R-390A用アンテナ・バランアダプタの試作(Apr 15〜. 2014)
はじめに
32年前に購入したR-390Aを現在も愛用している。オリジナルのIFユニットにリング検波器を組み込み、AGCのCR定数の変更等の改修を行い、SSB対応にも十分な能力を持たせてきた。
オリジナルでも、AMラジオ受信にはこれ以上適した受信機は存在しないのではと思う位にマッチしている。 後継機と言われる51S-1では、相互変調された信号が目的信号の背後にいっぱい並び、プリセレクタ無しではとても使えない。 しかしR-390Aはそんなことは無く単体でも十分な音声プログラムを出力する。強電界地域や出力レベルの大きい大型アンテナを使用する場合はてきめんだろう。
IF帯域選択を16KHz/8KHz/4KHz/2KHz/1KHz/0.1KHzと切替ても、また変調レベルに大きな変化があっても微動だにしないCARRIERメーター。一定しないアマチュア用フラグシップ機を見ると、一体どうなっているのか感心する様子は32年経っても変わらない。
R-390Aの疑問
さて実は購入当時から気になっていることがある。それは平衡アンテナ入力用に付属してきた変換コネクタ。出は平衡型で2つのPinがあるが、入りは不平衡のC型(不平衡アンテナ入力と同じ)だ。 平衡コネクタのHot側は不平衡コネクタの芯へ、Cold側はシールド(コネクタ筐体)につながっている。 ところがR-390Aの回路図を見ると、アンテナコイル1次側は直列接続された2個のCがつながり、さらにC同志の接続点を接地している。 ここへ変換コネクタをつなぐと、平衡入力のCold側は変換コネクタで強制的に接地されてしまう。つまり2個のCの内Cold側がショートされることになる。 平衡入力は125Ωと仕様にあるが、Cのショートがそれに影響しない筈がない。ANT-TRMで若干の修正は効くのだろうが、電子回路としては解せない。
それで、不平衡-平衡変換とZ変換を目的としたアダプタを製作し、この解せない話の決着をつけることにした。 一昨年80m長のウィンドムアンテナを逆V型に張ってから、地元中波局JOPK(+3dBm)にR-390AのAGCが対応できない事が発覚した。 その原因が何処にあるのか調べている内に、以前から気になっていた上記実態を解決しようと重い腰が上がった。
写真はアナログTV時代、アース切りでTVI対策したときのZ比1:1のRFトランス。#43材コアに僅か1Tだが、試すと中波放送帯まで低損失で伝送できる。

不平衡入力コネクタはフロントエンドでのプリセレクションが効かず使用に耐えない。平衡入力コネクタへ平衡信号を適正Zで放り込むことでR-390Aの能力を最大限に発揮する。
バランアダプタの構成
写真は構成部品。上段はAMPHENOL 74868をR-390A用に改修したものの主要部分。
下の左は最も重要なZ変換トランス。メガネコアを利用し125Ω:50Ωトランスを作る。Z比=125Ω/50Ω=2.5。Z比=巻数比の2乗だから、巻数比=√Z比=√2.5≒1.5。メガネコアに3T:2Tで巻くことでほぼ目的を果たせる。
その右はBNCコネクタ。写真下は、これらを組み合わせ完成させたもの。コネクタPinの取り付けられたトランスが、クランプネジを回すとゴムパッド(ガスケット)で押し込まれる構造。BNCコネクタはトランス巻線を半田付けして差込み、最後に筐体間に半田を流し固定する。
下はBNCコネクタ固定の様子。本来のクランプ金具の側面に3mmのタップを立て6角のイモネジで締め付けている。










バランアダプタの実装
このAMPHENOL 74868は兵庫のBMで購入したもの。やや長さがあるので邪魔と思っていたが、この様な用途には最適だろう。
写真は早々にR-390A背面のBALANCED ANT端子へ取り付けた様子。
BNC-P/M-JのL型でMコネから変換しているが、ルックスも中々良い・・・と自己満足。
ちなみにメガネコアへの巻数は、当初上述の半分で試したが、中波帯域のロスが確認されたため倍にしている。
なおコアは紆余曲折の結果、FB-810(#43材)2個に落ち着いた。コネクタの中にピッタリ収まる(写真下)。当初使用していた前掲のメガネコア(TV用300Ω:75Ω変換とは違う)は低域でSWRが下がらず断念。





















左はFB-801をメガネコアに見立てて巻いたトランス(コイル)とコンタクトPinの接続状況。 後述しているが、1MHz以下までSWR特性を伸ばすには、全体にインダクタンスの増加が必要。
その場合は、フェライトサイズは既に一杯であるので、線材を細くして巻数を増やすか、材質をより比透磁率の高い物にするか、或いはコアを大きくして別筐体にするとかが考えられる。

バランアダプタのSWR特性
手持ちの抵抗の関係で110Ωを負荷して、SWRアナライザ(KuranishiBR-510D)で1.5〜100MHzの特性を取ってみた。
グラフは34MHzまでしか表示していないが、SWRは50MHzで1.15、75MHzで1.3、100MHzで1.5であった(注:1MHzは推定値)。
1MHz以下のSWR改善を期待する場合は、コイルの巻数を更に増加させる必要がある。測定マニアは別として、受信レベルの大きな中波放送帯では全く運用上問題にならないだろう。
不平衡50Ω同軸を強引に125Ω平衡入力へ片側強制接地で接続する場合に比べ、6dB以上のS/N改善がRF増幅前で行われ、かつ入力同調回路が正規の平衡状態で動作する。電気的な改善はもとより、精神的な安定をもたらしてくれる。



バランアダプタの周波数特性
出力が125Ω相当で、かつ平衡コネクタのため測定方法に苦慮していたが、測定器側(50Ω)に75Ωを直列接続し平衡コネクタへ接続してみた。
75Ωによるロスがあるが、純抵抗であり周波数特性の取得は可能である。
SGからの注入レベルは0dBmである。なお低い周波数からコア材の飽和が始まり、500Kz付近では0dBm入力で既にコア材の飽和が始まり、高調波歪の増加を確認できる。
グラフは100KHzからR-390Aの最高受信周波数32MHzまでを表示している。それ以上の周波数は100MHz付近まで確認したがフラットである。
一番気になるのは中波帯域の低い部分である。R-390Aの最低受信周波数500KHzで-1.8dBの低下で、受信用としては問題ないと言えよう。