TU-8600R/300Bシングル・ステレオアンプKit製作記(Jan 3〜9. 2019)
はじめに
昨年秋、米TUBE DEPOTのWebサイトを覗いていたら、プリント基板上に300Bやその他真空管を配置したユニークなオーディオアンプを発見した。型名はTU-8600R。
色々調べると、これなんと福岡のELEKIT製だった。直熱管アンプの難点を半導体デバイスの多用と両面プリント基板の採用でクリア。コンパクト化と製作の容易化を図る作りに驚いた。
実はこれまで、1974年に製作した6080/6AS7G(双3極管)A級プッシュプルアンプを45年も使用して来た。A級動作だが、プッシュプルのため偶数時の高調波が出ない。またNFBは極少量ときた。これがシングルだとどう違うのか聴き比べてみたくなり、以前からのA級シングル(3極管)アンプに興味を持っていた。
直熱3極管300Bは、中学2年のとき、技術家庭科のA先生からその存在を教えて貰った。あれから半世紀、ずっと脳裏から離れなかった。色々と思いを巡らせていると無性に作ってみたくなり、ネット上で注文してしまった。
写真はELEKITのWebサイトの写真を加工させて頂いたもの。

基板組立
正月で帰省した孫と一緒に組立ようと考えたが、慌ただしくそれどころじゃ無かった。また小学校低学年にはハードルが高すぎた。
1月3日、孫たちが帰省した晩、コタツに材料を出してきて製作を開始。
一晩で基板上の半田付けは終了したが、3×10mmのセルフタップビス7本が欠品で作業が完了しない。至急送付する様ELEKITへメールを送る。
基板上は真空管のラフな間隔とIC類の狭い間隔のランドが混在し面白いが、半田屑のブリッジ等注意する必要がある。64になった自分の視力の衰退は、虫眼鏡を併用するなどの対策をとった。旧来の真空管だけの立体配線なら問題は無いのだが…。




基板両面
落ち着いたところで基板の両面を撮影した。
左は基板上面。下は基板下面。それなりに良くできていると自己満足!。
余談だが9PinMTソケットを良く見ると「QQQ」。これってあの懐かしい東京大田区にあった中央無線製なの!。少年時代のラジオ製作では随分とお世話になったメーカーさんだ。
基板上で部品の半田付けをしていると、真空管アンプを製作している感覚じゃなくなってくる。部品点数は圧倒的に半導体やICの方が多い。



基板・トランス・真空管実装
左は基板を実装し電源トランスと出力トランスを搭載し接続。Rコアによる電源トランスは小型で漏洩磁束が少ないのが特徴。
またチョークトランスを使わないで、PowerMOS-FETによるリップルフィルタを採用し省スペースを実現している。
下はフロントパネルと取り付け真空管を実装。試しに電源を投入しヒーターとフラメントを灯してみたが見難い。



トランスカバー・ボンネット実装
左はトランスカバーとボンネットを取り付けた様子。ヒーターとフィラメントの点灯が分かる。300Bのフィラメントは思ったより暗い印象だ。
下はBIAS電源整流平滑コンデンサが半田屑で短絡し、ヒーターテスト中に温度ヒューズが飛んでしまった電源トランスTPW8600-UNI-R。製造元の(株)フェニックスで修理して戴いたもの。TU-8600RはELEKITより代替のトランスを送付して貰い対応。修理したトランスは6080アンプで使用し、ボロボロの旧式トランス(昭和20年台富士トランス製造)更新で小型軽量化を狙う予定。



音出し
左は棚に据え付けたTU-8600R。下は6080/6AS7Gアンプとのツーショット。
スピーカーはA-7/ALTECをつないで視聴。これが300Bの音か…瞬時切替えしないと6080/6AS7Gアンプとの違いが判らない…何しろ耳が老人なので。暫くエージングして、リレー式リモコン切替え器を製作し聴き比べてみる。



真空管について
左はAmazonで購入したロシア製Genalex社のPX300B/Gold_Lion。300Bは伝説的な真空管でWesternElectricが製造を止めてから世界中のメーカーがその後を追っている。この世界は余程ひどいモノを除いて情緒的で形容詞を多用した解説が多く本当に苦慮する。箱の蓋に手書きで電流と電圧を記してあるが、どう言う条件で測定した値なのか分からない。2本共66mA/5.8Vとあるが果たしてこれは…。国産ではかつて真空管製造を行っていた高槻電器工業TA-300Bとして製造・販売を行っている。同社では事業方針の変更や世代交代が進み、往時のノウハウは消え去りゼロからのスタートだった模様。
またYoutubeでは以下動画がUpされている。
「オーディオ用真空管 TA-300B」のプロモーションビデオ
ETV団塊スタイル「高槻電器工業 真空管復刻」
下は手持ちの高信頼12AX7と5814A(12AU7の高信頼管)。 この種の受信管は相当数のストックがあり、ようやく日の目をみた感じがする。