ナクル湖
アフリカ大地溝帯(Great Lift Valley)
@Feb/'09 Nakuru, Kenya


今回は百万羽のフラミンゴは見られなかった、その代わりに夥しい数のペリカンに遭遇する


アフリカ大陸東部、マラウイからタンザニア、ケニア、エチオピアを跨ぎ、紅海、アカバ湾、死海、ヨルダン川を挟むウエスト、イーストバンクを北上し、チベリウス湖に及ぶ、幅30kmから120km、総延長7000kmに及ぶ広大な地球の裂け目。 この大地溝帯の底にアルカリ度の高い湖がある。 凡そ35年程前のことになろうか、ザンビアへ向かう途中ナイロビに立ち寄った。 その時から一度は訪れてみたいと思っていた場所である。 当時は移動中でナクル湖に寄る時間等、とても取れなかった。 今回思わず機会が飛び込んできた。 ナイロビにきてから1ヶ月程たったある休日だ。 仕事仲間と一緒に訪れることができた。
 




リフトバレーの淵は盛り上がった高地になっている
その分雨量が多いのだろうか、立派な杉の人口林が幹線道路の両側を埋め尽くす



ナイロビは1500mの高地に発達した街だ。 赤道直下近くにありながらとても過ごし易い。 ナイロビからA104を北西に良く整備された舗装路を車は高度を確実に上げながら快調に進む。 地溝帯の淵の高みに向かって進んでいるのである。 高度が上がると雨量が増すのは自然のメカニズムである。 広大な杉の人口林を分け進む。 ナイロビを出てから1時間程した時だ。 小さなルックアウトに到着した。 ロンゴノート・ルックアウトだ。 標高2500m。 ここは丁度地溝帯の淵に当たり、ルック・アウトの前は険しい崖になっている。 眼前には大地溝帯がとてつもないスケールで広がる。 超大規模な地球の裂け目だ。 この裂け目は今尚広がっているらしい。 何百万年後にはアフリカ大陸は2つに分断される運命にあるらしい。 眼前に広がる地溝帯に一際目立つ火山が見える、 Longonote山である。 山頂に大きな火口を開けた休火山である。 その少し左手の盆地のような地形の真ん中にロンゴノート衛星地球局が見える。 未だ現役の局だ。 ケニアでは現在も国際電話回線の多くは衛星を通じて綱がっている。 その為、話をする時に数百ミリセカンドの遅れがあるのだ。 それにしてもこの地溝帯は凄い。 地球の活動は天文学的である例を見事に見せてくれる場所に違いない。 
 


Longonoteクレーター:
リフトバレーに一際目立つLongonote火山クレーター



ロンゴノトルックアウトを後に車は再びA104を北西に、更に高度を上げながら進む。 最高地点は何と2700mもある。 スイスのヌフェネン峠や、日本の乗鞍スカイラインに匹敵する高さだ。 ここから、地溝帯の底へ長い下り坂を下る。 谷の底に達すると比較的平坦な地形が続く。 谷底には地下水脈があるのか、所々に大規模な潅漑設備を備えた、或いはハウス栽培の大農場が見られる。 だが一般的には乾燥地帯で幹線沿いには乾燥地に良く見られるアカシアの林が両脇まばらに広がる。



地溝帯の底は比較的平坦になっている、
底と言っても標高は1300m程度の高原だ、乾燥地に見られるアカシアの木が両脇を覆う



ナクルの街にはナイロビを出発して約2時間半で到着した。 ナクルは人口20万を超える大都会である。 街に入る前、幹線道路の街路樹のジャカランダが高貴な紫色の花を付けているのを何本か見かけた。 リフトバレーの底はやはり高原とは言え暑いのだ。 街を抜け、緩やかな下り坂を湖に向かって下る。 アカシアの潅木に囲まれたナクル湖国立公園のゲートを過ぎると、公園管理事務所があり、ここで入園料を支払う。 非居住者は一人 US$ 60 だ。 車両と運転手の料金はそれぞれ300ケニア・シリング(500円程度)。 更に公園内のゲートを通過し、湖の周囲に設けられらた未舗装のサファリー道路を回るのだ。 所々で湖のほとり迄出ることができる。




ナクル湖国立公園: 縞馬が湖畔の石灰を多量に含んだ砂場で砂浴びをしていた
一頭が砂浴びをする間、数頭が周囲をウオッチする




縞馬の向こうの水際には夥しいペリカンの群れを見ることができる






乾季に干上がった草原にはバファローの群れを幾つも見る


ここには象は居ない。 そのせいで、草原は概して荒れてなく、多くの草食動物を養うことができる。 中でもバファローの数は凄い。 湖の周辺を回ると幾つものバファローの大群に遭遇する。 




ウオーターバック(クローとも言う): 立派な角を持った大型のレイヨウ類



サロバ・ライオン・ロッジからナクル湖を望む


この公園内にも幾つかの設備の整った宿泊設備を備えたロッジがある。 そんなロッジの一つ、サロバ・ライオン・ロッジにランチ休憩に寄った。 少し小高い斜面にあり湖が見下ろせる位置にある。 立派な車寄せでは冷たく冷やした濡れタオルのサービスがある。 落ち着いた感じの受付で、ランチだけでもOKかを聞いたら、勿論OKだと言う。 広くアレンジされた設備内の渡り廊下を下るとブッフエースタイルのフルコースランチが楽しめる、リゾート風の半オープンレストランが広がる。 2人用のテーブルに案内してもらい、多くの外国人、国内からの観光客に混じり、豪華なサファリーランチを楽しむ。



Sarova Lion Rodge内部: 清潔で豪華なレストランを備えている、
食事だけでも利用できるので、便利だ、
因みに運転手の食事代はホテル側が持ってくれる




いぼ猪: 幾つか群れをなして棲息している 



キリンの家族: やはり小さな群れで縄張りを持っているるようだ



ウオーターバック(クロー): 大きな角が特徴



犀: でかい、これは黒犀だろうか




ペリカン等: もう一度水際の水鳥の群れをみて頂こう、
この豊かで美しい生態系をいつまでも守らなければならないと肝に命じるのであった




ナクル湖国立公園出口のカフェ、
土産物ショップのマサイ衣装を付けたスタッフ
写真撮影は大切な収入源で一回ビール一杯分(300シリング)のチップが相場、



ナクル湖周辺の未舗装サファリー路を一日走った後、埃まみれになった車と体を少し休める為、公園出口手前にあるスーベニアー店兼カフェに立寄る。 椅子に座って飲む一杯の珈琲(300ケニア・シリング)が旨い。 店にはスタッフの一人がマサイ衣装に身を包み、客のサービスに余念がない。 余りしつこくはない。 写真と撮らせて貰うと、ビール一杯奢ってくれるかと言う。 ビール一杯は300ケニア・シリングだ。 相応のチップを手渡すと、埃まみれの帽子をいきなり取り上げ、洗ってきてやろうと姿を消した。 暫くするときれいに洗濯された帽子が戻ってきた。 満ち足りた気持ちで帰りの車の座席に身を任せた。 アフリカに感謝、ナクルに、運転手に、多くのナショナル・パークのスタッフに感謝。


後記: 国立公園内では見事に生態系の保全が機能している一方、公園外の乾燥地帯に植生するまばらなアカシアやユーカリ林、潅木地帯はどうだろうか。 決して健全とは言えない。 乾燥した気候の下、必死に生き延びようとする木々は、無残に切り倒され、炭に焼かれ、村人達の貴重な現金収入源になったり、或いは僅かな穀物を収穫するために焼畑式農場として焼き払われる。 移動中にも数ヶ所で焼畑の為と思われる山焼きを見たし、炭を自転車の後部荷台に乗せて運ぶ村人の姿を多く見かけた。 乾燥地帯の砂漠化は益々その速度を人間の営みに拠って加速されているのではないかと思えてならない。










林蔵@Lake Nakuru National Park 22/Feb/'09 (Updated on 25/Mar/'09)#317
  

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