同上…-??dBm(??dBμV)
B

1号機の組立
左は1号機の基本部(4月1日に組立)。IDEALの小型ケースに組む。VCは容積の関係で外付けし貫通端子経由で配線。VR/SWは3極ミニJACK、SP(OPT含)も2極ミニJACKで取り出し。DC250V/AC12Vは4Pのモールドコネクタで供給。後方にSP兼木製ケース。
下は内部。コイルはTRIOのS-As改修品(左RFコイル複同調)。結合による発振を避け直角配置。ゴム板で高さ調整(中央へ)しQ低下回避。

感度テスト
スピーカー端子でS/N=10dBを確保できるアンテナ入力レベル(信号源:1MHz/1KHz/40%変調/50Ω)を確認した。
@ANTコイル:TRIO S-As RFコイル:TRIO S-As改修複同調(ダストコア無し)…-92dBm(15dBμV)


トラブル…自己発振の嵐と対策
再生を意識して、カソード抵抗・コンデンサ及びANT同調コイルのコールドエンドを絶縁ポストに集め、リード線で接地していた。ところが電源投入後いきなり激しい発振で、なんじゃこれ!となった。
調べると接地したリード線は3cm程度だが、インダクタンスを持つためカソードがRF電位を持ち発振に至った模様。いわゆるハートレー発振だ。絶縁ポストを外し直接接地することで正常動作となった。
僅か3cmなのにと思ったが、gmが高いのでRF(HF〜VHF含)的に見れば十分に頷ける。この長さ調整で再生レベルの追い込みが可能と思われる。ひょっとしたら金属ポストへの交換で行けるかも知れないが、今後の課題。

1号機組込み回路図

1号機実装
@基本部は、VCシャフト周辺の穴3個に金属ポストを立て、スピーカー(Panasonic/WS-TN650)筺体樹脂へ取り付ける(VCシャフト&カップリング貫通)。
Aフロントパネルは0.8mm鉄パンチ板で、VCシャフトを受けボールドライブダイヤル(JacksonBrothers)とVR&SWを設置。
Bパイロットランプはスピーカー筺体樹脂に取り付け、パンチ板の後方に灯る。
C総合的なレイアウト・バランスを考慮してボールドライブ・ダイヤルとVR&SWの下にプラ板を敷く。
D鉄パンチ板はクリア塗料を塗り錆止めを行う。
E上記を木箱(190x260x240mm)に収納する。
F電源は木箱内に固定、ACコードは背面出しする。
G出力端子(ANT・AF/RCA-Jack)は木箱の上面の窪みに出す。

左下は基本部をスピーカー筺体樹脂へ取り付けた様子。右下はフロントパネル全景…未だ電源部は組み込んでいない。スピーカー樹脂筺体のサイズは、幸か不幸か木箱にピッタリだが、構造上下方に2cm程度の隙間が出来るため、音響的な効果(バスレフ)があると思われる。



1号機にANTトリマ追加
ANTトリマを追加した。アンテナ端子の負荷状態(アンテナの種類等)で同調点がどうしてもずれる。このため同調VCへ並列にANTトリマを取り付けた。
トリマは当初、25PFの小型エアVCをシャシ内部に実装し、シャフト(4mm)を3mmの真ちゅう棒でパネルから回せる様にした。ところがナット締めするとローターが自動的にシャシへ接地するタイプのため、シャシ電位を選べず発振を誘発。絶縁材で浮かす手もあったが、狭くて再細工が面倒なため、シャシ外側にポリVCを貼り付けこれを回すことにした。
写真は同調ダイヤルとボリュームツマミの間に出したANTトリマ。上部はAF出力(左)とANT端子がRCA出してある。
下は木箱背面に取り付けた電源ボード。B電源はAC250Vのブリッジ整流とCRによるπ型平滑。ヒーター電源は12VDCアダプタ(トランス式)を利用している。



電源回路
実験用電源を使用していたが、左は前項で実装した電源ボードの回路図。
電源は本体のGAIN-VR連動のスイッチで行う。左回し切りでOFF。
B電源は200〜250V程度に昇圧したACをブリッジ整流し、CRで平滑する。Cは概ね22μF/400V程度、Rは負荷状態でB電圧が275V程度になる様に設定する。
ヒーター電源は12V出力のトランス式AC/DCコンバータをそのまま流用、直流点灯している。球を6EJ7や6CL6へ変更したい場合は、このAC/DCコンバータを6V出力のモノへ変更する。AC側はファストン端子、DC側は2.1mmDC-JACKで、交換は容易。

AGC-OFFスイッチを追加
大入力時の出力飽和を抑える目的でシャープカットオフ管に強引にAGCを掛けているが、どうもEcgバイアスが深すぎプラス側とマイナス側のスイングが非対称で動作している感じがする。それでAGC動作を止めたらどうなるか興味がわいた。
またAGCが掛った状態だと最大感度の測定が出来ないこともあり、AGCを切るスイッチを組み込んでみた。
大した回路ではなく負極検波出力の-DC重畳されたAF信号出力へ、コンデンサを挿入しでDCカットするだけ。AGC-ON時はこのコンデンサを短絡し、AGC-OFF時はオープンにする(回路図修正)。スイッチはフロントパネルで操作する。
2号機の構想と製作(Apr 22. 2018〜)

締め切りまで10日を切り、いよいよ2号機の製作に取り掛かった。悪い癖で、既に箱とか回りのサイズが先に決まっている。1号機と前面のサイズは同じだが奥行きが半分になり条件は厳しくなった。さらに1号機での反省や改善点が幾つかありそれを織り込むことになる。
1号機からの大きな改善点は以下の通りである。
@プレート側の複同調をグリッド側(入力側)で行う。
 レフレックスアンプが取り扱う信号から余計な信号を抑制、混変調歪の低下を狙う。コイルは複同調トロイダルコイルとする。プレート側は高1DETコイルによる単同調。
AAGC回路を見直す。
 AGCを入力部Pin-ATTで行う。Hi-gm管は元々シャープカットオフ、Ecg-Ip曲線が急激に折れる付近でのAGC動作は、信号波形のプラス側とマイナス側が非対称になり音色が独特で、AF側で歪を発生し易い。それで、管制御は諦め、アンテナ入力側にPinダイオードATTを挿入し制御する。問題は検波出力でPinに電流を流せるか、或いはカソード電圧で行けるか…。
B木製ケースの奥行きが半分。
C国産ボールドライブと自作の目盛板使用。
写真は左が1号機、右が製作を始めた2号機。部品No.は未調整。



PIN-ATTの実験
PINダイオードによるATT(減衰器)のテストを行った。何てことは無い、ダイオードに順方向電流を流しダイオードの持つ抵抗値を可変するだけだ。確認したかったのは、電源側のZが如何程まで大丈夫かを掴むこと。手持ちのPINダイオードが出て来ないため、昨日マルツから買ってきた。ROHMの1品種(RN731V)しかなく選択の余地は無かった。最近のPINダイオードは表面実装型が殆どで小さくて大変。端子間が2.5mmで本体は1.7mmとくるから、くしゃみでもしたら何処かへ飛んで行ってしまう。これを恐る恐るハンダメッキした基板に載せ、端っこをハンダゴテで抑えてハンダ付けする。それに必要な部品をハンダ付けして形を作る。念のため信号源側はCでDCカット、順方向でダイオードにBIASを与え負荷側はアンテナコイルで接地、BIASはRFC経由で供給する。これだけなので回路図を書くまでもない。
その結果、BIAS無しでは抵抗値無限大。テスタ(3V)のオームレンジx1で完全導通、x10Kに抵抗を直列にすると3.3MΩでもオン抵抗可変が可能なことが分かった。1号機に挿入した感じでは、完全導通にはそれなりの電流を流す必要があるが、通常使うだろう音量では一定の効果が発揮できそうな雰囲気だ。
この結果、レフレックス管アンプはBIAS固定とし、PINダイオードによる利得制御やAGCの可能性が見えてきた。問題はPINダイオードのBIAS電力をどこから得るか。すなわち無新号時に最大で信号時に低下する方向性を持った「電力」の確保…。
写真は実験中のスナップ。基板右手のダイオードマークの左の黒点がPINダイオード。

PIN-ATTを実装すると…
上記の回路の如く、2号機のアンテナコイル前に挿入してみた。と、ところが、ATT動作が可笑しい。制御電圧をゼロにして減衰量を最大にしてみるが、信号がゼロに落ちない。ちょっと気になり2号機のシャシヘアンテナ(同軸給電線の芯線でもシールド側でも)をタッチすると信号が受かる。そしてそのレベルは制御電圧をゼロにした時に似ている。なんてこったぁ、これってコモンモード侵入しているじゃん!。もとより2号機のアテナコイルの1次側は、1号機の様なローZ型ではなくハイZ型。TRIOのデータシートNo.18(5球スーパー用S-A)によれば、「1〜2メートルの小さな室内アンテナを使用しても屋外へ建てた大きなアンテナを使用しても殆ど変わらない感度を持ち…」とある。侵入ルートの詳細は別途調査したいが、1TUBECOMPの関連資料提出締切を翌日に控え、ここではあっさりとPIN-ATTを却下。アンテナコイルの複同調回路を先ず確認することにした。
アンテナコイルはM結合複同調
当初上記の回路の如く複同調を試してみた。L3の値により結合量を変えるものだが、L1とL2は固定値のため共振周波数へも大きく影響するため、余り大きくできない。検波の共振周波数とのずれも考慮する必要があり10μH程度が限界と推定。しかし10μHで試すと、結合が浅くレベルが稼げない。それ以上に上げれば確かに結合度が上がるのだが、検波コイルのインダクタンス補正が必要になる…厄介だ。それで最終的に、S-Aコイルのボビンを連結した形の複同調コイルを試作した。内径16mmのポリ製ボビンを10mm幅程度で用意し、それにS-Aコイルを差し込み1本化した。これにより程々の結合により一定のレベルと特性の確保が実現。



検波は4倍圧負極検波回路
アンテナコイルを複同調にしたことでRF入力レベルの低下が考えられるため。検波回路を4倍圧検波とした。1号機の試作段階では「テスト」で終わっていたが、テストで組んだ「平ラグ検波回路」を思い切って採用してみた。これまでの倍電圧(2倍)に比べ、理論的(負荷解放)には6dB稼げることになる。
検波コイルは当初、小高1のDETコイルを使用していたが、インダクタンスが低目でトラッキングずれが目立つため、ダストコアキャップの取り付け易いS-Aのアンテナコイルを使用した。写真のコイルはS-Aにダストコアキャップを取り付けたもの。
また電源Hum対策でB電源に100μFを抱かせている。



2号機のルックス
左:フロントパネル。1号機と同様の鉄パンチ板を敷き、ツマミ類のバックには白プラ板を敷いた。また、バッフル板として3mm圧のスモークド軟性アクリルを鉄パンチ板の下に敷いている。ツマミは上から電源/利得、ANTトリマ、同調ダイヤル。左下はAFテストポイント出力(RCA)
右:リアパネル。背面は当初は密閉だったが、中音域の音抜け改善のために丸穴を開けた(スピーカーユニットの特性の問題もある)。またアンテナ端子としてRCAジャックとアース端子をアルミ板を敷いて取り付けている。



ヒーター電源の手直し
12GN7Aのヒーター電源は当初よりトランス式AC/DCアダプタを使用する予定でいた。ところが2号機は箱サイズが小さいため予定してたアダプタでは収まり切らないことが判明。
それではと小型のスイッチング電源によるアダプタを取り寄せ実装するとスピーカーからHumやノイズの嵐。当然とは思っていたが、アンテナ入力から遠ざけても相応のレベルだ。AC側・DC側及び本体からも飛び出している模様。そしてアンテナコイル近くに寄せると悲惨な状況で全く使えない。
それで苦肉の策として、背面にAC100Vアウトレットを設け、そこに当初予定していたトランス式のAC/DCコンバータを取り付けることにした。
写真はその様子。左上の四角い小窓は、誤ってここに取り付けたら、シャシとぶつかることが判明して塞いだもの。慌ててやるとロクなことはない。スモークドアクリル板をトラスビスで固定した。お恥ずかしい限りだ。でもちょっと洒落ている?。
なお、スイッチング電源アダプタは、背面でもノイズの嵐でお話にならなかった。アンテナコイルがハイZ型になっていることも、症状を悪くしていると思われる。

提出回路
2018年4月30日の時点で以下回路図(他に説明書と写真)を1TUBECOMP事務局へ提出。作品は5月19日持ち込みにしているので、それまでは修正や変更が行われる見込み。
ちなみに、出展された回路図や説明書および写真は、事務局の手で整理されサマリーを閲覧できるようになっている。

【1号機提出回路】

【2号機提出回路】
当初のアンテナコイルは空芯コイル2本(TRIO/S-A)のM結合を試みていたが、結合度により相互に共振周波数が引っ張られるため、審査持ち込み時は#61トロイダルコアによるコイルのC結合で対応した。



Coffee Break
6R-P10の存在…6R-P10をご存じの方は意外と少ないのではと思う。一見すると12BY7Aや12GN7A等と酷似している。
特性は12BY7Aの低電圧管のイメージで、Ep=150Vでgm=13500モーが得られる。ただ、Pin番号が一連の五極管とまったく異なるので、採用の段になるとどうしても二の足を踏む。普通9Pin-MT管のヒーターは4・5番が定番だが、これは1・6番でビックリする。
この球は元々業務用通信機器の専用管として作られた歴史があり、一般向けには余り出回らなかったと思われる。先輩より進呈されたTEN(神戸工業)製が箱入りで数10本あり、試しに使ってみようかと思っている(ご希望の向きには頒布も可能)。

同調回路のトラッキング…同調回路が複数になると、同調VCを回したときに発生する、それぞれの同調回路の周波数ずれ。単独に同調VCを回す仕掛けではお呼びではないのだが、1軸で一挙に同調する仕掛けの場合は深刻だ。なぜならバンド周波数の上・中・下で感度差が出るのと、せっかく複同調にしたのに分離特性も悪化する。
それでやっぱり同調コイルのL分も調整したくなる。昔の部品箱を探してダストコアとその固定金具を用意し、現状の同調コイルボビン(16mm)に挿入する機構を作る。そしてバンドの下端をダストコア、上短をトリマコンデンサで調整し最大感度に追い込む。
一般的に中波コイルはインダクタンス固定の空芯コイルが多い。上記の回路図ではプレート側に複同調を設けているが、1次側のプレート抵抗、2次側のダイオード、そして1次と2次の相互インダクタンス、電極間容量・ストレー容量など様々に負荷されるため、コイルとコンデンサだけの裸(共振)特性には中々ならない。当たり前の話だが、実装すると固定コイルでは限界があることに気付くことになる。この対策で欲求不満が一掃される。

子音が強調されるf特…以前から気になっていたのだが、これは検波出力のf特の問題。そのままだとHi上がりで、たとえば語尾に「シ(Shi)」や「ス(Su)」、「チ(Chi)」や「ツ(Tsu)」等が来る場合、アナウンサーによりやけに強調されて聞こえる場合がある。その聞こえ方は放送局により異なる。送信側の処理(プリエンファシス)の逆補正(デエンファシス)を行わないためと考えている、CRによる簡単なLPFを入れているが、それでも結構気になっている。

HUM対策…ラジオの視聴環境がどの様な状況かでHUMの出方が変わる。すなわち商用AC電源との関係、アンテナのアース系の状態、その他接続する機器の状況や能力がHUM音の出方を支配する。装置間のAC電位差をラジオがつないでいる状況が見えてくる。電位差により、ラジオ内がAC(低周波交流やノイズ)で変調されることになる。商用電源とは無縁のバッテリ電源や、非接地アンテナを使用するなどで対策がとれるが、AC電源は容易には捨てられない。そこで配電線側との絶縁と静電結合が良好な電源トランスを使うなどの工夫が必要になってくる。

パネル加工で大失敗
フロントパネルは当初、写真の様なアクリル板にスピーカー用の丸穴を開ける予定だった。
しっかりと空いている様に見えるが、実は回転ツールの取り扱いミスで、アクリル板にヒビを入れてしまった。それも2ヶ所も。
全く情けないの一言で一時はトホホ状態だったが、サイレントキーとなられた先輩HAMからQSYした遺品の中に、鉄のパンチ板があることを思い出し鞍替えすることになった。
幸か不幸かそれなりにまとまった様な気がするが…手前味噌だろうか。

AGC回路…シャープカットオフ管の限界…レフレックス管のCgへ負電圧を返すAGC方式ではRFもAF同時に利得制御される。このとき、RF系は歪んでいないのに、レベルの高いAF系が先に歪む(当然の話だが…)。また12GN7Aは元々シャープカットオフ管なので、Ecg-IpカーブでEcgが負方向へ進むと急激にIpが落ち込みスムーズなAGCに限界がある。この特性は、Ecg値により入力波の上下非対称を発生させ、検波器として動作することになり好ましくない。
この様な理由から、2号機ではAGC制御はレフレックス管では行わず、アンテナ側にPin-ATT等(ダイオードデバイス)を挿入して行う方が好ましいと考えている。