Strawberry LinuxのDDS SG Kitをテストする(Nov 29-Dec 1, 2007)

Strawberry linuxのUSB_DDS-GEN導入の経緯・・・1998年依頼米CWS/Bytemark社のDDS-VFOであるPC-VFOjrにお世話になってきた。 ところがこのPC-VFOjrは以下の条件が必要であった。
@制御ソフトがWindwos95/98/ME上でしか使えない・・・OSの統合が出来ない
AISAスロットが必要・・・最新のマザーボードにはISAスロットが無い
という事で、WindowsXPが主OSである当局では複数OSの起動が必要になり、ブートディスクを変更したりブートディスクをスロットで入れ替えるなどの対応で逃げていた。
また最新の高速PCにはISAスロットは見受けられず将来性が無いため、10年近く愛用してきたPC-VFOjrから脱却する方針を決めた。
この状況は既に数年も前からの事であったが、奇しくも友人のJG2EGSがStrawberry_Linux社が提供するDDS-GEN(USB制御のシグナル・ジェネレータキット)の情報を知らせてくれていたので、乗換は時間の問題だった。
そして2007年11月28日、ついに重い腰が上がり1台をネット注文する。実にあっけない翌日には手元に届いた。何と言う段取りの良さかと感心する。
StrawberryLinux社は、こうしたかゆい所に手が届くKitを多種にわたり製造販売している。またユーザーの要望に対しても前向きであり、エレクトロニクスを志す我々には大変有り難い企業である。


届いたKitはKitと呼ぶには余にも製作工程が簡素化されていて驚かされる。DDS(AD9851BRS/AnalogDevices)とチップ部品は既に実装済みで、取り付け(ハンダ付け)しなければいけない部品は
@BNCコネクタ
AUSBコネクタ
BSMAコネクタ
CVR
DX-talオシレータ
ECPU&ソケット
の6点のみである。後はPC側に附属のCDまたはStrawberryLinuxのサイトからダウンロードしたソフトをインストールするだけで良い。 あっけなく高級SGが出来上がってしまう。
機能も簡素化されておりCWの正弦波と矩形波の発生のみで変調入力などは無い。詳細は上記サイト参照のこと。
ただその気が有ればユーザー側で改修が出来るように情報の提供がなされている。
写真は組み上がってUSB制御ケーブルとBNC出力ケーブルをつないでテスト中の様子。
基板の大きさは101.5mmx30mmで実装密度が高くパターン処理が良好のためか基板からの輻射は意外と少ない。
最終的にこれをケースに収める。


左:3.6MHz付近で発振させ出力を-10dBmで出力した様子。近傍の不要輻射は-60dB以下、第2高調波は-40dB以下。

右:基本波近傍±500KHzの不要輻射の様子。この輻射は電源に470μFのケミコンを取り付ける数dB改善した。多くはPCからのノイズと思われる。

電源を専用電源にすれば近傍の不要輻射は改善されるかもしれない。

左:更に近傍±25KHzの模様。
±16KHz付近に-66dB程度の不要輻射がある。
基本波にややギザがあるのが気になる。
スペアナのRBWが1KHzなので拾い上げ出来ない。
これらはPC/USBの電源ノイズが原因と思われる。

左:3.6MHzのオシロスコープ波形。

右:1KHzのオシロスコープ波形。低周波は波形が崩れるとマニュアルにあるが、中々良好な波形をしている。

両者は同じ出力VR位置であるが、これだけの違いが発生する。

左:20Hz〜100KHzで600Ω負荷時の周波数特性。

右:600Ω負荷での歪率(THD)特性。 0.1%以下の低歪みが確保できるのは5KHz付近から上。

左:16MHzを基準(-10dBm/50Ω)にした出力偏差。周波数を変えると16MHz付近に最大、300KHz付近に最小出力レベルがあった。10KHz〜70MHzを示している。100KHz〜AF帯域は上図を参照のこと。グラフはスケールの関係で強調されているが、簡易なSGとしてはまずまずだろう。

右:心臓部AnalogDevicesのDDS、AD9851BRSのクローズアップ。

左:TAKACHIのHA1593-QGに実装した。このケースは基板がピッタリ収まる。USBコネクタは各穴を細工、BNCコネクタはフロントパネルに丸穴を開ける。

右:ケース内部の実装状況。基板上にSMAコネクタやレベル調整VRがあるが、外からは触れないようにしている。本来なら金属製にしたい所だが、基板からの輻射は意外と少ない。

左:制御パネルウィンドウ。Windows_PC上でコントロールソフトを起動し周波数を入力する。3個の周波数メモリと表示桁数などの設定が行なえる。周波数可変はスクロールマウスで連続的に行なうか、ウィンドウの▲▼をクリックして行なう。この部分がダイアルによるロータリーエンコーダで行なえると都合が良い。
ソフトは付属のusbdos.exeファイルとusbdos.dllファイルを同じフォルダに置き、usbdos.exeを実行(MS-DOS)するだけで良い。

課題・要望
@不要輻射の改善→電源のピュリティを上げる対策か専用電源にする。
Aコントロールソフトの機能改善→プリセット数の増加(5〜10個)、スイープ機能追加、ロータリーエンコーダによる外部周波数可変機能追加、表示の減算機能追加。
B出力レベルの増加→実験用として+10dBm程度までは欲しい。
C周波数ステップは丸い数字の方が使いやすい→1Hzとか0.1Hzとかにしたい。
D1Hz・0.1Hzステップを選び操作すると無関係の下桁数字が動く→選んだ桁のみのステップ動作にしたい。
E出力が出ているかどうか分からない→出力情報としてLEDなどによる表示が必要。
FBNCコネクタ抜の差しで時々出力停止(ソフトの再操作必要)→5Vラインに470μ装荷で解決。

注意:附属マニュアルの末尾に以下の「使用上の注意」が記されていますので必読です。
自ずと限界がありますので十分な理解の上で購入する必要があります。

@AD9851の発熱は異常ではない
AUSB電源について
B通信用LSIである旨、数MHz〜数10MHzをターゲットにしている
C出力は0Vには出来ない
D金属ケース収納の勧め
E周波数確度について
FBNC出力の取り扱い注意
GSMA出力は短絡厳禁
Hグランドの取り扱い注意
I使用上の損害は補償しない

その後待ちきれずUSBマウス基板を使って外付けのUSBスクローラーを製作した。マウスとの併用だが、周波数可変は大型のダイアルで行なう事が出来、劇的に使い易くなった。なおPower Mateと称するロータリーエンコーダが市販されているが、USB-DDSとの相性が悪く巧く動かなかった・・・設定不十分なのかも知れない。