5月13日、居間からRS-BA1によるリモートで工房のIC-7600を操作し、3.5MHz/SSBを運用しようとした。 アンテナはタワートップに設置した80m長のOCF(Windom)だ。 チューニングはAMモードにして尖頭出力を下げて行い、チューニング完了後SSBモードに戻し50〜100W運用している。 何時も通りこの手順を追ったがSWRが下がらずチューニングが完了しない。 直近では先週7MHzで複数局と交信している。 チューニングを繰返す内に、電源を送る(ON状態)とアンテナが切り離されてしまう現象に陥った。電源を切るとアンテナは接続されている。 2・3日様子を見ていたが変化がないため、5月17日夜明けを待ってタワーへ上りMFJ-998RTを下ろしてきた。 他のMFJ-998RTで2回(2個体)にわたりR121の焼損(修理済み)を経験した後、友人からQSYしてきたMFJ-998RTが今回焼損した。 それはR121に放熱器を取りつけ大事を取って現用投入したモノで、約1年半安定動作していたのに何故?と困惑している。 写真は工房でMFJ-998RTの店開き。 |
下してきたMFJ-998RTのカバーを外す。ステンレスビス16本は何とかならないものかといつも思う。 薄々想像はしていたが、R121が完全に焼損。DCや低周波交流ではなくRFで焼けたと思われ、殆ど完璧に燃えて灰に近い状態だ。残っているのは基板に半田付されたリードのみ。 燃えた時のススが上部のSWRブリッジ基板をもろにあおり、隅々まで真っ黒。PICが壊れていないかとこの状態で電源を入れると「カチン」とリレー音。そしてプログラムが立ち上がLCDパネルに内部の状況が表示されホッとする。しかしここからが問題。7MHzで10W程度のRFを入れてもチューニング動作を始めないのだ。 これだけススを被っていると主成分は殆どカーボン。SWR検知回路や検波回路、はたまたHi-Z部分では短絡かオーバーロード状態と思われる。したがって、FwrとRefの比較やCPUへのリクエスト等、まともな動作が出来ていないと思われる。 更に今回の焼損は今までに無かった部分へも波及している。R121の直下にあるK-1のパッケージ横に熱で直径5mm程度の穴が開き、ススが内部へ侵入し接点を黒化に至らしめている。 写真は焼損したR121・放熱板・K1付近。 |
それでCRCのパーツクリーナー(洗浄剤)を取り出し、SWR基板に吹き付けてブラシで洗浄しススを落とした。乾燥するのを待ってR121に手持ちの代替え抵抗(金属皮膜22Ω/5W)を取り付ける。 そして電源を投入し、恐る恐るRFを放り込む。すると一瞬間があってチューニングがスタート…やたぁ!!!。動かなかったものが動き出すときの感動だ。 しかし、ススによるカーボン付着が原因だったのは判明したが、それが上記のSWR検知だったのか、或いは周波数カウントができなかったのか、はたまたそれ以外の要因だったのか今となっては特定できない。 最初に電源を入れた時に、周波数カウントできていたどうか位は容易に確認できたのに…冷静さを失っていた自分を悔やむ。 これで50Ω負荷をはじめ、±R±jX負荷で一定のチューニングが出来ることを確認するが、ちょっと様子が変…。 写真は焼損したR121(25Ω/30W)。そして、少しでも熱を逃がそうと自前で取り付けてあった真鍮製の放熱板。R121は燃え尽き灰状態になっていた。 |
とりあえずチューニング動作は開始するようなので安心していたが、チューニングを完了してもR121の発熱が止まらないことを発見。 これはK-1接点の黒化でチューニング完了時にR121をショートし切れていないと判断。早々に代替えリレー(OMRON)に交換。苦労して旧リレーを外すがピッチが一部合わず、リレーのPinを曲げるなどして対応。 これで大丈夫だろうと思った。と、ところが結果は同じ。K-1は電源投入時にメイクされ、R121をブレーク接点でショートしていた回路がオープンになり、R121が顔を出す。 チューニングが完了する間際にK-1の電源は落ちR121がショートする仕掛けだ。もしR121をブレーク接点で短絡できないと、チューニングが完了しても、回路にR121が挿入されたままになる。 すなわちRFでドライブした時に、R121で常に一定の電力が消費されることになる。R121は25Ωだから、50W/FMを放り込んだらその半分はR121で熱となってしまう。 写真はR121焼損時の熱で側面に穴が空き、内部にススが充満し接触が怪しくなったK1。 |
実はここで本機の履歴を振り返ってみる。友人からQSYして来たときにR121をみたらパッケージの腹面にヒビが入り、破裂していた事を思い出した。それで前述した様に放熱器を備えた新たな抵抗を取り付けた経緯がある。 その時からチューニングが完了してもK-1は動作し続け、R121が回路に入っていたのかも知れない。 いや先週までは正常運用していたし、そんなこたぁ無いだろう。それなら、SSB/HF(500〜1KW)を放り込んだら短時間で可笑しくなる筈、だからK-1の異常動作は最近の話に違いない…。 しかし何で過去3台も焼損に至らしめたのか。今まであまり気にしていなかったのだが、50MHz/FM運用をふと思い出している。状態がおかしくなる時、またはその直近前、記憶やログを辿ると50MHz/FM(50〜100W)を運用しているケースが多い様に思う。 チューニングに時間を要したか、チューニングが終わらずR121が負荷の一部になっていたか、K-1のOFF制御が出来なかったのか…これらの現象には皆50MHz/FMが絡んでいる様に思えてならない。 写真はK1に代替品(OMRON)を投入した様子。 |
色々と想像が巡るが、電源を落とせばスルーになるので、運用はこの状態すなわちチューナースルーで行うこともできる。 当局のOCFアンテナは、それ位にチューニングが取れているので、ひょっとしたらR121やK1など最初からジャンパー線でスルーしたらと考えるようになった。チューナーから見た負荷としては軽いのだ。 それで今回はK1は外し、基板上のR121のランドとK1のブレイク接点(2回路)をスズメッキ線でジャンパーし取り敢えずの結末とした。 動作はすこぶる好調。この方法は電圧・電流の節と腹をバンド切替毎に繰り返す様なアンテナエレメントには不向きと思われるが、OCF(Windom)アンテナの様に各バンドで一定範囲のZ値を示すアンテナには格好と云える。 これまでに3台のMFJ-998RTの焼損を見てきた訳だが、その原因究明には至っていない。しかし非保障バンド50MHz/FM運用での悪戯についても原因の一つとして考慮する必要が有りそうだ。 写真はR121とK1を取外し、ランドをジャンパーさせた様子。表面側のランドはハンダの乗りが悪く注意が必要。(Jun 4, 2015) |
MFJ-998RTの樹脂製カバーとステンレス筐体の気密性はお世辞にも良好とは言えない。 薄いパッキンが筐体に貼られているが、その連続性や気密性は見ただけで如何程のモノか分るほどである。SGC-230を長年使っていた者としては寂しい限りである。 それで、その対策としてパッキンに薄いグリスを塗布することと、カバーにシリカゲルを張り付けておくこと(写真)をお勧めする。 また初期製品には無かったDC-JACKも全く無防備なので、ゴムキャップを詰め込み浸水を防ぐ必要がある。 タワーへの復帰は6月14日とやや遅れたが、80m長OCF-ANTとのコンビネーションは非常に良い。またK1をスルーにしたことで、リレーの誘導成分が無くなったためか、非対応の50MHzでも安定動作を示している。(Jun 14, 2015) ★MFJ-998RT(ATU)の導入 ★備忘録「My MFJ-998RT History & Memorial since Dec 2012」 |