icom IC-7300を試す(Mar 15〜. 2016)
はじめに
話題のSDRトランシーバIC-7300が届いた。使ってみると、自分が思い描いていたSDR機の受信特性と大分異なっている。
試したことを忘れない内にをまとめておくことにした。ここでの内容の殆どはアイコムサポートi_USEさんへ一報済みである。
IC-7300はリモートソフトRS-BA1との親和性も良く、遠方の制御PCで見るスペアナ画面や安定したリモートにはただただ感心する。IC-7300の電源ON/OFFも可能となっており、リモートでの運用性がより高まっている。
送信系についても12V(13.8V)デバイスにしては良好な電波の質を維持している。新スプリアス規定対応機であり、ツートンによるIMDも予想を超えるものであった。
ところが問題は期待していた受信。2年前、友人がFLEX6500を自宅工房に持ち込んで試した時の感激の再現を期待したが、それは望むべくもない状況だった。
考察を加え、改善や対策方法を考えてみることにした。下記はやや私的趣きが強いかもしれないが、概要は掴んで頂けるものと思う。同様の疑問をお持ちのOM諸氏の参考になれば幸いである。
なおこのページは書き掛けです、テストの実施に併せ随時追記・修正してまいります。

IC-7300の特徴

IC-7300主な特徴…icom_Webサイト
IC-7300特設サイト…icom_Webサイト


受信特性
オーナーの受信環境…80m長Windomアンテナ(逆V、給電店高22m)、ローカル中波AMラジオ局(JOPK/882KHz)を+3dBm(50Ω終端)で出力する。
これをノーマルゲインのIC-7300へ入力すると、Sメータ表示はS9+58dBでフルスケール内なのに内部歪と思われる高調波が強力なレベルで聴こえる。内臓ATT(20dB)では適正レベルに抑制できない。アンテナ入力にステップATTを挿入して行くと、凡そ30dBのATT量で2倍の高調波を感じなくなる(ノイズに埋もれる)。
◎JOPK/882KHz/10KW…2倍:1764KHz、3倍:2646KHz、4倍:3528KHz(3.5MHzバンド内)、5倍:4410KHz

882KHz基本波の受信状況
上記アンテナをつないで882KHzを受信した様子。アンテナ端子には+3dBm程度が入力されているが、SメータはS9+58dB程度の表示となっている。同じアンテナをIC-7600やIC-780へつなぐと、スケールアウトするが20dB_ATTを挿入して確認すると、両者ともS9+78dB程度を示す。
Sメータの校正方法については資料が無く不明。

1764KHz(2倍)の受信状況
同じく2倍の1764KHzを受信した様子。SメータはS9+35dB程度を示している。通常の放送局並みに聴こえる。
これを不感状態にするには、30dB近いATTの挿入が必要(内臓だけでは不足)。

2646KHz(3倍)の受信状況
同じく3倍の2646KHzを受信した様子。SメータはS9+10dB程度を示している。通常の放送局並みに聴こえる。

3528KHz(4倍)の受信状況
同じく4倍の3528KHzを受信した様子。SメータはS9程度を示している。2倍、3倍よりは低いが、明らかに放送内容を確認できる。
この周波数は3.5MHzバンド内であり、微弱信号を受信する場合の影響は極めて大である。

4410KHz(5倍)の受信状況
同じく4倍の44106KHzを受信した様子。SメータはS9だがノイズで不感。


状況メモ
 *内部歪みの現状…ローカル中波AM局(S9+58dB)による内部高調波が2倍でS9+35dB、3倍でS9+12dB、4倍でS9+0dB
 *複数の中波AMラジオ局…ローカルにはこの他JOPB/639KHz/10KW、JOVR/1404KHz/10KWがある
 *夜間伝播…遠方局がこれらに近いレベルで到着し中波帯のエネルギー上昇
 *PRE-AMP/ATT切替、AGC制御デバイスであるPin-Diode(1SV308)の問題はないか
 *IC-7600の場合…メカニカルリレーによる良好なPRE-AMP/ATT切替実現
 *回避ルート…受信系統に単独のJP回路が無いため、受信専用フィルタの挿入が出来ない
 *夜間の3.5MHz弱信号…PRE-AMP_ONでノイズの中に埋もれる
 *FLEX6500の場合…2倍以降全く感じない(ダイレクトA/Dに魅力を覚えIC-7300購入)

 *所見
  ・これらは想定されたことか、不測のことなのか…改善を願いたい
  ・Sメータ・フルスケール以内の信号なら内部歪みを起こさな設計を期待したい
  ・IC-7600やIC-780とSメータの校正基準が異なる様に思える
  ・夜間伝搬の中波AMラジオ局を含め複数信号によるIMD対策も必要
  ・中波AM放送帯の抑制には送受共用HPFの挿入が最もシンプルと思われる
  ・中波AMラジオ波抑制と適正受信レンジ設定によりIC-7300のレンジに整合させる必要あり

  記述は随時修正・追記予定です。


参考@…IC-7600の場合
IC-7600との違いに興味があり、画面映像を撮影しております。
数字を読み取るより、この様に画像を比べた方がイメージが掴み易いと思います。
上記IC-7300より凡そ1時間早い朝7時過ぎの受信状況です。既に中波AM放送帯は昼の伝搬になり遠方からの伝搬は完全にフェードアウトしています。

882KHz基本波の受信状況
上記アンテナをつないで882KHzを受信した様子。アンテナ端子には+3dBm程度が入力されているが、SメータはS9+60dB以上のフルスケール。20dB_ATTを挿入するとS9+58dB程度の振れを見せるのでS9+78dB程度と推測される。
ディスプレイの波形もスケールアウトしている。この辺りはスケール内に収めているIC-7300と造りが違うようだ。

1764KHz(2倍)の受信状況
同じく2倍の1764KHzを受信した様子。SメータはS9+6dB程度を示しノイズの中に放送の存在を確認できるが内容は容易に確認できない。

2646KHz(3倍)の受信状況
同じく3倍の2646KHzを受信した様子。SメータはS9+10dB程度を示しノイズレベル。放送の存在は辛うじて確認できるが内容は確認できない。

3528KHz(4倍)の受信状況
同じく4倍の3528KHzを受信した様子。SメータはS9+0dB程度を示しノイズレベル。放送は確認できない。
3.5MHzバンド内の周波数だがアマチュア業務には支障ない。

4410KHz(5倍)の受信状況
同じく4倍の4410KHzを受信した様子。SメータはS9+12dB程度を示しノイズレベル。放送は確認できない。


参考A…IC-756(No.01831)の場合
IC-756の画面映像です。オーナーがローカル中波AM放送を信号源にして受信機の能力を診るきっかけとなったトランシーバです。
中波放送帯から3.5MHz帯に無数に展開する歪(ハーモニックス&IMD)はローバンド運用の悩みの種でした。

882KHz基本波の受信状況
上記アンテナをつないで882KHzを受信した様子。

1764KHz(2倍)の受信状況
同じく2倍の1764KHzを受信した様子。 ローカル放送局並みの強さで受信出来る。夜間はローカル局3波と遠方からの中波局の混在で1.9MHzバンドや3.5MHzバンド内にもIM展開している。

2646KHz(3倍)の受信状況
同じく3倍の2646KHzを受信した様子。 ローカル放送局並みの強さで受信出来る。

3528KHz(4倍)の受信状況
同じく4倍の3528KHzを受信した様子。 2倍・3倍より低いが、放送の存在が確認でき内容も十分判別できる。3.5MHzの運用に支障を来す。運用にあたってはATTのや入力フィルタの挿入が必須。

4410KHz(5倍)の受信状況
同じく5倍の4410KHzを受信した様子。 ノイズに埋もれて確認できない。


参考B…IC-756(No.02194)の場合
もう一台のIC-756(No.02194)の画面映像です。製造番号から判断して、前項のIC-756よりは新しく、高調波歪みは明らかに良好です。

882KHz基本波の受信状況
上記アンテナをつないで882KHzを受信した様子。

1764KHz(2倍)の受信状況
同じく2倍の1764KHzを受信した様子。 ローカル放送局並みの強さで受信出来る。夜間はローカル局3波と遠方からの中波局の混在で1.9MHzバンドや3.5MHzバンド内にもIM展開している。

2646KHz(3倍)の受信状況
同じく3倍の2646KHzを受信した様子。不感。前項のIC-756より良好。

3528KHz(4倍)の受信状況
同じく4倍の3528KHzを受信した様子。不感。前項のIC-756より良好。

4410KHz(5倍)の受信状況
同じく5倍の4410KHzを受信した様子。ノイズに埋もれて確認できない。


参考…HPFによる暫定対策
何とか中波AMラジオ帯の受信レベルを落とそうと、SVC_Filter_DesignでHPFを設計してみた。 画像をクリックすると拡大します。
入力C結合7エレメントのCHEBYCHEVで1.8MHzカットオフとすると画像の如き演算結果と特性カーブが得られ、同時にLCの値が計算される。
これで882KHz辺りで-50dB程減衰しており目的が果せるとものと思われる。ちなみに送信電力(100W)に耐えられる必要があるので、LC部品はそれなりの電力容量のモノが必要になる。
受信系単独に挿入が困難なため苦肉の策である。

このHPFを試作・実装した結果をまとめたので参考にされたい。所期の目的を十分果たせる内容であり、一度使うと手放せなくなる。他機種でも有効である。


送信特性

100W(pep)出力時のTowTone波形(7MHz)
ツートン波形は、出力100W/CWで、オシロスコープ表示を6div(±3div)に校正してから、ツートンレベルを6div(±3div)に調整したもの。
クロス点の±15°前後のところで波形に凹みがみられ直線にならない。
この傾向は出力50W(pep)でも確認できる。
アイドリング設定で変わるものと思われるが、IMDとの絡みがあるので安易な設定変更はできない。
すなわち出力に応じてIMDが変動するので、どの出力でIMDを追い込むかはメーカーのノウハウと思われる。
ただこうした傾向はIC-780・IC-756・IC-7600等には見られない。
また波形の先端がやや丸みを帯び制限動作を感じさせる。何らかの処理をしているのか、出力アンプの飽和手前なのかは不明。

100W(pep)出力時のIMD特性(7MHz)
12V(13.8V)系デバイスにしては良好で-32dB以下を確保しているが、その値はUpper側の5次のもの。
Upper側で3次が-43dBとれているのに、5次が-32dBと悪い原因は如何に…。
おそらくアイドリング設定(ツートン波形で記述)やツートン周波数により変化するものと思われる。
スペアナ波形画像はクリックすると拡大します。

100W/CW出力時(7MHz)の高調波特性
7MHz×10倍までの高調波を表示させています。
サンプラのf特が+6dB/octなので、周波数が倍になるとスペアナ表示は実際より6dB高い値となります。
スペアナ表示を補正して読み変えます。たとえば3次(3倍)はスペアナ表示は-57.56dBですが、更に9dB下方修正して-66.56dBとなります。
偶数次高調波はノイズに埋れ、スペアナはノイズを拾い上げています。
奇数次が高いのはやはりプッシュプルPAのせいでしょうか…。
元々3次がやや高いのが気になりますが、測定環境の影響かも知れません。

100W(CW)出力時の近傍特性(7MHz)
リップル周波数で振幅変調されると言うよりは、PLL系がリップルにより変調される位相系ノイズの可能性があるかも知れない。
商用交流の60Hzスパンで不用輻射が60Hz×4〜5倍まで確認できるが、レベルは100W出力に対し-74dB以下。
この値では次々項のリップル(時間軸オシロ)では確認できないのは当然か…。

100W(CW)出力時の対域外特性(7MHz)
SSBの占有周波数帯域3KHzの2.5倍(7.5KHz)までの不用輻射を10KHzスパンで表示させている。
送信は100W/CWモードである。SSB変調器へシングルトーンを入力する方が正しい測定方法と思われるが、信号源とのI/Fが用意できないため簡易的な対応とした。

100W(CW)出力時のリップル特性(7MHz)
±3Divが100W/CW出力の先端。オシロスコープの掃引周波数を可変してもリップルは確認出来ない。良好である。

測定機環境
 *Exciter=IC-7300/icom
 *WattMeter=4410A/BIRD
 *DummyLoad=8890-300/BIRD
 *Sampler=4275(+6dB/Oct)/BIRD
 *SpectramAnalizer=R3273/ADVANTEST
 *Ocilloscope=TEKTRONIX475
 *Tester=16/Fruke
 *Camera=XP80/FujiFilm