高安定発振器の周波数安定度評価方法について(May 28. 2010)
10MHzの 1E-6 (1ppm=parts per million)は10Hz、1E-9 (1ppb=parts per billion)は0.01Hz=10mHzである。 1E-6程度なら一般の周波数カウンタで測定できそうだが、1E-9やそれ以上を一定の精度を短時間で測定するカウンタ(エキスパンディング・ レシプロカル方式等)は一般には稀だろう。したがって、 アマチュアが家庭でその評価するにはちょっとした工夫が必要になる。
ここでは、GPSロックのOCXOを基準にオシロスコープとストップウォッチを使った簡易な評価方法を紹介する。
ところで1E-6って何のこと?…これは10のマイナス6乗分の一、すなわち1/1000000=0.000001倍。 10MHzなら10Hz、1MHzなら1Hzに相当する。剥き出しの水晶発振器ならこんなもの(1E-6)だろうか。HFでSSB通信をしている場合、1Hzや10Hzのズレでは通信に与える影響殆どないと思われる(耳の良い人は別だが・・・)。
しかし高度な位相変調やデジタル変調になると様子が変わりその程度では使えない。そこでルビジウム発振器やGPSロックしたOCXOが登場し1E-10〜11の精度を実現する。 しかしいくら高精度の発振器を手中にしても、その校正と評価が適正にできなければ絵にかいたモチになりかねない。
写真はオシロスコープのEXTトリガにGPS-RX出力、Achに試作GPSロックOCXO出力、BchにルビジウムSG出力をつなぎ位相監視している様子。

測定手順
@校正用の基準信号としてGPSロックで10MHz出力のある受信機(1E-11〜12と言われる)を用意する。
A受信機の10MHz出力でオシロスコープの水平軸をトリガ、水平軸を10MHzが1周期(10ns=0.01μs/div)になる様に調整、時間を読み易くする。
Bオシロスコープの垂直軸入力にDUTからの10MHz信号を入力する。
CBで表示された10MHz波形が1周期ずれるのに要する時間(t)をストップウォッチで測定する。
D1周期(1サイクル)に要する時間が分かれば、周波数精度は冉=1/t(秒)で求める事ができる。
Eちなみにtが10分だったとすると冉=1/60x10=0.00167(Hz)、10MHzを基準に見ると1.67E-10の精度となる。
Fまた1E-10の精度を得るには1周期16.7分が必要となる。1E-11なら167分、1E-12なら1667分ととてつもない数字になる。
G1周期の時間(或いは単位時間当たりの周期)を測定しその変化をグラフ化することで、変動の方向や速度そして量を把握する事ができる。
H左図は上記を図にまとめたものである。GPS衛星の受信状況によりRef周波数に変動があるので、PCによる周波数モニターを併用すると良い。

参 考
オシロスコープの表示はXY入力にしてリサージュを描く方法もある。この場合、微小の変動が掴み易いので併用すると良い。


余 談
高安定発振器の取り扱いは非常にシビアだ。水晶でもルビジウムでは少なからず変動している。短時間の評価と長時間の評価の併用や定期的な校正が必須だと感じている。JJYの1E-14っていったいどんな世界なんだろうかと改めて思う次第だ。