弘法水 @Sep/'10 西条市, 愛媛 弘法水: 海底から湧き出る真水 せっかく四国にやってきたのである。 ヨルダン時代、大変お世話になった友人に是非逢っておこう。 四国お遍路に出掛ける前に御都合を伺った。 今も当時と変わらぬ暖かいお言葉で歓待の意を頂き、お遍路を廻りきった後、お邪魔することにした。 4年ぶりである。 世界3大宗教の発祥地、アラビアンナイトやローマ時代の歴史舞台が今も色濃く残る中東で、日本を離れて居ながら不思議と充実し、楽しかった中東での生活が脳裏に蘇る。 豊かな清流が街を巡る ロンドンのリトルベニスを思い起こす景観だ 四国お遍路を終えたその足で、実家の淡路へ足を伸ばした。 親戚の法事に参加する為だ。 108ヶ所をお参りした後、鳴門市の一番霊場、霊山寺へのお礼参りを済ませたのは、未だ午後の早い時間だった。 この時間なら、鳴門大橋を渡れば実家へは2時間も掛からないことに気が付いた。 法事のお勤めには間に合わないかもしれないが、偶に集まる兄弟達には会える筈だ。 一緒に廻ってくれた、いや一切の面倒を見てくれた友人に言い尽くせぬお礼を述べ、霊山寺を後にした。 鳴門大橋を渡り、淡路に入った時点で実弟に携帯で連絡を入れた。 案の定、法事のお勤めは終わって、今は会食中だと言う。 慶野の松原にしゃれたプチリゾートホテルがある。 ここが会場だ。 プールサイドのレストランに入ると、見覚えのある面々が居る。 法事のお勤めは明日改めてお墓とお家を訪ね済まさせていただくことにしよう。 宴は既に終わりかけていた。 私が巡礼装束のまま会場に入るや、早速鳴門海峡名物の鯛めしを席に運んでくれた。 思いがけなく大勢の兄弟達の元気な顔をみることができ、上機嫌である。 総合福祉センター: 水辺にはボードウオークも整備され市民に憩いの場を提供 翌朝、生憎の雨。 雨を突いてバイクでお墓参りをし、お家でのお勤めを済ませたあと、再び四国を目指す。 高速を使えば四国は意外に近いことを実感する。 西条市へ行くには、2本の高速道路が四国の中を走っている。 吉野川沿いに四国の内部をほぼ一直線に走る高速の方が近いに違いないが、鳴門から徳島迄の街中の区間が一般道になっている。 鳴門から直接繋がっている高松道を走ろう。 雨は上がっている、順調に高速をクルーズする。 だが、何処でもどじをやってしまうのが林蔵である。 善通寺辺りだっただろうか、 高速道でエンジンが止まった。 ガス欠だ。 ガソリンが少なくなっていることには気付いていた。 燃料メーターのレッドゾーンはリザーブタンクと決まっているが、これまでレッドゾーンになってもエンジンが止まる経験をしていない。 少し余裕がある筈と高を括っていたのである。 ガソリンスタンドのあるSAを探している内にエンジンが止まったと言う訳だ。 燃料タンクのリザーブタンクコックを開け、エンジンを掛ける。 一番近くの出口を出て近くのガソリンスタンドに滑り込む。 燃料を満タンにし再び高速へ戻った。 市立図書館: 水と山の景観が素晴らしい知的マッチングを呈す 西条市には、お昼頃着いた。 バイクにはナビを搭載している。 目的地の近くに来た筈だ。 電話で近くまで来た旨を伝える。 バイクの止まった場所を簡単に説明すると、直ぐ近くなので迎えに行くからとのこと。 本当に直ぐだった。 懐かしい旧友の笑顔が見えたのは。 早速お家に御招待された。 ずーずーしい林蔵は遠慮等全くなく、お邪魔した。 大変落ち着いた室内。 素晴らしい調度品が品良く配置され、極上の居心地を醸し出す。 奥様と御主人の人柄と趣味の良さが自然と漂う空間に酔いしれる思いだ。 お昼時だったこともあり、これまた特上の御接待を頂いた。 ミシュランの3星レストラン等お呼びもしない心の篭った御接待にはただただ感謝するのみ。 勿論讃岐うどんを含めた、そして食後のスイート(ヨルダン時代の私の甘党を知っての準備に違いない)付きのフルコースである。 水路は清流の証: 夏には蛍が飛び交う 食後の心地よい語らいの後、更にサープライズである。 西条市ミニ観光に案内してくれるとのことだ。 お遍路で、実は西条市も既に通っているのだが、お遍路の最中は、殆ど街の風情を見る心の余裕は無かったと言うのが正直な感想だ。 こうして西条市を心の余裕を持って、おまけに友人御夫婦の地元人ならではの解説付きで、見ることが出来るのは何と贅沢で幸運なめぐり合わせだろう。 西条市は背後に聳える四国一番の山、石槌山のお陰で良質で豊富な水に恵まれている。 街には綺麗な清水が流れる水路が張り巡らされており、ロンドンのリトルベニスが思い起こされる。 清流にはいわなのような魚が沢山遊泳しているのが見える。 水路に沿ってボードウオークも整備されており、格好の散歩道を市民に提供している。 打ち抜きの井戸は、惜しみなく垂れ流しだ。 その垂れ流しの水をペットボトルに詰めて持ち帰る市民の姿も見かける。 余程美味しい水にちがいない。 打ち抜きの井戸にて: 清らかな上質の水がこんこんと湧き出る
城跡のお堀も豊かな水を湛えていた。 現在はこのお堀に囲まれた城跡は西条高等学校になっているとのことだった。 城跡のお堀を取り囲む広い歩道は格好のジョギングコースにもなっているらしい。 西条市は起伏が少なくジョギングやサイクリングにはとっても良さそう。 我が家のある多摩市は、此処に比べると起伏に富み過ぎていて、老体に取って残念だがジョギングやサイクリングには余り適しているとは言い難い。 城跡の濠には豊かな水が今も湛える 車で10分も走れば、市街を抜け、石槌山の麓だ。 石槌山から流れ下る加茂川のほとり、石槌山の入り口に石槌ふれあいの里があるので行こうと言う。 勿論願ってもないことだ。 途中石槌の清流を湛え、深緑の山肌に囲まれた美しい湖面が煌く黒瀬湖畔をドライブし、加茂川を更に上流へ向かう。 直ぐに小学校の廃校舎を利用した青少年や市民の野外活動や合宿等に利用している石槌ふれあいの里が川向に見えてきた。 そこを切り盛りしているのは、かつてのJICAボランテイアーだと言う若い女性だった。 自然に恵まれた(別の言い方では不便な)場所で、相当なボランテイア的な精神を持ち合わせていなければ勤まらないと直感的に感じた。 利用するのは都会生活になれた若者達、こんな山間でも都会と変わらぬサービスを期待しているに違いない。 それでもここを切り盛りしている女性の姿は溌剌として苦労等微塵も見せない美しいものであった。 加茂川:ほんの10分程度で自然豊かな山中に来ることができる おっと、弘法水の話であった。 表題の弘法水は、瀬戸内に開く小さな魚港の一角にあった。 港の浅い海底から真水が湧き出る不思議な現象がそこにあった。 小さな祠が建てられており、土地のおばさんが数人井戸端会議の最中だった。 そんななかへおのぼりさんよろしく、分け入り、湧き出る真水の味を味わせて頂いた。 伊予の国のやわらかく、やさしい感じがその場の人々から感じ取れるのであった。 旧友の格別な御接待心に、伊予の、人を包み込む優しさに感謝と喝采。 弘法水標識
|
{林蔵地球を歩く}[頁の始めに戻る] |