谷川岳
@Oct/'10 水上町、群馬


谷川岳登山道: 山頂近く、標高1800m辺り、仙ノ倉山、万太郎山
ここに来て一瞬霧が晴れ、尾根が見えた



休日の高速料金が何処まで乗っても1000円になったのは、昨年10月のことだ。 今年の6月迄ガーナに居たこともあり、国内で遠出をする機会を持てず、未だその恩恵に与る機会にはありつけないでいたのである。 10月のある土曜日、ソロツーリングに出掛けた。 目的は谷川岳ベースプラザのレストランで舞茸蕎麦を食すこと。 何年か前、一人でドライブした時、舞茸蕎麦を食したことがあった。 その舞茸の大きさは半端ではなかった記憶が脳裏から離れない。 あれは本当だったのだろうか。 人生の洗濯時、確かめに出掛ける。 休日、高速が1000円になったことから渋滞も酷いと聞くが、何事もこの目で確かめないことには気が済まない。 今年は夏が長く秋が後ろに押し出された感じで10月の下旬と言うのに秋雨前線が居座り、お天気は中々秋晴れにならない。 午前6時、空模様は今にも雨が降りそうな雲が低く垂れ込めている。 天気予報ではこのあと回復に向かうと筈だ。 気温14度、これだけ気温が下がるとバイクのエンジンは掛かり難くなってきた。 マンションの駐バイク場から大通り迄歩道を転がす。 大通りに出ておもむろにエンジンを掛け、いざ出発。 私のバイクの排気音はノーマルで静かなほうであるが、それでも早朝のエンジン音はマンションの住民にとって迷惑かもしれないとの配慮である。
 




水上温泉: 道の駅みなかみ、前は利根川、川遊びができる


国立府中ICから中央道に乗る。 八王子IC迄緩い自然渋滞が続く。 20kmから60km程度で断続的に流れる。 それでも止まってしまうことは無いから一般道よりは遥かに気分が良い。 小仏トンネル手前、高尾山の裏手、八王子JCTで圏央道に乗り換える。 圏央道は年々工事完了部分が伸びており、今は中央道と関越道が繋がって随分便利になった。 もう直ぐ東北道とも繋がる筈だ。 圏央道は休日だと言うのに交通量が少なく、すこぶる走りやすい。 狭山PAで一回目の小休憩。 家を出てから1時間半。 空は未だ雲が厚い。 気温14.5度、家を出た時と殆ど変わらない。 バイク用の革のパンツに革のジャケットを着込んできたが、アンダーが薄過ぎた。 100km程度のスピードで走っていると体感温度はずっと低く感じる。 暖かいココアを取り、PA内を歩き回り身体をほぐす。  




JR上越線、土合駅(上り): 上りと下りが別々に分かれた珍しい駅


鶴ヶ島JCTで関越道に乗り換える。 関越に入って花園迄断続的な自然渋滞、20kmから60kmで進む。 上里PAで2度目の小休憩。 家を出てから2時間半。 距離にすれば124kmだ。 軽井沢には意外に簡単に行けることがわかる。 昔、息子夫婦が軽井沢に住んでいた頃は圏央道は未だ中央道とは繋がっておらず、軽井沢へ行くには中央道から八ヶ岳の麓、野辺山ルートを通ったものだ。 彼らはあれからドイツに8年住んで、今年からタイに移り住んでいる。 日本の会社の社員でありながら殆ど日本に居ない。 私以上の海外遍歴を味わっている。 最近の若者は海外へ行きたがらない(働いたり、住んだり)らしい。 嘆かわしい限りだ。 グローバル化は避けられない中で、日本は諸外国の助けを借りなければ成り立たない国であるのに、出て行かないとはどう言うことだ。 資源も食料も、これからは労働力も多くの外国の助け無しでは立ち行けないのに。そんな中で、息子家族が進んで海外勤務にいそしんでいるのは、せめてもの心の慰めの一つでもある。  

米国名門大学への日本人留学生数は、昨今激減だそうだ。 ハーバード大を例に取れば、ここ15年で172名から107名に減(この数も殆どが院生で、学部生は僅か5名)。 一方韓国、中国は元気だ。 同年で比較すると、韓国が123名から305名、中国は231名から421名。 韓国は人口比からしても凄いと言わざるを得ない。 そして中国は名実共に国力に比している。 このような日本のお寒い現象は、成熟した社会のぬるま湯現象であることは否めないが、もう一つ日本人の決定的弱点があると言う。 それは語学力だ。 このような名門校に入学するにはTOEFL100点程度が要求される。 TOEFL100点と言えば、英検1級より遥かにレベルが高い。 日本の普通の高校生にはとても高いハードルなのだと頷ける。 日本程英会話教室が巷に溢れている国も珍しい。 だが、その民の語学実力たるやお粗末そのものであると自覚せざるを得ない。 文法、読解は概して優秀だと言う。 しかしスピーキング技、プレゼンテーション技、文章構成技等が概して格段に低いのは何故だろう。 歴史的な民族の癖が多少影響しているだろうが、家庭、学校、社会を含めた教育に問題があるのではないだろうか。 失敗を恐れない、伝えようとする強い意思が、もっとも必要ではないだろうか。




JR上越線、土合駅(下り): 日本一のモグラ駅、ここから駅迄徒歩で10分も掛かる


水上で関越道を降り一般国道291号を北上する。 数分で道の駅 ”水上” の看板が見える。 此処まで家を出てから4時間。 道の駅 ”みなかみ” は国道291号と利根川に挟まれた、川遊びには絶好の場所にある。 川原は広く公園風に整備されている。 バーベキューもできる設備が整っている。 しかも道の駅は例に洩れず、土地の野菜や果物を扱う物産店が沢山入っているので、バーベキュー材料は現地調達できる手軽さだ。 都心から手ぶらで来ても大丈夫と言う訳である。 物産店を物色。 りんごが安い。 帰りに寄って買おう。 他には桐の俎板が有った。 手に取ると驚く程軽い。 出張用に小さ目のを買っておこう。 海外出張では長期になることが多く、台所付きホテルやアパートに住まうのだが、台所に俎板が無いことが多い。 土地の雑貨屋に行って俎板を探すと意外に高価で、しかも重い。 結局買わないで不便な生活を強いられることが殆どだ。 この歳で海外出張はそう多くあるとは思えないが、実は今、海外ボランテイア活動に応募中なのだ。 これに受かれば2年程の海外生活が待っている。 少し気が早いが首尾よく受かったことを頭に描きながら準備と言う意味で俎板を買った。




湯桧曽川: やがて利根川となり太平洋に注ぎ込む


道の駅 ”みなかみ” から谷川岳迄12km程度だ。 道幅はだんだん狭くなり、谷は深く両脇の山々が競り寄せてくる。 谷川岳の先は道路通行止めの標識も出てくる。 いよいよ日本の分水嶺、谷川岳が近くなっている雰囲気が迫りくる。 土合駅から谷川岳駐車場に入る渋滞が始まる。 此処からなら歩いても数百メートルの筈だ。 土合駅手前のドライブイン谷川岳の駐車場にバイクを止め、歩き出す。 15分程で谷川岳ベースプラザ、谷川岳ロープウエー駅に着いた。 10時30分。 お昼には未だ早い。 上空は雲(霧)が立ちこめ谷川岳は望めない。 ロープウエー駅では紅葉もない。 それでも天神平迄ロープウエーに乗ることにした。 チケットを買って列に並ぶ。 30分~45分待ちだと言う。 案内書によると、谷川岳ロープウエーは最近新しくなり乗り心地が格段に良くなっているとのことだ。 以前はゴンドラを1本ワイヤーで吊るロープウエーだったが、現在のものは、ゴンドラより広い幅で張られた2本のロープで吊るされるもので、揺れが少なく天候の急変する谷川岳では安全性も高いものだと言う。 全長2400m、高度差573m、天神平迄約10分。 山頂駅天神平、気温9度、じっとしていると寒い。 太陽は見えない。 だが木々の紅葉は始まっている。 真前の朝日岳は少し雲に掛かってその全容は見えない。




天神平ロープウエー"フニテル": 全長2400m、高度差573mを約10分で移動
ゴンドラより広い幅の2本のロープで吊られており居住性と安全性が格段に上がっている




天神平: 1319m、気温9度、じっとしていると寒い、一瞬霧が晴れ、眼前に雄大な朝日岳が姿を現し始めた


このままロープウエーで下に降りるのはもったいない。 此処まで来たのである。 ここから谷川岳登山道が山頂まで伸びている。 尾根に出れば霧が晴れることを期待して登ってみよう。 登山装備は持ち合わせないが、少なくとも軽装ではない。 多くのフル装備登山者に紛れ登り始める。 登山杖にカウベル、本格的登山服装に身を包んだ登山者が殆どだ。 マナーも良い。 年配の方が多いのは何処も同じだ。 昔は山と言えば若者の独占場だった。 今は年配者と若い女性の独占場だ。 多くの外国人にも出会った。 団体客のようだ。 谷川岳は日本百選名山に選ばれた山であるが、世界一遭難者が多いと言う不名誉なタイトルを持つ山でもある。 たかが2000mに満たない山だが、これまでの遭難者数は781名にも達するそうだ。 日本の分水嶺に当たり、地形が複雑で気候の変化が激しく岩場が多いのが原因らしい。 山頂に近ずくにつれ、岩場が厳しさを増すのを実感した。 3771mの富士山より登り難いのではないかと思う程だ。 若い頃、スイス人の友人と富士登山を2回経験したが、あの時は若かったせいだろうか。 きつかった覚えは全くない。 山頂まで後少しだったが、装備が不完全なのと、帰りの時間を考え、1800m付近で引き返すことにした。 実はこの時点で霧が晴れ、眼前にほぼ360度の素晴らしい眺望が開けのだった。 もうこの絶景で今日の報いは十分と感じたのだった。




天神平から始まる登山道: この辺りは、登山道と言えハイキング並みだ、歩き易い
この後険しい岩場が続く




1700m辺りだろうか、霧が晴れ一面熊笹に覆われた山肌が姿を見せた


天神平ロープウエー頂上駅迄下山した。 14時50分。  下りロープウエーは長蛇の列、1時間半待ちだと言う。 山頂駅でのロープウエー待ちは寒い。 上下はバイク用革パンツに革ジャケットを付けているが、岩場登りでアンダーは汗で濡れている。 外寒は防げても内から汗が蒸発し体温を奪う。 何とか1時間半持ち堪え、ロープウエーのゴンドラの乗客となる。 無事ベースプラザに戻り、早速食堂へ向かう。 意外と人出はまばら。 お目当ての舞茸蕎麦を注文。 想像通りの大振りの舞茸がトッピングされた暖かい蕎麦が直ぐにサーブされた。 冷え切った身体に暖かい蕎麦は旨い。 しかもお昼ではあるが、時間は既に午後の4時を過ぎている。





下山時、霧の晴れ間から姿を見せた谷川岳


10月の1000円高速、まずまずの成果である。 山の厳しさと美しさを同時に味わえたソロツーリングだった。 多くの刺激を得、安全に帰宅できたことに感謝。 本日の走行距離、405km。




本日の相棒 Triumph Trophy": 1000円高速の力強い味方

















林蔵@谷川岳 23/Oct/'10 (Updated on 5/Nov/'10)#346
  

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