桂林・り江(Guilin/Lijiang)
@Oct/'06 Guilin, China


り江の川下り船、川岸に展開する絶景と豪華なディナーを4時間に渡り楽しむ


り江、中国を代表する川の一つである。 日本ではあの桂林の山水画で有名だ。 かつて桂林が海の底にあった時期、大量の珊瑚が海中の炭酸ガスを膨大な層の石灰岩に変換した。 ここは大量の地球温暖化ガスを閉じ込めた世界最大の貯蔵庫であることはご存知であろうか。 

2006年10月、そんな桂林を訪れる機会を得た。 桂林は、おりしも乾期のさなかにあり、よどんだ空気が山水をさらにぼかした感じになっている。 事業所での仕事を終え、次の仕事場への移動の合間、休日を利用して、桂林事業所の方が、”り江の川下り”、を企画して下さった。 何ともありがたく感謝に耐えない。 り江でも特に景観が素晴らしい、磨磐山船着場から陽朔迄の約40kmを4時間掛け、絶景を肴に船内デイナーを楽しみながら、ゆっくり河を下るのである。 何とも優雅なことこの上ない。



出江前、幾つもの川下り船が犇めき合う
船客の揃った船から、串が抜けたように出航する、
残った船は再び行儀良く並び、沖の船へ船客が歩いて渡れるよう便宜を払う



磨盤山船着場を10時に出航予定である。 事業所の専任運転手のY嬢がBUICHの大型バンでホテルに迎えに来た。 通訳で庶務全般を取り仕切るL嬢、西安の事業所から出張で来ているP嬢にC顧問、L部長も同行してくれると言う手厚い歓迎ぶりである。 流石、桂林の目玉観光スポットだけある。 広くて立派なゲート、待合所、品数を揃え整然とした土産物売り場が我々を出迎えてくれる。 運転手のY嬢とは、一旦ここでお別れである。 Y嬢は一足先に、我々の河下り船が着く陽朔へ車を移動し、我々を待って居てくれるのである。 

川幅の広くなった船着場には、夥しいばかりの河下り観光船が桟橋に整然とひしめき合っている。 船の形は少しずつ微妙に違うが、概して大きさ形はほぼ同じである。 船尾には立派なキッチンが備わっており、4時間の河下り、船客は飢えや渇きを微塵も感じることががない仕掛けである。 



船尾は高級ホテル並みのキッチンになっている、出航と同時に
調理が始まる



桂林市は広西自治区の州都だ。 今が乾期とのことである。 り江の水位は相当下がっているが概して綺麗で少しの匂いも無い。 川幅は処により随分と狭くなり、上り下りの船がすれ違うのも難儀するほどだ。 それにしてもこの観光船の多さはどうだろう。 前後見渡す限り、正に数珠繋ぎ状態だ。 


今は乾期でり江の水かさが随分下がっているらしい、
幾つもの川下り船が列をなしてゆっくりと川を下る



船内には、給仕係り、風景・観光案内係り、機関士、コック、船長等、それぞれの制服に身を固めサービスに努めている。 案内嬢は船内放送で、船の両脇に迫る奇岩群の説明を中国語と英語で行ってくれる。 船長も折を見て客室に姿を現す。 給仕から料理を受け取り、我々のテーブルに振舞い、愛嬌を振りまくサービスもしてくれる。 まるでデズニーランドばりである。 この辺が計画経済から自由経済への切り替えに成功した姿だろうか。 



川下り船のキャップテン: 料理がテーブルに並び始めると、客の間を愛嬌を振りまき挨拶廻りをする 


川幅は時に狭く、時に広くなる



川下り観光船の速度は遅いが、り江の景観は刻々千差万別する。 見逃してはならない。 美味しいデイナーも楽しまなくてはならず、結構忙しい。 屋上のデッキに出たりテーブルに戻ったり。 時に水牛や子供達が水遊びをしている光景に出くわす。 そして、何処にでも観光客相手のミニ商売は発達する。 竹を数本組んだ小さな手漕ぎボートが土産物を積み、観光船めがけて漕ぎ出してくる。 観光船の速度は遅いが竹の筏船の比ではない。 竹の筏船が首尾よく観光船に辿りつくと、鍵手金具を観光船に素早く引っ掛ける。 これで、筏船は観光船に強引に引っ張られてゆく。 船べりで器用にバランスを取りながら、土産売りの商売が始まる。 

 


同行して戴いた桂林事業所の現地スタッフ(2名は日本語が上得意)



桂林事業所の通訳、庶務兼社長秘書のL嬢は日本からの出張者には細々と世話を焼く。 入社3ヶ月だそうだ。 広西大学で日本語を専攻したそうだ。 最近の日本の若者が使う日本語を見事に喋る。 然程大きくない事業所の雰囲気は大変良い。 そんな家族的な事業所の雰囲気が大変気に入っているとも話してくれた。 



川下り船の先端にて: 船は平らで船底は浅い



ゆっくり下る観光船の両脇には見事な山水の風景が刻々と変化する。 世界中から観光客が絶えない訳である。 川下り船の数の多さもうなずける。 関心するのは、ごみの少なさである。 この河は多くの街を縫って流れてきている筈である。 それにしては、川面に廃棄ごみが殆ど浮かんでいない。 アジアの文化の一つは河に何でも捨てる習慣だ。 この河に恩恵を受ける街々は典型的なアジア文化を持っていると思われるが、政府の宣伝が功をなしているのか、文化レベルが西洋化しているのか、その訳は知らない。 



川下り船は前になったり後ろになったりしながら、変化を楽しむ
行き来にはルールがあり、船首の係員が赤と緑の旗をかざし進路を確認しあう



約4時間後、河下り船は河下りの終点陽朔に到着した。 陽朔に上陸すると、瀟洒な町並みが出迎えてくれる。 先を行っていた観光船に乗っていた世界中からやって来た観光客が既に上陸しており、通りは彼ら彼女らで溢れている。 ロンドンのポート・ベローを思い出させる。 バーやカフェは既に多くの外国人観光客で賑わい、ここが中国の桂林かと一瞬疑わざるをえない。



陽朔の街: ハイセンスな土産物屋、バー、カフェが居並ぶ
日本で言えば原宿だろうか



運転手のY嬢に電話で連絡を取る。 既に街の駐車場に車を止め我々を待っていてくれた。 Y嬢と合流し、Buichの大型バンに乗り込む。 ここには有名な月山があると言うので、向かうことにした。 なるほど、山の中央が綺麗な幾何学的にくり貫かれていて如何にも月が出たように見える。 米国の科学者が之は自然の造形物ではないと疑い、実際に調査をした結果自然のものであることを確認したこともあるそうだ。 この月山の月は見る角度により、新月から満月、更に新月へと1ヶ月の変化を見せるそうだ。



月型山: 山の中央が綺麗に円形に侵食されている、大変珍しい自然現象
見る角度により三日月から満月に変化する



Y嬢の運転する大型バンで帰路につく。 帰路の道すがら観る山水も河下りに負けじ劣らずの景観が連なる。 桂林の山水を堪能した一日であった。 中国の山河に、人々に喝采。



帰路のバンの車窓からも見事な山水が見られる





14/Oct/'06 林蔵 @Guilin China (Updated on 27/Sep/'08)#273

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