ヌアクショット
砂の街

@Jul/'07 Nouakchott, Mauritania


漁港市場の少年:
この漁港には我が国政府の援助で建設された処理場(あるいは貯蔵設備)がある
 


ヌアクショット、モーリタニア・イスラミック共和国の首都。 パリから約5時間のフライトだ。 パリを1時間ばかり遅れてテークオフしたAF764便は、夜の帳もすっかり下りたヌアクショット首都空港に降り立った。 極めて小規模な空港のようだ。 イミグレもいたって簡単、あまり立派とは言えないカウンターが3ヶ所ばかりある。 次の者が待つ黄色い線など勿論ない。 何人も一度にカウンターに雪崩れ込む。 これでは、パスポートをチェックせずに潜り抜けるのも然程難しくなさそうな気もする。 誰の子供か知らないが、パスポートコントロール出たり入ったりしている。 明らかにルール違反の気がするが。

最後から2番目にイミグレを通過し、荷物を探す。 成田から3個、バゲージスルーで預けてあった。 パリでの荷物のハンドルは余り信用が置けないのは昔からだ。 案の定、最後まで待ったが私の荷物は2個しかない。 エアーフランスの係員に荷物が1個届いていない旨を伝え外に出た。 そこには少し待ちくたびれた、これから世話になるZ氏が首を長くして待って居てくれた。




ヌアクショットの漁港海岸:
日本のような港は存在しない、
このように唯の海岸に漁船が並ぶだけ




漁船は木造で皆上の写真のように小さい
殆どエンジンはついておらず、人力で浜辺の直ぐ近くで漁をする



モーリタニアは、1000km近い海岸線を大西洋に持つ。 この海域は、世界でも有数の漁場だと言うことだ。 暖流と寒流のぶつかり合う海域で、多量のプランクトンが発生し多くの魚が生息する海域である。 網を投げればたちまちバケツ一杯の魚が簡単に捕れるらしい。 しかし、モーリタニア人は基本的に砂漠にラクダや山羊を追う肉食人種だ。 だから魚は殆ど食しない。 砂漠は決して豊穣な食料提供源ではない。 それなのに、魚に見向きもしないとは、何と勿体ないことだろうかと思う。 



漁港の浜辺では、このように、捕れたての魚をその場で主婦(?)が売っている


この漁港には、立派な魚処理場(あるいは貯蔵設備、実は良く聞かなかった。)がある。 よく見ると我が国の無償援助で建設されたものらしい。 そう言えば、当市にある日本総領事館に行った時、総領事の土地の女性が語っていたが、我が国政府の援助で現在学校を建設しているらしい。 その為の建築関係の人がヌアクショットに滞在中らしい。 携帯の電話番号を教えて頂いたが、ついぞ電話もすることなく、帰国してしまった。 一度お会いするか、電話でも掛けてお話を伺うべきだった。



宿舎のアトランテイック・エッザ・ホテル
部屋数20ばかりの、開店6ヶ月の、此方では中規模ホテル



この街には砂が多い。 街中砂場状態と言えば良いだろうか。 街の主要道路は一応舗装されているが、中央部、車が一台通る幅だけアスファルトの舗装道が見える。 人が歩く道の両端の部分は、パウダー砂の砂場状態なのである。 ビジネスシューズは勿論、運動靴だって用を達し得ない。 サンダル必携だ。 人々は、行儀良く道路の一番端の砂場を歩く。 私など、車が通っていなければ、道路の中央部の舗装された部分を歩こうと、砂場と舗装部分の境目を歩く。 実は、これは少し危ない。 此方では、当然の如く車優先の感覚があり、前からくる車は、人を避けない。 真っ直ぐに向かってくる。 此処では人が車を避けるのがルールなのである。 つい日本や西洋と同じ感覚で、車が避けるだろうと、高をくくっていると、大変なことになる。 




宿舎のホテル近くにある中華レストラン「皇帝」


ヌアクショットは暑くて、ランニングは殆どしていない。 その代わりにはならないが、早朝散歩を励行している。 これも健康維持の為だ。 早朝なので車は少ない。 歩くにはとても都合が良い。 6時は未だ夜が明けきらず、薄ぐらい。 灼熱の太陽も顔を出す前なので、海岸地帯でもあり、気温は24度から26度程度で、すこぶる気持ちが良い。 この時間に歩いていると、ランニングをしている土地の若者に会う。 これは、私もランニングをしなければならないだろうか。 と思い、少し走ってみたが、湿度が高い(砂漠地帯なのに、ヌアクショットは、海に面しているせいか湿度が80%程度ある。 海岸から内陸部に入ると湿度はぐっと下がり、30-40%になる。)ので、たちまち汗が噴出し、とても続けることができない。 




土地のファーストフード店: 比較的衛生的な店で時々利用する
チキンサンドイッチとコカコーラで1000UM(約500円)
物価は東京並みに高い



ヌアクショットには、野良犬が多い。 随分昔に訪れたチリのサンチャゴや、最近訪れたインドネシアをを思い起こす。 サンチャゴやジャカルタにも多くの野良犬が街にいた。 そして、いずれも大変おとなしかった覚えがある。 此処でも、その数は、およそ半端ではない。 しかも、どの野良犬も栄養状態は極めて良く、猫の如く人には懐かない。 痩せ細った犬は皆無だ。 何を食べているのだろうか。 この国は、人だって食べるのが大変なのである。 水場も街には殆ど見かけない。 この疑問が帰国する日迄、遂に解くことができなかった。




文房具屋: あまり品揃えは良くないが、取敢えずの文具は揃う



此方の人は、意外とおしゃれ、床屋や美容院の看板を至るところで見かける


ヌアクショットの人は大変お洒落だ。 街を歩くと、至る所に美容院や床屋を見かける。 上の写真は、床屋 「Tip Top」、訳すと、”最高な床屋” とでもなろうか。 この床屋は庶民的な店構えだが、女性用の美容院となると、大概は、立派な塀に囲まれた大きな一軒屋が殆どだ。 イスラムの国である。 女性の美容院の中を見るすべはない。 ヨルダンに住んでいた頃、やはり女性用美容院は内部が一切見えない家の中にあると聞いたことがある。 此処もやはり同じシステムだ。




フルーツショップ: 品数は少なく、鮮度も今一だが、店数は多い:
りんご1kg、600UM(300円)



果物屋が多い。 鮮度は今一で、値段が日本並みに高いのだ玉に瑕だが、このような店があることは大変ありがたい。 りんご、バナナ、オレンジが主なお目当てだ。 大きな旨そうなスイカも積み上げてある。 モーリタニアは乾燥地帯なので、スイカ類は極度に甘い筈だ。 一度買って食してみたかったが、帰国迄、終にその機会を持てなかった。 ホテルに冷蔵庫が無かったからだ。 そしてホテルでは、果物は一切テーブルに載ることは無かった。 未だに口惜しい気がする。

 

唯一西洋系のホテル: ノボテル
此処にはビールもウイスキーもある


所謂西洋系のホテルはヌアクショットには、一軒しか無い。 中規模のノボテル・ホテルだ。 流石に一軒だけのことはある。 バーにはビールもウイスキーもある。 酒類があるのはこのホテルテルだけだ。 多くの英語を母国語とする客で賑わっている。 我々の宿舎であるエッザ・ホテルとはサービス内容が格段に違うのは言うに及ばない。




レンタカー屋



豪邸の玄関: 緑がきれいに整備されている


砂漠の国だが、富裕層の邸宅は緑に満ちている。 上の写真がそんな土地の豪邸の玄関。 朝の散歩コースで見かける豪邸の一つ。 庭師が毎日ガーデンに水を欠かさずやる。 




歩道に良く見かけるなつめの街路樹



なつめの実がなっている


イスラムの国にはモスクは欠かせない。 立派な2塔の尖塔をあしらった大きなモスクがダウンタウンにある。 エジプト、シリアやヨルダンでは、靴や帽子を脱げば、比較的自由にモスク内に入れたが、此処では、少し激しく断られた。 



ヌアクショット最大のモスク
入ろうとしたら、断られた




衛星テレビは大流行だ、
衛星放送を受信する為の各種アンテナが此処で手に入る



この国でも衛星放送のテレビ受信は大流行。 欧州やアラブ諸国の衛星放送プログラムが豊富に受信できる。 本当はスクランブルが掛かっていて、有料の放送が多いのだが、彼らは巧みにスクランブルを外して、無料で受信するずべを知っているようだ。 この手のすばしこさには舌を巻くことしきりである。 そして、アンテナや端末機器がとても安い。 だから、我々から見ると相当に低所得層の人達でも、欧州の様々なテレビ番組を見ている訳である。




鍵屋: このデイスプレーは実に分かり易い




高級美容院: 男女ともこの国の人はとてもお洒落



美容院のデイスプレー:
アフリカ特有のファッション
内部は撮らせてくれなかった




美容院の看板



床屋の看板



少し洒落た男性用床屋



ブッテイック: 子供用品屋




投宿ホテル近くのクリーニング屋、 「Habib」 恋人
此方はドライクリーニングはない、
ズボンを出したら、他の洗濯ものと一緒にごしごし手で洗って
アイロンを掛けてくれた




サイバーカフェ: 時代の流れには勝てない、
町のあちこちで見かける



この街では、タイル屋が繁盛している。 お金持ちのバロメーターは、玄関の緑と玄関前や室内のタイル張りにあるのではないかと思う程、タイルを多用している。 我々のホテルの玄関の前は、つるつるのタイルを敷き詰めてある。 ホテルのロビーや廊下もタイル張りだ。 掃除の後等、余程注意して歩かないと、見事に転倒すること請け合いである。 粗末なコンクリートの塀の中を覗くと、中庭一面にぴかぴかのタイルが敷き詰められているのを、方々で見かける。 時々食事に通う、中華レストラン「皇帝」の内部も、階段を含め、床は全て同一模様のタイルが敷き詰められている。 
 




タイル屋: 此方の家の中はタイルを張るのが流行:
何処の家も、ホテル床はそれぞれ意匠を凝らしたタイルが一面に張られている
 



洒落たカフェレストランを帰る間際になって発見した:
終に入る機会を逸した



此方のレストランは、なかなか入るのに勇気がいる。 ダウンタウンでは、6番目に掲載した写真のファーストフード店以外には終に入ることがなかった。 そして、帰国も近くなったある日、散歩コースを変えてみた。 その時、初めて少し洒落たカフェ・レストランを発見した。 入って見る機会は無かったが、明らかに他のレストランとは違った雰囲気がある。 店の窓ガラスは、良く磨かれており、店の前には緑が沿えてある。 緑の手入れも悪くない。 是非内部を一度見て見たかったが、見ないまま帰国してしまった。




薬屋: 大変分かり易い
このように絵や意匠で店の生業を示すのは文字を知らなくても目的を果たせる為



肉屋: 何の肉が在るのか一目瞭然


一連のお店のデスプレーを見て頂いたが、何れもカラフルで、文字が少なく絵が多い。 これは識字率にも関係するのだろうか。 字が読めなくても買い物ができるシステムだろうか。




魚屋: 誰も間違うことはない、 子供でも買い物に行ける訳だ


アフリカの西の端、モロッコとセネガルに挟まれた、大西洋に接する国。 アフリカ西部に初めて出張で行かせて頂いた。 厳しい自然環境、不衛生な食事環境、所謂、日本や中国で言う娯楽は皆無の条件で、真面目に、ひたむきに、一生懸命に働く同僚スタッフ。 短い期間の現地での付き合いであったが、彼らのハードワークは、決して会社の為のみならず、彼ら自身の為にも、そして何よりも、モーリタニアの人々の為にも大きな貢献をしているに違い無いと信じて疑わない。 






3/July/'07 林蔵 @ Nouakchott Mauritania (Updated on 15/Oct/'08)#289

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