備忘録「My MFJ-998RT History & Memorial since Dec 2012」(Feb 11, 2014)
はじめに・・・1KW以上の電力を扱えるATUがあったら便利だなぁと常々考えていた。 また持ち前の好奇心から、RCサーボでVCやLを回すのも面白いぞ・・・などと考えている時期もあった。 ところが2012年春頃のQSTで、その前年にMFJから1.5KWのATUが発売になったことを知った。
何年も前から売られているSGCの500W機SGC-235に比べたら、電力も高くまた圧倒的な低価格に動揺した。折りしも円高の真っ最中で間髪居れずに米国の友人を通して1台購入するに至った。
既設のOffsetCenterFeed(WindomInvVee)ANTとのコンビで、最初の7ヶ月はこれほど便利なものは無いと大満足していた。しかし突然不具合に陥った。
以下は、その後送られてきた代替1やその不良、更に届いた代替2とその不具合等々の備忘録である。
それにしても運が無いのか・・・使い方の問題なのか、あるいは未完の製品なのか・・・色々と楽しませてくれる。
世の中にはこれを不良品とか物好きの一言で片付けてしまうOMもいらっしゃるだろう。しかしKW-ATUの価格崩壊に挑戦するMFJのスタンスは一つあるし、それを側面から支援するユーザーが居ても良いのではと思う。内部配線や処理はSGCに比べ、はっきり言うと「お粗末」だが徐々に改善されていくものと期待している。

初代・・・2012年12月発注。2013年1月16日到着、1月21日OCF-ANTとのコンビネーションで1.8〜50MHzで運用開始。
7ヶ月後の2013年8月20日。突然の不具合でSWRが下がらない。最初はSWR値に変化がありATU動作を感じたが途中から反応が無くなりSWRは高値安定となる。前日の雷害とも思われる。
内部を見て仰天、K1(HUI KE/HK14FH-DC12V-SHG)上側にあるR121(25Ω15W/MP-915・・・CADDOCK社)とその周辺が焼損・炭化。
MFJへ修理依頼する。MFJヘルプデスクが、SupportTicketと称するメーカーとユーザーのやり取りを記すBBSを用意してくれた。ここには文章をはじめ1回に5MBまでの写真や資料の添付が可能。



代替1・・・2013年11月30日。3ヶ月経ってようやく修理を諦めたと思われ、MFJよりNewOneの代替機がいきなり届く。
これを翌2014年1月13日、工房でダミーロードによるテストを実施するもATU動作が始まらない。LCDディスプレイに何も表示されない(写真下)。PICプログラムが動いていないと判明。
友人のMFJ-998RTよりPICを借用するが、動くどころかPICプログラムを壊してしまう現象が1月16日発覚。代替1は1月19日MFJへ返送。
経緯を説明してMFJよりPICを送付して頂き、2月3日友人のMFJ-988RTは無事復活。



代替2・・・2014年1月20日。代替1が不良と言う事で、FMJからNewNewOneのMFJ-998RTが到着。早々に工房でベンチテストを行うと動作良好。1月26日にタワーにセットし、凡そ5ヶ月ぶりにMFJ-998RTとOCF-Antのコンビネーションが復活。



2014年2月6日。復活後良好に動作していたシステムだったが再び不具合に陥る。
22時過ぎにペディション中のFT5ZMを3.5MHzで呼ぼうとチューニング動作を始めたがSWRが下がらない。1.8〜50MHzまで全バンド同様。昨年の経験もあるので、2〜3日必要最小電力でチューニングをトライするが変化が見られない。また電源供給を停止してもスルーにならない。電源を入れても切っても状態が変わらない。
これは可笑しいと2月9日タワーから下ろしてカバーを外すと愕然。昨年8月の焼損に状況は酷似。
写真は焼け焦げたR121とガストーチで焙った様に炭化したマザーボード。
これは尋常ではないと判断し、メーカーの見解・NewNewOneの修理可否・回路図の開示等をMFJへ打診。
昨年8月の場合は前日に雷の発生があったので早々に雷害と結論付けたが、今回は何もその気配が無かった。したがって雷害の結論付けは保留することにする。

2014年2月15日。薬剤を使い黒化した汚れをブラシで流し落とす。同時にマザーボードの炭化した部分も削り落として洗浄、不要な回路が出来ないようにする。薬剤が十分乾いてから試しに通電。リレー音と共にLCDディスプレイが正常に表示された。この状態から、アンテナ側にダミーロードをワニ口リード線でつなぎ29MHz/FMを10W程度で放り込む。するとリレーがカチカチ動き出しチューニングが始まった。見るとしっかりとチューニングが出来ている。SWR計測や制御等のATU中枢部分は壊れていない。ラッキィ!。
バンドを変えながらHFの各バンドでチューニングが出来ることを確認。ただここで面白い現象を確認。
@時々周波数カウントをミス(バンド切替しても前のバンドを表示)する。
Aチューニングが完了しなかった後にバンド切替をした場合に特に顕著。
Bその際入力とは異なるバンドデータでチューニングを始めてしまう模様。
Cこの場合は電源の再投入が必要。
*R121はチューニングの初期段階、負荷に直列に挿入されアブソーバ抵抗となるが、途中からK1リレーでショートされる。
実は上記症状の場合、R121が常に挿入される状態が継続し、10〜20W程度でも燃え出すことが想定される。燃え出し基板の炭化が進むと、RFの負荷と成り得るため、チューニング動作に甚大な影響を与えると推測される。

ここで今までの話を整理すると・・・特定の条件が揃うとR121が挿入されたままになる→R121から発火→周辺の基板の焼損・炭化→基板がRFの経路又は負荷に発展→チューニング回路に炭化基板が装荷されATU動作不能→SWR高値安定(炭化が落ち着くまでSWR変動)→不具合発覚。

その対策として…現状のR121は15Wを謳っているが、これは適正な放熱器を付けた時の話。放熱器無しではその質量から見て1/10程度の許容電力しかないと思われる。このため、R121の強化(高耐圧・不燃化)はもとより、適正な放熱器の設置が必要。また運用時の手順として操作毎(操作前)電源リセットを励行する等の工夫が求められよう。

2月19日、R121はCADDOCK社のMP-915/25Ω/15Wがオリジナルだが、2回の発火を懸念してひとサイズ上のMP-930/25Ω/30WをRSへ発注。

2月26日、マザーボードのK1下も炭化しドライバーで突くと炭が落ちる状況だった。
改めて洗浄し、剥がれたプリントパターをリレーへ半田付けする。
そしてヒートシンク代わりに真ちゅう板を取り付けたMP930をリレー端子へ半田付けした。
真ちゅう板はあり物のジャンクに3mmのタップを立てMP930はビス締めしている。

QSY from Friend・・・2014年2月15日、友人の余剰品を譲り受けることになった。2月17日に到着。この固体は既に拙作サイトの他頁で紹介しているが、R121の腹面が写真の如く破裂している。友人は動作を確認した程度で箱に戻して保管していたと言う。では一体この破裂は何時発生したのか。電力も10W程度しか放り込んでいないし疑問が多い。現状で動作は問題ないが、R121は前項で記したように15Wから30W(PM-930)へ変更し、ヒートシンクを併用する予定だ。
2014年2月24日、この破裂した抵抗の値を測ると何とオープン。いつそうなったかは不明だが、大した電力じゃないのに面白い。これでもチューニング動作はするので、友人は全く問題ないと思っていたようだ。
シールド蓋やマザーボードを固定しているビス15本全てを外すとマザーボードを動かせる。ハンダ付けを外さなくてもR121の底には半田ごてが入る様になる。ところがオリジナルのPM-915のスルーホール小さくPF-930が挿入できない。止む無く基板上面へ半田付け。またSWR検地基板にぶつかるため、基板のスペーサ厚を凡そ半分にして外側へ5mm程度移動。これによりPM-930は基板へ寝かせ、基板との間に金属板のヒートシンクを挿入することが出来る。

2014年2月24日、左は届いたCADDOCK社のMP930(25Ω/30W)。
DEGIKEYで購入しようとしたら送料が非常に高く困惑していると、最近はRSでも取り扱いがあることが分かりこちらでゲット。
1個\700で送料が\460。無誘導なので50Ωならダミーロードにも使える。

2014年2月25日、下は破裂したMP915を撤去し、上述の如くMP930を取り付けた様子。
基板との間に銅かアルミブロックによるヒートシンクを挟み込んでMP930をビス締めする。
一方ヒートシンクもビスで基板と共締めする予定。
これらの作業で、少なくともこれまでの発火・焼損からは回避できると思われる。



2014年2月27日、MP930に真ちゅう板のヒートシンクを取り付けた。
真ちゅう板はあり物のジャンク。まずまずの収まり具合かと思う。
真ちゅう板の下にマザーボードを締め付けるビスがあるので、マザーボードを取り外す場合はヒートシンクとMP930を閉めている3mmビスを緩める必要がある。
ただし、そんなことは滅多には無いと思うが・・・。
ここまでくるとこれらMFJ-998RTも随分と信頼度が上がった気がする。

シャック据え置き型のMFJ-998は、LCDディスプレイでチューニング状況を把握できるが、屋外型のこのMFJ-998RTはそれが出来ない。シャックのSWR計が唯一の頼りと言っても良い。
そういう状況だからどんな状況になっても壊れない耐久性と安定感を期待したいのだ。

これまでの結論
@焼損(不具合)は雷の影響にあらず・・・たまたま発覚の前日、当地に稀にみる雷雨があり、その影響と早合点した。
A周波数カウント失念・・・10W程度なら100%OKであるが、20W程度を超えた辺りからカウントしない場合がある(この現象は手元のMFJ-998RT全てに共通・・・Thanks JA2FGL)。この場合チューニング動作が終わらずタイムリミットまでR121がロードになる模様。放熱器が無いので早々に発熱発火する。
B手元監視はSWR計必須・・・据え置き型のMFJ-998は本体にLCDディスプレイがありチューナーの状況が把握できるがMFJ-998RTは屋外型で見ることが出来ない。チューニングは10W程度で行いSWR計の監視を併用する。
CMFJサポート・・・丁寧に対応してくれ感謝している。ただ障害報告が製品改修や開発に生かされて行くかは分からない。
DMFJ製品はこんなもの・・・・とは思いたくは無いが、ワイヤーリングや半田付けは自分でやりたくなる程。何ヶ所かは配線処理変更や再半田を行った。改善を求めたいがこの値段では望み薄。
E国際輸送・・・梱包すると5Kgを超えるため保険付きEMSで送料は\9Kを超える。おいそれと返送できるコストではなく困惑する。そのためMFJ-998RTは返送指示があったがこちらで修理保管している。

写真は工房でテスト中の裸のMFJ-998RT。下に外部チューナーを必要とするELECRAFT/KPA500自作SSPA(MRF429x4)が見える。MFJ-998RTの対電力テストに格好だ。